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Daniil Medvedev

ダニール・メドベデフ

 生年月日: 1996.02.11 
 国籍:   ロシア 
 出身地:  モスクワ(ロシア)
 身長:   198cm 
 体重:   83kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  LACOSTE 
 シューズ: LACOSTE 
 ラケット: Tecnifibre T-Fight 305 
 プロ転向: 2014 
 コーチ:  Gilles Cervara 

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 俊敏な動きや地面に吸着するような粘りのあるフィジカル、非常にゆったりとしたしなやかなスイングで繰り出すショットなど、長身には似つかわしくない能力の数々を駆使してコート後方に防衛網を張り巡らせ、相手の心身の消耗を待ちながらカウンターを仕掛けていく個性的なテニスで、次世代を担う存在たちの出世レースから抜け出して王者の地位を固めつつあるロシアの急成長株。戦術の軸はあくまで相手を罠に嵌めるような受け身のスタイルではあるが、それでいて能動的に弾丸のような低弾道の高速フラットショットを連発することもできる特異な能力を持ち、彼のペースに巻き込まれるとどうにも抜け出せない展開となることが多い。有能な若手が着実に育ってきているロシアにあって彼もその筆頭格であるが、パワーが前面に出たハチャノフやショットのキレで勝負するルブレフとはまた異なる魅力を持っているのがメドベデフで、一見派手さはないが相手に対してやりにくさを覚えさせるような稀有なスタイルでトップの仲間入りを果たしている。16年前半まではフューチャーズにも出ていたが、18年初頭シドニー(250)でのツアー初優勝を機に軌道に乗ると、同年後半には決勝で錦織を圧倒して優勝した東京(500)をはじめ並の実力では止められないほどの充実した戦いぶりを見せ、19年に入っても上昇気流は止まることなく、シンシナティ(1000)でのマスターズ初優勝、全米準優勝、上海(1000)でのマスターズ連勝を含む夏場以降の6大会連続決勝はテニスもフィジカルも驚異的で、若い世代のライバルたちを一気に置き去ってトップ5へと躍り出た。20年にはATPファイナルズを制覇し、翌年にかけて対トップ10の12試合を含む20連勝を記録、21年全米では絶対王者ジョコビッチの年間グランドスラムの夢を打ち砕いてついに悲願のグランドスラム初優勝を手にするなど、恐ろしいまでの実力と実績を積み上げている。基本的にはハードコートで強いタイプで、特に速いサーフェスへの相性の良さがここまでは光っている。オンコートでの振る舞いが物議を醸すことが多く、観客に対して自分へのブーイングを自ら煽ってはそれを逆に力にして奮起するという最上級のヒールぶりを発揮している。それらの賛否はもちろん分かれるが、人格面で話題に事欠かないというのもスター性の一環と言っていいのかもしれない。

動きの良さと低い姿勢、独特な球質でラリーを支配

 ストロークの魅力は左右の動きの敏捷性と低い姿勢、変幻きわまるスイングとショットの球質の独特さにある。ベースラインから距離をとって立つ分、カバー範囲は広くなるが、動きのスピードと読みの良さ、そして腕の長さを駆使して粘りつつ、球際でしっかりと膝を折り、上体を被せることで生み出した下半身のパワーを使ってボールを相手コートにねじ込んでいくのが彼の形で、相手の強打の勢いをさらに加速させるようなショットが持ち味という意味では守備的なカウンタープレーヤーと言ってもいい。2mに迫る身長が存分に生きたスタイルとは言い難いが、バウンド後に滑っていくような球筋によって相手を十分に押し込むことができるのが強みである。ボールの深さのコントロールも常人離れの域に達しており、相手の足元を狙撃するかのような深いボールを続け、次第に相手がポジションを下げると今度はその位置に届くまでに2回バウンドしそうな地を這う弾道のボールに切り替える。長身だから低いボールが有効という固定観念が通用しないプレーヤーで、少なくとも速いラリーでは膝元の打点で処理する時が最も安定している。逆に緩めの高い軌道を使われた時に自分から打ち込むショットは課題の1つだ。彼のラリーでとりわけ際立つのは、打ち合いの中でチャンスを見つけて斜め前に踏み込む巧みな判断力で、ただでさえショットが強力な中、さらにフォアなら左足、バックなら右足でステップインし、コートの内側でボールを捌かれると相手としても対応のしようがない。他のプレーヤーに比べてミドルコートでのプレー頻度が高いのは、ベースライン後方を基本ポジションとしながらも好機を見てネットもとる、コートの上下動の多い彼ならではの特徴である。

