Diego Schwartzman
生年月日: 1992.08.16
国籍: アルゼンチン
出身地: ブエノスアイレス(アルゼンチン)
身長: 170cm
体重: 64kg
利き手: 右
ウェア: FILA
シューズ: FILA
ラケット: HEAD Radical MP
プロ転向: 2010
コーチ: Juan Ignacio Chela, Alejandro Fabbri
170cmという身長は現役では日本の西岡と並んでツアーで最も小さな部類に入るが、そのハンディを補って余りある素早いフットワークでコート上を激しく駆け回り、パワー系のプレーヤーにも打ち負けずにボールを深く打ち返し続ける力強いストロークを軸に相手を追い詰めていく、攻守のバランスに長けたアルゼンチンのハードワーカー。14年にチャレンジャーレベルで5勝を挙げてトップ100に入ると、以後スムーズに主戦場をツアーレベルへと移すことに成功し、16年にはイスタンブール(250)においてディミトロフの3度のラケット破壊によるゲームペナルティーで試合が終わるというある意味では記憶に残る決勝を制しツアー初優勝を飾るなどブレイクを果たした。17年に入っても進化のスピードは衰えず、モントリオール(1000)でのベスト8や全米ベスト8などマスターズ格以上の大会で結果が残せるようになり、ツアーでの存在感は日を追うごとに増している印象だ。18年にはリオデジャネイロ(500)でビッグタイトルの獲得も成し遂げている。最も得意とするのはクレーであるが、トップクラスのスピードで相手に差をつけることができるのはむしろハードコートの方で、俊敏な動きでどんなボールにも喰らいつく粘り強いプレースタイルはいかなる条件下でも相手を苦しめる。陽気で人懐っこく、また一方で非常に紳士な人柄が話題に上ることも多く、誰からも愛される微笑ましいプレーヤーでもある。
高い打点から叩く感覚に優れる力強くも多彩なストローク
シュワルツマンのテニスの生命線であるストロークは、ミスを最小限に抑える安定感を強さのベースとしつつも、打ち合いの中で軌道の高さやスピードの緩急、深さや角度に変化をつけながら相手を崩していく多彩さも併せ持ち、ラリーの主導権を引き寄せる能力が高いのが特徴。リーチは長くないが驚異のアジリティー能力を駆使したコートカバーリングの広さを活かして、どこからでも強気な選択で攻撃的なショットを何本でも繰り返せる再現性の高さが強みだ。フォアハンドは力負けを防ぐためにスタンスを広くとってフォームも大きく構えるのが彼のスタイルで、このあたりはヒューイットに近い感覚といえるかもしれないが、中でも高いボールを捌くのがうまく、小柄ながら体の軸がぶれることなく肩口の打点からどんどん叩いていくことができる。回り込みフォアの逆クロスを最も得意とし、どんな状況でも執拗に右利き相手のバックハンドを深く狙い撃ちできるコントロール能力は目を見張るものがある。相手をコート後方に押し留める弾道を上げた強烈なトップスピンとコートの内側に入って打ち込むフラット系の判断が良く、それが守りと攻めの出し入れのうまさに繋がっている。また、走りながらのカウンターも武器の1つで、彼の中では数少ない一発の怖さを備えたショットである。盛んにネットへの姿勢も窺わせるが、その際の浅く低いボールに対するフォアの処理がうまく、相手に効果的なパスを許さない。逆にミドルコートで高い打点から放つショットが狙いよりも甘いところに入って決め切れないケースも多く、その精度には改善の余地を残す。基本的には早いタイミングで捉えていくバックハンドは、彼の身長からは考えにくいような厳しい角度をつけたクロスへの鋭いアングルショットのウィナーを多く奪う攻撃力が光る。一方で、スピンボールを弾ませて対応の難しい高い打点を強いられた時には飛び跳ねて返球するなど自在性の高さも強みとしている。
コンビネーションで弱さを補いたいサーブ
勝敗に直結する部分での課題といえばやはりサーブになってくる。エースはなかなか計算できない分、スピンサーブを多用する工夫は見てとれ、決してサーブ自体が弱い印象はないだけに、いかに得意のストロークとのコンビネーションを磨いていくかが今後の焦点だろう。
ツアーのトップを常に争うリターン力の高さ
サービスキープ率が平凡な彼がトップ20に入る位置まで来られたのは、他方でリターンゲームの圧倒的な強さがあってこそであり、読みと反応の良さやベースライン後方からでも深さを出す正確性、加えて前掛かりになった相手の3球目攻撃を確実にオープンコートへと切り返すディフェンス力によってサーブ側に対して特大のプレッシャーを与え続ける。リターン関連の数字においてジョコビッチやマレー、ナダルらと常にツアーのトップを争っているという事実が彼のリターン力の高さを裏付ける何よりの証拠といっていいだろう。
小柄だがそのスタイルはさながらパワーヒッター
体格には恵まれていないが彼のプレーの中に非力さというのはほとんど感じさせず、小柄であることが弱点にはまったくなっていない。サイズの小さなプレーヤーがトップで活躍する場合、いわゆる技巧派もしくは粘り型がその大半を占めるが、彼はそうした特徴を備えつつも基盤は真っ向勝負大歓迎のさながらパワーヒッターであるという点に凄さがある。常に冷静さと1ポイントに対するひたむきな姿勢を維持し、突出した足の速さとコートを広く使ったセンス抜群の頭脳的な戦術でポイントを重ねるテニスは油断すれば上位陣も思わぬ苦戦を迫られる。大型化の進むツアーにあって極めて小さな身体で懸命に戦う魅力ある個性的なプレーヤーであり、現在の年齢や勢いを考えれば今後が非常に楽しみだ。