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Ivan Ljubicic

イバン・ルビチッチ

 生年月日: 1979.03.19 
 国籍:   クロアチア 
 出身地:  バニャ・ルカ(ボスニア・ヘルツェゴビナ
 身長:   193cm 
 体重:   92kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  LI-NING 
 シューズ: LI-NING 
 ラケット: HEAD Extreme Pro 
 プロ転向: 1998 
 コーチ:  Riccardo Piatti 

f:id:Kei32417:20200429151810p:plain ツアー屈指の完成度を誇る強力なビッグサーブを武器とする一方で、頭脳的な戦略と秀逸なテクニックが前面に出た技巧派寄りのテニスを強さのベースとする個性豊かな元No.3のベテランプレーヤー。トップへの上昇気流が生まれたのはリヨン(250*)で当時No.1のクエルテンにサフィンとビッグネームを薙ぎ倒して鮮烈なツアー初優勝を飾った01年だった。以降しばらくは中位安定の存在であったが、05年に持てる実力を最大限に発揮しツアーで3番目に多い8度の決勝進出、その後およそ2年間トップ10の座につくきっかけとなった。そのシーズン終盤にメス(250*)、ウィーン(500*)の2週連続優勝で乗り込んだマドリードと直後のパリではいずれも決勝でフルセットマッチに敗れ、06年マイアミでも決勝で3連続タイブレークセットを落として敗れるなど、幾度もマスターズのタイトルに迫りながらあと一歩のところで逃してきたが、30歳を過ぎ明らかに停滞期に入っていた10年インディアンウェルズ(1000)でナダルジョコビッチロディックなど上位シードを次々に撃破して悲願のマスターズ初優勝を果たし、テニスファンに驚きを提供するとともに、まだまだ健在であることをアピールした。04年アテネ五輪ではアンチッチと組んだダブルスで銅メダル獲得、05年デビスカップではエースとして単複で無類の強さを見せクロアチアを初優勝に導いた経験なども持つ。最も得意なサーフェスハードコートで、とりわけインドアで球足の速い条件では勝率が大幅に跳ね上がる。また、長期に亘りATPの選手委員会の代表を務め、ツアーの改善に努めるなど、テニス界全体への献身的な姿勢から関係者間でも厚い信頼を得ている。スキンヘッドの容姿や静かに戦う姿勢から一見怖い雰囲気もあるが、実際には物腰が穏やかで、また試合中にさりげなくお茶目な動きを見せることもあるユニークな人柄である。

エースを量産する破壊力抜群のクイックサーブ

 同胞の偉大な先輩イバニセビッチを鏡に映したようなフォームから繰り出されるサーブは彼の最大の武器である。1stは主に最速220km/hを超える強烈なフラットサーブとワイドに逃げるスライスサーブを厳しいコースにコントロールしてエースを量産する。前方へのトスアップとクイック気味のモーションがリターン側への圧力を増幅させる効果があり、攻略の糸口を見つけるのが非常に難しい。また、トップレベルでも群を抜くキレを誇るキックサーブはルビチッチの代名詞と言ってもよく、凄まじい回転量によって縦の高さはもちろん、右方向に横幅の変化を出した規格外の弾みを実現している。この球種をデュースサイドのセンター、アドバンテージサイドのワイドに的確に配球できることが、2ndになってもリターンから一方的に攻め込まれることの少ない要因であり、極めて高いサービスキープ率を誇る秘訣でもある。彼のテニスはビッグサーブ以外は案外堅実で安定感重視の面が色濃いこともあり、強さのメーターを規定するのがこのサーブの調子といえる。

老獪で優雅な「柔能く剛を制す」型のラリー戦術

 彼のラリー戦を一言で表すとするならば、それは間違いなく「老獪」だ。絶品の柔らかいタッチで操る緩急自在の戦術的なストロークによって相手の武器を封じる様はまさに柔能く剛を制す。両サイドともに“点”ではなく“線”でボールを捉える感覚に長け、運ぶようなしなやかなスイングの中で打点の前後を微妙に調整する能力を持つため、ボールの出所が見づらく、そこから多彩な手札を主体的に切っていくオールラウンドなスタイルで相手を崩す。大柄な体格とサーブの迫力に引きずられがちだが、その実は柔らかすぎて一発の決め手に欠ける側面や慎重な組み立てがむしろ弱みにも見えるほどに技術・戦術の奥が深く、優雅な印象を焼き付けられるのがルビチッチのテニスの実像だ。加えて、遅いスイングで捉えているように見えてボールは豪快というのが彼のショットの特徴かつ強みでもある。長い打ち合いではあまり無理をせずトップスピンを多めにかけたキック力のある重いボールを基軸に相手を後方に押し留めたり、長短のスライスを織り交ぜて揺さぶりをかける戦術を使うことが多いが、相手の予測をうまく外したタイミングで放つ意外性のある強打はサーブ同様に十分な破壊力を備えている。

