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Mischa Zverev

ミーシャ・ズベレフ

 生年月日: 1987.08.22 
 国籍:   ドイツ 
 出身地:  モスクワ(ロシア)
 身長:   191cm 
 体重:   88kg 
 利き手:  左 
 ウェア:  adidas 
 シューズ: adidas 
 ラケット: HEAD Speed MP 
 プロ転向 : 2005 
 コーチ:  Alexander Zverev Sr.,
       Arthurs Kazijevs, Mikhail Ledovskikh 

 確率の高いキレのあるサーブから即座にネットに詰めて柔らかいタッチで操るボレーで勝負する、現代テニスでは実に珍しいレフティーのサーブ&ボレーヤー。分類としては間違いなくネットプレーヤーだが、対照的に徹底して守りを固める戦法も持ち合わせており、猛然とネットへ仕掛ける威圧的なスタイルから丁寧にコースを散らして相手の根負けを誘う老獪なスタイルまで、戦術の幅がかなり広いのが彼の特徴である。元々ジュニア時代にはマレーらとトップを争ったプレーヤーで、09年にはトップ50を経験しているが、その後怪我などもあり長く低迷の時期に入り、15年にはランキング喪失の危機にも瀕したが、ちょうどその頃からツアーでの活躍が見え始めた10歳年下の弟サーシャに刺激を受けたこともあり、ここに来て存在感を増している。これを復活というべきかブレイクというべきかは見方の分かれるところだが、いずれにしても16年秋以降の活躍は目覚ましく、上海マスターズ(1000)でベスト8、バーゼル(500)ではバブリンカを破ってベスト4、そして17年全豪では4回戦で果敢なネットプレーを貫き通した末にNo.1のマレーを撃破する衝撃のアップセットを演じ、自身初のグランドスラムベスト8に進出した。サーブ&ボレーを主体とするプレースタイルであるため、高速系サーフェスで強さを発揮する傾向にあるが、一方で読みの良さを存分に活かしたベースライン後方での堅いディフェンス力により意外にクレーでも勝てるタイプのプレーヤーである。

一級品のネットプレー、距離の詰め方が自身の証

 彼のテニスにおける最大の武器にして、最終的に自分からポイントを取る形としては良くも悪くも唯一と言ってもいいのがネットプレーであるが、それだけにやはり技術力の高さは一級品である。足元に鋭く沈んでくるパッシングショットを浮かさずに処理する1球目のローボレーやハーフボレーの質がまずは非常に高く、またその後にネットとの距離を極端に詰めることによって相手へのプレッシャーを増すとともにボレーの決定率も高めている。当然頭上を抜かれる可能性や強烈なパスにラケットが弾かれるリスクも上昇するが、相手のフォームを見極めた鋭い読みと反応の速さに驚異のタッチ感覚が加わってまさに壁の如き連続ボレーで跳ね返す。フレーム気味の当たりでネット際に短く落ちるウィナーが多いのも、かなり前のポジションに立つ彼ならではの特徴といえる。

美しいフォームから得意のネットに繋げる確率の高いサーブ

 ネットプレーとの関連では体を反るフォームやスイングの形が非常に自然で美しいサーブも武器の1つで、特に左利きの有利さを活かしたワイドに切れていくスライスサーブからネットに出るアドバンテージサイドのコンビネーションは、リターン側とすれば読んでいてもポイントに結びつけるのが難しい。球種の軸はスライス系で、エースよりも確率を重視している面もあるが、それでもピンチの場面で確実に1stを入れて得意のパターンに持ち込む強かさは特筆に値する。ひとたびリターンのタイミングを掴まれると、ネットに走り出す姿が哀れに映るほど連続で横を抜かれサービスキープが覚束なくなることもあるが、彼自身が「自分にプランBはない」と話しており、こうした点も彼の個性と認識すべきだろう。

独特のいやらしさは隠れた武器と言って過言ではないストローク

  一気呵成のネットラッシュを主な得点源とする彼だが、ストロークにも対戦相手の調子を狂わせる独特のいやらしさを備える。一発のビッグショットは皆無で、ベースラインからのウィナーはほとんどないが、それだけに戦略は徹底されている。相手がバランスを崩さずに繋いでいる時には同じく繋ぎのラリーに徹し、ロングラリーを嫌がって無理に打ってきた瞬間に逆サイドのコーナーを突いてネットに仕掛けるのが彼のパターン。フォアハンドはほとんどテイクバックをとらずに飛んでくる相手のショットをラケットで“はたく”ように合わせるのが特徴で、あまり前へ踏み込まずオープンスタンスで対応するフットワークもあいまって、返球されるボール自体は非常に勢いに乏しいが、逆にそれが相手のストロークのリズムを崩壊させる。バックハンドはコントロールに優れる低く滑るスライスが中心で、これも自ら攻撃できない分を補うために相手に攻めることは許さないという一貫した戦術上重要なショットだ。スピンを打つのはカウンターやパスの際に限定されるが、その精度は十分な高さを誇る。ストローク全体を通して地味ではあるが凄さといえるのが滅多にミスを出さないという点であり、決してボールに威力があったり深さがあるわけではないが、多くのプレーヤー曰く各ショットのプレースメントが絶妙でとにかくやりにくいらしい。対ズベレフで鍵になるのは我慢強さと、一方で思い切ってサイドライン際を狙ったショットを判断良く繰り出していくことだ。したがって、とりわけカウンターを主体とするプレーヤーにとってズベレフのストロークは天敵といえるだろう。とはいえ、彼自身の課題としてやはりフォアの弱さは指摘せざるを得ない。特に打点直前の足運びがほぼノーステップで膝の屈伸を使った体重移動のタイミングもややずれているのが問題で、攻撃を意図したショットに力が伝わらず、相手にプレッシャーを与えるに至らないのでは苦しい。ところが、ここ最近はストローク力も強化され、フォア、バックともに絶妙なタイミングで斜め前に切れ込んで強打しウィナーを奪うシーンも増えており、特にクレーではネットプレーはここ一番に取っておき、かなり後方にポジションをとってラリー戦を挑み、カウンターチャンスを虎視眈々と窺う戦い方を選択するようになっている。

早いタイミングで合わせる攻撃的なリターン

 見逃されがちだがリターンのうまさも彼の強みで、特に1stに対して巧みにコースを読んでベースライン上で合わせるリターンは一打で相手を追い込めるスピードがあり、積極的なリターンダッシュ戦術を可能にしている。ストロークの際には弱点になりがちなフォアも相手のサーブに球威がある分早いタイミングで叩くと強烈なボールに転換され、相手に大きなダメージを与える危険なショットと化す。タイミングに加えて、自らの振りの鋭さを要する2ndリターンの質を高めることで、より相手へのプレッシャーを増していきたい。

絶滅危惧種のサーブ&ボレーヤーとしてツアーを賑わせてほしい

 コールシュライバーやマイヤーなどドイツは個性派のベテランを多く擁する印象があるが、コートのどのポジションで戦っても他には見られない特異なプレースタイルで渡り合う彼のテニスにも不思議な魅力が詰まっており、その意味では今後不気味な存在としてツアーを賑わせそうな雰囲気がある。センセーショナルな活躍で注目の的となったことで彼への対策の研究が進み、それがツアー全体に浸透してきた最近は勝ち星を減らしており、少し投げやりな態度を見せるなどメンタル的なエネルギー量が低下しているのが心配だが、コーチでもある両親の下、兄弟で切磋琢磨しながらツアーを回るズベレフファミリーの動向からは目が離せない。