ATP Players

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Mikhail Youzhny

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 生年月日: 1982.06.25
 国籍:   ロシア
 出身地:  モスクワ(ロシア)
 身長:   183cm
 体重:   73kg
 利き手:  右
 ウェア:  adidas
 シューズ: adidas
 ラケット: HEAD Extreme Pro
 プロ転向: 1999
 コーチ:  Boris Sobkin

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 あらゆるプレーをそつなくこなし、多彩なショットの組み立てで勝負するベースラインストロークと多様なアプローチショットから機を見て積極的にネットに詰めるプレーを使い分ける、クレバーかつオールラウンドなテニスで息長くツアーのトップで活躍するロシアの強豪。02年頃からとりわけ大舞台でコンスタントな活躍が見え始めていたが、06年全米でフェレール、ロブレド、ナダルというスペインのトップ3を立て続けに破ってベスト4に進出したあたりが本格ブレイクの時期であった。以降、07年ロッテルダム(500*)でのビッグタイトルや、10年全米で再びベスト4に入るなど、上位陣を倒す実力を持ったプレーヤーとして要所で常に存在感を示してきた。カフェルニコフやサフィンの影に隠れながらも、着実にビルドアップしてきた技術に裏打ちされた安定感のあるテニスは、サーフェスを問わず好成績に繋がっており、すべてのグランドスラムでベスト8以上を記録、一時はトップ10入りも果たしている。また、02年デビスカップでは決勝戦の最終ラバーに抜擢されると、2セットダウンからの逆転勝利を収め、ロシアに初優勝をもたらした。低い姿勢をキープしたままのプレーで強さを見せるため、中でも芝を得意とし、一部では彼を“芝のスペシャリスト”と評する声もある。繊細な技術力を活かした多彩なテニスを持ち味とする一方、闘志を剥き出しにしながら粘り強く戦うタフなメンタルも兼ね備えている。“ミーシャ”の愛称で知られる彼は、趣味は読書、10年にはモスクワ大学にて哲学の博士号を取得するなど、非常に知的な一面も持っている。10歳の時から師と仰ぐソブキンは元々は数学教授であるが、その研究熱心な性分はコーチとしての手腕も発揮し、現在に至るまで彼のテニスに多大な影響を及ぼしている。また、大きな試合で勝利した後に見せる敬礼ポーズは大佐であった父親を敬ってのものであり、今ではユーズニーのトレードマークとなっている。

威力抜群のスライスで展開を作る多彩なストローク

 ベースラインからのストロークはシングルバックハンドからツアー屈指の完成度を誇るキレのある当たりの厚いスライスを軸に、粘り強くラリーをする中で徐々にチャンスを作っていくのが特徴。ゆえに、フォアハンド、バックハンドともにあまりフルスイングはせずにコースや確率を重視した打ち方をする。バックは両手打ちから片手打ちに切り替えた経緯を持つため、リターン時などには時折フォロースルーに左手がついてくるというユニークな特徴がある。技術的にはテイクバックの段階ではハードヒットとスライスのどちらが出てくるかわからない点が強みで、相手の予測を困難なものにしている。また、動きの中やオープンスタンスでも安定して深いショットを打てる懐の深さも魅力だ。緩急のつけ方やバウンドの高低を操るのが巧みで、重いフラットとトップスピン、低く速く滑るスライスを自由自在に駆使して自分のペースに持ち込むと、タイミングの早いライジングショットでストレートを狙う形を得意とする。巧みな面捌きに支えられたコース変更のうまさも彼の強さの1つであり、コートを広く使った展開や意表を突いたプレースメントで相手を大いに苦しめる。パワーヒッターに比べると非力な感は否めないが、その分を補って余りある技術力の高さが彼の強さのベースとなっている。とはいえ、インパクトと体重移動のうまさでウィナーを狙った時のショットは非常に低く鋭いものがある。ドロップショットの使い方が非常に効果的で、ポイントの締めに使うことも、ネット勝負に持ち込む布石として使うこともできる。課題としては、フォアを筆頭に一発の決定力に欠ける点がしばしば挙げられるが、とりわけ相手がベテランとの試合では間の奪い合いや駆け引きが強調されるという点で、玄人好みの好試合になることが多い。相手にオーバーパワーされるほど非力ではないが、パワーで勝てるほどパワフルではないという彼の特徴もそうした試合を生む要因だろう。

強く弾くボレーがスピーディーなテニスに調和

 ダブルスでも実績があるように、ネットプレーの技術にも定評がある。とりわけ読みの良さ、反応の良さが抜群でネット際での落ち着きに繋がっている。ボレーはしっかりとブロックして速く足の長いボールで対抗する、いわゆるダブルス向きのボレーを多用する。持ち味であるスピーディーなテニスにはそのシンプルに強く弾くボレーがうまく調和している。また、ダイビングボレーなどで観客を魅了することも多い。

気性は荒いが頭の中は常に冷静

 ロシア人らしく気性が荒く、ミスをするたびに落胆の表情を浮かべたり、大声を上げたりもするが、そこから崩れることは少なく、中身は常に冷静で最後まで自分のスタイルを見失わずに貫くことができるメンタル面の強さも持っている。

自慢のテクニックは経験の蓄積でまだまだ進化

 30歳を過ぎ、自身のキャリアの締めくくりを意識し始めているような雰囲気も出てきている中で、14年以降は大きくランキングを後退させてしまっている。モチベーションの低下が懸念されるが、逆にそれをいい意味でのリラックスに繋げて健在ぶりを発揮したい。芝での強さについては経験の蓄積によるところが大きく、衰えるどころかまだうまくなっている印象さえある。オンコート、オフコート問わず豊かな個性を振りまくユーズニーにはまだまだ表舞台で活躍を続けてほしい。

 

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Radek Stepanek

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 生年月日: 1978.11.27
 国籍:   チェコ
 出身地:  カルビナー(チェコ
 身長:   185cm
 体重:   76kg
 利き手:  右
 ウェア:  ALEA
 シューズ: NIKE
 ラケット: HEAD Prestige MP
 プロ転向: 1996
 コーチ:  Petr Korda

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 サーブ&ボレーを多用するなど一時代前のネットプレーヤーに近いスタイルを持つ現役では数少ないプレーヤーの1人で、これまで長きに亘ってトップレベルでの活躍を続けている大ベテランにしてツアー屈指のテクニシャン。元々は主にダブルスプレーヤーとしてキャリアをスタートさせたが、20代後半になってシングルスでも結果が出始め、04年パリマスターズで予選勝ち上がりからファイナリストになって波に乗ると、06年にロッテルダム(500*)でのツアー初優勝やハンブルクマスターズでの決勝進出、ウィンブルドンでのベスト8などの活躍によって最高8位まで躍進した。近年は主戦場を再びダブルスに移しつつあるが、シングルスでもまだまだ油断のできない強豪である。ダブルスでは本格的な取り組みを再開した12年以降パエスとのペアでグランドスラムを2度制覇するなど、スペシャリストらしい実力を発揮している。大会を通してとなると年齢的な壁も感じさせるようになってきたが、12年、13年と2年連続で母国チェコデビスカップの戴冠に単複で大きく貢献したことが示す通り、短期決戦、あるいは試合単位での切れ味に衰えはない。薄めのグリップでボールを呼び込んでから放つカウンターや、繊細なタッチで繰り出すドロップボレー、スライス回転を巧みに操りながら時間を作りネットに詰めていく縦の動きの鋭さなど、やや古風ながら硬軟織り交ぜた正統派なテニスを持ち味とする。サービス精神も旺盛で、試合中にコミカルな動きで観客を楽しませるエンターテイメント性も魅力の1つだ。チェコの伝統に則り、またプレースタイル的にも速いサーフェスである芝やハードを得意としているが、技術的な奥深さを持つ彼のテニスはいかなる条件下でも侮れない。