常に予測にないショットを繰り出してくるフォアハンド

 首に巻き付けるようなしなやかなフォロースルーが特徴的なフォアハンドは、打点が体に近く、かなり詰まったようにも見える打ち方でボールを捉えるが、彼にとってはそれがスタンダードで、むしろそれが懐の深さを生み、コース取りが読みにくくウィナーを多く奪える攻撃的なショットとなっている。ボールの軌道とショット選択がとにかく不思議で、中ロブのような緩いトップスピンで粘ったり、攻撃できる場面でもスライスで繋いだかと思えば、かなり後方から突然ハードヒットしてきたりと、剛柔が入り混じった「わかりにくさ」が相手の調子を狂わせる。最近特に武器としているのはサイドラインより外側に大きく振られた際に放つランニングクロスで、易々とボールに追いついてはボディバランスを保って厳しいアングルへ逆転のショットを見舞う。変化という点ではフォアからドロップショットを多用して揺さぶりをかける傾向も見られ、こうした多様なショットの出し入れで試合の形勢を変えられる力を持っており、流れが自分の方に傾くと強打の波状攻撃で相手に襲い掛かるもう1つの特徴が顔を覗かせ始める。その中では、クロスに打ちそうなボールへの入りから、直前で上半身を逃がし体の前にスペースを作る動きに切り替えることで相手の足を止め、逆クロスからストレート方向へ流し込む展開を完全に自分のパターンとしている。

打ち合いの中に緩急を与えるバックハンド

 バックハンドもフォアに負けない伸びと威力があり、体の近くまでボールを十分に呼び込んで放つ分、コースも読みにくい。低く沈み込ませた上体を必要以上に伸び上がらずスイングすることで、身体の上下動を減らし抜群の安定感を実現している。得意としているのはラリーの中で突然緩いスイングからボールの外側を削るようにスピンをかけてアングルを突き、次の一打で空いたオープンコートにダウンザラインを突き刺す形だ。また、高い打点の難しいボールに対して思い切って体を前方に傾けながらジャックナイフで叩くプレーも効果的に織り交ぜる。少し前まではやや強引なストレートへの展開でミスを重ねる場面が多く、チャンスボールの見極めが課題の1つとなっていた。技術的にもカウンター気味にラケットを合わせてのコース変更は得意とする一方で、打点直前でのステップの調整があまり優れていないためチャンスボールに対して自分から打ち込むショットは大きくタイミングを外したようなミスになりやすい弱点があったが、最近はダウンザラインへ展開する攻撃意識の高まりに伴ってそのショット精度も大きく改善し、相手に余裕を与えない姿勢が光るようになった。

鋭い嗅覚が際立つネットプレーの意外性

 ベースライン後方での粘りが身上の反面、意外にもネットプレーを多く取り入れるプレーヤーでもあり、相手のベースラインにおける武器を封じる戦略的な遂行が光る。ボレーやスマッシュが上手いタイプではなく、技術的な危うさをネットへ詰める鋭い嗅覚とダッシュ力で補っている面が強いが、ネット前の接近戦には非常に強く、今後速攻型のオプションを構築するには十分なクオリティと言ってよいはずだ。

相手を撹乱することに重きを置いた強力なサーブ

 唯一長身を活かした要素となっている強力なサーブは、一球ごとにかなりトスの位置を左右に変えるのが特徴で、相手を惑わせながらスライスサーブとフラットサーブを打ち分けることでエースを奪っていく。また、デュースサイドでサイドライン近くからワイドスライスを打ったりと立ち位置まで様々に試みることもあり、その意図や効果については疑問符が付かないこともないが、ここにも相手をとにかく撹乱することを狙う彼らしさが垣間見える。ポイント間の時間が非常に短いのも相手からすると嫌らしく、頭の整理がつかないうちにサービスキープされてしまう。特に好調時には2ndも含めてすべてのサーブが高速でラインを捉える精度を誇り、こうした時間帯は相手とすればメドベデフの調子が落ちるのを我慢強く待つほか方策はない。基本的に長い打ち合いの中から勝機を窺うタイプゆえか、あまりサーブを重視していないようにも見受けられ、全体的にコースが甘く入ることが多いためにビッグサーバーと呼べるようなポイント獲得率やキープ率が実現できていなかったが、このサーブの雑さもここ最近で解消され、少なくとも1stは試合を通してフリーポイントを量産することができるようになった。

不気味さを醸し出すツアー屈指の曲者

 技術・戦術すべてにおいて他では真似のできない独特さを持ち、さらにはどのタイミングでどの手札を切るのかという心理面が透けて見えてこない点もあいまって、非常に不気味さを醸し出すプレーヤーであり、時にはそれが裏目に出て自ら泥仕合へと嵌り込んでいくような悪癖もあるが、いずれにしてもツアーの先頭を走る強豪でありながらツアー屈指の曲者としての地位を確立していきそうだ。意地でも自分の後ろにボールを通さないしつこくまとわりつくような守備力をベースに相手の戦術と戦意を削いでいくテニスは「当代のシモン」といった雰囲気もある。相手の強烈なショットを繊細な打球感覚で緩急の変化もつけながら左右に散らす彼のテニスはかなり難易度が高く、強打をするたびにその反動でバランスを崩しているような身体の線が細い未完成のフィジカルでは操り切れていない部分もまだ多い。メンタル面でも気分屋なところがあり、良い時と悪い時の差がはっきりしていたり、時に必要以上に苛立ちを溜め込んでラケットの叩きつけを繰り返したりと若さを露呈することもある。とはいえ、その状態でもNo.1を窺う位置につける事実を踏まえれば、すべては彼の個性と片付けてしまっても差し支えないのかもしれない。今後どこまでビッグタイトルの数を伸ばし、長く頂点を争う地位に君臨していくのか大いに注目したい。