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Rafael Nadal

ラファエル・ナダル

 生年月日: 1986.06.03 
 国籍:   スペイン 
 出身地:  マヨルカ島マナコル(スペイン)
 身長:   185cm 
 体重:   85kg 
 利き手:  左 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: Babolat AeroPro Drive Original 
 プロ転向: 2001 
 コーチ:  Carlos Moya, Marc Lopez 

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 強靭な左腕から繰り出す強烈なスピンショットや驚異的なコートカバーリングで激しいラリーをことごとく制する稀代のベースラインプレーヤーにして、シングルスグランドスラム歴代1位となる22勝の金字塔を打ち建てたテニス界の盟主。No.1の座を手中にしてからもなお更なる進化を求め、周囲の声に素直に耳を傾けながら様々な点の改良に取り組む姿勢は世界中で愛され、ファンからは「ラファ」の愛称で親しまれている。初出場の05年全仏を19歳の若さで制覇し、サンプラス以来の10代グランドスラム優勝者となると、全仏では圧倒的な強さで無敗のまま4連覇、また10年からさらに5連覇を果たした実績が証明するとおり、クレーでは無類の強さを発揮する。バウンドが高く球足の遅いクレーコートは、ナダルの強烈なトップスピンや俊敏なフットワーク、またそれを支える疲れ知らずのスタミナが最大限に活かされるサーフェスであり、05年から07年にかけてクレーで81連勝を記録するなど抜群の安定感を誇っている。クレーでの試合ではベースラインよりかなり後方で構えるが、どんなに強く速い攻撃にも屈することはなく、スライドを活かした鉄壁のディフェンスと鋭いカウンターで試合を支配する、スペインの系譜を引き継ぎつつそれを大幅にアップデートしたようなプレーヤーである。ただし、好調時の彼を止めるのはどのサーフェスであっても非常に困難で、10年には全米優勝により男子史上7人目のキャリアグランドスラムを達成し、08年北京五輪での金メダルと合わせて現役の男子では唯一の「ゴールデンスラマー」となった。基本的にプレースタイルは守備型で、相手の攻めに対応しつつ勝機を見出すタイプであるが、速いサーフェスでの強さを追い求めてポジションをベースライン付近に上げることを試みるようになって以降は、自らの展開力を攻撃面で活用できるようになり、元来苦手としていたハードコートでの戦闘力が格段に上がった。コーチには叔父のトニ・ナダルがついており、フルタイムの帯同には区切りをつけたものの幼少期から現在に至るまでその関係は途切れることなく続いている。

