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Juan Martin del Potro

フアン・マルティン・デルポトロ

 生年月日: 1988.09.23 
 国籍:   アルゼンチン 
 出身地:  タンディル(アルゼンチン)
 身長:   198cm 
 体重:   97kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: Wilson Pro Staff 97 
 プロ転向: 2005 
 コーチ:  なし 

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 弾丸の如きスピードとパワーで相手を震え上がらせる圧倒的なフォアハンドや角度のある強烈なサーブに加え、守備面におけるリーチの長さなど、すべてのプレーにおいて198cmというツアー屈指の長身を余すことなく利用したパワーテニスで世界のトップの座を狙う稀代の大型プレーヤー。08年夏場にシュツットガルト(500*)でのツアー初タイトルを皮切りに4大会連続優勝の凄まじい勢いを見せて一気にトップ10入りを果たすと、09年にはマスターズでのコンスタントな上位進出に加えて早くも20歳でグランドスラムを制し、ビッグ4の筆頭対抗馬としての地位を確立した。全米優勝の過程ではグランドスラムで初めてナダルフェデラーを同一大会中に破ったプレーヤーとなる快挙も成し遂げている。元々はアルゼンチン人らしくフォアの強さを前面に押し出しつつも粘り強く戦うクレーコート向きともいえる守備的なプレーを展開していたが、ハードコートにも対応すべく積極的にエースを奪いにいくスタイルに変化を施した結果、攻撃力では右に出る者はいないと言われるほどのテニスを完成させ、躍進の原動力となった。パワーで相手をねじ伏せるスタイルを身上としていながら、テクニックを駆使して徐々に相手を追い込むうまさも持ち合わせている点が更なる強さを生んでいる。本来はしっかりと間の取れる球足の遅いアウトドアハードやクレーを得意としていたが、近年は速いサーフェスでの成績が際立っており、ビッグ4を食って大きなタイトル獲得があるとすればビッグサーブとフォアのハードヒットがより効果を増す芝やインドアハードになる可能性も高そうだ。次期王者候補と囁かれ始めた矢先の10年こそ右手首の怪我によりシーズンの大半を棒に振りランキングを大幅に落としたものの、完全復活を果たした11年にはシーズン序盤から徐々に彼本来のフォームを取り戻し、瞬く間にトップ10までランキングを上昇させた。13年にはトップ5に入るも、今度は左手首に重症を患い、2度の手術で復帰には2年以上を要した。16年にその試練の期間を乗り越えカムバックした姿には多くのテニスファンが心を打たれたが、中でもデビスカップ決勝において1勝2敗の追い込まれた状況、さらにはチリッチを相手に2セットダウンの窮地から奇跡的な逆転勝ちを収め、母国アルゼンチンに悲願のデビスカップ初優勝を届けたシーズン締め括りは、用意されたシナリオがあったとすればそれを超える最高のドラマだった。感情豊かで人当たりの良い性格も多くのファンを惹きつける要因の1つで、試合においてはそれが裏目に出ることもあるが、観客の声援に感極まってコート上で涙を流したこともあるなど、彼の人柄が滲み出たエピソードは枚挙にいとまがない。

男子テニスで最も"一撃必殺"の表現に合致する驚愕のフォアハンド

 彼の最大の武器であるフォアハンドは威力・精度ともに世界最高レベルを誇り、相手が誰であれ問答無用でポイントが取れる点から、現在の男子テニスで最も“一撃必殺”という表現がふさわしいショットとも言われる。スイングスピードが極めて速く、エースを狙いにいった時のショットスピードは、歓声と変わらないほどに大きな驚嘆のどよめきが漏れるほどで、規格外の反撃能力の高さで世界のトップを走るジョコビッチやマレーが唯一切り返せないショットがデルポトロのフォアと言っても過言ではない。イースタンに近い薄いグリップから、テイクバックを高くとった時にラケットの面が打球方向を向く独特なフォームで繰り出されるが、円を描くようにラケットを引いてトップが決まるとそこから一直線にインパクトに向けて振り出すことでフラット系の軌道と爆発的な威力を生み出す。際どいコースに打てなくともパワーで押し込むことができるため、ラリーの中でフォアを打つたびに形勢が彼優位に変わっていくというのが強みで、ある程度ラリーをしながら最終的にサイドライン際に吸い込まれるような精度の高いウィナーで仕留めるのが彼の志向。一発の魅力という意味ではフォアサイドからクロスコートに引っ張る豪快なショットが一番だが、相手としては彼のフォアが強いからといってバック側に集める戦術は必ずしも効果的ではなく、一瞬の隙を見てひとたび回り込みフォアを使われると、そこから逆クロス方向へ強く深いショットとコート外に追い出すアングルショットを織り交ぜた怒涛の連続攻撃を受け、粘り強く返球しても最終的に広く空いたストレートにコースを変える得意のパターンに持ち込まれてしまう。この回り込みフォアからダウンザラインに展開するショットが左側に切れていかないのが技術的に突出した点である。また、カウンターショットも魅力の1つであり、タイミングが合った時のランニングフォアは目の覚めるような凄まじいパワーとスピードで相手コートを射抜いていく。まさに1ポイント以上のダメージと恐怖感を与えて相手の気持ちすら一気にへし折ってしまうようなショットである。ミスを誘う浅めのスライスを継続的に打たれても精度が落ちない強さも持ち合わせ、低い打点からでもしっかりとウィナーが取れるため、弱点は皆無に近い。それでも彼の堅いテニスを乱すには球速の緩急をつけながら前後左右に揺さぶり、このフォア側への振り回しも一定割合で交ぜることが不可欠であるのだが。

