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Nick Kyrgios

ニック・キリオス

 生年月日: 1995.04.27 
 国籍:   オーストラリア 
 出身地:  キャンベラ(オーストラリア)
 身長:   193cm 
 体重:   85kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: YONEX EZONE 98 
 プロ転向: 2013 
 コーチ:  なし 

f:id:Kei32417:20190922162503p:plain 身体能力の高さをベースに長身から繰り出すビッグサーブと強烈なフォアハンド、丁寧なバックハンドなど様々な武器を駆使して展開する予測不能かつ大胆不敵な超攻撃的テニスで、数々の常識を破壊してやまない稀代の天才プレーヤー。現代テニス界きっての悪童としても知られ、テニス以外の面も含めて常に話題の中心に上るプレーヤーである。2000年代に入ってヒューイット以降若手の台頭が途絶えていたオーストラリアにとって、キリオスはオーストラリアテニス復活を象徴する存在だ。彼の名が世界中に知れ渡ることになったのは14年ウィンブルドンワイルドカードでの出場ながら2回戦で9本のマッチポイントを阻止してガスケを破ると、4回戦では当時No.1のナダルを一蹴する大番狂わせを演じた。ツアー参戦実質1年目での大旋風は一気に将来のNo.1候補としてもてはやされた。また、翌年の全豪でもベスト8の好成績を残し、10代でグランドスラム2度のベスト8はフェデラー以来の快挙となった。大会の規模が大きいほど、また相手が強敵であるほど、モチベーションが上がりアップセットを狙って生き生きとプレーするのが彼の特徴で、それは格下相手にあっさりと敗れることも少なくないということの裏返しでもあり、ツアー初優勝は16年マルセイユ(250)と意外に遅くなった印象はあるが、それでもその頃からようやくコンスタントな活躍が目立つようになり、同年には東京(500)の楽天オープンでもタイトルを獲得した。世界で猛威を振るうCOVID-19の影響で各大会の開催やツアーの運営が不規則化する中、彼はますますモチベーションを失い、引退してしまうのではないかとの憶測もあったが、22年は高い人気を誇る同世代の親友コキナキスとのコンビ“Special Ks”で幸先よく全豪のダブルスを制して国内を熱狂に導くと、シングルスでもウィンブルドンで準優勝の大きな実績を手中に収めた。「キリオスは人並みに真剣にツアーを回れば他人よりも勝てる」という自他ともに認めてきた俗説を証明するかのような活躍だった。ハードコートを得意とするが、膝をそれほど曲げなくてもバランスを崩さずコート上を動き回れる類稀な身のこなしを習得しているため、滑りやすい芝やクレーでもハードヒットできるポイントにスムーズに入れることから、すべてのサーフェスで差異なく実力を発揮できる。

爆発力と奥深い技術力を兼ね備えるフォアハンド

 厚いグリップから一気にリストを返すことで極めて速いスイングスピードを実現するフォアハンドは大きな武器の1つで、コート後方からでも高い打点が取れれば爆発的な威力でウィナーを連発するのはもちろん、低い打点からは唸りを上げるような強烈なトップスピンで相手をコート外へ追い出すアングルショットも備えるなど、バリエーションが豊富なのが強みである。特に逆クロスへの強打は構えた状態で気持ちよく打たせてしまうと、ほとんど対応は不可能なほど破壊力があり、技術的にはクロス方向に打ちそうな上半身の開きから、ラケットヘッドを最後まで隠して振り抜くことができる点でコースが読みにくく、非常に完成度の高いショットだ。ネットコードに当たってコースが変わった時や、ドロップショットで前に誘き出された時の対応で見せる前向きの股抜きショットも印象的で、咄嗟の閃きだとすれば天才的と言った方がいいが、それを繰り出す頻度から見て彼自身かなり得意にしている雰囲気もあり、必要性などを考慮すると評価は難しいが、スタンドプレーの意味合いを込めてウィナーにすれば観客とともに乗っていけるという意味では大きな武器といえる。相手にしぶとく粘られ始めると、やや単発のショットのクオリティで勝負しすぎるところがあり、不必要にミスを重ねる傾向も見られるため、今後は辛抱強い理詰めの組み立てでポイントに結びつける術を身につけていきたい。また一方で、深く返ってきたボールに対して膝を曲げずに手打ちになる癖が散見される。これは技術的な弱点というよりは、どちらかといえば泥臭さを嫌い「洒落たプレーで綺麗に決めたい」という気持ちが雑な処理を引き起こしている側面が強いが、いずれにしても試合に勝つうえでは障壁ともなる余計な思いは早急に削ぎ落したい。