技術と戦術とポジション取りが光るクレバーなストローク

 ネット際での勝負を好むが、決してストロークが弱いわけではなく、ベースラインで粘り強く戦えるだけの技術とメンタルも十分に備える。薄い握りからボールを運ぶようなスイングのフォアハンドと、コンパクトに押し出すようなスイングのバックハンドを持ち、両サイドともに絶対的な武器とはいえないものの、甘い返球に対してステップインする瞬時の判断力や巧みなコース変更の技術を活かし相手の予測を外したフラット系の強打を繰り出すなど、トップレベルでも打ち負けない強さがある。両サイドともに逆クロス気味に放つダウンザラインを得意とし、高い決定力を誇る。また、バックのスライスを多用しながら浮き球を誘い出してフォアの高い打点から叩き落とすのも1つの形だ。打点が比較的後ろにあり、ギリギリまで引きつけて打つことができる懐の深いフラット系のストロークはコースが読みにくく、それでいて一気呵成にネットラッシュを仕掛けてくるため、相手としてはペースを掴むのが難しい。さらには、ストロークの打ち合いに勝ち目がないと見れば、多少強引にでもドロップショットを使って前に誘き出す攪乱戦術も有効な手札としている。そして、それらすべてのベースを構成しているのが卓越したラリー中のポジション取りだ。一球一球で無理をしないことで適切に陣地を守り、下がりすぎない位置でカウンターを狙いながら常にネットを窺える態勢をキープする。このクレバーさが彼のベースラインでのプレーの大きな鍵である。

随一のタッチ感覚で操る強くも柔らかいネットプレー

 ストローク戦でも強さを見せる一方で、やはり基本的にはショートポイント志向が強く、果敢なネットプレーが彼の最大の武器といえる。ラリーから一本の鋭いショットでスイッチを入れて突進するネットプレーに加え、サービスダッシュやポジションを上げたリターンからのネットへの仕掛けなど様々な形でネットにつく事実は、彼のネット勝負に対する自信の証であり、実際に反応の速さやボレーのパンチ力、あるいはアングルに確実に落とすタッチの感覚はツアー随一。ボレーの際ラケットの面をあまり動かさないため、相手はコースが読みにくいのが技術的な特徴である。意図的に打ったアプローチからだけでなく、相手がスライスを構えたり体勢を崩した瞬間に猛然とネットに詰める姿勢も、対戦相手にとっては大きなプレッシャーだ。近年ダブルスに軸足を移したことも助けて、その完成度はさらに増している。

常に相手の嫌がるプレーを選択する狡猾さ

 相手の逆を突くうまさや、ネットを取る絶妙なタイミングとそこでの駆け引きなど、これほどまでに相手を翻弄できるのは豊富な経験とダブルスでの実績があるからこそ成せる業で、ありとあらゆる技術を駆使して常に相手が嫌がるプレーを選択する狡猾さにはテニスが強くなるヒントを感じずにはいられない。さらに彼の試合巧者ぶりが窺えるのは、1ポイントごとにガッツポーズを作って気合いを内外に見せつけつつ、観客を煽りながら会場の雰囲気を味方につける試合運びだ。30代後半にしていまだに目の前の試合に対して勝利への執念を失っていないことについては、それ自体大いに敬意を表されてしかるべきである。

かつての正統派は現代の曲者

 正統派であったはずのステパネクのテニスも、ストローク全盛の現代となってはまさに曲者。しかし、そのことがツアーでの独特の存在感を放つ要因ともなっている。キャリアも晩年に差し掛かっているのは間違いないが、テニスを楽しんでいるのを見る限りまだまだ身を引く考えはないようで、今後の活躍にも期待が持てそうだ。

 

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Benoit Paire

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 生年月日: 1989.05.08
 国籍:   フランス
 出身地:  アヴィニョン(フランス)
 身長:   196cm
 体重:   80kg
 利き手:  右
 ウェア:  LACOSTE
 シューズ: Babolat
 ラケット: Babolat Pure Aero Plus
 プロ転向: 2007
 コーチ:  Morgan Bourbon

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 長身から繰り出す角度のあるサーブと癖のあるバックハンドを武器とし、伝統国フランスが「新四銃士」の次の世代の中心として期待を寄せてきた才能豊かな大型プレーヤー。本格的にツアーレベルのプレーヤーとなった11年から着実に成長を遂げ、13年にローマ(1000)でデルポトロらを破ってベスト4に入るなどブレイクの兆しを見せるも膝の怪我により勢いを失ってしまった。しかし、15年には前年からの長期離脱で150位以下まで落ちていたランキングをバスタード(250)でのツアー初優勝を含む活躍でトップ30まで戻し、ATPのカムバック賞を獲得した。また、同年全米と東京の楽天オープンで錦織を立て続けに破ったことで、日本での知名度も急上昇した。ドロップショットの多用など、現時点ではトリッキーなプレーが持ち味のやや変則的なプレースタイルであり、緻密な計算の下ではなく、力技と閃きでプレーするタイプであるが、基礎的な技術は高く、多彩な戦術的手札の切り方を覚えテニスの完成度が高まってくれば面白い存在になれそうだ。基本的には遅いサーフェスを好み、クレーを最も得意とするが、技術力を活かせる芝でも強さを発揮する。ハードではフットワークの悪さが露呈される形になりやすいが、今後の取り組み次第で十分に戦えるようになるだろう。近年では立派に蓄えたあごひげがトレードマークになっている。

絶対の自信を持つバックハンドで主導権を握るストローク

 全体重をボールにぶつけていくような独特なフォームのバックハンドは彼の最大の武器で、クロス、逆クロス、ストレートいずれのコースにも、またどんなに厳しい体勢からでも、強烈かつ正確なウィナーが取れる。最近ではトッププレーヤーの間でもその脅威が浸透しつつあり、ツアーでも五本の指に入るバックハンドとも言われている。彼自身バックには相当な自信を持っているようで、フォア側に来たボールでもチャンスと見るやバックに回り込んで叩くことが多く、さらにはバックのドライブボレーも頻繁に繰り出し相手に余裕を与えない。技術的には右足の踏み込みが深い分、相手に対して背中を見せるようなスタンスとなり、その状態から鋭いショットが放たれるため、ボールの出所が非常に読みづらいのが特徴で、スクエアスタンスで打つ普通のプレーヤーよりも打点が少し後ろになる点が懐の深さに繋がっている。もちろんオープンスタンスで踏ん張っての返球も魅力的で、大柄な体格を感じさせない粘り強さも持ち味の1つだ。彼のバックに配球する怖さはリターンでも同じで、相手の2ndのスピンサーブに対して前に入り込み、高い打点からバックで叩いてエースを奪う姿勢は大きなプレッシャーを与えている。ラリーの中に突然織り交ぜる絶妙なドロップショットも得意としており、1試合の中でも執拗なまでに精度の高いドロップショットを放って、相手を前に走らせる戦術を使う。ベースラインでの打ち合いの中でも常に前に落とすことを狙っていると言っても過言ではなく、押され気味の状態からでも鮮やかなタッチで巧みにボールを操ることができる。ただし、やや使い過ぎあるいは不可解なドロップショットの選択も多く、少なからずネガティブな面もある。ドロップショットで培われたテクニックは他のプレーにも生きており、驚異的なバックスピンのかかったストップボレーをはじめとするネットプレーや、逆にネットに詰めてきた相手の頭上を抜くトップスピンロブなど、見どころは多い。フォアハンドは感覚良く打てている時は、バック同様に威力のあるボールで相手を追い込めるが、シンプルでないラケットのテイクバックが原因で安定感に致命的な難があり、アンフォーストエラーが非常に多い。特に当たり損ねたような薄い当たりになってネットにかけたり、短いボールで相手にチャンスを与えるといったシーンが散見される。

