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20200215102533

Ivo Karlovic

イボ・カルロビッチ

 生年月日: 1979.02.28 
 国籍:   クロアチア 
 出身地:  ザグレブクロアチア
 身長:   211cm 
 体重:   104kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  Mizuno 
 シューズ: Mizuno 
 ラケット: HEAD Radical Pro 
 プロ転向: 2000 
 コーチ:  Goran Dragisevic, Mirko Pehar   

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 211cmというツアー最長身を武器に、リターン技術が進化した現代テニスでもほとんど触れることさえ許さない圧倒的なサービス力でエースの山を築く、テニス史上に残る超ビッグサーバー。プレースタイルは典型的なビッグサーバーのそれで、年間通算エース数や1試合のエース数、あるいはサーブスピードなどサーブ関連で様々な記録の持ち主でもある。グランドスラム初出場となった03年ウィンブルドン1回戦センターコートのオープニングマッチで前年優勝者のヒューイットを破り、一躍世界の注目を集めた。07年にツアー初優勝となったクレーのヒューストン(250*)を皮切りに、芝のノッティンガム(250*)、ハードのストックホルム(250*)を制し、フェデラー以外では異なる3つのサーフェスでタイトルを獲得した唯一のプレーヤーとなり、08年にはシンシナティマスターズでベスト4に入るなどの活躍でキャリア最高の14位を記録した。以後は存在感が薄れて下降線を辿り、13年にはウイルス性髄膜炎による離脱もあったが、彼のキャリアは14年以降30代後半を迎えてからの方がむしろ盛んで、飽くなきモチベーションでツアー優勝を重ねる姿に対しては最上級の敬意を表してしかるべきだろう。サーブの優位性が増す芝やハードでの勝率がもちろん高くはあるものの、サーブそのものの質や関連スタッツでは意外とサーフェスによる偏りは出ないタイプで、クレーでもサーブの威力が落ちないあたりは彼が並のビッグサーバーではないことを物語る。一見強面だが、実際はジョークの利いた穏やかで親しみやすい人格の持ち主である。

テニス史に残る攻略不能な超ビッグサーブ

 最速251km/hを誇り、エースやフリーポイントを量産してサービスゲームで獲得するポイントの大半を占めるビッグサーブだが、見た目の印象ではそれほど豪快さが先行するタイプではなく、むしろ力感のなさや柔らかなフォームが特徴。ラケットの出所が非常に見づらく、そこからまさに2階から打ち下ろすような信じられない角度と、220km/hをコンスタントに超えるスピード、そしてプレッシャーのかかる場面でも確率良くラインを捉える正確性を誇るサーブを攻略するのは不可能に近い。技術的には、通常のプレーヤーならセンターにしか打てない高速フラットをワイドにも打っていけるのが強みで、驚異的なエースの数を稼ぐ大きな要因となっている。それほど多くの球種を織り交ぜるタイプではないが、2mを超える身長から生まれる角度は、フラットサーブでもスピンサーブの如く非常に高く跳ね上がり、結果として相手に捕りづらい打点を強いることができる。エースは1試合平均にして20本前後を数え、ラオニッチを筆頭に下の世代からも多数のビッグサーバーが現れた今なおエースを奪う能力にかけては現役最高のプレーヤーと言っていいだろう。

ネット際に巨大な壁を築くポイント源のネットプレー

 彼の中での志向としてポイント源はサーブとネットプレーであり、サーブで相手を崩して、次を簡単なボレーで仕留めるのが主な形だ。ボレーに関して驚くほどのうまさはないが、反応は速く、シンプルに弾いてオープンスペースに鋭く運ぶ技術力もトップの間での水準以上には十分に達しており、またそれ以上にネット際にリーチの長い巨大な壁が立ちはだかることによる相手への心理的プレッシャーが、多くのポイントを生み出す要因となっている。

苦手な中にも唯一無二のショットを持ち合わせるストローク

 サーブが得意でリターンが苦手な彼の試合では長いラリーが展開されることはほとんどないが、ストロークでも印象的なショットを持っている。高い打点で捉えて上から押し込んでくるような強力なフォアハンドは、ある程度激しい打ち合いでも計算が立つショットであり、時折相手が反応すらできないようなウィナーをコーナーに突き刺すこともある。また、バックハンドの滑るスライスは角度がある分だけバウンド後のボールの軌道が並ではなく、そう簡単には対応できない癖球だ。一方で、ネットに詰める時間を稼ぎたいアプローチショットの場面では、意図的に滞空時間の長いカット系統のスライスを打つことも多い。ただし、シングルハンドのバックはその9割以上をスライスで処理するため、ひとたびそのスライスを嫌がらずに返球されると、打開策は皆無に近い。バックに配球する怖さを与えるために、チャンスがあればハードヒットすることもあるという意識を相手の頭に植え付けさせたい。また、フットワークに大きな欠点があるため、基本的に少しでも相手がライン際の厳しいコースに打ってきたり、予測の逆を突かれたりすると、ボールを追うことすらしない。このことは当然大きな弱点であるが、相手としてもストロークのリズムを掴む前にラリーが終わってしまうため、やりにくさも少なからず感じるはずだ。加えて、リターンゲームの勝率が一桁台しかないため、ブレークされるとお手上げに近い分、逆に一発狙いのような大胆な攻めを仕掛けてくる点が相手にとっては脅威となっている。

勝負所で致命的なミスを犯すメンタルの弱点

 意外とメンタル面に弱さがあり、勝敗を分ける重要な局面で弱気になって致命的な判断ミスを犯すことがあり、あれほどのビッグサーブを持ちながらタイブレークの生涯勝率が5割を切っているのもこのあたりが原因の1つである。最近では15年から16年にかけて彼にとって直接的に勝敗に関わるファイナルセットタイブレークで11連敗を喫したこともあった。

40代に入っても野心は十分、通算エース記録を更新し続ける

 故障などもありしばらく停滞した時期もあったが、健康体を維持しつつマイペースでツアーを回っている最近は再びランキングを上げてきており、いまだにサーブの完成度は年々高まっている印象さえある。中位に安定していた近年でこそ彼にシードが付くことも多くなったが、トーナメントの初戦でカルロビッチと当たるのは誰にとってもかなり厄介で、すべての上位陣を悩ませている。彼に勝つには1つブレークすることが鉄則だが、それ以上にリターンが返らないことに対して冷静さを維持し、我慢強く自らのサービスゲームをキープできるかが問われているといえる。サーブ以外の能力はトップレベルとはいえず、しばしば“サーブだけのプレーヤー”などといった紹介がされるが、このことに関して彼自身はむしろ機嫌を良くしている。「1つの能力でトップに上がれるのはすごいこと」というのがユーモア溢れる彼の主張だ。年齢を重ねて今や40代に突入、ツアー屈指の大ベテランとなった近年は故障も多いが、体に負担がかかるスタイルでもないため、まだしばらくは活躍できそう。15年には同郷の先輩イバニセビッチの持つキャリア通算エース記録の塗り替えも実現したが、彼の野心はまだまだ十分。今後も息長くプレーを続けてほしい個性派の1人だ。

 

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David Nalbandian

ダビド・ナルバンディアン

 生年月日: 1982.01.01 
 国籍:   アルゼンチン 
 出身地:  コルドバ(アルゼンチン)
 身長:   180cm 
 体重:   79kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  Topper 
 シューズ: Topper 
 ラケット: YONEX VCORE Tour 97 
 プロ転向: 2000 
 コーチ:  None   