スライスも含めた返球の安定性が突出したバックハンド

 バックハンドにおいても上がりばなを叩くハードヒットにはパンチ力があり、相手を追い込むのに十分な威力を備えているが、フォアほどリスクを冒して攻める性質のものではなく、むしろ柔らかさや安定感の方が際立っている印象だ。相手のボールに慣れるまではクロスにしか返球しないため、試合の序盤から中盤にかけてはややコースを読まれやすいものの、回転をあまりかけない低い弾道の球種を操っていながらコーナーへ確実にコントロールし回り込みを許さない守備の堅さは抜きん出ている。パワーを持ち味とするプレーヤーは裏を返せば強打一辺倒になりがちであるが、彼の場合その傾向はあまり見られず、スライスを多用するなどアクセントとなるショットも交えて相手のペースを狂わせる。ダウンザラインへの攻撃的な展開を増やせれば、ポイントを取るパターンの増加に繋がるだろう。両手首の手術を経験して以降は、強打することに不安があるのかスライスでの対応やスライスアプローチを選択する割合が大幅に増え、スピンにしても緩い返球で攻撃の流れを止めてしまうシーンも目立つが、スライス自体の質は離脱前よりも明らかに高く、深さやスピードを巧みにコントロールしつつミスはほとんど出さないため、バックは辛抱強くラリーに耐えようという姿勢が相手にとって意外に厄介なものとなっており、フォアの一発とのメリハリが生まれたのは怪我の功名といえるかもしれない。現状クロスにしか返さないスライスをストレート方向に打てるようになれば、その次のショットを得意のフォアで攻撃できる確率が高くなるはずで、このパターンを習得したい。とはいえ、クロスに飛んでくるこのスライスをうまく処理することができないプレーヤーにとってはデルポトロとの対戦はこの上なく嫌なものだろう。クロスに返すだけではスライスの無限ループに陥り、かといって安易にストレートに流せば恐ろしいフォアのカウンターが待っている。本来は早めにデルポトロをフォア側に振って一発逆転のカウンターを狙わせ、それを待ち構えてバックサイドに展開、プラスアルファでネットプレーという形が最も有効な対抗策だが、それを実行するためには何本かフォアの一発を食らっても挫けない強気なメンタルが必要になるため難しい。

高いトスから体重をぶつけていく速くて重いビッグサーブ

 高いトスからゆったりとしたフォームで体重をぶつけるサーブもまた彼の攻撃的なテニスを支える強力な武器となっている。以前は1stでもスピンをかけて入れていくサーブが中心であったため、確率は良かったもののサーブ一本で相手を圧倒できるレベルには達していなかった。しかし、躍進を遂げた08年以降は封印していた高速フラットサーブを多用するようになり、エースの数が格段に増えている。両サイドともにセンターへのサーブが得意で、とりわけデュースサイドからのセンターへのフラットサーブが生命線となっている。また、サーブの次のショットの攻撃性が非常に強く、相手のリターンが少しでも甘くなればすぐさまウィナーを狙いにいく姿勢を見せるため、相手のリターンに与えるプレッシャーをさらに増すことができている。ただし、意外にもスタッツの面では目立った数字があまりなく、強さの割にあっさりとブレークを許す場面も多い。サーブ関連の数字が上がってくれば、安定した勝ち方ができるようになるはずだ。

ラリー戦で光る相手との距離の取り方・詰め方

 ツアー随一の破壊力を持つフォア、とにかく安定して乱れないバック、強烈なサーブ、これらそれぞれのバランスが噛み合えば文字通り桁外れの強さを発揮し、誰にもその勢いを止めることはできない。彼のショットの大きな特徴はバウンド後にボールが滑ってくることで、すべてのショットがラインに乗った時のような鋭さを伴って飛んでくるため、相手はなかなか思い通りのスイングをさせてもらえない。振られた中で辛うじて届いて打ったボールでさえ浮くことはなく、直線的な軌道で飛んでくるため、デルポトロ相手に連続で攻め立てることは非常に困難を極める。また、ラリー戦で光るのは距離や間合いの取り方・詰め方であり、相手が攻めてくれば冷静に守りを固め、繋ぎに入ったと見るやタイミングを早めて展開することで、相手に対して打ち合いではどうにもならないという感覚を植え付けられる数少ないプレーヤーの1人である。

