↓クリックをお願いします/↓優良スコア配信サイト 

20200215102533

Dominic Thiem

ドミニク・ティーム

 生年月日: 1993.09.03 
 国籍:   オーストリア 
 出身地:   ウィーナー・ノイシュタット(オーストリア
 身長:   185cm 
 体重:   79kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  adidas 
 シューズ: adidas 
 ラケット: Babolat Pure Strike 98 18×20 
 プロ転向: 2011 
 コーチ:  Nicolas Massu 

f:id:Kei32417:20201031181800p:plain

 運動神経の良さを活かしてコートを激しく駆け回り、リズム感の良い大きなフォームから繰り出す凄まじい強打の球威で相手の守備壁を打ち破る攻撃志向の強いテニスを武器に、近く世界の頂点を狙うオーストリア期待のハードヒッター。14年に突如として頭角を現し、15年ニース(250)でツアー初優勝を飾ると、16年にはクレー・ハード・芝の異なる3つのサーフェスでタイトルを獲得して一気にトップ10へと飛躍を果たした。ジュニア時代から、過去にベッカーやルコントを指導し、最近ではグルビスの才能を甦らせるなど、その手腕が高く評価されるブレスニクの薫陶を受けて育ってきた逸材であり、見る者を虜にする華麗なプレースタイルはスター性も十分で、次世代の中心を担う1人として大成が待たれる。すべてのショットに全身の力を目一杯使うという自らのテニスを貫く手段として、相手との距離を長くとるためにベースラインから5m下がることも厭わないスタイルにおいては、コートをカバーする範囲も相当広がるため、瞬発系・持久系ともにかなりのフィジカルが要求されるが、それが完成した暁には無限の可能性が眼前に広がるだろう。クレーコートを滅法得意とし、すでにナダルフェデラージョコビッチ、バブリンカといった歴戦の強豪を撃破する活躍を見せるなど、「次代のクレーキング」としてツアー屈指の存在感を放っている。クレーでの強さは一段階突き抜けて際立っており、全仏における16年、17年のベスト4、18年、19年の準優勝という4年連続の好成績もそれほど意外には感じさせず、ナダルという巨大な壁を打ち砕いて新しい全仏チャンピオンが誕生するとすれば彼しかいないとの認識が共有されているほどの実力の持ち主である。一方で、元々は手を焼いていた速いサーフェスにも年を追うごとに適応し、19年インディアンウェルズ(1000)でのマスターズ初優勝、そして20年全米で成し遂げたグランドスラム初優勝はいずれもハードコートであった。最近ではハードの方が心地良いといったニュアンスの発言すら増えてきている。

屈指のパワーと回転量で放つフォアハンドは豪快の一言

 リストの強さで爆発的なインパクトを作り、ボールに強烈なスピンやスピードを与えるフォアハンドは、彼の攻撃的なテニスを支える最大の武器である。上半身の大きな捻りとダイナミックなテイクバックでボールを体の近くまで引きつけ、そこから一気に巻き上げるように振り抜く鋭いスイングから放たれるフォームは、どこか若き日のロディックを彷彿とさせ、高い打点からフルパワーで打ち抜いてコーナーに突き刺すウィナーはまさに豪快の一言。主な球種は重く弾むスピンボールで、軌道を大きく上げながらもそれが守りではなく攻めのショットとして相手を押し込んでいけるのが特徴で、ネットミスのリスクは比較的低く抑えて戦える点がクレーでの強さの要因の1つといえ、ヘビートップスピンで大きく角度をつけて長いラリーを支配し、最終的には回り込みのフォアで逆クロスのアングルに叩き込む形を得意としている。また、クロスコートのラリーからダウンザラインに展開するショットも独特な魅力を持ち、サイドアウトしそうな軌道からコート内に戻してくるようなスピンを操る。フォアの回転量はツアー屈指で、彼のように肩より高い打点から斜め上方向に打ち出してもアウトせずにコート内にボールを収めることのできるプレーヤーはそう多くはいない。一方、左右に振られてもバランスを崩さずに強いボールが打てるのも強みで、守勢から一発で形勢を覆すランニングカウンターショットでも相手を脅かす。また、フォア側のディフェンスにおいては地面ギリギリの高さからスライス面で叩く対応も見事で、スピンのカウンターに勝るとも劣らない威力がある。守備力についてフォア側に限れば現在のツアーでは彼がトップではないだろうか。課題は長所と隣り合わせに接しており、ベースライン後方からでも圧倒的なショットのキレとパワーで攻撃できる能力は脅威だが、これはあまりにリスキーで、ミスになるリスクの大きさに対して距離が長い分一本で決まる可能性も高くない。理詰めの展開を作って徐々にポジションを上げた中で、チャンスボールを確実に仕留めるようなポイントパターンが増えると、安定感も出てくるだろう。