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 ライジングの速いテンポで展開する攻撃的なストロークと卓越したリターン力を武器に、2000年代初頭から活躍を続ける元No.3プレーヤー。デビュー当初は「フェデラー・キラー」として知られるとともに、彼にも劣らぬ才能豊かな稀代のオールラウンダーとの高い評価を受けていた。初出場でファイナリストに輝いた02年ウィンブルドンや、05年マスターズカップ決勝で当時無敵を誇っていたフェデラーを2セットダウンから逆転で破り優勝したのが、テニスファンの記憶には深く焼き付いているが、すべてのグランドスラムでベスト4に進出したことがあるなど、最も強かった時期は成績の安定感も際立っていた。加えて、07年の彼の活躍が非常に印象的で、怪我の影響で凋落傾向にあったシーズン前半から一転、終盤になるとマドリードで準々決勝以降トップ3のナダルジョコビッチフェデラーを立て続けに一蹴しセンセーショナルな優勝を果たすと、続くパリでもフェデラーナダルを含むトップ20圏内のプレーヤー5人を撃破する圧倒的なパフォーマンスでマスターズ2大会連続優勝を成し遂げた。近年は個人戦よりもデビスカップでアルゼンチンを世界一に導くことに傾倒しており、ある程度のランキングを維持するためだけにツアーに出ている雰囲気さえある。しかし、1つの大会の中でも次々と強豪を倒す力を実績でもって示しているように、彼の波に乗った時は誰も太刀打ちできない強さを見せる。それは大味なプレーヤーがたまたまハマった日に見せる強さとはわけが違う、正統なテニスの中で伸びやかなショットがすべてラインを射抜いてくるというものであり、ランキングを落とした現在でも上位陣が恐れ戦く存在である。今や各大会の迷惑ノーシードの筆頭となったが、過小評価してもトップ30の力はあると見るのが妥当だろう。自宅にあるセメントのコートで育ったため、得意とするサーフェスは速いハードコートであるが、苦手なサーフェスはなく、高い技術力でどんな環境にも難なく適応する。また、プレーは常に冷静沈着な彼だが、やや頭に血が上りやすい性分が災いすることもあり、同年代のヒューイットや同胞のデルポトロとの不仲はよく知られた話である。不名誉ではあるが彼の名を聞いて思い出してしまうのは、12年クイーンズの決勝でブレークを許した苛立ちからコート内の看板を蹴り飛ばし、その破片で線審に裂傷を負わせてしまい失格処分になった出来事だ。

高速かつ正確に打ち分ける拷問のようなストローク

 ベースラインからのストロークはフォアハンド、バックハンドともにフラット系の低く鋭いショットをインパクトの感覚で左右に高速かつ正確に打ち分ける。体格も含めて決してパワーのあるプレーヤーではないが、ボールに対して素早く静かにすり寄るフットワークと、自分の力というより相手のショットの力やスピードを利用しつつコースを自在に変える出色の技術力が魅力で、相手とすれば懸命に打っているにもかかわらずそれが仇になる苦しさがある。無駄のない動きや癖のない球筋、ナルバンディアンのテニス自体は非常に優雅な一方で、対戦相手の感覚はさながら拷問だろう。持ち前の展開力で優位に立てば、前に詰めて決める場面も多く、ネットプレーの判断や技術にも隙はない。

当代最高の評価にふさわしい美しい両手バックハンド

 ツアー随一の決定力と安定性、それに加えて美しさを誇る強力なバックは彼の最大の武器である。体軸や頭の位置がまったくぶれず、ラケットヘッドだけが鋭く返る柔軟かつ再現性の高いフォームから繰り出され、高速の打ち合いで相手をベースラインに文字通り釘付けにする中で、クロスには信じられないような厳しいアングルに平然とコントロールし、またどんなタイミングからでもどんな球種に対しても鮮やかにダウンザラインへと切り返してウィナーを連発する、まさしく脅威のショットとなっている。両手打ちながら片手打ちのごとく流れるように滑らかな打ち方ができるプレーヤーは、彼を除いては後にも先にもそう多くはいないだろう。鋭いスライスを左右に散らす感覚も申し分なく、ダウンザライン強打という伝家の宝刀をここぞの場面で抜くための展開作りにも余念がない。クロス方向へのブレーキの効いたドロップショットを放つパターンも数多く見られ、ストローク戦に気を取られた相手は反応が遅れるうえ、厄介なのは決してドロップ一本でのウィナーを狙っておらずネット際の接近戦でポイントを奪いに来る点。駆け引き上手でタッチにも長ける彼の隠れた武器と言っていい。

低弾道のフラットショットで仕留めるフォアハンド

 シンプルなテイクバックから真っ直ぐボールを捉えるフォアもバック同様にクリーンにボールを打ち抜く能力が非常に高い。常にハードヒットというよりは、様々な回転やコースを使いながらオープンコートを空けて最後に低弾道のフラットショットで仕留めるのが彼の形で、どんな状況下でも理詰めのプレーができるのが大きな強みである。高い軌道の重いトップスピンは手札にないが、いかなる環境でもテンポの速さと正確性で勝負する彼にとっては無用の長物と言って差し支えない。また、ラリーの中での戦略性の高さも光り、バックのクロスコートを嫌がった相手が渾身のストレートを放ってくるのを待ち構えてクロスに切り返すカウンターショットでポイントを奪うことも多い。

相手に恐怖心すら植え付ける攻撃力抜群のリターン

 リターンにおいても最高レベルの技術を備えており、大きな武器の1つである。ハードヒットとスライスを使い分けるが、コースが甘くなることは少なく、常に深くベースライン際にコントロールして、一気に自分の展開に持ち込むことができる。特に2ndに対するリターンは圧巻で、大きくベースライン内側に入り込むことで相手の時間を奪い、かつサーブのペースを落とさずに強烈なボールを打ち返すリターンに対して、相手は恐怖心すら植え付けられる。時折相手の意表を突くリターンダッシュを試みるなど、リターンからの攻撃の展開も多彩である。サーブがトップレベルで比較するとスピードやコースなどの点でやや劣っておりブレークを許しがちであるが、その分をリターンの強さで帳消しにしている印象だ。

才能に不釣り合いな脆い精神力が最大の弱点

 冷酷な目で睨む殺し屋、定めた標的は絶対に外さない狙撃手。ゾーンに突入した時のナルバンディアンが相手を無慈悲なまでに叩きのめす姿はそうしたイメージを抱かせる。だが一方で、勝利目前で崩れる脆さがあったり、流れが悪くなった時に踏ん張る忍耐力が欠如していたり、特大の才能に不釣り合いな精神力が弱みとなってきた面も指摘せざるを得ないだろう。

技術とセンスで魅せる華麗なテニスは老いた今も軽視禁物

 年齢を重ねるごとに動きのスピードとキレが衰えつつあり、それによって各ショットの精度に狂いが生じている感はあるが、闘志そのものはまだまだ健在で、決して軽視していい存在ではないのは確か。フィジカル面に不安があり、消耗戦になりやすいクレーを戦い抜くには疑問符が付くが、一発で決まる芝や速めのハードなら彼の技術とセンスは今もトップクラスといえる。怪我が多く、もはや完全復活は見込めないが、見る者の心を掴む華麗なテニスで今後もツアーで活躍してほしいプレーヤーだ。

 