組み立てからフィニッシュまで軸となる硬軟自在の片手バックハンド

 テイクバック段階ですでにインパクトの面を固め、肩の可動域の広さを活かして大きく振り抜くシングルバックハンドは、あまり手首の返しを使わず、右肩を支点に押し出すスイングでボールを長くラケットに乗せるクラシカルな打ち方が特徴であり、足運びも含めて左右の打ち分けにフォームの差がほとんどないのが強み。スピン、フラット、スライス、ドロップなど、バリエーション豊富なショットを広角に配球し、相手にリズムを掴ませない。その組み立てにおいて光るのは直線と曲線の軌道差を使い分ける感性。回転量というよりはラケットの面の作り方と力の加減による変化と見え、ループ系のショットから一転して踏み込んで強打でペースアップする形を確立している。フィニッシュの精度も申し分なく、近めの打点から糸を引くように放たれるダウンザラインには美しさを、高く弾む返球に対して鋭角に引っ張ってサービスライン付近に突き刺すクロスコートには豪快さを、それぞれ感じさせるウィナーは相手にとって脅威。また、片手打ちにとってはとりわけ重要と言われる正確なフットワークも持ち味で、優れた予測から早めに一歩を踏み出し、そこから無駄のないステップで最適な打点に向かう。比較的大きなフォームながら常にバウンドの上がりばなで打てる理由だ。劣勢時は相手のショットのパワーを跳ね返すことができず、当たりが悪くなったり全体的に浅くなったりといった傾向が見られる。真っ向勝負で不利な場合であっても、浅い位置に何気なくコントロールするカット要素が強めのスライスを駆使してネットに誘き出すなどの「プランB」があるのが彼の強さではあるが、やはりバックの攻防で打ち負ける試合はかなり分が悪いと見て差し支えない。

後方からの一発カウンターを隠し持つフォアハンド

 ゆったりと円を描くように大きくラケットを引いていくフォアハンドは、長いリーチを活かした遠心力でボールに威力を与えるのが特徴。クロスコートには重いスピンをかけてラリーで優位に立ち、回り込んで逆クロスにフラット系を叩き込むのが1つの形で、非常にメリハリのある展開が魅力となっている。また、ベースライン後方からでもウィナーが狙える、打点をかなり後ろに引き込んで懐深くからカウンター気味にオープンスタンスで放つストレートの強打も見逃せない武器である。ただし、基本的にフォアは彼の弱点であり、下から擦り上げるスピン系特化の打ち方との相性で、攻撃に転じる際に体重が前に乗りにくく、いまひとつ鋭さに欠ける面は否めない。

繊細な感覚で操るネットプレーも総合力の証

 深いストロークで相手を押し込めば、積極的にネットに出る展開に持ち込み、器用で繊細な手の感覚を活かした正確なドロップボレーで鮮やかにポイントを奪うことが多い。やや単調なアプローチでネットについてしまいパッシングの餌食になることもあるが、試合を通して前に出てプレッシャーを与えようという意識は常に持っており、ここにも一撃ではなく総合力で勝負する彼の志向が大いに窺える。

大柄の豪快さとベテランの老練さを兼備した稀少なプレーヤー

 ベテランならではの勝負勘からか、最近は執念を見せるポイントと諦めるポイントをはっきり区別して、効率の良い試合運びに移行している印象がある。それが淡白に映ることもあるが、普段はブロックリターンが多い中で突然フルパワーのリターンを打つなど、大事な局面でかなり思い切った戦術を使ってくることもあり、その読みにくさがある意味では不気味な雰囲気を醸し出している。キャリアの中でグランドスラムでは実力の割にほとんど活躍ができておらず、マスターズ決勝での残酷な敗戦も含めて5セットマッチの弱さや試合を締める部分での甘さがしばしば指摘されるが、豪快さと老練さを兼ね備えたテニスはツアーでも非常に稀少といえ、今後も強い存在感を放ち続けるだろう。

 

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