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Bernard Tomic

バーナード・トミック

 生年月日: 1992.10.21 
 国籍:   オーストラリア 
 出身地:  シュツットガルト(ドイツ)
 身長:   196cm 
 体重:   91kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  Mizuno 
 シューズ: Mizuno 
 ラケット: HEAD Radical MP 
 プロ転向: 2008 
 コーチ:  Sara Tomic  

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 懐深くから球筋の読みにくい独特なフラット系のショットとスライスをコート奥に辛抱強く配球しながら、巧みにカウンターチャンスを生み出し、浮いたボールを強打で攻める、ストローク主体の変則的なプレースタイルを持つ長身プレーヤー。ジュニア時代から将来のオーストラリアを背負う存在として期待され、当時16歳にしてワイルドカードにより出場した09年全豪で1回戦を突破し大会史上最年少勝利記録を更新するなど、周囲の声に応える形で10代の頃からツアーで結果を残してきた。ツアーレベルを主戦場とし始めたのは11年で、それでも十分に早い本格化といえるが、すでにその年のウィンブルドンダビデンコやソダーリングといった上位シードを下してベスト8を記録したことが彼の才能の大きさを物語る。怪我の影響もあって一気にトップへということにはならなかったが、13年にシドニー(250)でツアー初優勝を果たすなどまずまず着実に成長を遂げている。本人曰く、必要ならパワーにものを言わせるテニスもできるそうだが、テニスセンスに溢れ多彩なショットを持っているせいか、若さに似合わず老獪な駆け引きを使う技巧派としての顔の方が強く出ている。そうした技術力に優れたテニスが最も生きるサーフェスは芝であるが、彼自身が得意としている以上に、相手が芝における彼のテニスを嫌がっている印象の方が強い。また、グランドスラムなどの大舞台や地元開催でより力を発揮する傾向にあり、この歳にしてプレッシャーを味方につける術を習得している点も、ファンの期待が高まる要因である。

技術・戦術どこを切っても特殊な唯一無二のフォアハンド

 フォアハンドはテイクバック、ボールの軌道、ショット選択などすべてにおいてツアーで唯一無二ともいえるショットで彼の最大の武器となっている。スイングの鋭さはそれほど感じられず、むしろゆっくりと振っているようにすら見えるのだが、手首のスナップをうまく使ってボールに伸びとスピードを与えている。明らかに個性的なショットではあるが、向かってくるボールの軌道に早めにラケットを入れて線で捉えるという確実性の観点や、あるいは打球時の脱力の観点で見ると、お手本にしたい打ち方ともいえ、癖の強さの裏面にありがちな弱点を炙り出しにくい点が相手目線では試合を難しくさせる。繋ぎや組み立ての段階では、緩いスイングで様々な回転を自在に操りながら的確に広角に打ち分け、相手がしびれを切らして無理をしてきたところで、逆にカウンターを仕掛けてポイントに結びつけるのが彼の形。繋ぎのショットがまさに曲者で、相手が全力で強打してきたボールを無力化するように無回転に近いボールをベースライン深くに返球したり、バックサイドからはことごとくスライスを続けたりして、相手のミスを誘発させる。一方、相手の虚を突く巧みな判断も光る強打の質も高く、距離を長く取れるクロスコート、とりわけ大きく回り込んでの逆クロスは不十分にも見える体勢からでも精度の高いショットを繰り出し、ウィナーに転換してしまう。たとえ一本で決まらなくとも上から被せるような独特のスイングから繰り出されるボールはシュート回転がかかっており、相手とすると対応に手を焼くショットであることに変わりはない。また、グリップチェンジをせずに厚いグリップのまま放たれるサイドスピンを効かせた独特なドロップショットも精度が高く、一部ではその彼固有の技は”Fade-away Dropper”として親しまれており、試合のどの場面で飛び出すのかは見どころの1つだ。