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Simone Bolelli

シモーネ・ボレッリ

 生年月日: 1985.10.08 
 国籍:   イタリア 
 出身地:  ボローニャ(イタリア)
 身長:   183cm 
 体重:   83kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  HYDROGEN 
 シューズ: Mizuno 
 ラケット: Wilson Blade 98 (18×20) 
 プロ転向: 2003 
 コーチ:  None   

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 イタリア人だが芝など速いサーフェスを得意とし、当たりが厚く球離れの早いフラット系の強力なストロークに加え、ダブルスでの実績が証明するようにネットプレーにも長けた才能豊かなオールラウンダー。サーブとキレのあるフォアとのコンビネーションが軸となる歯切れの良いプレースタイルで、ハマった時の強さには定評があり、上位陣でも窮地に立たされることがしばしばあるという要警戒プレーヤーとなっている。しかし、実際のところは15年にマルセイユでラオニッチを破るまで対トップ10で35連敗という史上ワースト記録を継続していたというのは何とも意外だ。シングルスでは実力がありながら08年ミュンヘン(250*)での準優勝が最高成績でツアータイトルはいまだ獲得できずにいるが、ダブルスにおいては同胞のフォニーニとのペアで15年全豪を制覇し、オープン化以降では初のイタリアペアによるグランドスラムチャンピオンとなった。同年はそのペアでマスターズ3度の準優勝にも輝き、ATPツアーファイナルズへの出場も果たしている。また、腕や上半身に漢字のタトゥーを彫っていたり、14年、15年とウィンブルドンで2年続けて錦織とフルセットの激闘を演じたプレーヤーとして日本での知名度も上がっている。

屈指の打球センスで志向するのはハイリスク・ハイリターン

 ストロークではテンポの速さとボールスピードで相手を圧倒していきたいのが彼の志向するスタイルで、ベースラインからあまり下がることなくライジングで鋭いボールを打ち抜くセンスはツアー屈指。球種も概してフラット系でネット上の低いところを通過するため相当なハイリスクテニスといえ、それが乗せると怖い要因でもあるのだが、体力面に不安があり長いラリーは厳しいのでミスが増えるのを覚悟で打っていくしかないという側面もあり、プレーの安定感はどうしても犠牲になってしまう。

一打で仕留める破壊力が魅力のフォアハンド

 非常に力みがなく振り抜きの良いスイングからスピードボールを連発しウィナーを量産するフォアハンドは彼の最大の武器で、その日のテニスの出来を左右する生命線のようなショットである。ラリーの中で効果的なショットを重ねて徐々に追い込んでいくのではなく、ストレート、クロス、回り込みの逆クロスなど、どのコースにも強烈なフラットショットを深くコントロールできる強みを活かして、サーブの次の一球や打ち合いの中でも初めて高い打点がとれたその一打で仕留められる破壊力が大きな魅力。相手としては軌道の高いスピンボールやネットプレーを交えてボレッリのリズムをなんとか崩していく必要がある。

強打とスライスを使い分ける硬軟自在の片手バックハンド

 厚いグリップでボールの上がりばなを上から抑え込むシングルバックハンドも展開の速いテニスにあって十分に武器として機能する。早いタイミングで捉えるハードヒットはクロスコートに直線的に引っ張っていくのが大半で、ダウンザラインへの強打は少なくエラーも目立つが、しっかりと肩を入れて構えるためストレート方向も少なからず相手に意識づけることができる。また、同じタイミングから地を這うような低く滑るスライスも多用し、高低や前後に打点を狂わせる術も持ち合わせている。フォアが剛なら、バックは柔の色彩が強いのが特徴で、面を合わせてコースを変えるカウンターや前に出てきた相手に対してアングルに落として鮮やかに抜いていくパッシングショットなどがその例に挙げられる。

威力と確率の高さを併せ持つサーブ

 サーブは威力と確率が高次元で併存し、高いサービスキープ率を実現している。1stの確率を高く維持しつつ、210km/hにも届くフラットサーブでコンスタントにエースを奪う力があり、さらに2ndのポイント獲得率も高いという総合力の高いサービスゲームを構築している。

抜群の才能が開花を見ない原因は心身の淡白さにあり

 技術的な弱点はほとんどなく、正統かつ多彩なテニスは元No.2のハースを彷彿とさせる。良くも悪くも素直なショット軌道は瓜二つといえるほど似ており、ショットの精密さや相手の弱点を巧みに炙り出す老獪さでは大きく劣るものの、パワフルな一撃による突破力では優っている。ただ、フィジカル面に大きな課題があり、オープンコートを突かれると追わなかったり、試合が進むにつれて球際での粘りがなくなる傾向がある。メンタル的にもやや執着心に欠ける部分があり、彼のテニスは良く言えば痛快だが、裏を返すと能力任せで非常に淡白。この点こそ彼がいまひとつ突き抜けた活躍ができてこなかった最大の原因だろう。度重なる怪我の影響や年齢のことを考えれば、これからのフィジカル向上は見込みにくいが、有望な若手の台頭が著しいイタリアにあってもセンスと攻撃力が抜群のテニスは十分に生き残る余地がある。世代の近いフォニーニと並び立つ天才系プレーヤーとしてまだまだ存在感を示してくれることに期待したい。

 

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Horacio Zeballos

オラシオ・セバジョス

 生年月日: 1985.04.27 
 国籍:   アルゼンチン 
 出身地:  マル・デル・プラタ(アルゼンチン) 
 身長:   188cm 
 体重:   84kg 
 利き手:  左 
 ウェア:  FILA 
 シューズ: FILA 
 ラケット: HEAD Speed MP 
 プロ転向: 2003 
 コーチ:  Alejandro Lombardo  

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 アルゼンチン人らしい飛び跳ねるようなフットワークと広角へ打ち分ける能力に秀でたストロークを基盤に、スピン、フラット、スライスと多彩な球種でどんどんとオープンコートに展開する積極果敢なテニスを持ち味とする天才肌のレフティープレーヤー。09年に選手間投票でATP新人賞に輝いた過去を持ち、元々は才能豊かな若手として期待度も高かったが、現在に至るまでその主戦場はチャレンジャーであり、なかなかツアーレベルに定着できていない。それでもダイナミックな展開力がハマった時の強さは上位陣でも警戒を要するものであり、13年ビニャ・デル・マール(250)でナダルを撃破してツアー初優勝を飾った一戦は、世界へ衝撃を与えるとともにセバジョスの真の実力を示すきっかけにもなった。また、それによってフェデラージョコビッチ、マレーを除いてクレーの決勝でナダルに勝利した唯一のプレーヤーという名誉を得ている。最近では17年全豪カルロビッチとの1回戦で5時間15分、ファイナルセット22-20の熱闘を演じて敗れたことでも話題となった。当初から単複二足の草鞋でツアーを回ってきたプレーヤーであり、実績ではダブルスが上回っていたことも事実であるが、ダブルスの方に専念しつつある近年は頂点を争う強豪としての地位を確立している。19年にはメクティッチと組んでインディアンウェルズ(1000)で、グラノイェルスと組んでモントリオール(1000)でマスターズ2勝を挙げたが、それぞれ出場2大会目と1大会目の即席ペアでの優勝であり、いかに彼の基礎能力が高いうえに相方を選ばない柔軟性が傑出しているかを証明した。成績自体はクレーが最も良いものの、彼自身は他の多くの南米出身プレーヤーと異なりハードコートが好きと話すこともある。