複数のリズムを使い分けるメリハリの利いたプレー

 ストロークでは低いボールは深くコントロールして丁寧に繋ぎ、高い打点が取れた時は一気に強打するのが彼のスタイルであり、複数のリズムを使い分け、一定のリズムでプレーしない掴みどころのなさが特徴であり強みにもなっている。逆に、自分が決めにいったショットが拾われると、次のボールで簡単なミスをしてしまうことが多い。質の高いショットが2本3本と続くようになれば、よりトップに肉薄できるはずだ。また、ここ最近は代名詞でもあるドロップショットを意識的に封印しているようだが、そうなるとパワー頼みのテニスになって安定感が削られる側面がある。この点で技と力のバランスが確立されれば大きな飛躍も考えられるはずだ。

1stの破壊力と2ndの弱点が拮抗するサーブ

 体を投げ出すような形で上半身を前傾させるフォームが特徴的なサーブも彼の武器の1つで、とりわけ1stでは高い確率で相手の体勢を崩すことができる。一方で、ダブルフォルトの多さやプレースメントの甘さが非常に大きな弱みとなっている2ndは喫緊の課題である。サービスゲームではエース量産も含めてショートポイント志向が強いが、プレースタイル自体はそれほどサーブへの依存度が高いわけではなく、であればこそ自らサーブで崩れる傾向は改善したいところだ。

誰をしても理解不能なメンタルの動き

 熾烈を極めるツアーの中でトップ20かそれ以上を目指すうえでは、精神面の成熟が必要不可欠だが、彼のプレーに見られるメンタルの動きは誰をしても理解不能というほかなく、試合開始からものの数分でイライラを募らせラケット破壊など怒りを爆発させたかと思えば、そうすることで冷静さを取り戻し、さらには何気ないプレーをきっかけに止められないほどの勢いに乗って大物食いを果たすこともあり、改善するというよりもはやこれは彼の個性と言うべきかもしれない。ただし、集中力の持続時間があまりにも短すぎるというのは勝てる試合を取りこぼす直接的な要因といえるため、その点の自覚は必要だろう。ここ最近はテニスの不調あってこそとはいえ、頭に血が上って感情がコントロール不能に陥る場面が以前にも増して多くなってしまっている。オフコートでの態度の悪さや他人を侮辱するような発言は彼自身のテニスキャリアに影を落とす原因にもなりかねず、周囲のサポートを借りてでもできる限り控えなければならない。

独特な感性で操る剛柔自在のユニークなテニスは一見の価値あり

 個性的なプレーをするプレーヤーの多いフランス勢だが、中でもペールはなかなか他では真似することのできない独特な感性を持っており、それをベースに剛柔の両面を出し入れするユニークなテニスは一見の価値ありと言うべきだろう。本人はあまり大きな野心は抱いていないようだが、彼自身も自覚するようにフィジカル面とメンタル面が向上してくれば、十分にトップ10を狙えるポテンシャルは持っているだけに、まずはテニス界きっての「問題児」という汚名をいち早く返上したい。

 

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Tomas Berdych

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 生年月日: 1985.09.17
 国籍:   チェコ
 出身地:  ヴァラシュスケー・メジジーチー(チェコ
 身長:   196cm
 体重:   91kg
 利き手:  右
 ウェア:  HYDROGEN
 シューズ: NIKE
 ラケット: HEAD Instinct MP
 プロ転向: 2002
 コーチ:  Martin Stepanek

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 長身から繰り出す強力なサーブとスピード感溢れるフラット系のストロークを活かし、パワーで相手を振り切るテニスを武器に戦う攻撃特化型のプレーヤー。フォア、バックともにコートのどこからでもハードヒットして鋭いボールを打ち抜く感覚や、それをライン際に正確にコントロールする能力はトップの中でも群を抜く。ツアー経験がほとんどない中で臨んだ04年アテネ五輪フェデラーを下して注目を浴び、弱冠20歳にして上位勢を次々となぎ倒し鮮烈な優勝を飾った05年パリマスターズ辺りから本格化、以降常に安定してトップ20に位置づけるなど若い頃からの実力者であったが、グランドスラムでは目立った活躍がなく、キャリアも中盤に差し掛かった10年、それまでは肝心なポイントでいつも硬くなっていたメンタルの大きな壁を1つ越え、自らのプレーに自信を持てるようになったことで、全仏では4回戦のマレー戦を含めセットを落とすことなくベスト4に進出、続くウィンブルドンではフェデラージョコビッチを破っての準優勝という輝かしい成績を残し、トップ10定着のきっかけを作った。以降、ややタイトル数には不満が残るものの、全体的なポテンシャルの高さを証明するように、まさにトップ10にふさわしい高いレベルでの安定感を発揮し、約6年半に亘って一度もその座から陥落することもなく、常に上位争いを演じるようになった。ツアー屈指の展開の速さで勝負するスタイルは高速系のサーフェスで特に輝きを放つ一方、滑るサーフェスであるクレーや芝も苦にしないことは、上位定着を可能にしている大きな要因である。

屈指の伸びとスピードで相手を圧倒するフォアハンド

 フォアハンドはベルディヒの最大の武器であり、ラケットを引いて打つ準備に入るのが普通のプレーヤーよりも早く、そこからコンパクトかつクリーンな当たりでボールを捉えるのが特徴。多様な回転で相手を苦しめるのではなく、常にショットのパワーとスピードで真っ向から勝負していく痛快なスタイルが身上である。とりわけ左足でステップインしてストレートに放つショットの出来が彼の生命線といえる。また、フォロースルーが大きくないため、打った後にバランスを崩すことは少なく、コートの大部分をフォアでカバーできる。この特徴を活かして放つ回り込みフォアの鋭角な逆クロスは驚異的な威力を誇り、かつやや不十分な体勢からでも高精度で入れられるため、相手にとっては非常に脅威となるショットである。破裂音にも近い打球音からも察せるように、その球質は主にスピンをあまりかけないフラット系、軌道は直線的なものが多く非常にスピードがあり、彼のテニス自体の速さとあいまって、相手を圧倒できるショットである。調子の良い時には弾道の低い高速ショットが連続して深く入るため、相手はボールの勢いに押され、万全なスイングさえままならないこともしばしば。彼にフォアを自由に打たせてしまうとそれほどまでに危険である。今後は持ち味の強烈なフラットショットをさらに活かすためにも、トップスピンを効果的に織り交ぜて高さに変化をつけるなどのバリエーションを増やし、メリハリのあるラリーを展開する工夫も必要となってきそうだ。

対応力でやや見劣りのあるバックハンド

 バックハンドもフォア同様にフラット系の打球が多く、ダウンザラインへのウィナーを筆頭に一発の威力は備えているが、フォアに比べてストローク時に高いレベルで対応できる打点の範囲が狭いという点で、完成度には向上の余地がある。股関節が硬いため上体をスムーズに捻ることができず、両手打ちの特徴であるオープンスタンスで打つということがあまり得意ではない。したがって、自分から攻撃していく時は問題ないが、相手に攻め込まれている時は対応力が落ちてしまう。それでも深いボールに対してはしっかりと膝を曲げて対応するなど、バックを狙われても安定して返球できる堅実さは持っているため、バックが致命的な弱点とまではいえない。追い込まれて他に選択肢がない場合以外にはスライス回転は滅多に使わないが、これは彼がトッププレーヤーにしてはボールの高さや深さの調節が得意でないためであり、ペースを変えるのに有効なこのショットを使わないというのは弱点といっていい。なお、リターンにおいてはフォアにも劣らない高い精度を誇り、高い打点から厳しいコースに狙ってエースが取れる点は魅力的である。