規格外の回転量を誇るフォアハンドの「エッグボール」

 「エッグボール」と形容される強烈なトップスピンのかかったフォアハンドは、スイングスピードが極めて速く、攻撃・守備の双方で大きな武器になっている。規格外の回転量を誇るトップスピンショットは、そのほとんどが頭の後ろ側に振り切るリバーススイングから繰り出され、ベースライン後方からでも厳しいアングルを狙って相手を走らせながらじわじわと追い込み、確実に決められるオープンコートを作ってウィナーを狙う。特に相手のショットの些細な隙を見逃さず、世界一の技術・スピードを擁する回り込みのフットワークを駆使して、バック側のボールをフォアで逆クロスもしくはストレートに放つショットは彼が最も得意とするもので、この形の攻撃を跳ね返せるプレーヤーはツアーでも数少ないというほど凄まじい決定力を誇る。基本的にナダルと対戦する際はできるだけ多くショートポイントを重ねていきたいという考え方が普通だが、長いラリーを嫌ってオーバーパワーしようとフォアのクロスに目一杯強打してきたところを華麗にストレートへカウンターを放って一本で展開を逆転しウィナーを取る形は、相手の戦意さえも奪ってしまう必殺パターンだ。さらに、コート外からポール回しのごとく、強烈なスピンにより極めて特異なカーブ軌道を描いてライン上にのせる技術は誰にも真似できない芸当である。スライスへの対応が非常に良いのも強みの1つで、滑ってくるボールの勢いをさらに加速させ、そのまま前方への動きに繋げていくことができる。したがって、ナダル相手に安易にスライスを打ってしまうと優位に進めていたラリーもひっくり返される危険性が高い。ベースラインの後ろから打つムーンボールに近いトップスピンと、一転して踏み込んで攻撃のスイッチを入れるこのショットとのコンビネーションは必見だ。彼のショットは基本的にはスピン系のショットが多く、フラット系のショットにスピードでは劣るため、ウィナーの数はそれほど多くないが、バウンド後非常に高く重く跳ね上がることで相手のミスを誘うため、結果としてポイントに繋がるケースが多くなる。試合序盤は高く跳ね上がるショットに対応していた相手も、時間とともに体力を奪われ、ポジションも下がることになってしまう。すると彼は、待っていたとばかりに角度のついたショットを放ち、浮いてきた返球をコートの中に入って叩き込む、あるいは短く前に落として決めるというのが確立されたパターンだ。特に片手バックハンドの相手の場合は、弱点である高い打点にこのショットを集めミスを誘発させる。ナダルが対フェデラーの対戦成績で大きく勝ち越しているのはこのためである。ただ、両手バックハンドの相手には高く跳ねるボールを上から叩かれて、この作戦が通用しないことも多くあったため、ハードコートでは彼にしては回転量を減らした低めの弾道での攻撃やスライスを多用して対抗するようになっている。また、左右に大きく振られた際に度々放つ中ロブ気味のスピンショットも非常に有効で、自分が中央に戻る時間を稼ぐだけでなく、相手に強いショットを打たせないという効果もある。一方で、問題となっているのは、調子が落ちると増えてくるスピン過多や薄い当たりによる短いボールで、こうなると相手に対して上から叩く格好のチャンスボールを与えることになってしまう。近年の低迷の最大の要因がフォアの不調で、ミスの多発、返球コースの甘さ、決めのショットの精度など、すべてのレベルが落ちてしまっていた。全体的にボールに体重が乗らず、本来重さを武器にしてきたはずが逆に軽いショットになっていたが、継続的に取り組んできた厚い当たりで捉えて背中側に振り切るフォームが、試合の中で自信を持って使えるほどの完全習得に至った17年には輝きを取り戻し、クレーコートシーズンを席巻する原動力となった。コンパクトなスイングでテンポを速めて状況の打開を図る手もあったが、やはり行き着いたのはしっかりと構えて前方に力をかける打ち方であり、ナダルらしさを消さずに復調するための道だった。とはいえ、以前よりも攻撃する意識そのものは明らかに高まっており、そのための手段として守る時は徹底的にポジションを下げて拾い続け、相手の攻め疲れを待ってからベースラインにより近い位置で叩く、極端なメリハリを武器としている。いずれにしても持ち前のフォアの威力を甦らせた彼の努力はまさに称賛に値する。

年々完成度に磨きをかけるフラットなバックハンド

 フラットドライブ系で被せるように打つことが多いバックハンドは、フォアに比べて軌道は低いがミスは少なく安定感があり、加えてドロップショットなども含め非常に器用なプレーで相手を揺さぶることもできる。とりわけ高い打点からクロスへ突き刺すフラットショットは年々その完成度に磨きをかけており、コートの内側に踏み込んで早いタイミングで展開できる分、ここ最近の彼のテニスにあってはフォア以上に決定打として機能している印象すらある。レフティーだが本来は右利きという特性が、右腕の力強くかつ自在なスイングを生み、一発逆転のカウンタークロスコートを可能としているといえる。バックのレベルアップによって、最も得意とする回り込みフォアに頼る必要がなくなったため、バランスを崩して不用意にオープンコートを空けるようなシーンも少なくなっている。ただ、グリップの関係で打点が一般的なプレーヤーよりも前になることから、ややクロス一辺倒になりがちで、それが読まれ出すとなかなかポイントに繋げられなくなるのも事実であり、ストレート方向にも厳しい攻撃を増やせるよう改善したいところではある。バックサイドに来た浅いボールに対しては、自分が攻める形を作るための布石としてキレのあるスライスを使うことが多く相手を翻弄するが、これはあくまで強打あってのものであり、遠めのボールに対して踏み込まずスライスに頼るのは消極的に映り、あまり良い傾向ではない。また、相手の強い攻撃を凌ぐ場面で使うスライスはボールを切る意識が強すぎるあまりミスに繋がるケースが多く、安定感にはまだまだ向上の余地がある。調子の良い時と悪い時でバックハンドの深さや角度が顕著に異なるため、彼の調子を見るうえでは重要なショットといえる。

