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Carlos Alcaraz

カルロス・アルカラス

 生年月日: 2003.05.05 
 国籍:   スペイン 
 出身地:  エルパルマル(スペイン)
 身長:   183cm 
 体重:   74kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: Babolat Pure Aero VS 
 プロ転向 : 2018 
 コーチ:  Juan Carlos Ferrero 

 強力なフォアハンドを軸とするテンポの速い攻撃的なストロークでベースラインの勝負を制し、さらにはドロップショットなど小技系統による仕掛けにも抜群に優れるスペインの超逸材プレーヤー。彼の持つ才能が破格であることは16歳でのツアーデビューやチャレンジャーレベルでは物足りないと言わんばかりの成績に明らかであったが、21年に本格的にツアーに殴り込みをかけると全米でNo.3のチチパスを敗退に追いやる鮮烈な活躍を見せてベスト8に進出、そして18歳で迎えた22年にはマイアミ(1000)とマドリード(1000)でマスターズ優勝、全米でグランドスラム初優勝を飾るとともに、ヒューイットの持つ記録(20歳9か月)を大幅に塗り替える史上最年少19歳4か月でNo.1到達の快挙を達成と、止まることを知らない成長スピードは衝撃の一言だ。特にマドリードでは準々決勝でナダル、準決勝でジョコビッチを撃破し、この二大巨頭をクレーの同大会中に破った史上初のプレーヤーになる偉業を成し遂げた。全米も3試合連続で深夜のフルセットマッチを勝ち抜いた道程など驚くべき心身の強さを証明した大会であった。近年ようやく世代交代の様相も見え始めたATPツアーの中でもとびきり若い彼が一気に世界を席巻するかのようなセンセーショナルな雰囲気を醸している。また、18歳2か月で獲得した21年ウマグ(250)での初タイトルは08年デルレイビーチの錦織圭以来の若いチャンピオンということでも話題になった。伝統的な強豪国スペインからの人材という意味では、実はナダル以来途絶えていた大器が約20年の時を経てついに台頭してきたと言っていいのだろう。プレースタイルとしてはベースラインを中心としながらもストローク偏重ではなくネットにも積極的に仕掛ける攻撃型のオールラウンダーであり、ストロークに限っても何でも強打するのではなく回転やコースを使い分けながら機を見てウィナーを狙う戦術思考の強さが堅い実力の要因となっている。もちろん鍛え抜いた大きな肉体から放たれるショットそれ自体の質も一級品で、パワーとスピードが魅力であることは言うまでもない。そうしたテニスの型、およびハードコートでの強さが本来得意なクレーコートと同等である特徴からしても、同じスペインの先輩格ではナダルよりもフェレーロやモヤの系譜といえる。

驚愕のスイングスピードで相手を蹴散らす脅威のフォアハンド

 驚愕のスイングスピードと爆発的なショットスピードを備えながら、スピン量や軌道や緩急の状況に応じたコントロールにも優れるフォアハンドはアルカラスの最大の武器である。屈強な下半身で広めのスタンスをとって踏ん張ることで体の軸を極めて安定させ、上体はしっかりと捻ってコースや球種を隠し、肘を伸ばして前方の打点をとるフォームを特徴とし、これはボールに最大限のパワーを伝えるとともに、テンポの速い攻撃的なテニスを実現する鍵ともなっている。第一に強調すべきは打ち合いの基本となるクロスラリーにおける凄まじい破壊力。後方からラリーを開始しても一本打つたびに斜め前にポジションを上げながら相手を追い詰める。呼吸を整える余裕を与えずに当たりの厚い打球の球威で畳み掛け、クロスコート単体でウィナーにまで繋げられる攻撃力は脅威そのものだ。駆け引きの中であえてフォア側のスペースを広めに空けておき、そこに打たれるのを待ち構えて大股のステップでボールに飛びつきながら放つカウンターショットは一撃必殺と称するにふさわしい。相手はその正面突破とも言うべきクロスのスピードラリーに対抗するのが精一杯であり、さらに隙と見るや即時ストレートを狙う展開の速さを見せられては置き去りを食らうのも無理はない。また、回り込みフォアによる崩しからフィニッシュの形も洗練されている。特にこのサイドの逆クロスではループ系のトップスピンや浅いアングルを突いて相手を走らせる意図が強く見てとれ、確実なチャンスボールを巧みに引き出してから100mph超の豪快なウィナーを叩き込む。回り込みフォアにおいて向かってくるボールに対して体を絶妙に逃がす動きのリズム感は非常にフェデラーを彷彿とさせる。そしてフォアの極めつけは忘れかけた頃に必ず交ぜてくるドロップショットの質の高さだ。逆クロス方向のネット前に勢いを殺して落とす繊細なタッチは驚異的で、ビッグポイントでも平然とミスなくポイントを締めることができる。万が一返球されても次を今度は鮮やかなトップスピンロブで仕留める形も十八番としている。

ライジングで捉える感覚が抜群のバックハンド

 前後の体重移動と鋭い体軸の回転を組み合わせて強烈なフラットドライブを安定的に繰り出すバックハンドも大きな武器としている。バウンド後のトップを捉える感覚が抜群に優れ、アングルクロスやダウンザラインに目にも留まらぬウィナーを突き刺していく。守備に回った際の対応力もすでにトップクラスであり、開脚で強く踏ん張って強いボールを返すこともできれば、やっとラケットが届くようなピンチをスライス返球でイーブンに戻すプレーなど片手バックハンドのプレーヤー顔負けのうまさも見せる。ダウンザラインはコートの外側から入れる軌道を得意とし、一方で中央寄りからやや逆クロス気味にコースを狙う場合は少し精度が落ちるが、これもすぐに改善されてくるだろう。