高さのある強力なフラットサーブを武器とするサーブ

 長身から繰り出される強力なサーブは常時200km/hを超え、彼のもう1つの武器となっている。高いトスからセンターへのフラットサーブはもちろん、ワイドへのスライスサーブも回転量とスピードを両立できる点が大きな強みである。また、近年は封印しているものの、彼特有の特徴としてトスの位置を通常の真上だけでなく、時には大きく体の右側に上げることがある。このトスからはよりキレのあるスライスサーブが打ちやすいが、彼はここからフラットを打つことがあり、相手の逆を突いて簡単にポイントを上げることのできる武器である。サーブからの展開としては、ワイドへのサーブで相手をコート外へ追い出し、空いたオープンスペースへ決めるという至ってシンプルながら有効なパターンで多くのポイントを獲得する。トップレベルでブレークを許さないためには、1stの確率を上げることが必要不可欠で、それによりさらに磐石なサービスゲームを確立できるはずだ。

改善傾向が光る基本に忠実なネットプレー

 ネットプレーは元々それほど得意な方ではなく、攻撃的な彼のテニスにあって唯一にして大きな技術面での課題であった。しかし一方で、最近はネットプレーに突破口を見出そうとしているようで、意欲的にダブルスに出場したり、意識的にネットへ出る回数を増やしたりすることで改善傾向にあり、また強引になりそうな場面でも冷静な状況判断で丁寧にこなしている印象がある。余計な小細工をせず基本に忠実な強く弾き返すボレーを志向している点も高評価。ネット際での反応さえ良くなれば、十分にトップと肩を並べられるはずだ。

トップらしい安定感を支えるフットワークの向上

 長身であるがゆえに瞬発力やフットワークには多少の難があり、最大の欠点と言われている。とりわけフォア側に振られたり、逆を突かれた場合に脚がついていかないことが多く、リーチの長さで辛うじてカバーしている感があるため、守備局面における凌ぎ球の質に問題を抱える。そのため相手に攻め込まれる展開の試合になると、あっさりと敗れてしまうことも少なくない。特にドロップショットやロブなど大きく前後に揺さぶられると、バランスを崩して脆さを露呈する。しかし、逆に近年の安定感の所以はフットワークの向上ともいえ、粘り強い返球からのカウンターでポイントを取る機会も増えてくるなど、克服に近づいていることは間違いない。

複数の課題を抱える出入りの激しいメンタル

 もう一段上のレベルに上がるためには、自分の攻撃を受け止められ逆襲されると浮き足立って一気に崩れてしまったり、パワーのある相手に対してどうしても受け身になってしまうメンタル面の脆さの克服が不可欠な点である。また、試合開始から100%の力を出せないスロースタートな癖を持っており、上位同士の対戦では序盤の流れが試合全体を大きく左右しかねないため、解消したい課題の1つだ。ピンチをサービスポイントで切り抜けることが多い一方で、大事な場面でダブルフォルトを犯すこともしばしばというのも、彼のメンタル的な出入りの激しさを象徴している。調子の波があるのは弱点である反面、爆発力に繋がるという意味では彼の長所でもあったが、最近は成績面、プレーぶりともに良くも悪くも期待の範囲内という状態が続いており、本来のらしさである不確定であるということの怖さが薄れつつある点で正念場を迎えている。

攻める展開には滅法強く、先に振られると打開策に乏しい

 主導権を握って自分から攻める展開には滅法強く、甘いボールに対して常に前に踏み込んで叩いていく積極性を発揮できている時の彼はビッグ4をも圧倒する力を見せつける一方で、先に振られると打開策に乏しいのが積年の弱みで、自分よりもパワーやテンポの速さで優るプレーヤーに対する苦手意識をどうしても払拭できていない。その理由の1つに、攻守でプレーを分けすぎている点がある。攻めながら守り、守りながら攻めるテニスを身につけ、やや一本調子になりがちなテニスに幅を持たせることができれば、今後本当の意味でビッグ4を脅かす存在になれるかもしれない。フェデラーナダルジョコビッチ、マレーの4人すべてにグランドスラムで勝ったことのある数少ないプレーヤーであることを考えれば、ビッグタイトルが05年パリの1つだけというのはあまりにも物足りない。若手の突き上げも激しい近年のツアー環境の中、彼も自身の怪我もあってややその波に飲まれるような形で長年守ってきたトップ10からは陥落してしまったが、地力そのものは優勝争いに絡む可能性を十分に維持しており、下からの挑戦をはねのけつつまだまだマスターズ格以上の大会で耽々と頂点を狙っていきたい。

 

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Andrey Rublev

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 生年月日: 1997.10.20
 国籍:   ロシア
 出身地:  モスクワ(ロシア)
 身長:   188cm
 体重:   70kg
 利き手:  右
 ウェア:  NIKE
 シューズ: NIKE
 ラケット: Blackout
 プロ転向: 2014
 コーチ:  Fernando Vicente

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 細身の体型ながら瞬発力とバネのあるフィジカルを活かし、絶え間なく強烈なストロークを繰り出して相手の守備を打ち破る超攻撃的なテニスを持ち味とするロシア期待の若手有望株プレーヤー。ジュニアNo.1という輝かしい経歴もあり、かなり早い段階から世界の注目を浴びる中で、プロ転向の14年以降フューチャーズ、チャレンジャー、ツアーレベルと一歩ずつステップを踏んで着実に成長曲線を描いている。17年にはウマグ(250)でATP史上7人目となるラッキールーザーとしての大会制覇を果たし、10代でのツアータイトル獲得の快挙を成し遂げた。また、同年全米ではディミトロフ、ゴファンといったシーズンの主役たちをストレートで下してベスト8に進出するサプライズを披露し、一気に若手世代をリードする存在となった。その後怪我による離脱があって逆に同世代の出世レースには後れをとった感もあるが、上限の力を発揮した時の強さはやはり凄まじく、まだまだここからの巻き返しが期待できる。下半身の踏ん張りがショットの力強さの鍵となる彼にとって、相性が良いのは滑るサーフェスのクレーや芝よりも激しい動きの中でも急停止ができるハードコートである。

爆発的なショットスピードが見る者を魅了するフォアハンド

 彼の攻撃力の大部分を構成しているのが、広いスタンスで力を溜め込み上半身の凄まじい軸回転としなやかな手首の返しによって爆発的なスピードをボールに伝えるフォアハンドで、スイングの鋭さや非常に綺麗なショット軌道は見る者を大いに魅了する。まさに“一撃必殺”という表現が似合うショットであり、彼にフォアで先手を取られて3本以上持ち堪えられるプレーヤーはツアーにもそう多くはいない。激しい打ち合いの中でフォア側のボールに対応する際に、右足を一直線に伸ばして踏ん張り、低い姿勢からカウンターに転じるのが彼のスタイルであり、ベースライン後方にポジションを下げたり、ラリーのペースを落として守りに徹するということはあまりない。膝から腰にかけてのやや低い打点から最も強いボールを放つ点はロシア人らしい特徴といえ、特に彼は一定のタイミングで捉える感覚に優れている。ハードヒットの連続で相手を追い込むと、最終的には最も得意とする回り込み逆クロスをサービスライン付近の浅いところにコントロールしてポイントを締めるのが確立されたパターンとなっている。現状でも威力に限ればすでにツアー屈指だが、今後精度を上げてミスを減らすことができれば「世界最高のフォアハンド」と称される時代も来るかもしれない。