攻守のメリハリと一撃の切れ味が武器のフォアハンド

 左利き特有の懐の深さと巻き込むようなしなやかなスイングがコースの読みにくさを生むフォアハンドは、スピン量とショットスピードのバランスが整っており、攻守両面で彼のテニスを支えている。リーチの長さを駆使して走りながら遠いボールを処理する場面では軌道を上げて体勢を立て直し、構えて打てる際には比較的コンパクトなテイクバックながらしっかりと溜めを作ってボールを引き付け、左右のコーナーへ鋭く打ち分ける。ベースラインを境にした攻守のメリハリが光り、守るべき時にはじっくりと粘り、チャンスを待ってコート中央からフラット系の逆クロスやスピン系のクロスで攻撃のスイッチを入れるその一撃の切れ味が彼の最大の武器となっている。また、精度の高いドロップショットも武器の1つで、激しいラリーの中に変化をつけるタイミングが絶妙だ。

アングルショットやスライスの技巧が際立つ片手バックハンド

 フォアにも増して鞭のような独特なスイングから繰り出されるシングルバックハンドも、ラリーの組み立てからポイントを奪うショットまで幅広く備えた武器となっている。基本となるクロスコートが特徴的で、ボールを外側から削るように捉え、相手コートのサービスライン付近にバウンドさせることで、大きな角度をつけて相手に長い距離を走らせる。一方で、予測していないタイミングで強烈なダウンザラインを打ち込むこともあり、鮮やかに決まるウィナーも多い。全体的にスイングの軌道はアウトサイドイン、すなわちクロスに引っ張るように見えるため、ライジングでストレートを突かれると相手としては反応できない。課題はフォアに比べるとテイクバックが大きい分、ある程度構える時間が作れないと打点が詰まってミスになったり、力のない返球が甘いコースに行ったりという傾向が見られる点。とはいえ、相手の攻撃をブロックするスライス技術も高く、形勢を戻したり時にはサイドラインに沿って低く伸ばす攻撃的なスライスを使ったりと、多様な球質で応戦できるバックは総合的に安定していると言っていい。

大きく体を捻ってコースを隠すサーブ

 相手コートにお尻を突き出すような構えが目を引くサーブも左利きの有利さを存分に活かした要素となっている。大きく体を捻ることでコースを読みづらくさせ、また膝のバネを十分に使うことでパワーを出しており、これらによる高さと角度を強みとしてスライスとスピンを確実に打ち分けることで相手を苦しめる。

ダブルスで掴んだ自信をシングルスに還元できるか⁉

 なかなかブレイクしきれないキャリアが続いているが、トップ100を行き来しているのが不思議に思えるほどテニスのレベルは高い。リターンがあまり得意でないため、時折それが淡白な戦いぶりに映ることもあるが、ストローク戦ではトップとも互角に渡り合える強さもあれば、ネットプレーなどを駆使して展開を掻き回すうまさも発揮している。ここ最近は若手のパワフルなテニスに押される試合が散見されるようになっているものの、オールラウンドな戦術と技術で勝負するレフティーというのは意外に貴重な存在であり、手の届くところに来ているダブルスでのグランドスラム優勝に全力を傾注する姿勢は尊重しつつも、そこから自信を還元する形で再びシングルスにも活躍の場を広げてくれることを大いに期待したい。

 

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Juan Ignacio Londero

フアン・イグナシオ・ロンデロ

 生年月日: 1993.08.15 
 国籍:   アルゼンチン 
 出身地:  ヘスス・マリア(アルゼンチン)
 身長:   180cm 
 体重:   70kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  Joma 
 シューズ: Joma 
 ラケット: Wilson Blade 98 (18×20) 
 プロ転向: 2010 
 コーチ:  None  

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 旺盛な闘争心を前面に、フォアハンドの強打を多用したダイナミックな展開力で勝負するテニスを持ち味とするアルゼンチンのクレーコーター。20代を折り返す18年までは完全にチャレンジャーレベルに身を置く存在であり、実際に未勝利のツアーレベルではまったく名を知られていない状態であったが、19年初頭に地元プレーヤーとしてワイルドカードを貰って出場したコルドバ(250)において初勝利を挙げると、なんとその大会でツアー初優勝を飾るビッグサプライズを提供した。グランドスラム本戦デビューでバシラシュビリやガスケを下して4回戦まで進出した19年全仏を筆頭に、トップ100入りを果たして以降の活躍ぶりが彼の実力を証明しており、自分を信じて戦うことがいかに結果に影響を与えるかを改めて示したプレーヤーと言ってもいい。過去の実績を見ても、南米出身であることからも、またコート後方に位置し時間を十分に作ってひたむきにストロークの応酬に挑むプレースタイル的にも、基本的にはクレーを専門とするようなタイプだが、一方でハードコートにも意外に器用なプレーで適応して上位を相手に勝利あるいは善戦を演じることができており、今後の上積み次第では好成績も期待できる。

積極的な回り込みから波状攻撃を仕掛ける強烈なフォアハンド

 目一杯力強くボールをヒットして相手を押し込むスピンの効いたフォアハンドは彼の最大の武器だ。細身かつ決して身長も高くない彼ではあるが、ラケットヘッドが落ちることなくインパクトに向かうフォームを持つため、高く弾むクレーコートで高い打点から打ち下ろすような攻撃を得意としており、特に回り込みフォアを使いバック側から逆クロス方向へ深さと角度を変えながら連打する攻撃は脅威である。また、後ろからの打ち合いになると高い確率で相手を押し下げることができることもあり、決定打としてフォアのドロップショットを選択することも多い。フォア側の守備力やカウンターの威力も備え、ほとんど隙らしい隙は見出せないほど質の高いショットといえる。

深く返球する安定感が光るバックハンド

 バックハンドはフォアでウィナーを狙うチャンスが来るまで粘るショットの位置づけであり、ダウンザラインへの一撃は基本的に持ち合わせていないが、確実にクロスに深くボールを戻す安定感は十分。クロスにアングルをつけることで攻撃の起点となることもしばしばあるショットだ。壁のような返球能力をより向上させるためには、オープンスタンスで踏ん張って打つ技術の改善が不可欠であるものの、狭めのスタンスで腰を回す現状でもバランスを崩さないだけのボディバランスは身につけており大きな弱点にはなっていない。

2ndのポイント獲得率が証明するサーブのクオリティ

 全体的にはかなりストロークに頼ったテニスのスタイルに見えるが、サーブもまずまず良く、とりわけポイント獲得率の高さに表れているように2ndのコントロールが光る。このサーブがあるからこそラリーで主導権を握れる面もある。フリーポイントを稼げる1stを習得できるかが今後の課題といえるだろう。

プレーの幅を広げてトップ30への躍進を目指す

 コートを駆け回るスピード、ストロークのボールの鋭さ、そして何より目の前の1ポイントに執念を燃やすファイター気質と、強くなるための条件がしっかり揃っているのがロンデロであり、今までどこに隠れていたのかと逆に驚かされるプレーヤーである。ここからプレーの幅を広げることができればトップ30への視界も開けてくるはずだ。

 