洗練されたフットワークが精密なストロークの秘訣

 ベースラインのストローク戦での圧倒的な強さの秘訣としてフットワークを挙げないわけにはいかない。ボールの軌道を予測して最適なポジションと打点に入る動きが非常に滑らかで正確であることが、厳しい局面でも高精度のショットを打ち続けられる要因だ。コートを縦にゾーン分けし自分の立ち位置によって攻撃と守備のショットを適切に使い分けるスペイン仕込みの戦術眼も十二分に身につけており、たしかに獰猛で烈しいプレースタイルではあるものの、実は1つ1つのプレーに無謀な判断は見られない。

守備に頼って迫力が消えては試合は暗雲

 むしろ理詰めの展開を意識しすぎるあまり消極的なプレー姿勢が現れることがある点が課題といえる。類稀な運動能力を攻撃に還元したテニスこそが彼の真骨頂である。たしかに一見不可能なボールに並外れた脚力で追いついて逆襲するコートカバーリングは驚嘆に値するが、それに頼る雰囲気が出ると彼本来の良さは隠れてしまう。ましてやロングラリーを嫌がって両サイドからドロップを連発した挙句、その失敗が増えてきた時は試合の雲行きが怪しいと見ていい。迫力の灯は絶対に消してはいけない。これが最重要のテーマだろう。

ネットプレーのクオリティも申し分ない

 旺盛な攻撃意欲の自然な帰結として高い頻度で敢行するネットプレーも彼のテニスに欠かせない要素の1つだ。相手をスピードで振り切りにかかったフォアのストレートやバックのクロスとのコンビネーションで前に詰めることが多く、その出色のダッシュ力により1本のボレーで決め切ることができる。難しい対応を強いられても、アングルに短く落とす柔らかいタッチボレーや強く叩くスマッシュの技術力も申し分ない。

読まれても攻略させないキックサーブには絶対の自信

 全身のバネを大きく使いながらも乱れることの少ない効率的なフォームから戦術的に多彩なパターンを使うサーブも特徴的だ。絶対的な信頼が置けるのは、特にアドバンテージサイドで配球の中心に据える強烈なキックサーブである。時折サーブの立ち位置をサイドライン側にずらすこともあり、相手からすればある程度外に弾ませる球種を張って準備するのだが、それでも彼のサーブの圧倒的なキック力はそう簡単に攻略されることがない。トッププレーヤーの条件とも言われる2ndの高いポイント獲得率を実現している要因だ。このワイドキックとデュースサイドのスライスサーブを駆使してサーブ&ボレーでシンプルにポイントを量産できるのも大きな強みとなっている。最速で220km/hにも届くフラットサーブをすでに備えていることを考えれば、そのパワーサーブをいかに高確率でラインに乗せてエースの数を増やしていけるかが今後の課題となるか。決して威力だけに頼ったサービスゲームを遂行しないことが長所といえるが、ツアーの頂点を見据えると最も伸びしろが計算できるのはサーブだろう。

確実性と一撃の決定力を兼備するリターン

 高いブレーク率を誇るリターンゲームの強さもトップへの躍進・定着の原動力となっている。1stに対してはベースラインから3m以上下がったポジションをとるが、力があるためしっかりとスイングをして球威のある返球を深い位置まで飛ばすことができる。後方からの確実性重視のリターンが基盤にあるだけに、コートの内側に踏み込んで早いタイミングで捉える2ndリターンは、実際以上に距離を詰められた威圧感をサーバーに与える。逆に悪い時には目一杯下がって打ったにもかかわらず、それが大きく抜けてロングするミスを繰り返す傾向がある。2ndに対して下がる戦略の有効性を過信せず、可能な限り前で叩くことに徹してほしい。

王者の称号に値する強靭なフィジカルと不動のメンタル

 チャンピオンの資質を計るうえではテニスの技術的な能力以上に重要なのが身体の丈夫さと勝負強さであるが、若さに似合わぬ強靭なフィジカルと全く動じぬメンタルこそまさに彼の強さの真髄である。すでにトップ5級の実力者といくつもの名勝負を演じているが、ティーンエイジャーの時期から肉体改造に取り組んで手に入れた見るからに分厚い身体はスタミナ面で劣勢に立たされることはなく、試合の痺れる場面で弱気を覗かせるようなこともほとんどない。また、コート上でネガティブな感情を表に出さないのも成熟した一面である。

GS複数優勝&No.1君臨を断言したいほど非の打ち所がない超逸材

 コートを所狭しと駆け回る機動性、規格外のストロークを打ち続ける速射性とその精密性、創造力に富んだ技術と戦術の多様性、度胸満点・大胆不敵なメンタリティ。どこを切っても能力に非の打ち所がない完成されたプレーヤーがアルカラスだ。その才能に惚れ込んで自ら指導を志願したという元No.1のフェレーロがバックアップする体制は心強く、また今や倒すべきライバルの1人とはいえナダルという最高のロールモデルが近くにいて、プレーはもちろん不屈の闘争心やトップの心構えを肌で感じられるのも強みである。練習熱心で素直な青年であると言われ、人間性の面にも難はない。勝負の世界に予断は禁物だが、それでも彼は間違いなくグランドスラムを複数回獲りNo.1に君臨すると断言したいほど衝撃的な実力を持っている。少し上の有望な世代を一気に追い抜くように実績を積み上げる活躍は「アルカラス包囲網」の形成を促す可能性もあるが、それを突破してさらなる進化を遂げる過程も大いに楽しみたい。