安定性を向上させてフォアとのバランスを見出したいバックハンド

 バックハンドは前方へ踏み込めた時にはクロス方向を中心に相手を追い込むだけの威力あるショットを繰り出せるが、体軸のぶれないフォアと異なりフルスイングで捉える際に少し頭の位置が動く分ミスになることが多く、フォアを多く使わせてもらえない展開では苦しくなる。それでもオープンスタンスでのカウンターやスライスによる凌ぎなどを習得しつつあり、元々難のあったディフェンスの局面での対応力は向上傾向にある。ダウンザラインへのコース変更で力が入り硬さが出る癖を改善できれば、彼の理想とするアグレッシブなテニスに上積みとなることは間違いないが、自分の打つショットが速すぎて次の対応に間に合わない場面も見受けられるだけに、圧倒的なフォアとのコンビネーションを念頭に攻撃力と安定性のベストバランスを模索していきたい。そのヒントとなるのはリターンやパッシング時に見せるコンパクトにブロックして返球する打ち方だろう。

2ndのコースの甘さが課題のサーブ

 サーブはあらゆる面でまだまだ改善の余地を残しており、最重要強化ポイントの1つとなっている。ストローク同様にボールの威力はあるため特にフラット系でエースは奪えるが、全体的にコースが甘く、軸となるスライス系も相手を外に追い出すだけのキレに至っていない。また、2ndのスピンサーブの浅さが最も気になる点で、ネットに掛けるダブルフォルトも多いことから、もう少しラケットに厚く当てて距離を出す取り組みが必要だ。

飛躍の鍵はメンタルとプレーの幅

 今後彼がトップ30からさらにその上を目指すためには、集中力の浮き沈みが激しいメンタル面での若さをいかに早い段階で克服できるかが大きな鍵を握る。試合展開の優勢劣勢を問わず常に感情を表に出す気性の荒さは1つの個性といえるが、些細な不調でラケット破壊にまで至ってしまうのは、若手らしい勢い溢れるプレーとは別次元の感情コントロールの問題で、相手に弱みを見せることにもなる。テニスの面では操る球種を増やしてハードヒットをより一層活かすための戦術のバリエーションが欲しいところ。プレースタイルとしてはパワーヒッター色が濃いが、であれば筋力を上げてさらに球威を増すことも必要だろう。才能豊かな人材が揃う”NextGen”世代であるが、ルブレフも今後間違いなくお互いを高め合う良きライバル関係を築く一翼を担う存在となるはずだ。

 

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Lucas Pouille

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 生年月日: 1994.02.23
 国籍:   フランス
 出身地:  グランド・シント(フランス)
 身長:   185cm
 体重:   84kg
 利き手:  右
 ウェア:  adidas
 シューズ: adidas
 ラケット: Prince Tour 100P
 プロ転向: 2012
 コーチ:  Amelie Mauresmo

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 すべてにおいてそつのない技術力を備え、機敏なフットワークから鋭いフォアを軸としたスピード重視の展開力で勝負する総合力の高いオールラウンダーで、若い世代の台頭にやや乏しい強豪国フランスにあって飛躍が期待されるスケールの大きな有望株のプレーヤー。上体がぶれない強靭な体幹によって実現されるストロークの安定感が強さの基盤だが、そこにベースライン後方からでも難なくエースを奪えるパワーが加わることで、攻守のトランジションに優れた攻めて良し守って良しの完成されたテニスを持つ。13年に10代でトップ200に入っていたのはキリオスとこのプイユの2人のみで、以降チャレンジャーレベルからツアーレベルへと徐々に軸足を移す中でランキングを着実に上昇させてきている。その過程では運の良さを勢いに変えて好成績を残す傾向が見られ、ツアーレベルで初のベスト4進出を果たし本格化のきっかけにもなった15年のオークランド(250)や、フェレールを下しマスターズで同じく初めてベスト4に入った16年のローマではともにラッキールーザーとしての本戦出場であった。その後ウィンブルドン、全米と連続でベスト8に入り、秋にはメス(250)で初タイトルも獲得した16年シーズンは彼のブレイクイヤーとなった。特にナダルを相手にフルセットで競り勝った全米4回戦は、心技体の三拍子が揃った彼の特大なポテンシャルが最大限発揮された鮮烈なプレーだった。テンポの速いストロークで相手を振っていくプレーを持ち味とする分、ハードコートを最も得意としているが、技術的な弱点があるわけではないため、どのサーフェスでも安定して結果を出せる力を持っている。

弾けるパワーショットと多彩な戦術が両立する完成度の高いテニス

 ベースラインに近い位置を保って早いタイミングでボールを捉えていくことも、大きく下がってループ気味のショットで長いラリーを作ることもできるストロークは、フォアハンド、バックハンドともに癖のない柔らかくコンパクトなスイングから繰り出され、相手のショットのパワーを利用しつつコートを広く使って相手を振り回す展開を特徴とする。ネットへの詰め方とその処理も含めて無理のないプレーでポイントを重ねていけるのが彼の強みで、ポジションを下げられても焦らず軌道の高いボールで粘り、甘い返球が来た時に突然前に入って強打していくが、その強打で決まらなければもう一度展開を作り直す落ち着きや辛抱強さが際立つ。高いテイクバックからラケットヘッドが落ちず、厚い当たりでシャープに美しく振り抜くフォアは、ボールに伸びがありつつスピンも効いた完成度の高いショットとなっており、しっかりと構えてのダウンザラインや回り込み逆クロスに加え、走らされてもオープンスタンスでカウンターストレートを放つなど多彩なパターンを持つ。バックスイングに無駄な動きがなく、インパクトに向けて素直にラケットが出てくるため、ライジングでもミスヒットをすることなく鋭いショットに転換していくことができ、とりわけサービスゲームで3球目を素早く処理する際にこの能力が生きている。状況を問わず常に爆発的なインパクトを確保して球威のあるボールを飛ばす能力・感覚の高さはツアーでもトップクラスといえ、並のプレーヤーでは彼のショットのキレとスピードについていくのが精一杯で戦術を実行することさえ難しい。また、浅いボールに対して流れるようなフットワークでネットプレーに繋げる滑らかな動きは憧れのフェデラーさながらで、ボレーにおける繊細なタッチも十分に持ち合わせている。アプローチショットにもう少し工夫があればネットでのポイント確率も上がってきそうだが、いずれにしてもラリー戦から縦への仕掛けが彼の1つのポイントパターンといえる。バックも打点のタイミングを様々に変えながら相手との間合いを巧みに計り、非常にスムーズな動きで内側に切り込んで強烈なウィナーをクロスへダウンザラインへと痛快に突き刺していく。スライスのキレやその組み込み方も秀逸で、自らは主体性をもって盛んに前後のポジションを変えて戦う一方で、相手に対してはボールの緩急、軌道の高低、深さや角度のコントロールを駆使して幅広く揺さぶりをかけることができる。

体重の乗せ方がお手本のようなパワフルなサーブ

 体全体で生み出したパワーを効率的にボールに伝えるサーブも強力で、210km/hを超えるフラットサーブや機を見たサーブ&ボレーなど、ショートポイントを奪うパターンを複数持ち合わせている。また、アドバンテージサイドから放つセンターへのスライスサーブが大きな武器で、バウンドしてから大きく切れるためリターンの強打を抑え、3球目以降の主導権を巧みに引き寄せる。これを1stだけでなく2ndでも積極的に使う攻めの姿勢も評価できる。押され気味の流れであってもスコアの上では競った展開に持ち込めるのは、瀬戸際で踏みとどまるメンタルの強さに加え、このサービス力によるところが大きい。日本では、錦織が彼のサービスフォームを参考にしたことで話題になったが、それも錦織がプイユの素質を認めるとともにテニスの感覚的に近いものを感じ取ったからだろう。

前で叩く積極性を増したいリターン

 リターンは技術に難があるということではないが、スタッツ面であまり優れた数字が表れていないのは2ndに対するリターンでやや積極性に欠ける部分が見られることが1つの原因である。基盤となっているベースラインから離れて余裕を作り、深く返球するプレーは確率を高めるうえで有効で、時にはパワフルな返球がそのままエースになることもあり、今後も選択肢としては持っておくべきだが、上位陣相手にプレッシャーをかけるにはコート内側で叩く頻度とその精度を上げていきたい。