フォアとの軌道差が相手を苦しめるフラットなバックハンド

 バックハンドは丁寧かつシンプルなスイングでボールを運ぶように捉えるのが特徴で、荒れ球気味でミスも多いフォアに対して、バックは回転量が少なく安定感が際立つショットとなっており、フルスイングをしない分、速いテンポでのコース変更にも無理がなく、ダウンザラインへのカウンターショットなども高い精度でコントロールする。とはいえ、非常にフラットな軌道の速球をネット上ギリギリの高さを通しつつ角度をつけられるため、フォアにも劣らずウィナーが多い。また、時に勢いの死んだような打球も不規則に交ぜるため、鋭いショットがより速く見える効果もある。調子の悪い時はミスが増えるのではなくボールが浅くなる傾向にあり、重さのあるショットではない分角度がつかなくなると苦しくなる。

意外にラリーではじっくりと繋ぐタイプ

 ラリー戦での彼の戦い方を見ると、激しく動いても軸がぶれない分、意外にじっくりと繋ぎながら確実に決められるボールを待つ傾向があり、心理面で冷静さを保っている限りは大崩れしないというのが強みといえそう。ベースラインでのロングラリーを早々に切り上げてネットに速攻を仕掛ける戦術を採用したことも一時期あり、確かに持ち前のタッチセンスで操るボレーに魅力はあったが、決してネットプレーヤーではなく威力のある素直なボレーが打てないため必ずしも有効に機能していたとは言えない。また、速いリズムでストロークを展開されると持ち前の攻撃力が発揮できない場面も多く、相手に応じて攻守の割合を出し入れする判断力が向上すれば、打ち合いでも盤石なレベルに達することができるはずだ。

巨大な威圧感で相手を蹴散らすツアー最高級のサーブ

 エースを量産する迫力十分の強力なサーブは彼の最大の武器で、ツアーでもトップクラスのサービスゲームを構築しているが、特にその強さはピンチの場面で最大限発揮される。大きな前後の体重移動がパワーの源で、同じフラットサーブでも200km/h前後から220km/h超までスピードをコントロールしながら打つが、193cmの長身に加えて長い腕を持ち、さらにはトスをかなり前に上げるため大きな角度が生まれ、相手に対して巨大な威圧感となっている。攻めの姿勢は2ndになっても同様で、ダブルファーストを選択することもしばしばあり、それゆえダブルフォルトが多いというネガティブな面もあるが、リターン巧者にプレッシャーを与えるうえでは非常に有効な作戦となっている。また、コーナーをピンポイントで狙いながらも1stの確率が概して高いのも特徴で、それを担保しているのが乱れることのないバランスの良いフォームと安定したトスアップであり、力強さと精度の高さを両立できる要因だ。そしてもう1つ言及しておかなければならないのはアンダーサーブの「発明」だろう。モーションの中でラケットを下ろし上半身が前に屈んだタイミングでさらりと下から打って浅い位置に落とす。例えばナダルのようにリターンで大きく下がる相手に対しては不意を突く意味でも、また純粋にエースを奪う1つの手段としても非常に有効だ。彼がやり始めたことで徐々にツアーに流行の波が到来し、いまやアンダーサーブを奇策や卑怯な戦術と指弾する声も減ってきた。気掛かりな点があるとすれば、ポイント間にかける時間が一定しないことで、おそらく本来は短時間に抑えてテンポ良くゲームを進めたいタイプなのだろうが、最近は緊迫してくるとタイムバイオレーションをとられるシーンも見られる。集中力の継続に課題を抱える彼だけに、その1つの解消法としてルーティンを大切にするのも手ではないだろうか。

