Nicolas Mahut
生年月日: 1982.01.21
国籍: フランス
出身地: アンジェ(フランス)
身長: 191cm
体重: 82kg
利き手: 右
ウェア: LACOSTE
シューズ: NIKE
ラケット: Wilson Blade 98 (16×19)
プロ転向: 2000
コーチ: Nicolas Copin, Nicolas Renavand
サーブ、リターン、ストローク、ネットプレーなどすべてにおいて無駄のない基本に忠実な技術力を備え、サーブ&ボレーを主体に据えた攻撃的なテニスを持ち味に高速系サーフェスで存在感を放つフランスのベテランプレーヤー。00年のウィンブルドンジュニアを制した経歴を持ち、プロに入ってからも実績が示す通りまさに“芝のスペシャリスト”としての地位を確立している。クイーンズでは07年にナダル、12年にはマレーを破る番狂わせを起こし、また相性の良いスヘルトーヘンボス(250)では13年、15年、16年に優勝を果たしているが、うち2度は予選からの勝ち上がりということで芝での強さについて彼のランキングはまったく当てにならない。キャリアとしてはダブルスでの実績の方が輝かしく、主に同胞のプレーヤーとペアを組んで多くのタイトルを獲得してきたが、とりわけエルベールとのペアで15年全米、16年ウィンブルドン、18年全仏、19年全豪を制覇してブライアン兄弟以来史上8番目となるチーム単位でのキャリアグランドスラムの快挙を達成、ランキングNo.1も記録した近年の活躍は目覚ましいものがある。一回り近く年の離れたエルベールをプレーでも精神面でも支えとなる姿も彼の魅力だ。また、10年ウィンブルドン1回戦イズナー戦で11時間5分に及ぶ史上最長試合を演じたことでも知られ、マウと聞いてテニスファンが真っ先に思い浮かべるのが間違いなくこの記憶である。なお、彼自身も後にこの試合のことを1冊の本に綴り出版している。
ネットプレーを絡める極めて高度なコンビネーション
余計な動きや力が入らないフォームから200km/h前後のフラットサーブを軸にセンター、ワイド、ボディへとコースを散らしながらエースを多く奪うサーブはそれだけでも大きな脅威となるが、それに加えてサービスダッシュからボレーで処理してショートポイントを生み出していくのが彼のパターンで、まずはリターンを返してストローク戦に持ち込むという展開を許してくれない点で、相手にとってはさらにプレッシャーが増している。ネットプレーではスライス系のインパクトでボールを低く抑えつつ、それでいてパンチ力も十分あるため、オープンコートに流せれば高い確率でボレーウィナーとなる。ある程度ネットからの距離が遠い位置からでも確実なハイボレーを使える技術力により、一球の浮き球を見逃さずにボレーカットに入る場面が目立つ。一方で、長身ながら足元に沈んでくるボールへの対応にも優れ、そう簡単に相手にチャンスボールを与えないのが強みとなっている。ネットへの意識という意味では、リターンゲームでも非常に積極的にアタックしていく姿勢が際立ち、特に2ndに対しては大きくベースライン内側に入ったところから軸となるチップ&チャージのほか、ストレートへの強烈なリターンエース、ステイバックと見せかけてタイミングを遅らせて前に詰めるなど、奇襲的ではあるが有効な手段を多数持ち合わせている。
先に仕掛ける形を巧みに作り出す丁寧なストローク
ストロークは常に膝を折って低い姿勢をキープしながらボールを打ち抜いていくのが特徴で、この能力が芝での強さを生んでいる要因の1つでもある。テイクバックの時点でインパクトの形を作っておくことでミスのリスクを軽減しているフォアハンドは、コースを打ち分ける中で足の長いショットが深く突き刺さっている時にはラリーを優位に展開できる。シングルハンドのバックハンドはスライスが基本でスピンやフラットの強打がアクセントというタイプであり、技術的にも相手のボールの威力を利用して軽い振りでブロック気味にカウンターを取るショットを得意としている。ネット勝負を身上とすることもあり守備に回って強いプレーヤーとは言い難いが、その分先制攻撃の形を作り出す感覚や相手の意表を突く判断力、粘り強い返球から駆け引きの中でネットを取る巧みな戦術などを十分に武器として機能させており、相手とすると打ち合いでは繋ぐだけでなく少なからず攻め込んでいく必要がある。
一打の緊張感に包まれる試合展開はシングルスでも軽視禁物
ツアーでは残り少なくなった純正に近いネットプレーヤーであり、根比べ的なベースラインでの戦いが主流になった今、一打の緊張感に満ちた彼の試合はまた一味違ったスリルが楽しめ、逆に新鮮ささえ覚えさせる。年齢を考えれば今後より軸足をダブルスに移していく可能性が高いが、シングルスでも軽視できない存在として注目していたいプレーヤーだ。