繊細な試合運びを覚えればGS優勝も夢ではない

 激しい打ち合いからの鮮やかなドロップショットなど、相手の予測を見抜いたかのような間の外し方はセンス抜群で、こうした能力は大型化の進むツアーで決して大きくない彼のようなプレーヤーが活躍するために不可欠になってきている。1つ1つのプレーに確かな才能を感じさせる逸材であることは間違いないが、今後トップ20から上を目指していくうえではバランスの整ったテニスというのは器用貧乏という形で表れて、逆に伸び悩む原因にもなり得る。とはいえ、まだまだ成長途上でフィジカル向上やサーブ、リターン、ストローク、ネットプレーなど全体のスケールアップを図っている段階。多彩であるがゆえにプレー選択に迷いが生じたり、良いポイントを取った後に簡単なミスが続くことがあったりと試合においては強さにムラが見られ、また特に格上との対戦においてはポイントを急ぐあまり過度に強打してミスを重ねる傾向も払拭できていないが、これらは繊細な試合運びの習得として更なる伸びしろと捉えていい。ヤニック・ノア以来30年以上誕生が阻まれてきたグランドスラムのフランス人チャンピオン。素質を持った彼がその座に輝く日を期待せずにはいられない。

 

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Felix Auger-Aliassime

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 生年月日: 2000.08.08
 国籍:   カナダ
 出身地:  モントリオール(カナダ)
 身長:   193cm
 体重:   88kg
 利き手:  右
 ウェア:  NIKE
 シューズ: NIKE
 ラケット: Babolat Pure Aero VS
 プロ転向: 2017
 コーチ:  Guillaume Marx, Frederic Fontang

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 バネのあるフィジカルを特徴とする高いコートカバーリング能力により常に積極果敢な姿勢を貫き、抜群の決定力を誇るフォアハンドや繊細なタッチで操るネットプレーで仕留める剛柔兼ね備えたオールラウンドなテニスを武器に近い将来世界の頂点を狙う新進気鋭のカナダの逸材。16年全米優勝をはじめジュニア時代から輝かしい実績を持ち、また同時並行的にフューチャーズやチャレンジャーに参戦して経験を積んできた非常に早熟な才能の持ち主であり、世代をリードする存在として最も早く頭角を現してきた2000年代生まれのプレーヤーだ。トップ100を目前に捉えた位置で19年シーズンをスタートすると、リオデジャネイロ(500)で準優勝、マイアミ(1000)では予選勝ち上がりから大会史上最年少(18歳7ヶ月)ベスト4の快挙を達成し、わずか3ヶ月あまりで30位台まで大幅ジャンプアップを果たした。ツアーデビュー以来対トップ20で5連勝を記録した点など、オジェ・アリアシムの名を知らしめる意味でも彼の登場はまさに鮮烈の一言だった。すべてのショットにおいて確かな技術力を備える点でハードコート的なテニスを軸にどのサーフェスにもしっかりと対応でき、北米育ちにはクレーはからきし駄目というプレーヤーも多い中で彼は珍しくクレー適性も高い。なお、王者を見据える大器としては偶然にもあのフェデラーと誕生日が同じということでも話題になっている。

爆発力と柔軟性を高次元に兼ね備えるストローク

 比較的薄いグリップから癖のない素直なフォームから繰り出す当たりの厚いフォアハンドは彼の最大の武器であり、回転量と球速を高次元に両立したショットで次々と攻め立てる。中でも得意とする逆クロスへの決定打は、高い打点から叩き落とす爆発的な強打はもちろん、ミドルコートで低い打点を強いられた場面でも非常に柔らかいラケットワークとボールを下から巻き上げるヘッドスピードによって鮮やかにウィナーにしてしまう。全体的に球持ちの長さを感じさせるしなやかなスイングで捉えられることが技術的に成熟している点であり、ボールをしっかり押すことができるため浅く入ることがあまりない。バックハンドにおいて特筆に値するのはラリーで放つショットの回転量の多さだ。両手打ちはフラット系の軌道が一般的だが、彼の場合フォアと同等であることが数字に表れている。バウンド後に加速するような球種によって相手を押し込める強みがあると言っていいだろう。コート内側に入ってタイミングを早めたショットも備えており、長身を活かしたアングルにダウンザラインにと攻撃のパターンも自在だ。相手からのボールが一定以上深いと少し打ち損じることがあったり的を大きく外すミスに繋がるのが現状では課題となっている。オープンスタンスで踏ん張ってのカウンターなども含めてフォア、バックともに技術面では既に攻守にほとんど完成されたクオリティを誇っており、今後の焦点は戦術面の向上だろう。ペースの緩急や球種の変化を使えるようになれば、不要なミスを減らしつつ相手へのプレッシャーも増すことができて鬼に金棒だ。

強烈なパスを軽いタッチでいなすローボレーは一級品

 ストロークに一発がありながらも積極的にネットを窺う姿勢やボレーのうまさにも定評がある。特にバックのローボレーは一級品で、膝元に沈んでくるパッシングショットを軽いタッチで少し横の回転を含んだアンダースピンをかけて飄々とコントロールしてしまう。逆にハイボレーではもったいないミスが目立ったり、またスマッシュは致命傷になりかねないほど苦手にしている雰囲気があるものの、ネットプレー自体は武器の1つとして十分に機能している。

現状は弱点も大きなポテンシャルを秘めるサーブ

 体を目一杯伸びやかに使うサーブも相手に対して大きな脅威を与える。頭の右側に上げるトスアップを標準とし、スライスサーブとそれを匂わせながら反対サイドへの強烈なフラットサーブを配球の軸とする。ただし、本来間違いなく武器となり得るサーブが現状はむしろ一番の弱点となってしまっている面もある。その原因はダブルフォルトの多さだ。2ndでも思い切ってライン際を狙う強気の裏返しではあるのだが、それでも看過できない多さであることに加えて、大事な場面で出てしまうことが印象をより悪くしている。

将来のNo.1候補との評価が妥当な特大スケール

 展開の組み立てにおいて何でもできる万能型でありながら器用貧乏に陥ることなく、どこからでも一撃で仕留める爆発力もあるテニスは将来のNo.1候補と評価されても納得の特大スケールだ。人の良さが垣間見えるメンタル面の不安はあるものの、まだまだ無限大の伸びしろを残しており、同胞の親友シャポバロフとも切磋琢磨しながら2人で清々しくトップを競い合うようなテニス界の構図を多くのファンが望んでいるはずだ。

 

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Alex de Minaur

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 生年月日: 1999.02.17
 国籍:   オーストラリア
 出身地:  シドニー(オーストラリア)
 身長:   183cm
 体重:   69kg
 利き手:  右
 ウェア:  asics
 シューズ: asics
 ラケット: Wilson Blade 98 (16×18)
 プロ転向: 2015
 コーチ:  Adolfo Gutierrez

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 高いポジションで待ち構えて強烈なサーブをいとも簡単に弾き返す類稀なリターン力と、旺盛な闘争心や圧倒的な脚力を駆使したコートカバーリングを持ち味とし、上位陣にも臆することなく立ち向かう姿が何とも清々しいオーストラリア期待のNextGenプレーヤー。スピンよりもスピード主体のシャープなストロークでチャンスを作り、ネットプレーも多用しながら相手の弱点に的確につけ込むテニス頭脳の高さ、駆け引きのうまさがデミノーの特徴であり個性だ。15年のプロ転向以降着実にランキングを上げてきていたとはいえ、もう少し下積みが必要かと思われていた中、18年シーズンの開幕とともに地元オーストラリアで大旋風を巻き起こし、ブリスベン(250)でベスト4、シドニー(250)で準優勝と若手らしく一気に注目を集める存在へと駆け上がった。そしてちょうどその1年後、19年シドニーで弱冠19歳にしてツアー初優勝を飾った。とりわけ攻撃面でパワーの不足が見られ、技術的にも少し癖のある変則的な打ち方をする分、研究されてきたときに壁にぶつかる可能性もあるが、少なくともディフェンスにおける球際の強さや守り切った末に攻めのスイッチを入れる一瞬の判断力とその切れ味は凄まじく、洗練されていないからこその激しい動きでツアーを掻き回していきそうな雰囲気が漂う。