神懸った一発逆転カウンターショット

 彼が得意とするカウンターショットは、超人的なフットワークや鋭い読みによる広範なコートカバーリングが基盤となっている。スライドを駆使しつつ、一瞬の間にラケットの面を合わせる能力や手首を返す能力に秀でているため、相手から放たれたライン際への鋭いショットもしくはアングルショットのような、いわゆるエース級のショットに対して、それ以上に厳しいコース・角度へ逆にエースを取ることができる。ドロップショットへの対応も天下一品で、しばしばギリギリで追いついたボールを逆にドロップショットで目の前に落とす形で相手を手玉に取る。また、下がりながらでも鋭く厳しいコースにコントロールできるため、守備面における弱点は皆無に等しい。一見不可能とも思われる体勢から相手の届かないコースへ逆襲する異次元のパッシングショットは、まさにナダルを象徴するショットであり、1試合の中で幾度となくこのような難易度の高いショットを決めて観客を魅了する。ただ、近年は芝での試合となると膝に抱える故障をかばう影響か、フットワークや球際での踏ん張りに力強さが消え、ステップがぎこちなくなってきており、ウィンブルドンでの早期敗退を繰り返す要因となっている。

ポイント獲得率の高いネットプレー

 カウンターショットやストロークの印象が強すぎるあまり、ベースラインプレーヤーという見方をされがちだが、ダブルスや芝での実績が証明しているように、ボレーにおいても一流の技術を備えている。フォアのダウンザラインからネットに詰めてバックのドロップボレーで対角に落とす形は、分かっていても止められない得点パターンである。サーフェスが芝の試合ではクレーの場合とは別人のように積極的にネットへ出て、ボレーでポイントを重ねていく。他のサーフェスではネットプレーの頻度こそそれほど多くないものの、ネットへ出た時のポイント獲得率は非常に高い。中でも際立つのはネットへのつき方で、相手の状況を瞬時に判断し、絶妙なタイミングで素早く前に出ていく。これによってネット際での中途半端なプレーを減らし、十分な体勢でボレーを打つことができている。

重く曲がる複雑な回転で攻撃を許さないサーブ

 サーブは球速こそフラット系でも200km/h前後であるが、1stの確率がとにかく高いうえに、複雑な回転は読みにくく、非常に重く曲がるため、対戦相手は攻勢に転じることが難しい。エースを狙うというより相手に攻撃させないことに重きを置くサーブは、ハードよりもむしろクレーで絶大な効果を発揮する。このサーブに対してリターンで攻撃していけるか否かが対ナダルを占ううえで1つの鍵となる。特にアドバンテージサイドからワイドに逃げていく左利き独特のスライスサーブは、急激な変化により相手をコート外へ追い出せるため非常に有効である。このサーブが配球の軸であることは間違いなく、基本的には相手もワイドに予測を張っているのだが、一転してブレークポイントを握られるとセンターに速いサーブを打ってエースで切り抜けるのが彼の切り札でもあり、ピンチの場面では相手との非常に痺れるコースの駆け引きが見られる。重要なポイントが回ってくることの多いアドバンテージサイドで絶対的なパターンを持っている点で、決してビッグサーバーではないとはいえ、難攻不落と表現しても言い過ぎではないという感覚がある。最近は、とりわけトップとの対戦でボディサーブを配球の軸に据える新たな傾向が見てとれ、両サイドを空ける工夫が感じられる。デュースサイドからのサーブにおいてはバリエーションが不足している点で、相手に対して容易な予測を許してしまっており、ある程度ワイドを意識づけられるようなフラット系のサーブをオプションに加えることが課題とされてきたが、ここ数年のサービスゲームの進化がまさにそれを証明する結果となった。左右にコースを散らすことで甘いリターンを引き出せるようになり、またそれに伴い3球目攻撃の質も劇的に高めることに成功した。一時期、弱点を克服するべくサーブの練習に多くの時間を費やし、1stは210km/hをしばしば超えるようになったが、肩の故障や自身のプレースタイルに適していないなどの理由で再び元来のスタイルに落ち着いている。

相手の戦術を無力化する目一杯後方からのリターン

 リターンの強さもトップクラスであるが、とりわけそのポジションが特徴的だ。相手の1stはともかく、2ndでもベースラインからかなり離れた位置に構え、まずはしっかりとスピンをかけて返球することを優先させるが、同時にこのポジショニングにより相手の距離感を損なわせ、サーブの感覚を狂わせる効果もある。エースなど派手な面は少ないが、相手からするとなかなかサーブによるフリーポイントが計算できないため、非常にいやらしいリターンといえる。技術的な強みは、小さなテイクバックによりサーブのスピードに負けないようタイミングを合わせつつ、一方でしっかりと振り切ってボールを押し出すことでリターンを完全に自分のショットに転換して相手を押し込める点で、仮に返球が少し浅くなってもストローク同様ナダルのショットを上から叩くのは容易ではない。一方、最近はテニス全体を攻撃的にシフトする過程でリターンもベースライン内側に入って叩き、場合によってはそのままネットへという形も試みている。

