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Karen Khachanov

カレン・ハチャノフ

 生年月日: 1996.05.21 
 国籍:   ロシア 
 出身地:  モスクワ(ロシア)
 身長:   198cm 
 体重:   87kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: Wilson Blade 98 (18×20) 
 プロ転向: 2013 
 コーチ:  Jose Clavet, Vedran Martic  

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 長身から繰り出すビッグサーブやフォア、バック両サイドから放たれる豪快なストロークウィナーなど、一発の魅力に溢れるスケールの大きな攻撃的プレースタイルを持ち味とし、“NextGen”世代の代表格としてATPもその将来を嘱望するロシアが生んだ新星プレーヤー。ツアーへの本格参戦を開始したのは16年だったが、ツアーレベルでの経験がまだほとんどなかったその年に成都(250)で格上を次々と撃破する快進撃を見せて初タイトルを獲得し、キリオスとA.ズベレフに続く同年の20歳以下での優勝者となった。その後、着実なスケールアップを経て18年後半に覚醒、パリ(1000)でのマスターズ初優勝はイズナー、A.ズベレフ、ティーム、ジョコビッチとトップ10を4連続で倒すなど、更なる飛躍を期待させるには十分すぎる見事な戦いぶりであった。彼自身としてはしっかりと間のとれるクレーやスローハードを得意とするが、破壊力抜群のテニスは芝や高速ハードでも乗せると怖いというタイプだ。

高い軌道の強烈スピンが相手の自由を奪うフォアハンド

 オープンスタンスの構えと脇を大きく開いてテイクバックを高くとった時にラケットの打球面が裏を向く独特なフォームが目を引くフォアハンドは、ベースライン後方からでもウィナーを量産できる爆発力を備えた強力な武器である。ラケットを引いてセットした状態を作りながらボールを追うのも彼の特徴で、状況を問わず常に長い溜めを作ることでコースを読ませない強みがある。高い軌道のボールが唸るような強烈なスピンによってベースライン深くに入っている時が好調の証で、こうなると相手は自由を奪われ防戦一方に立たされる。一方で弱点となっているのはスライス系の低く滑ってくるボールに対する処理で、最大限のパワーをショットに転換するために厚いグリップとダイナミックな打ち方を選択していることの弊害でインパクトの正確性にはムラが出てしまい、ややミスヒット気味の甘い返球が増える傾向にある。相手としては勇気をもって遅いスライスなどを交えながら左右に揺さぶり、彼が最も心地良くパワフルに打ち抜ける腰から胸にかけての打点を回避することがハチャノフへの有効な対策といえるだろう。また、比較的重心が後ろに残りがちなフォームであるため、深く厳しいボールを打たれると返球が抜けるように大きくオーバーしたり、逆に腕だけが力んでボールが持ち上がらないといったシーンも多く、相手を震え上がらせるパワーとエラーの山を築いてしまう精度という意味で、現状はまさに“諸刃の剣”という表現が似合うショットでもある。そうした悪癖は間違いなく改善の方向に向かっており、またフィジカルが備わってきたこともあり動きながらでも常に強烈なショットをオープンコートに展開できるようになってきた。

対応力でフォアに優る質の高いバックハンド

 体に近い打点から軸回転で強烈なフラット系のショットを連打する能力を持ったバックハンドも、どこからでもエースが取れる攻撃テニスには欠かすことのできない大きな武器となっている。基本的には長身の利点を活かして上から押し込んでくるような伸びのあるショットが持ち味だが、加えて彼の場合は膝付近の低い打点からでも難なくダウンザラインに切り返していくことができる。そのため、スライスで変化をつけられても動じることはなく、低弾道の高速ショットを繰り出すことができる。フォームは一見硬さがある印象だが、対応力の面ではフォアに優る部分が大きく、その意外性に富んだハードヒットが相手にとっては脅威となる。

単発でもコンビネーションでもポイントを重ねられるサーブ

 2m近い身長を活かした角度のあるサーブは、爆発的な威力でエースを連発していくことも、3球目の強打とのコンビネーションでポイントを多く生み出すこともでき、特に最近はそれらを柔軟に使い分けることができるようになってきたことがサービスキープ率の跳ね上がりに繋がっている。特に得意なのはデュースサイドからワイドサーブを放ち、次をフォアのストレートで決め切るパターン。横の角度をより厳しくつけるためにデュースサイドではセンターマークから離れた位置に立つのが珍しい特徴でもある。また、最速で約210km/hを記録するフラットサーブやフラット寄りのスライスサーブが浅い位置に落ちるのも彼の特徴で、これにより相手に高い打点の難しいリターンを強いている。ただし、このサーブが調子のバロメーターあるいは更なる躍進に向けた強化ポイントであることも事実で、球種や球速のバリエーションが必ずしも多くないのが1つの課題で、加えて主軸のパワーサーブもコースが甘いことが多いというのがいま1つの課題。スピードを求めるのか、曲げてタイミングを外すのか、弾ませて体勢を崩すのか、その意図が明確に見えてくるとより安定したサービスゲームを展開できるはずだ。

豪快なイメージとは裏腹に堅実な戦術的判断が光る

 本格ブレイクを果たした大きな要因の1つはフィジカル強化だった。以前は先に攻められるのを嫌って強引さが出ることがあったが、受けに回っても耐えられる頑丈さが身につき予測も向上した分、打ち合いにおいて焦らずチャンスを待つことができるようになった。技術的にも、幅広い打点に対応したりオープンスタンスで鋭いカウンターショットを飛ばしたりとディフェンス面の強化が目立っている。戦術的な判断として少し引いて構えることで、逆に思い通りの強打を打ち込む形が増えたと言っていい。暴れ球気味のフォアを中心に豪快なイメージが先行しがちだが、実は元々堅実なプレースタイルを持ったプレーヤー。自らの守備範囲を理解し適切なポジショニングを維持したうえで適量の攻撃を確実に当ててくる。自分の武器を「打てる場面で打つ」のではなく、「打つための組み立て」を主体的に作り上げる意図が非常に感じられる。最近は苦手としていたボレーの技術も改善著しく、徐々に弱点を埋めながらスケールアップを遂げている。

ロシアテニスの再興を担う大器

 すべてのプレーにビッグショットを持つテニスの特性やまだまだ上位に対しても挑戦者でいられる心理状態などの点から、いつトップ10級を破るアップセットを起こしてもおかしくない雰囲気を持ったプレーヤーである。基本的にハードヒット一辺倒で、ショットの精度や細かなテクニックの面で不安定さがあるのは事実だが、間違いなく経験の積み重ねとともに向上するはずだ。キャリアの駆け出しの時期に、スタイル的に同系統のラオニッチをトップに育て上げた実績を持つブランコに指導を仰いだというのは非常に心強い。カフェルニコフにサフィングランドスラムチャンピオンを輩出した90年代後半から2000年代前半、ダビデンコやユーズニーなどトップに複数人を擁した2000年代後半に比べると低迷期にあった直近のロシアテニスだが、その望ましくない流れに風穴を開けるポテンシャルを秘めた大器ハチャノフの今後の飛躍に注目したい。