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Ivan Ljubicic

イバン・ルビチッチ

 生年月日: 1979.03.19 
 国籍:   クロアチア 
 出身地:  バニャ・ルカ(ボスニア・ヘルツェゴビナ
 身長:   193cm 
 体重:   92kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  LI-NING 
 シューズ: LI-NING 
 ラケット: HEAD Extreme Pro 
 プロ転向: 1998 
 コーチ:  Riccardo Piatti 

f:id:Kei32417:20200429151810p:plain ツアー屈指の完成度を誇る強力なビッグサーブを武器とする一方で、頭脳的な戦略と秀逸なテクニックが前面に出た技巧派寄りのテニスを強さのベースとする個性豊かな元No.3のベテランプレーヤー。トップへの上昇気流が生まれたのはリヨン(250*)で当時No.1のクエルテンにサフィンとビッグネームを薙ぎ倒して鮮烈なツアー初優勝を飾った01年だった。以降しばらくは中位安定の存在であったが、05年に持てる実力を最大限に発揮しツアーで3番目に多い8度の決勝進出、その後およそ2年間トップ10の座につくきっかけとなった。そのシーズン終盤にメス(250*)、ウィーン(500*)の2週連続優勝で乗り込んだマドリードと直後のパリではいずれも決勝でフルセットマッチに敗れ、06年マイアミでも決勝で3連続タイブレークセットを落として敗れるなど、幾度もマスターズのタイトルに迫りながらあと一歩のところで逃してきたが、30歳を過ぎ明らかに停滞期に入っていた10年インディアンウェルズ(1000)でナダルジョコビッチロディックなど上位シードを次々に撃破して悲願のマスターズ初優勝を果たし、テニスファンに驚きを提供するとともに、まだまだ健在であることをアピールした。04年アテネ五輪ではアンチッチと組んだダブルスで銅メダル獲得、05年デビスカップではエースとして単複で無類の強さを見せクロアチアを初優勝に導いた経験なども持つ。最も得意なサーフェスハードコートで、とりわけインドアで球足の速い条件では勝率が大幅に跳ね上がる。また、長期に亘りATPの選手委員会の代表を務め、ツアーの改善に努めるなど、テニス界全体への献身的な姿勢から関係者間でも厚い信頼を得ている。スキンヘッドの容姿や静かに戦う姿勢から一見怖い雰囲気もあるが、実際には物腰が穏やかで、また試合中にさりげなくお茶目な動きを見せることもあるユニークな人柄である。

エースを量産する破壊力抜群のクイックサーブ

 同胞の偉大な先輩イバニセビッチを鏡に映したようなフォームから繰り出されるサーブは彼の最大の武器である。1stは主に最速220km/hを超える強烈なフラットサーブとワイドに逃げるスライスサーブを厳しいコースにコントロールしてエースを量産する。前方へのトスアップとクイック気味のモーションがリターン側への圧力を増幅させる効果があり、攻略の糸口を見つけるのが非常に難しい。また、トップレベルでも群を抜くキレを誇るキックサーブはルビチッチの代名詞と言ってもよく、凄まじい回転量によって縦の高さはもちろん、右方向に横幅の変化を出した規格外の弾みを実現している。この球種をデュースサイドのセンター、アドバンテージサイドのワイドに的確に配球できることが、2ndになってもリターンから一方的に攻め込まれることの少ない要因であり、極めて高いサービスキープ率を誇る秘訣でもある。彼のテニスはビッグサーブ以外は案外堅実で安定感重視の面が色濃いこともあり、強さのメーターを規定するのがこのサーブの調子といえる。

老獪で優雅な「柔能く剛を制す」型のラリー戦術

 彼のラリー戦を一言で表すとするならば、それは間違いなく「老獪」だ。絶品の柔らかいタッチで操る緩急自在の戦術的なストロークによって相手の武器を封じる様はまさに柔能く剛を制す。両サイドともに“点”ではなく“線”でボールを捉える感覚に長け、運ぶようなしなやかなスイングの中で打点の前後を微妙に調整する能力を持つため、ボールの出所が見づらく、そこから多彩な手札を主体的に切っていくオールラウンドなスタイルで相手を崩す。大柄な体格とサーブの迫力に引きずられがちだが、その実は柔らかすぎて一発の決め手に欠ける側面や慎重な組み立てがむしろ弱みにも見えるほどに技術・戦術の奥が深く、優雅な印象を焼き付けられるのがルビチッチのテニスの実像だ。加えて、遅いスイングで捉えているように見えてボールは豪快というのが彼のショットの特徴かつ強みでもある。長い打ち合いではあまり無理をせずトップスピンを多めにかけたキック力のある重いボールを基軸に相手を後方に押し留めたり、長短のスライスを織り交ぜて揺さぶりをかける戦術を使うことが多いが、相手の予測をうまく外したタイミングで放つ意外性のある強打はサーブ同様に十分な破壊力を備えている。

組み立てからフィニッシュまで軸となる硬軟自在の片手バックハンド

 テイクバック段階ですでにインパクトの面を固め、肩の可動域の広さを活かして大きく振り抜くシングルバックハンドは、あまり手首の返しを使わず、右肩を支点に押し出すスイングでボールを長くラケットに乗せるクラシカルな打ち方が特徴であり、足運びも含めて左右の打ち分けにフォームの差がほとんどないのが強み。スピン、フラット、スライス、ドロップなど、バリエーション豊富なショットを広角に配球し、相手にリズムを掴ませない。その組み立てにおいて光るのは直線と曲線の軌道差を使い分ける感性。回転量というよりはラケットの面の作り方と力の加減による変化と見え、ループ系のショットから一転して踏み込んで強打でペースアップする形を確立している。フィニッシュの精度も申し分なく、近めの打点から糸を引くように放たれるダウンザラインには美しさを、高く弾む返球に対して鋭角に引っ張ってサービスライン付近に突き刺すクロスコートには豪快さを、それぞれ感じさせるウィナーは相手にとって脅威。また、片手打ちにとってはとりわけ重要と言われる正確なフットワークも持ち味で、優れた予測から早めに一歩を踏み出し、そこから無駄のないステップで最適な打点に向かう。比較的大きなフォームながら常にバウンドの上がりばなで打てる理由だ。劣勢時は相手のショットのパワーを跳ね返すことができず、当たりが悪くなったり全体的に浅くなったりといった傾向が見られる。真っ向勝負で不利な場合であっても、浅い位置に何気なくコントロールするカット要素が強めのスライスを駆使してネットに誘き出すなどの「プランB」があるのが彼の強さではあるが、やはりバックの攻防で打ち負ける試合はかなり分が悪いと見て差し支えない。

後方からの一発カウンターを隠し持つフォアハンド

 ゆったりと円を描くように大きくラケットを引いていくフォアハンドは、長いリーチを活かした遠心力でボールに威力を与えるのが特徴。クロスコートには重いスピンをかけてラリーで優位に立ち、回り込んで逆クロスにフラット系を叩き込むのが1つの形で、非常にメリハリのある展開が魅力となっている。また、ベースライン後方からでもウィナーが狙える、打点をかなり後ろに引き込んで懐深くからカウンター気味にオープンスタンスで放つストレートの強打も見逃せない武器である。ただし、基本的にフォアは彼の弱点であり、下から擦り上げるスピン系特化の打ち方との相性で、攻撃に転じる際に体重が前に乗りにくく、いまひとつ鋭さに欠ける面は否めない。

繊細な感覚で操るネットプレーも総合力の証

 深いストロークで相手を押し込めば、積極的にネットに出る展開に持ち込み、器用で繊細な手の感覚を活かした正確なドロップボレーで鮮やかにポイントを奪うことが多い。やや単調なアプローチでネットについてしまいパッシングの餌食になることもあるが、試合を通して前に出てプレッシャーを与えようという意識は常に持っており、ここにも一撃ではなく総合力で勝負する彼の志向が大いに窺える。

