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Lorenzo Musetti

ロレンツォ・ムゼッティ

 生年月日: 2002.03.03 
 国籍:   イタリア 
 出身地:  カッラーラ(イタリア)
 身長:   185cm 
 体重:   78kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: HEAD Boom Pro 
 プロ転向: 2019 
 コーチ:  Simone Tartarini 

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 軽やかなフットワークでコート上を舞い、強烈なストロークから柔らかいタッチまで極めて多彩な技術と戦術を駆使して主体的なラリー戦を展開する、特大の潜在能力を秘めたイタリアの逸材プレーヤー。ムゼッティの名を世界に知らしめたのは、バブリンカと錦織を撃破する衝撃のマスターズデビューを飾った20年ローマ(1000)だった。そして21年にはアカプルコ(500)での劇的なベスト4で19歳にしてトップ100入りを果たすと、これまたグランドスラムのデビュー戦となった全仏で4回戦まで進出し、敗れはしたもののNo.1ジョコビッチから2セット先取して追い詰める鮮烈なプレーを披露した。ベースライン後方に構えてスピンボールで組み立てるプレースタイルは当然にクレーコートとの相性が最も良いが、いわゆるクレーコーターに抱かれがちな土臭いイメージが彼にはなく、当代の「クレー版・華のあるテニス」の体現者と称したい。その華麗なテニスは色気のあるルックスともぴったりな印象で、ツアーに定着してくればファンも増えていきそうだ。

最上級のセンスを持った美しいシングルバックハンド

 随一の美しさを誇るシングルバックハンドは軌道の高低、速度の緩急、打点のタイミングなど、あらゆる変化を出すことのできる魅力的な武器である。近年は片手打ちと言っても厚い握りで体の近くまでボールを呼び込むフォームも主流になりつつあるが、彼はクラシカル寄りのしなやかなフォームを特徴とし、打点を前にとって大きなフォロースルーでボールに推進力を加えるタイプ。高い軌道を軸にラリーを組み立てる戦術が抜群にうまい点も含めて、ガスケ並みの最上級のセンスを持ったショットと言っていい。非常に強いトップスピンによって相手を押し込む形を強みとするが、これはインパクト後に手首を返すタイミングを少し遅らせることでスピンでもラケット面に厚く乗った強い打球になることが要因に挙げられる。また、ダウンザラインへの一撃も脅威で、踏み込んでライジングで綺麗に流し込むことも、相手が少し角度をつけてきた際にコート外側から逆転のカウンターで仕留めることも得意としている。さらには、スライスの質が高い点も特筆に値する。低弾道から途中で少し浮き上がるような滞空時間の長い球種を操ることができるため、ペースを落とす手段として主に守備の粘りや安定に貢献している。1つ1つのショットの質が高いうえにどの球種にも的を絞らせないため、打ち合いが長く続くほどに主導権を手繰り寄せていく。

ストレートに攻め込むショットが光るフォアハンド

 フォアハンドは基本的には回転量を上げて安定性を重視するが、一方で甘い返球に対してウィナーを狙うショットでは一気にスピードを出すこともでき、その決定力は申し分ない。とりわけストレートのコーナーにやや外から巻いてくるような軌道で攻め込むショットの精度が高い。また、チャンスにドロップショットを選択することも多く、その感覚の鋭さや接近戦における駆け引きの巧妙さも光っている。ただし、深いボールを続けられ体重を前に乗せづらい状況になるとやや当たりの弱いチャンスボールを供給してしまったり、ポジションがかなり後ろであるために角度をつけられると対応できない場面があったり、現時点ではバックに比してフォア側に多くの弱点を抱えている。

豊かな発想と秀逸な技術で幅広い戦術を操る

 相手との間に長い距離をとり、しっかりと構えて打つ時間を作ったうえで、落ち着いて広角に打ち分ける中で徐々にショットのクオリティで上回っていくストローク戦は、彼の凄さが最も発揮される領域である。強打の応酬に動じず対抗しつつ、豊かな発想と秀逸なラケットワークで技巧的な戦術を使いこなす姿はとても10代とは思えない。特にフォア側で見られるように遠くに振られた時に速すぎる返球をしてしまいオープンコートに穴が生まれる点、クレー的な遅いラリーに持ち込めずスピーディーな振り回しに遭った時に著しくショットの質が落ちる点など、いくつかの課題があるものの経験とともに十分に改善していけるだろう。

エースを奪う力を強化したいサーブ

 サーブは1stからスピン系を主体とするため確率は良く、ストローク戦の布石としてはある程度思い通りに機能している。ただ、エースやフリーポイントを奪うには威力不足の感が否めず、今後とりわけ速いサーフェスでも結果を残していくためにはおそらくこのサーブが最重要の強化ポイントになるだろう。

計り知れない才能を秘めた変幻自在の芸術的なテニス

 明らかにフィジカルが未完成にもかかわらずツアーレベルで活躍を始めていることが、彼の計り知れない才能を物語る何よりの証左だ。躍進に沸く近年のイタリアテニス界だが、その中でも次世代を背負って立つ存在として将来を嘱望されるのがシナーとムゼッティである。プレーヤー像を喩えるならば、1つ年上のシナーが高出力の精密機械、ムゼッティが変幻自在の芸術家といったところか。いずれにしてもスタイルの異なる彼ら2人が双璧となってビッグトーナメントを賑わせるATPツアーとなっていくことを大いに期待したい。