Radek Stepanek
生年月日: 1978.11.27
国籍: チェコ
出身地: カルビナー(チェコ)
身長: 185cm
体重: 76kg
利き手: 右
ウェア: ALEA
シューズ: NIKE
ラケット: HEAD Prestige MP
プロ転向: 1996
コーチ: Petr Korda
サーブ&ボレーを多用するなど一時代前のネットプレーヤーに近いスタイルを持つ現役では数少ないプレーヤーの1人で、これまで長きに亘ってトップレベルでの活躍を続けている大ベテランにしてツアー屈指のテクニシャン。元々は主にダブルスプレーヤーとしてキャリアをスタートさせたが、20代後半になってシングルスでも結果が出始め、04年パリマスターズで予選勝ち上がりからファイナリストになって波に乗ると、06年にロッテルダム(500*)でのツアー初優勝やハンブルクマスターズでの決勝進出、ウィンブルドンでのベスト8などの活躍によって最高8位まで躍進した。近年は主戦場を再びダブルスに移しつつあるが、シングルスでもまだまだ油断のできない強豪である。ダブルスでは本格的な取り組みを再開した12年以降パエスとのペアでグランドスラムを2度制覇するなど、スペシャリストらしい実力を発揮している。大会を通してとなると年齢的な壁も感じさせるようになってきたが、12年、13年と2年連続で母国チェコのデビスカップの戴冠に単複で大きく貢献したことが示す通り、短期決戦、あるいは試合単位での切れ味に衰えはない。薄めのグリップでボールを呼び込んでから放つカウンターや、繊細なタッチで繰り出すドロップボレー、スライス回転を巧みに操りながら時間を作りネットに詰めていく縦の動きの鋭さなど、やや古風ながら硬軟織り交ぜた正統派なテニスを持ち味とする。サービス精神も旺盛で、試合中にコミカルな動きで観客を楽しませるエンターテイメント性も魅力の1つだ。チェコの伝統に則り、またプレースタイル的にも速いサーフェスである芝やハードを得意としているが、技術的な奥深さを持つ彼のテニスはいかなる条件下でも侮れない。
技術と戦術とポジション取りが光るクレバーなストローク
ネット際での勝負を好むが、決してストロークが弱いわけではなく、ベースラインで粘り強く戦えるだけの技術とメンタルも十分に備える。薄い握りからボールを運ぶようなスイングのフォアハンドと、コンパクトに押し出すようなスイングのバックハンドを持ち、両サイドともに絶対的な武器とはいえないものの、甘い返球に対してステップインする瞬時の判断力や巧みなコース変更の技術を活かし相手の予測を外したフラット系の強打を繰り出すなど、トップレベルでも打ち負けない強さがある。両サイドともに逆クロス気味に放つダウンザラインを得意とし、高い決定力を誇る。また、バックのスライスを多用しながら浮き球を誘い出してフォアの高い打点から叩き落とすのも1つの形だ。打点が比較的後ろにあり、ギリギリまで引きつけて打つことができる懐の深いフラット系のストロークはコースが読みにくく、それでいて一気呵成にネットラッシュを仕掛けてくるため、相手としてはペースを掴むのが難しい。さらには、ストロークの打ち合いに勝ち目がないと見れば、多少強引にでもドロップショットを使って前に誘き出す攪乱戦術も有効な手札としている。そして、それらすべてのベースを構成しているのが卓越したラリー中のポジション取りだ。一球一球で無理をしないことで適切に陣地を守り、下がりすぎない位置でカウンターを狙いながら常にネットを窺える態勢をキープする。このクレバーさが彼のベースラインでのプレーの大きな鍵である。
随一のタッチ感覚で操る強くも柔らかいネットプレー
ストローク戦でも強さを見せる一方で、やはり基本的にはショートポイント志向が強く、果敢なネットプレーが彼の最大の武器といえる。ラリーから一本の鋭いショットでスイッチを入れて突進するネットプレーに加え、サービスダッシュやポジションを上げたリターンからのネットへの仕掛けなど様々な形でネットにつく事実は、彼のネット勝負に対する自信の証であり、実際に反応の速さやボレーのパンチ力、あるいはアングルに確実に落とすタッチの感覚はツアー随一。ボレーの際ラケットの面をあまり動かさないため、相手はコースが読みにくいのが技術的な特徴である。意図的に打ったアプローチからだけでなく、相手がスライスを構えたり体勢を崩した瞬間に猛然とネットに詰める姿勢も、対戦相手にとっては大きなプレッシャーだ。近年ダブルスに軸足を移したことも助けて、その完成度はさらに増している。
常に相手の嫌がるプレーを選択する狡猾さ
相手の逆を突くうまさや、ネットを取る絶妙なタイミングとそこでの駆け引きなど、これほどまでに相手を翻弄できるのは豊富な経験とダブルスでの実績があるからこそ成せる業で、ありとあらゆる技術を駆使して常に相手が嫌がるプレーを選択する狡猾さにはテニスが強くなるヒントを感じずにはいられない。さらに彼の試合巧者ぶりが窺えるのは、1ポイントごとにガッツポーズを作って気合いを内外に見せつけつつ、観客を煽りながら会場の雰囲気を味方につける試合運びだ。30代後半にしていまだに目の前の試合に対して勝利への執念を失っていないことについては、それ自体大いに敬意を表されてしかるべきである。
かつての正統派は現代の曲者
正統派であったはずのステパネクのテニスも、ストローク全盛の現代となってはまさに曲者。しかし、そのことがツアーでの独特の存在感を放つ要因ともなっている。キャリアも晩年に差し掛かっているのは間違いないが、テニスを楽しんでいるのを見る限りまだまだ身を引く考えはないようで、今後の活躍にも期待が持てそうだ。