大柄の豪快さとベテランの老練さを兼備した稀少なプレーヤー

 ベテランならではの勝負勘からか、最近は執念を見せるポイントと諦めるポイントをはっきり区別して、効率の良い試合運びに移行している印象がある。それが淡白に映ることもあるが、普段はブロックリターンが多い中で突然フルパワーのリターンを打つなど、大事な局面でかなり思い切った戦術を使ってくることもあり、その読みにくさがある意味では不気味な雰囲気を醸し出している。キャリアの中でグランドスラムでは実力の割にほとんど活躍ができておらず、マスターズ決勝での残酷な敗戦も含めて5セットマッチの弱さや試合を締める部分での甘さがしばしば指摘されるが、豪快さと老練さを兼ね備えたテニスはツアーでも非常に稀少といえ、今後も強い存在感を放ち続けるだろう。

 

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Yuichi Sugita

杉田祐一

 生年月日: 1988.09.18 
 国籍:   日本 
 出身地:  仙台(日本)
 身長:   175cm 
 体重:   72kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  Babolat 
 シューズ: Babolat 
 ラケット: Babolat Pure Drive 
 プロ転向: 2006 
 コーチ:  None 

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 強靭な下半身を活かして低い姿勢から速いテンポでボールを捌き、ラリーの展開スピードで相手を振り切っていくキレのあるストロークを武器に、錦織に次ぐ混戦模様の二番手争いを演じる日本のムードメーカー。錦織や西岡、ダニエルら現在世界で活躍する日本人プレーヤーとは異なり、国内の中学・高校の環境下において実力を積み上げてプロに転向したいわゆる「純国産」プレーヤーであり、海外留学の経験がなくとも強くなれることを証明した日本テニス界の希望とも言われている。必ずしも注目と期待に応える成績を若い頃から残してきたわけではなく、スランプに陥った時期があったり、復調の矢先に故障でランキングを落とすなど、心身ともに苦しい時期を乗り越えてきたキャリアを持つ。18回目の挑戦でようやくグランドスラムの予選を突破し本戦出場を果たしたという事実も彼の苦労人らしいエピソードといえる。それでも持ち前の不屈の闘志や自他ともに認めるストイックで愚直な性格が実を結び、30代に差し掛かろうかという時期にまさに充実期を迎えた。杉田祐一の名がツアーレベルで認識され始めたのは17年、バルセロナでロブレド、ガスケ、カレーニョ・ブスタといったクレー巧者を攻撃的なテニスで次々と撃破して飛躍のきっかけを掴むと、アンタルヤ(250)では気温40℃を超える灼熱の過酷なコンディションの中、新設大会の初代王者というおまけ付きのツアー初優勝を飾った。敏捷な身のこなしと体幹の強さでスピード勝負に持ち込む彼にとって芝や速いハードコートとの相性が良いことは実績を見ても明らかだ。

フォアの切れ味アップでスピードに磨きをかけたラリー

 豊富な運動量で素早くボールに追いつき、小刻みなフットワークを使って打点との距離感を調節する能力の高さが生み出すライジングのストロークを最大の武器とし、小柄でパワーはないものの直線的な高速ラリーに強さを発揮するのが彼の特徴となっている。戦術の基本となるのは、ベースライン付近のポジションをキープしながら安定したバックハンドを起点にフォアハンドに回り込んでハードヒットを叩き込む形。元々懐の深いバックからの展開力には定評があり、クロスのアングルを駆使してオープンコートを作り出し、非常に滑らかにコースを変えてダウンザラインへのウィナーで締めるポイントパターンを得意としていたが、ここ最近は加えてフォアの攻撃力アップが目覚ましく、高い打点をとってストレートあるいは逆クロスに強烈に突き刺すショットを完全に武器として磨き上げている。技術的には構えてから振り抜くまでに余分な動きがなく、シンプルかつコンパクトに後ろから前へ力を伝えるようなスイングでボールを捉えるため、球筋は概して低いフラット系となりスピードも出やすい。一方で、現状フォアクロスの精度・安定感にやや難があるのが課題といえる。同じフォア側のボールでもしっかりと背中側に振り切れた時はミスにならないが、守りや繋ぎを意識してスイングが緩んだり、差し込まれてラケットを振り上げる対応になるとアウトになるケースが目立っている。また、回転量の少ないフラットボールは決定力の高さという強みがある反面、重さに欠ける部分は否めない。近年の成長の要因の1つとして猪突猛進のような無謀な攻めが減ったことは事実だが、持ち味である歯切れの良さを封じられた場合に相手からミスを誘い出すようなうまさは依然持ち合わせていない。今後は打ち合いの中で球種や緩急に変化をつけて相手を崩す多彩さを手にできれば、更なる上位進出も見えてくるだろう。

進化途上のサーブ、鋭い返球に定評のあるリターン

 サーブもストローク同様にフラット系の球種を得意とし、特にデュースサイドからのセンターフラットでコンスタントにエースを奪えるようになったことが進化の証。まだまだ改善の余地を残しており、回転系のサーブの質を高めてサービスゲームのキープ率を上げていきたい。トップレベルにおいてはサービス力で劣る杉田だが、それを補って余りあるクオリティの高さを備えるのが攻撃的なリターンである。反応の速さと届いたボールを鋭く返球する感覚の良さは上位陣に対しても強いインパクトを与えている。

苦労のキャリアで身につけた不屈の闘志、見据える目標は高い

 大ブレイクを果たした17年には日本人として1つの目標とすべき松岡修造の持つ46位を抜き、次に見据えるのはグランドスラムでシードが付くランキングへの到達となる。この先マスターズのタイトルを狙うと公言するように本人も手応えを感じたシーズンであったことは間違いない。若手に負けない勢い溢れるプレーに確かな実力が加わったいま、ツアーレベルでの戦いに慣れてくれば上位定着も十分に可能なポテンシャルを持っている。ツアーレベルへの完全移行を目論んで臨んだ18年は洗礼を浴びるように勝ち星から見放され、ランキングが下降するとともに自信も喪失してしまったが、それでも気持ちが挫けることなくじっくりと下部ツアーを転戦して再びトップ100に返り咲いた事実にこそ彼の凄さがある。彼の成長が日本のデビスカップ優勝に向けて鍵を握っていると言っても過言ではないだけに、今後もトップレベルでの活躍に期待したい。

 

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Carlos Berlocq

カルロス・ベルロク

 生年月日: 1983.02.03 
 国籍:   アルゼンチン 
 出身地:  チャスコムス(アルゼンチン)
 身長:   183cm 
 体重:   81kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  FILA 
 シューズ: asics 
 ラケット: HEAD Prestige MP 
 プロ転向: 2001 
 コーチ:  Juan Martin Aranguren   

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 声を上げながらコートを激しく動き回る豊富な運動量と、非常に軌道の高いスピンボールを両サイドから繰り出し続けて打ち粘るストロークで、根比べのような長いラリー戦を制しながら心身ともに優位に立って相手を追い詰めていくタフさを持ち味とするアルゼンチンのファイター。キャリアの実績、プレースタイルともに古典的なクレーコートスペシャリストと称するにふさわしく、主戦場とするチャレンジャーレベルでの幾多のタイトルはすべてクレーの大会におけるもので、クレーでの戦いに限ればトップ10級を相手にしても巧みに自らの展開に引き込んで接戦を演じる力を持っており、14年オエイラス(250)でラオニッチやベルディヒといった強豪を破ってツアー優勝を果たしている事実がそれを証明している。打球時の唸り声が大きすぎると物議を醸したこともあるが、その是非はともかく彼の泥臭さを象徴する要素の1つである。