センスに基づくアイディア豊富なリターン

 リターンはまだまだ粗削りな部分が多く、スタッツの面で特筆すべき数字もないが、ビッグサーバーの高速サーブに早いタイミングでラケットの面を合わせて返球するセンス、大きく下がって打ち返した時のパワー、加えてフェデラーのSABRに近いリターンダッシュを試みてみたりという豊富なアイディアなど、技術的には高いものを備えており、結果としてブレークを奪えなくても十分に相手に脅威を与えている。

痺れるような駆け引きを楽しむメンタリティ

 彼が未来の王者の有力候補とされるのは、すべてのプレーを武器にできる多彩なテニスを持つだけでなく、トップとの対戦や大事な局面で、硬くならず最高のプレーを出せるタフなメンタルと高い集中力が評価を得ていることが理由にある。トップ5級を相手にしてもまったく物怖じすることなく、自らの勝利を信じて疑わないふてぶてしい態度とオーラは生意気にも映るほどだが、デビュー間もないウィンブルドンでのセンセーションはベッカーの再来と絶賛された。接戦の中で突出したサーブ力によりペースを譲らない、ペースを引き戻すところに凄さを感じさせ、痺れるような駆け引きを次々と挑んで相手の精神的攪乱を狙う戦略も極めて頭脳的だ。見た目の通り、エンターテイメント性を重視する派手な性格によりプレーの質は気分次第というところで、出入りに激しい部分もあるが、そうした若さも含めて彼の魅力といえる。ただし、トップに定着することを考えるならば、徐々にそうした点は払拭していかなければならず、特にリードされると急にエネルギーが底を突き、勝ちへの執着心が一気に薄れて試合を棄ててしまう傾向はいち早く治したい。また、相手との勝負とは関係のないところで苛立ちを募らせた末に、感情を爆発させ冷静さを失うのは非常にもったいない。「普通」であることを極度に嫌がり、プレーだけでなく人格や振る舞いも含めて他人とは常に違うことをしていたいという渇望は、それ自体アスリートとして決して悪いことではないが、それも結果が伴って初めて説得力を持つものである。彼自身もこのあたりの問題にどう対処していいのかわからない様子なだけに、厳しい目をもって強烈に指導できる存在があればいいのだが。まずは彼自身がコーチをつけることに対して前向きな姿勢を示してほしい。

精神面での成熟とプロ意識の向上を

 課題はポテンシャルの高さに対してフィジカルがついてきていない点で、大会に出ては一定期間休みを置くことを繰り返しているのが現状。この先数年で過酷なツアーを戦い抜く身体を作っていけるかが彼のキャリアを左右しそうだ。仮に怖いもの知らずのプレーが続けられるうちにフィジカルが完成され、ツアーで上位を賑わすようになってくれば、トップ10入りもそう遠くはないかもしれない。しかし、オンコート、オフコート問わず態度の悪さが問題になることが多く、審判や相手プレーヤー、観客への卑劣な暴言やラケットを放り投げる乱暴行為など、すべての人間に対して敬意を明らかに欠いた言動は個性というものを履き違えているとしか言いようがなく、擁護の余地がない。疲れも含めたコンディション不良で自分に対する不満を募らせたり、パフォーマンスが落ちるのは仕方のないことだが、だからといって無気力で試合を放棄する姿勢は許されない。ATPは彼に多大な期待を寄せており、だからこそ不適切な振る舞いにつき16年終盤には彼に対して出場停止という苦渋の宣告を言い渡した。このままでは特大な才能が台無しに終わってしまう可能性もあり、精神面での成熟とプロ意識の向上が求められる。