情熱と神経質

 “鋼のメンタル”の持ち主としても知られ、屈強なフィジカルとともに彼の強さを根底から支える重要な要素だ。フェデラーが常に冷静に淡々とプレーするのに対して、ナダルは声を上げてショットを打ち、派手なガッツポーズや雄叫びを上げることで自らを鼓舞して能力を引き出すタイプであり、まさに「心は熱く、頭は冷静に」を体現しているプレーヤーといえる。その豪快なイメージとは裏腹に、ベンチ前のペットボトルの向きを揃えたり、サーブを打つ前に汗によるウェアの張り付きや髪を直したりするなど、神経質なまでに細かく彼独自のルーティンをこなしている。それゆえにポイント間が長くなりタイムバイオレーションをとられるのも見慣れた光景だが、基本的に審判とのやりとりで冷静さを失うことはほとんどない。また、トップアスリートにしては珍しく弱気な発言で自らの弱みを晒すことも多いが、逆にそうすることで巧みにプレッシャーを退けて自分を解放し、いいテニスができやすい環境を作り出している。

劇的な復活からGS最多優勝記録を更新、さらに先を見据える

 プレースタイル上、肉体にかかる負担は相当なもので、これまで様々な箇所の怪我により戦線を離脱したが、その度に新たな一面を見せて華麗な復活劇を遂げてきたナダル。しかし、14年夏場以降の不調はこれまでにはなかったような性質のものと言わざるを得ず、いわゆるスランプ状態に陥っていた。元々試合の中で心の中の動きがプレーに表れてくるタイプであったが、勝てない時期が続いたことによりその兆候が悪い方向へと加速し、ブレークポイントなどの大事な場面で緊張のあまり硬くなり、ボールがまったく飛ばなくなったり、通常のラリーの中でもフレームショット気味の打ち損じが非常に多くなった。絶対的な体力があるためにそれに頼りすぎて守備に回るきらいがあるという積年の弱点が、年齢的には下降線を辿り始めてもおかしくない時期に差し掛かって顕在化し、すべてにおいて彼のテニスを支えてきたフットワークに衰えが見られるために、ショットの球威・精度に狂いが生じ、ひいてはラリー支配力が低下してしまい、かつては無敵状態にあったクレーにおいてさえ絶対的な存在ではなくなってきた。したがって、ストロークにしろリターンにしろ一本目のショットから確実に深さを出し、次で仕留めるといった速い展開に切り替えるべきという指摘も多く聞かれた。彼自身もこのことは十分に自覚し、着実に前進している姿は見せており、特に否応なしに積極性が要求されるトップ10級との対戦では新しいスタイルが実を結び始め、むしろ失うものは何もないといった心意気で猛然と攻めてくる格下が相手になる大会序盤の戦い方を見直す余地があった。以前はいくらでも相手に攻めさせておいてカウンターで勝つということができたが、神懸ったパスが鳴りを潜めるなど守備範囲とカウンター能力が落ちている以上、相手の攻撃を受けきる形で勝ち星を拾っていく従来のスタイルはもはや苦しくなってきており、打たれた強いショットにどう対処するかではなく、その武器を打たせないためにどうするかということに思考を転換したい。彼自身はこの苦しい時期でも、コーチを変えるべきなどといった環境変化を促す外部からの声には基本的に耳を貸さない姿勢を貫いていたが、17年より全幅の信頼を置く同郷の偉大な先輩にして元No.1でもあるモヤを陣営に迎えると状況は一変。16年終盤を休養に充てたことも功を奏し、2年以上抜け出せないでいた不調がまるで嘘だったかのように王者の威厳が戻り、全仏ではライバルたちを寄せ付けない圧巻のパフォーマンスで10度目の戴冠、いわゆる「ラ・デシマ」の偉業を達成した。以降も大きな舞台、とりわけ全仏では誰も寄せ付けない破格の強さを維持し、22年全豪ではグランドスラム2連続優勝に向けて死角なしと見られたメドベデフを決勝で2セットダウンから大逆転で下し、遂にフェデラーの持つグランドスラム最多優勝記録を塗り替えた。故障がちな点は気になるものの、精神面でもプレーの面でもアグレッシブさを維持できれば、タイトル数の更なる上積みも現実的な目標となってくるが、トップ争いに下の世代が絡むようになり、さらに過酷となったツアーの中でいかに彼が存在感を示していくのか大きな注目が集まっている。