ヒューイットを彷彿とさせる衝撃的なリターン力

 ツアーにおいて最も早いタイミングで返球すると言っても過言ではない唯一無二のリターンは彼の最大の武器である。相手の1stに対してベースライン上に立ち、そこからさらに1mほど斜め前に踏み込んで強烈なサーブをブロックする能力は、予測の良さや反応の速さはもちろん相当な衝撃を受け止めるフィジカルが要求され、華奢な身体の彼がそれを実現しているのはにわかに信じられないが、いずれにしてもラオニッチやズベレフの220km/hを超える弾丸サーブに対して倍返しの如き鋭いリターンを試合を通して返し続ける彼のセンスの高さは、王者サンプラスの難攻不落なサーブを完璧に攻略しグランドスラム初優勝を飾った時の若きヒューイットとイメージが被る部分があるほどにセンセーショナルなものだ。回転系の多い2ndへの対処も秀逸で、変化して自分に向かってくる、あるいは遠くに離れていく跳ねるサーブにも体を投げ出して攻撃に転換する。あまり特定の型を決め込まずにスイングする特性がリターンでは生きている格好だ。

大きな遠心力から直線的なショットを繰り出すフォアハンド

 イースタンに近い薄いグリップから繰り出すフォアハンドは、オープンスタンスの外側にあたる右足の踏ん張りと蹴りの強さが際立ち、また非常に大きなスイングで遠心力を使うのが特徴。握りは薄いが少し後ろの打点で捉えることをスタンダードとしており、ゆえにストレートへの展開を得意としている。中でもクロスコートの速い打ち合いからさらにコートの内側へカットインしてライジング攻撃でとどめを刺す形は痛快。また、相手がフォア側に対して中途半端な攻撃を仕掛けてきた場面で、跳び上がって高い打点をとり思い切り振り抜いて一気にクロスのオープンコートへ突き刺すカウンターはさながらデルポトロのような迫力満点のショットだ。逆襲のランニングショットだからといって走り抜けてしまわないのが彼らしさで、打球後に踏みとどまって次の対応にも隙を見せないのが卓越した点といえる。とはいえ、ギリギリの返球時には脇が開きやすい分だけ比較的体勢が崩れやすく、デミノー相手にネットに詰めるならバックよりもフォア側を突く方が有効である。そのほか頭の上に振り上げて回転量を増やし角度をつけたり、ペースを落とすムーンボールを使うこともあり、緩急のコントロールにも長けている。

体の軸回転と打点周りのフットワークが光るバックハンド

 バックハンドは体に近い打点からコンパクトな軸回転で強烈なショットを連打できる武器であり、特にクロスに引っ張るフラット系の威力は相当な脅威となる。加えて、強引にねじ込むようなストレートへの展開も備え、ボールの内側を削るように捉えることでシュート回転がかかった軌道は相手としては厄介だ。厳しい体勢からでも柔軟性を活かしてカウンターショットに繋げていける強みも持ち、そう簡単にチャンスボールを供給することはない。精度が高い要因はインパクトの瞬間には右足が左足の近くへ引き寄せられていることからも明らかなように、振り回されてもしっかりと余裕を持ってボールの後ろに入れる素早いフットワークだ。

対戦相手を脱帽させる驚異的な脚力

 ベースラインでの打ち合いは激しくポジションの上下動を繰り返し、守るべき場面では徹底的に粘る一方で、基本的には常に攻めに転じる機会を耽々と窺う姿勢を見せており、決して守備一辺倒ではなくむしろ積極果敢なプレースタイルと言っていい。純粋な足の速さなら恐らく彼が世界一と思わせるほどに動きが素早く、コート外に追い出すショットにもネット際に落とすドロップショットにも、届かないボールはないとばかりに難なく追いついては反撃してポイントに結び付ける。相手とすればお手上げ状態、たちまち攻め手が枯渇するような窮地に陥る。ストロークでの全般的な課題はゆったりとしたペースのラリーになった場合に攻め手を欠く傾向がある点。懸命に強打を仕掛けてくる相手に対してはその球威をうまく利用しながら有利な展開へと引き込んでいく強かさがある一方で、長いラリーを始めから許容しデミノーの側から打たされるような状況になると突如としてポイントが取れなくなることも多い。打開策は現状フォアのハードヒットだが、抜けるように大きくロングすることが目立ち、その精度には改善の余地を残す。また、無謀な仕掛けがミスに繋がる場面も散見され、特にバッククロスの打ち合いを我慢できず強引にストレートへのコース変更を試みる傾向があり、悪い時間帯は本来の持ち味であるしつこさが消えることがある。これは有り余る運動神経が攻撃意欲を増幅させたことの弊害といえそうだが、戦術上の問題であることから今後はアグレッシブさと粘り強さのベストバランスが徐々に確立されてくることを期待したい。

あらゆるパターンを持ち合わせるネットプレー

 サーブも含めてコート後方からのショット一本ではウィナーがそれほど見込めないこともあり、ポイントの締めとしてネットプレーを盛んに試みるのも特徴である。1stで160km/h前後の遅いスライスサーブをワイドに放ちネットに詰めるサービスダッシュ、相手のサービスへのプレッシャーを増幅させるリターンダッシュ、隙の突き方が巧みなストロークとボレーのコンビネーションなど、あらゆるパターンを持ち合わせる。技術的にはまだまだ粗削りな部分も少なくないが、剥き出しの闘志が文字通り襲い掛かってくることによる脅威は大きく、観客を乗せる意味でもネットプレーは彼のテニスを語るうえで欠かせない要素といえるだろう。

無限の伸びしろを秘めたオーストラリア希望の星

 ここに来て再び増えてきたティーンエイジャーの活躍の波に遅れまいと彼も一気に実力をつけてきており、フィジカルが完成した暁にどれほどのプレーヤーへと進化を遂げていくのか楽しみでならない。不屈のファイティングスピリットも含めて現役時代のプレースタイルが似通う元No.1ヒューイットが全面バックアップに付くという環境は、テニスの面のみならずオンオフ問わず振る舞い方を会得する意味でもこの上ない。トミックやキリオスなどの「問題児」が多い近年のオーストラリアにあっては尚更だろう。無限の伸びしろを秘めた個性溢れるデミノーの将来に要注目だ。

 

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Steve Darcis

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 生年月日: 1984.03.13
 国籍:   ベルギー
 出身地:  リエージュ(ベルギー)
 身長:   175cm
 体重:   78kg
 利き手:  右
 ウェア:  ARTENGO
 シューズ: ARTENGO
 ラケット: ARTENGO TR 900
 プロ転向: 2003
 コーチ:  Yannis Demeroutis