相手のショットを吸収して散らすスライスが武器のバックハンド

 バックハンドも本人が最も得意と話す低く滑るスライスを軸に、相手に難しいボールを打たせて徐々に攻撃チャンスを作り出すうまさが際立つ。スライスでアンフォーストエラーを犯すことはほぼ皆無で、しっかりと相手のショットを包み込むように吸収して何ともいやらしいコースに散らしていく。ただし、スライスのキレ自体は鋭く、スライスの打ち合いではほとんど負けない一方で、テイクバックが早く大きいため、相手に慣れられるとボレーでカットするなどの策を講じられて、歯が立たなくなる傾向がある。ゆえに、最近はスライスの割合を若干減らして戦っている印象があるが、強打の質も水準以上のものを持っており、新たな一面を見せている。また、バックに限らず13年からはチャンスではできるだけ強打して攻めていく本格派のテニスへと変貌を遂げつつある。より身長を活かすテニスになったと言うこともできるかもしれない。

豊富な技を駆使した老獪な駆け引きで崩す技巧派テニス

 パワーテニスが席巻する今の男子テニスにおいて、彼のように豊富なショットを駆使した緩急で相手のリズムを狂わせて勝っていくプレーヤーは稀である。ラリーの中で何気なく打っているように見えて、いつの間にかトミックのペースになっているというのが彼の強みであり、タイミングの取りづらさを物語っている。対戦相手としては自分がフラット系の速いショットを打てば打つほど良いショットが返ってくるため、トミックに先に打たせるような配球を交ぜていかなければ苦しくなる。ただし、様々な球種やコースを使いながらじっくりと組み立てていくテニスは、多くのプレーヤーにやりにくさを覚えさせる一方で、特定のトップとの対戦ではショートカットされてポイントを失うケースが目立つ。この勝ち味の遅さを解消しなければ世界の頂点への道のりは険しいと言わざるを得ない。

エースも量産できる安定したサーブ

 低いトスからクイックモーションで繰り出すサーブも、ストローク同様コースを隠す技術に優れ、派手さはないもののビッグサーバー並のエースを量産していく。また、確率の高さやダブルフォルトの少なさも特筆に値し、そう簡単には崩れることのない安定感を誇る。

才能任せを脱却し球際の粘り強さが欲しい

 ボールに対する優れた予測能力や他の大型プレーヤーにはない小刻みな足運びなど、トップを目指すうえでの明るい材料をすでに備えている一方で、球際の粘り強さに欠ける点は現状大きな弱点となっている。力ではなく技を駆使して辛抱強く崩す今のスタイルを続けていく以上、緩慢なフットワークというのは致命的で、最終的には体力勝負ともいえる根比べのようなラリー戦で勝ちを拾っていきたいのであれば、その戦術とのバランスでは機敏に動く意識を徹底したいところだ。元々重心を下げてショットの精度を高めるタイプではなく、長いリーチと繊細な手の感覚によって手先だけで打つのが彼にとっては当たり前で、それでどこにでもコントロールできてしまうのだからものすごいセンスと言うほかないが、良い意味で才能任せを脱却ししっかりと打点に入るフットワークを身につけることによって、より攻撃していける場面が増やせるだろう。

大人の自覚を持って「テニス界随一の問題児」からの卒業を

 性格的な問題なのか、貪欲さに欠けるきらいは以前からあったが、劣勢になるとあからさまに試合を投げるような態度を見せたり、謙遜や他人への敬意というものを知らない自信過剰な発言、オフコートでの警察沙汰などによって幾度となくファンや関係者の顰蹙を買ってしまい、オーストラリア国内ではそれまで彼を庇ってきたデビスカップチームからも見放されかけた。これらは若くして注目されすぎた反動ともいえるが、真面目にテニスに取り組まなければ恐ろしい回り道になるという自覚が要求されている。キリオスらさらに若い世代の台頭で尻に火がついたのか、14年後半あたりからは一皮剥けたようなハイレベルなパフォーマンスで存在感を取り戻し、エースとしてチームを牽引するデビスカップでは頼もしささえ窺えるようになった時期もあり、その姿勢に対しては過去に彼のことを叱った同胞の先輩ヒューイットも肯定的な態度を示していた。しかし、根の部分は全く変わっておらず、17年には「テニスに飽きた」と発言し、以後ツアーからはほとんど姿を消している。こうした”悪行”は枚挙にいとまがなく、本人に悪びれる様子もない中においては、国内外を見渡しても彼を擁護する声などもはや皆無だ。とにかくまずは精神面で成熟しテニスに真剣に取り組む姿勢で周囲の信頼を獲得したうえで、「若手」からは卒業となる今後数年のうちにインパクトのある活躍を期待したい。