ムーンボールに近い高軌道で遅いペースに引き込む戦術

 堅牢な守りを実現するためにベースラインから下がって応戦するストロークは際どいコースはあまり狙わず、返球の確率を重視して放たれるトップスピンが主体。高速化した現代テニスでは回転量にボールスピードを上乗せしたショットが主流となっているが、彼の場合はネット上を通過しライン際に届くまでは高い軌道で飛んでいき最後に急激に落ちる、ムーンボールに近いスピンを操るのが大きな特徴である。したがって、基本的に活躍できる環境はクレーに限定されるが、予測の良さと鋭いボールをブロックしてコースを変えるカウンター能力にも秀でるため、意外にハードコートで戦える面もある。相手とすると1つ1つのストロークを見れば、スピードはそれほどなく浅いボールも少なくはないのだが、スローペースのラリーに誘い込まれた状況では攻撃的なプレーがなかなか出しにくく、ベルロク自身に目立った隙もないため、崩し切るための明確な戦略と武器を持っていないとかなりの苦戦を覚悟しなければならない。

綺麗ではないフォームに泥臭さが凝縮したストローク

 ラケットを寝かせながら大きく引いていくテイクバックが独特なフォアハンドは、ボールの重さによって相手の自由を奪うことができる武器で、数は多くないがチャンスには長い溜めで相手の足を止めてウィナーを取ることもできる。シングルハンドのバックハンドも彼のテニスにおいて印象に残るショットで、打点に入るフットワークが安定しているとは言い難い分、しっかりと面で捉える正確性は高くないが、フォア同様に高いところを通す意図がネットミスの回避に繋がっていることに加え、インパクト後のフォロースルーを小さめにとり、時にはスイングを途中で止めることでバックアウトにもならないのが彼なりのスタイルだ。現状上半身の体幹で抑え込んでいる側面が強いところを打点へのステップを改善することで、体重が前に乗った攻撃的なショットを増やせるかという点が今後の課題だろう。フォームやテニス全体、また風貌も含めて無骨なイメージの強い彼だが、意外に小技を多用する器用さも持ち合わせており、バックの打ち合いからクロスに短く落とす精度の高いドロップショットやその後のネットを挟む駆け引きなど、打開策として自ら展開を動かして相手を攪乱する戦術を使える点も強みとなっている。

剥き出しの闘争心は若手のパワーとスピードにも屈しない

 普通なら拾えないようなボールにも喰らいつく粘り強さを生み出す要因としては球際に強さを見せる頑丈なフィジカルはもちろん、メンタルの強靭さも特筆に値し、それゆえにデビスカップや自国開催の大会でプラスアルファの力を発揮することでも知られる。綺麗なテニスとは対極に位置するようなプレーヤーだが、決して大きくはない体で闘争心を剝き出しにして魂で戦う姿勢はそれ自体が彼の強烈な個性であり、若手のパワーとスピードに屈することなく体力と技術力で勝っていくベテランとしてまだまだツアーを賑わせてくれるだろう。

 

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Marat Safin

マラト・サフィン

 生年月日: 1980.01.27 
 国籍:   ロシア 
 出身地:  モスクワ(ロシア)
 身長:   193cm 
 体重:   88kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  adidas 
 シューズ: adidas 
 ラケット: HEAD Microgel Prestige Mid 
 プロ転向: 1997 
 コーチ:  Hernan Gumy  

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 長身から繰り出す高速サーブ、パワフルなフォアハンド、強力な球威と器用さを兼ね備えたバックハンド、ポイントを締める効果的なネットプレーなど、あらゆるプレーを攻撃的な武器として機能させるオールラウンド型のハードヒッターにして、短期間だがランキングの頂点に立ったこともあるロシアの元No.1プレーヤー。プロツアーに出始めて実質1年目の98年の全仏で1回戦からアガシと前年優勝のクエルテンを立て続けに破ったことで一躍脚光を浴びると、00年には全米の決勝でサンプラスを圧倒してグランドスラム初優勝、シーズン終盤のパリマスターズを制し弱冠20歳にしてNo.1の座を射止めた。飛ぶ鳥を落とす勢いでトップに駆け上がったことからサフィンの時代到来をも予感させたが、手首や下半身の故障や彼に少し遅れて台頭した同世代の「ニューボールズ」の存在、彼自身の精神的未熟さやモチベーション低下などが重なり、順風満帆のキャリアとはならなかった。それでも05年全豪では準決勝でフェデラーを激闘の末に撃破して前年決勝のリベンジを果たすと、決勝では地元オーストラリアのヒューイットと大観衆の夢を打ち砕き2度目のメジャータイトルを手にした。そのほかデビスカップでは02年と06年に母国ロシアを優勝に導く立役者となっており、ロシアテニス最盛期を象徴するプレーヤーの1人である。妹ディナラ・サフィーナもWTAのNo.1に立った経験を持つテニスプレーヤーで、史上初の兄妹世界1位を実現したことでも知られている。ハードコートを得意とし、中でも球足の速い条件ではトップクラスの強さを誇る。そのため年の終盤のインドアシーズンに滅法強く、マスターズ5勝のうち4つが同時期の大会に集中している。ただし、不規則なバウンドが頻繁に起こる芝は苦手にしている。

球威・技術・精度の三拍子揃った一級品のバックハンド

 小さなテイクバックから力みのないコンパクトなスイングで操るバックハンドは彼の最大の武器で、高い打点から強烈に叩き込む破壊力、球筋はミスも出やすいはずのフラット系ながら高速のラリーでもインパクトが乱れずコーナーを正確に狙い撃つショット精度、柔らかいリストワークを活かして打ち合いの中に厳しいアングルショットを交ぜる技術力すべてを併せ持つ一級品だ。相手とすると彼のバックから打ち出されるすべてのショットがどちらに飛んでくるかわからないほどコースが読みづらく、それでいてベースライン際に鋭いボールがコントロールされるため、自分の形に持ち込んで展開することができない。打点を引きつけるうまさが出所の見にくさの要因であり、特に好調時はクロスコートに角度をつけ、空いたストレートに突き刺すダウンザラインのコンビネーションが面白いように決まる。そのダウンザラインへのウィナーもコートの外側から打ち抜いたり、中央寄りから逆クロス気味の軌道で通したりとバリエーションが豊富である。また、遠いボールを走りながら返球する際の体のバランスが崩れないのも強みの1つで、左足で踏ん張り右足を引き寄せながら強く捉える一連の滑らかな動きやスライスで凌ぐショットの質も高く、決して攻撃一辺倒ではないのが凄さといえる。彼が頭角を現した頃はまだサーブ&ボレーヤーが活躍していた時代だったが、その中でも彼のバックのパッシングショットやトップスピンロブは鮮やかなウィナーを量産しネットプレーヤーに恐れられた。

スピンの効いた暴れ気味の軌道を操るフォアハンド

 フォアハンドは比較的オーソドックスなフォームから放たれ、緩いボールに対して打点を高くとり振り抜くショットには非常に重さがある。バックを得意とする分、極端な回り込みは少ないが、コート中央付近から左右に打ち分ける正確性で相手を苦しめる。非常に綺麗な球筋で放たれるバックと対比すると、このフォアのスピンはやや暴れ気味の高軌道であり、おそらく相手とすれば最も厄介な両サイドの球質の違いだろう。また、フォアはカウンターの一撃を大きな武器として備えており、追い詰められてもクロスに引っ張る強烈な逆襲で形成をひっくり返す力を持つ。バックに比べると少し安定感の面で劣り、ボールが緩く浅くなりやすい弱点は改善したいポイントである。