前に踏み込んで叩く技術を高めて脅威度を増したリターン

 リターンもバックハンドを中心に返球の確実性が極めて高く、長身を活かして縦横の変化にもバランスを崩されずに対応することができる。以前はバック側に高く弾む2ndに対して攻撃できない点で相手に心理的な余裕を与えてしまうため、特にビッグサーバー相手だと持ち前の攻撃力が出せず改善の余地ありとされていたが、最近は1歩踏み込んで前で叩く技術に磨きをかけ全体的な質を高めており、もちろんフォア側に甘く来ればストローク同様に容易くリターンエースを奪ってしまう。今や隙はなくなったと言って差し支えないだろう。

ベースはあくまで守備型、フォアの爆発力は最終兵器というのが実像

 攻撃面での強烈なショットの数々が印象的なテニスであるが、彼が最も居心地良くプレーできるポジションはベースラインから2m程下がった位置であり、基本的には攻撃と守備のバランスを重視したスタンスをとっている。実は彼のテニスのベースが守りにあることはデータを見ても明らかで、ほとんどの試合においてウィナーもアンフォーストエラーも相手より少ない。それでも攻撃性が失われないのは、1つ1つのショットのパワーが上回っているからということだろう。デビュー当初の粘り一辺倒のスタイルから爆発的なフォアとサーブを身につけ文字通り覚醒、そこからよりベースラインから下がらずあくまで強打という姿勢を高めることで攻撃力アップに成功したが、怪我の影響があるとはいえ現在の彼はまさに守備力だけでも勝負できるベースラインでの強さに最終兵器としてフォアの爆発力が付属しているという見方の方が実像に近く、戦い方には余裕あるいは貫禄すら窺える。性格的には内気であるが、意外にも試合では派手なガッツポーズやパフォーマンス的意味合いの強いトリッキーなショットで観客を楽しませることも多い。

やや鈍重なフットワークはトップ相手に弱点として露呈しやすい

 フットワークに関して一歩目の動き出しが悪く、振り回しに弱いという点が課題に挙げられる。コーナーからコーナーへ相手に手堅く振り回されると、大柄な体格ゆえに息が上がってしまいミスが出やすい。ある程度左右に振られると、スプリットステップを省略する傾向にあるため、ドロップショットや逆を突くショットの餌食になってしまう。ただ、致命的な弱点とはなっていないのは、長い手足を活かして長い距離を少ない歩数で追いつくことができるためであり、ディフェンシブな状況でもしっかりと意図を持った質の高いボールを返球する。こうした高い守備力を基盤とする安定性を武器にトップ10へと駆け上がったわけだが、多彩なプレーで彼を崩しにかかるトップとの対戦を考えれば、やはりやや鈍重ともいえるこのフットワークはある程度克服しなければならない。また、フィジカルの持久力という意味で懸念があることは疑いようのない事実であり、1試合単位では誰に勝とうが不思議はないが、グランドスラムを筆頭に長丁場となる大会では勝ち上がりの過程で消耗戦を強いられると精神力も含めてダウンしてしまう傾向がある。

故障癖を克服し「怪我さえなければ・・・」との評価を返上できるか⁉

 世代的にはジョコビッチやマレーの1つ下で、まだまだ成長が期待できるデルポトロだが、実力的にはすでにいつ彼らの牙城を崩してもおかしくないところまできている。ただし、基本的に慎重で、目立つことが嫌いだという性格面からの要素でもあるようだが、相手のプレーで自信を砕かれるとそこで開き直れずに自滅することがある点や、落胆の表情や疲労感を垣間見せて相手に弱みを晒すなど、メンタル面は極めて繊細で起伏が激しく、物足りなさが否めない。格下相手に苦戦を強いられることが多いのも、どうしてもメンタル的に受け身になってしまうことや、相手のレベルに合わせたテニスをしてしまうことが要因となっている。そのあたりにもう少し図太さが加わり、ややプレーがワンパターンになる点を改善し戦術面に幅広さが生まれればまさに鬼に金棒だ。14年から約2年間は怪我により全休に近い長い離脱を余儀なくされ、また19年半ばに膝の故障が深刻化して以来コートに戻ることができておらず、輝かしいキャリアに水を差す形となってしまったが、実力は過去の実績ですでに証明済みで、「怪我さえなければ・・・」と後々言われないためにもなんとか故障癖を治し、同世代の錦織らと熾烈なライバル関係を築いてテニス界を盛り上げてほしいものだ。