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 豊富なスタミナと緩急を織り交ぜた安定感のあるストロークを基盤とするバランスの良いテニスで強豪相手にも持ち前の粘り強さを発揮し接戦に持ち込むベルギーのベテランプレーヤー。07年に彼自身にとってツアーレベルわずか2大会目のアメルスフォールト(250*)で予選上がりから優勝を果たす快挙を達成すると、翌08年にはメンフィス(500*)でもノーシードからタイトルを獲得するなど、非常に勢いを感じさせる若手として注目を浴びた。以降はツアー優勝からは遠ざかっており、アップダウンも多いキャリアを過ごしてはいるものの、13年ウィンブルドン1回戦においてナダルをストレートで撃破する大金星を挙げ、彼をグランドスラム初の初戦敗退に追いやったのがダルシであり、上位陣を窮地に陥らせる高い能力は健在である。デビスカップでは05年から代表で活躍しており、15年には主力メンバーの1人として母国を準優勝に導いた。それほどサーフェスによって力に偏りはないが、プレースタイル的には芝やそれに近い速い環境の方が相手にとっては難しい試合になりやすいといえる。

バックのスライスを軸に相手のミスを誘発する巧みなストローク

 ベースラインの打ち合いでは一発で決めるビッグショットを持たない分、捉えるタイミングやボールのスピードでペースを変えながら粘り強く対抗し、チャンスには思い切った強打だけでなくネットプレーも絡めた総合力で勝負する。シングルハンドで操るバックハンドのスライスが軸となるショットで、ボールの軌道をあまり高く上げられたくない小柄な彼にとって攻守両面で重要な意味を持っている。守りの局面で際立つのは走りながらの対応でもクロスのコーナーに球足を伸ばすコントロールが乱れないことであり、追い詰められたラリーを一度イーブンに戻すことができる。また、相手としては片手打ちの弱点である高い打点にボールを集めたくなるが、そこから繰り出される上から押し込むようなスライスは重く低く滑ってくるため、逆にミスを誘発されやすくもあり、そう簡単にポイントは取らせてくれない。相手が隙を見せれば精度の高いドロップショットを多用するのも特徴で、その決定率が高いのはベテランらしく相手の動きが常に目に入っている証拠といえる。ただし、バックの8割以上がスライスというのはネットプレーヤーならともかく基本的にストローク重視の彼には多すぎる感が否めず、相手のミスはある程度計算できるとしても、自分から仕掛けてポイントを締める形が見えないのでは苦しい。遠めのボールをスライスで返球することに慣れすぎているせいか、スピンを打つ際に右足の踏み込みが足りずにミスをするケースが目につく。ここを改善し、スライスを辛抱強く打ち続けて相手の焦りを誘う戦術は使いつつも、ハードヒットの攻撃力が上がってくるともう少しプレーの幅も広がるだろう。フォアハンドはしっかりとスピンをかけて打つため、クロスや逆クロスへのショットに角度がつくのが強みとなっている。正面から打ち合っても強いが、加えて前に短く落として相手を誘き出し、その後トップスピンロブで頭上を抜いていく形も得意としている。

ベルギーNo.2として重宝される存在

 ベルギーは伝統的に小柄ながら素早さやうまさを武器とするトッププレーヤーを生んできたが、彼もまさにそのタイプで、相手を翻弄する戦術的なテニスと格上にも臆することなく闘いを挑む姿勢は非常に魅力的だ。トップレベルの座を確かなものとしたゴファンをエースに擁する中では、デビスカップでの上位進出も今後増えてくるはずで、そうなれば彼のツアーでの存在感も高まりそうだ。

 

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Marcos Baghdatis

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 生年月日: 1985.06.17
 国籍:   キプロス
 出身地:  リマソール(キプロス
 身長:   178cm
 体重:   82kg
 利き手:  右
 ウェア:  Mizuno
 シューズ: Mizuno
 ラケット: PACIFIC X Force Pro No.1
 プロ転向: 2003
 コーチ:  Pablo Perez, Juan Francisco Spina

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 ベースラインからのテンポの速いキレのあるストロークを武器に、主に速いサーフェスで強さを発揮するキプロスの英雄。06年全豪でランキング54位のノーシードながらロディックやルビチッチ、ナルバンディアンら格上を劇的に破って決勝まで進み、世界に旋風を巻き起こした。同年ウィンブルドンでもベスト4に進出し、キャリア最高の8位を記録している。ジュニア時代にはツォンガらとの激しいライバル争いを制してNo.1だった実績を持つ彼だが、明るく前向きな性格で、プレーヤーとしてのタイプが才能先行型であることが貪欲さに結びつかず、プロ入り後は期待されたほど上位に定着することはできなかった。とはいえ、その才能の高さに疑いはなく、10年にはインディアンウェルズフェデラーを、シンシナティナダルを、それぞれ彼らがNo.1の座に就いていた時期に勝利していることからも、ランキングに関係なく軽視禁物な実力者と言うことができるだろう。また、08年全豪3回戦その日のセンターコート最終試合に組まれたヒューイットとの一戦は、前の試合が長引いた影響もあったが、5時間に迫る深夜の大激闘の幕が下りたのが午前4時34分という、全豪史上最も遅い時間帯の試合を演じたことでも知られる。試合進行を妨害することも厭わない過激で猛烈なキプロス応援団はツアーでは語り草となっている。

研ぎ澄まされた感覚で切り返すカウンターが魅力のストローク

 ストロークの打ち合いでは高い位置にポジションを取り、ツアー屈指のライジング能力や非常にスムーズにコース変更をしていけるテクニックで、トップ10級の相手でも互角以上に渡り合うことができる。ショートテイクバックから無駄のないフォームで常にクリアなインパクトを確保するフォアハンドは大きな武器で、タイミングでスピードを作り出すスタイルを可能にしている。球種としてはフラット系のオーソドックスなタイプで、突出してパワーがあるわけではないが、相手のショットの力も借りつつ、鋭い切り返しで多くのウィナーを奪う。とりわけストレートに来たショットに対してクロスのオープンコートへ切り返すカウンターは威力・精度ともに申し分なく、相手とするとたとえ得意な形であっても、どうしてもストレートに展開するのを躊躇ってしまう。また、フォアに回り込んでのドロップショットも頻繁に見られるパターンだ。バックハンドは、大柄ではない分、下からラケットを出してしっかりとスピンを効かせたショットで応戦するのが特徴で、そのフォームや自在性の高さは錦織に似ていると言えなくもない。バックはある程度確率重視で粘っていくことが多いが、スライスやスピンで揺さぶりをかけられてもタイミングを外されることなく鋭いショットをクロスにダウンザラインにと打ち分けられるため、十分にウィナーもとっていくことができる。厚く押して球足を長く伸ばすスライスの組み込み方も巧みで、これで相手を後方に押し込むことで守備の強いプレーヤーからもウィナーを奪える環境を作り出している。

高いポジションで強烈に叩き返すリターン

 強烈に叩き返すリターンも相手に大きなプレッシャーを与えるプレーの1つである。ラリー戦と同様にタイミングを合わせて綺麗に返球する能力が光り、2nd時のリターンはもちろん、1stに対してもベースラインの内側でボールを捉えて、とにかく相手の時間を奪おうという姿勢が強い。

気分屋な性格が良くも悪くも反映されたメンタル

 技術的にはトップと比肩するに十分な資質の持ち主であるが、メンタル面でトップとの差を埋めることができていない。気分屋な性格がプレーに表れるのはある程度目をつむるとしても、肝心なポイントでハイリスクなショットを打って自滅を招く欠点は見直すべきだろう。ただし、集中モードに深く入り込んだ時のバグダティスは理屈では説明できないほどの無敵と化す傾向があり、相手としてはリードする展開であっても彼に少しでも追い上げのきっかけを与えないよう慎重にプレーする必要がある。

復活できるかは本人のモチベーション次第

 近年は怪我が多く、ランキングを大きく後退させてしまっているが、プレースピードがやや落ちた点以外に地力が著しく錆びついたという印象はない。どこまで復活できるかはほとんど彼のモチベーション次第といえるだろう。コート上で愛嬌を振りまきながらも闘志を前面に出して戦うバグダティスの姿をまだまだファンは見たいはずだ。

 

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