スピン系特化のフォームから多様な球種を繰り出す強烈なサーブ

 高い打点から叩きつけるサーブも相手に容易な返球を許さない武器の1つとして彼の攻撃的テニスを支えている。背中側にトスを上げ、体を大きく左に傾けながらスイングする完全にスピン系特化のフォームから繰り出すのが大きな特徴だが、彼の場合そのトスアップから得意とする強烈に跳ね上がるキックサーブだけでなく、リストを巧みに使ってフラットサーブやスライスサーブを操ることもでき、的を絞らせない配球でエースを多く奪う。相当な背筋力がなければできない芸当と言っていいだろう。フラットは最速では220km/hを超えてくるが、スピードだけを追求するならフォームの調整でさらに速いサーブが打てるはずだ。回転系を中心に組み立てる分、2ndになっても一方的に攻め込まれることの少ないタイプだが、とはいえ1stの確率が概して低いことは懸念材料で、プレー全体を流れるムラの多さがサーブにも当てはまる。

派手なポイントとは裏腹に不得意なネットプレー

 ポイントを締める手段としてまずまず多く使うネットへの展開ではあるが、ネットプレー単体ではとてもうまいとは言い難い。見事な反応や華やかなダイビングでボレーを決めている印象も強いが、視点を変えるとそうした派手な処理をせざるを得ない場面が多いあたり、彼があまりネットに詰める動きの流れやボレーを得意としていないことの証左といえる。

未知の潜在能力の発揮を妨げる不安定なメンタル

 技術的には極めて高いレベルですべてをバランス良く備えたオールラウンダーといえ、最終的にはパワーで押し切ることも可能な彼の獰猛なテニスは実際のところグランドスラムのタイトルをさらに積み重ねてもなんら不思議はなかったが、その巨大な潜在能力を発揮できず著しい好不調の波を生んできたのが不安定なメンタル面である。ラケット破壊と聞いてテニスファンの多くが真っ先に思い浮かべるのがサフィンの姿であり、そのほかにも納得のいかない判定には審判に激しく抗議することもしばしば。会見での歯に衣着せぬ発言なども含めて、今となってはそうした要素はサフィンのある種お茶目な一面とされているが、より完成度の高いプレーヤーになるための障壁となったことは事実だろう。

フェデラーが最上級の警戒を示すことが真の実力の証

 度重なる怪我の影響や血の気の多い性格のほか、フェデラーの全盛期に被ったことが彼のキャリアを才能以下に留めてしまった要因でもあるが、逆にツアーでは当時フェデラーを倒せるのは本気になった彼しかいないと言われ、どんなに下位に低迷していてもフェデラー本人がサフィンを警戒リストからは外せないとコメントしていることが強さの何よりの証だろう。強かった時期からは明らかに衰えたが、08年ウィンブルドンでの快進撃に見られたように乗せた時の怖さは相変わらず。今後も彼らしくプレーを続けて大会を盛り上げる存在になってほしい。

 

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Marton Fucsovics

マートン・フーチョビッチ

 生年月日: 1992.02.08 
 国籍:   ハンガリー 
 出身地:  ニーレジハーザ(ハンガリー
 身長:   188cm 
 体重:   82kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  DORKO 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: YONEX EZONE 98 
 プロ転向: 2010 
 コーチ:  Olivier Tauma 

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 派手さはないがすべてにおいて確かな技術力がベースとなったストロークを放ち続け、相手に対して根比べのようなロングラリーを強いる中で自らの持ち味である心身の粘り強さによって試合展開を支配するハンガリーの守備型ストローカー。デビスカップ・ワールドグループ入りを懸けた17年秋のプレーオフで格上の面々が揃うロシアを相手に1人で3勝を挙げる大車輪の活躍を見せて注目を浴びると、18年シーズン開幕の全豪で4回戦に進出、クレーコートジュネーブ(250)でツアー初優勝を達成するなど早々とトップ50定着を果たしている。一発の魅力を備えるタイプではないが、逆に対戦相手の側から主体的にクオリティの高い攻撃を仕掛けなければそう簡単にはラリーを終わらせてはくれない屈指のしぶとさを持ったプレーヤーとしてここ最近その存在を確立しつつある。テニスの安定性で勝負するフーチョビッチにとってサーフェスの違いはそれほど大きな戦闘力の上下に影響を与えない。実際にハードとクレーでの実力は証明済みで、オールラウンドに活躍できるプレーヤーと言っていいだろう。

柔軟な対応力で攻守の軸となるフォアハンド

 彼の土俵である長いストローク戦で攻守に渡って軸となるのがフォアハンドである。軌道の高さに変化をつけたり、ボールのスピードを中速程度に抑えながら丁寧にコーナーを突いていくのが彼のスタイル。薄めのグリップとリバーススイングも含めて基本に忠実な癖のないフォームによって、相手の強いショットや長短緩急のバラエティに富んだ球種に対する瞬時の対応力も高く、非常に崩れにくい性質の柔軟な技術力を有するとともにカウンターウィナーもしばしば見舞う大きな武器である。コートカバーリングに自信を持っていることもあり、なるべく多くフォアを使って主導権を手繰り寄せる狙いでポジションをバック側に取ることが多く、逆クロスへの重いトップスピンで相手のバランスを崩せている時の彼は相当手強く、ラケットの重みではなく軽さを活かしたスイングの速さで飛ばすハードヒットの攻撃力も水準以上だ。相手とすればなるべくフーチョビッチにフォアを使わせず、特にネットに詰める際にはフォアで対応させない戦術が必要になってくる。

両手打ちながらスライスの散らしが巧みなバックハンド

 一方のバックハンドは深いボールにはブロック系のショットで応酬し、時にはダウンザラインへの反撃も通してくる。また、浅めのボールや相手の強烈な攻撃に対する処理にスライスを頻繁に使う特徴があり、両手打ちバックのプレーヤーながらスライスの散らしを非常に効果的に戦術に組み込めることが1つの個性を形成している点といえる。ただし、それがチャンスボールに対して踏み込む姿勢が薄いように映る場合もあり、決め球を見極める判断力と一撃で仕留める決定力の向上が今後の課題だろう。

突出した確実性で相手の疲弊を誘うリターン

 ストロークで見せるミスの少なさはリターンでも同様で、一本のリターンが脅威を与えることは少ないものの、深めのポジションから確実に返球を成功させ早い段階でニュートラルな打ち合いに持ち込むうまさがあり、その蓄積が徐々に相手の疲れや気持ちの途切れを生み出す。

1stの確率を改善して隙を減らしたいサーブ

 サーブは現状やや見劣りのする要素であり、武器と呼べるレベルには至っていない。エースを数多く奪う類のサーブではなく、プレースタイルとの整合性を考えても求められるのは安定感だが、その1stの確率が低いのが難点。質の高いスピンサーブを持っており、それを1stから駆使することも含めて改善を待ちたいところだ。

持ち前の堅実さに一発の怖さが身につけば更なるステップアップも

 堅実の一言に集約できる彼のテニスであるが、すでにトップ10級とも互角に近い試合を数多く演じている。これがコンスタントに勝ち星に繋がってくるともう一段ステップアップすることになるだろう。そのためには攻撃力アップを中心に相手に対する怖さを植え付けたい。いずれにしても脂の乗った年齢にツアーレベルに頭角を現したフーチョビッチの活躍は注目だ。

 

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