高い打点や苦しい体勢をものともしない特異な片手バックハンド

 かなり厚いグリップと肘を曲げずに引くテイクバックから、ラケットヘッドが落ちることなくボールを上から一直線に叩くようにして繰り出される独特なシングルハンドのバックハンドは、一般的な片手バックのプレーヤーよりもやや遅れ気味で一見詰まったようにも見える打点でボールを捉えるため、懐が深くコースが読みにくいのが特徴。本来胸より高い打点では力の入りづらい片手打ちだが、彼はそのあたりで捉えることがもはやスタンダードとなっており、苦もなくパワフルなショットを放つ。クレーの試合やある程度長いラリーでは、後ろ足に体重を乗せながらトップスピンをかけて高さと深さを出していくが、粘り強い返球で浅いボールを引き出すと一転、一気に前に踏み込んで強力なフラット系のハードヒットでウィナーを狙いにいく。技術的には右足の踏み込みがとれない状況で、オープンスタンスや下がりながらの苦しい体勢からでも、斜め後ろ方向に地面を蹴り上げることで力を溜めると同時に、体の前に十分なスペースを作ってストレートへの攻撃的な展開を使えるのが非常に優れた点で、下がりながらラケットを一閃してダウンザラインへのウィナーに転換する爆発力は圧巻だ。このように空中でも軸がぶれず平然と攻撃的な打ち方ができるのは強靭な体幹があってこそであり、他のプレーヤーにはなかなか真似できないティーム固有の武器と言っていい。こうした押し込まれたラリーを制する力も十分に備えているという意味では、守りながら攻める最先端のテニスを習得しているといえる。以前は早いタイミングで捉えて相手の時間を奪うショットが少なく、強打は後方でボールを呼び込んで打つことがほとんどなため、ボールに威力はあっても相手は対応できてしまうというハードヒットにおける課題があり、下がって振り抜く強打は武器として残しつつ、思い切って踏み込んでコンパクトにダウンザラインへ流す割合をもう少し増やしたい状況がしばらく続いていた。しかし、19年以降のハードコートでの目覚ましい躍進はまさにこの点を改良したことが転機だったと言ってよく、高めのポジションを保ち、低弾道のスピードショットを繰り出す頻度を大きく上げたことで、ラリーを早い段階で仕留められる展開が増えた。ダウンザラインも今や確信に満ちた高精度を誇り、ベースライン付近でライジングの打点が腰の高さになるボールには体を伸び上がりながら捉えるタイミングを完全に掴んでいる。したがって、中途半端に深い球は対ティームで最も危険であり、深さで押し込むためには相当な深さが必要で、そうでないなら角度をとって攻めた方が得策な可能性が高い。あとは特にハードコートでの試合ではクロスコートの打ち合いでもう少し深さではなく角度がついてくるとオープンコートも作りやすくなり、結果的に攻めを早くすることが可能になるはずだ。低く滑るスライスや同じフォームからドロップショットを駆使してペースを変えるのもスムーズで、特にここ最近バック全体に占めるスライスの割合が増えているが、そのアンフォーストエラーの少なさは特筆に値する。それにより戦術的な手札も数多く備えるが、実際にそれらを効果的に使えているかといえば必ずしもそうではなく、大きくポジションを下げボールを待ったうえで放つスライスは、自らのミスを減らせることには繋がっても、相手のミスを誘発する効果は限定的であり、もう少し高い位置で捌けるような技術を習得するとより相手に圧力を加える武器になるだろう。

すべてのショットに意図、フルスイングでも芯を外さない技術力

 全体として彼のストロークで際立つのは、すべてのショットに確固たる意図が見えることで、相手がバランスを崩したと見るや早いタイミングで捉えたり、逆に押されている時にはロブに近い極端に高い軌道で形勢をイーブンに戻したり、深さを求めるショット、角度をつけて相手を走らせるショット、ポイントを締めにかかるハードヒットなど1つ1つ的確な状況判断に基づいてショットを選択できる力と、それに加えてフルスイングの中でもラケットのスイートスポットを外さない技術力の高さがラリーでの強さを生んでいる。ただ、すべてのボールをフルパワーで打ち抜くスタイルは相手を防戦一方に立たせる意味で脅威だが、それが3セットないし5セット持続できるのかという疑問がおそらく彼のキャリアを通して付き纏うことにはなるだろう。破壊力抜群のハードヒットが最大の武器とはいえ、エースでしかポイントを取れないという試合展開が上位陣との対戦で目立ち、感覚が狂うと堰を切ったようにエラーを連発して自滅するのが現状弱みとなっている。

ネット際の攻防も軽やかにこなす

 基本的にテンポは上げずに常にしっかりとボールを引き込んでストロークを放ち、パワーで相手を押し切りたいのが彼の志向だが、角度をつけたアプローチやリターンダッシュなど、あらゆる形で軽やかにネットを取ってボレーで決めることもでき、とりわけ格上相手の試合では積極的にネットプレーを試みる。アプローチショットとネットに詰める動きの連動性に乏しく、全力のスイングが終わってから脚が動き始める点は向上の余地があるが。また、基本ポジションをかなり後ろに取っていることから、前に落とす展開を使われることも多いが、フォア側もバック側も自慢の脚力で素早く追いつき巧みな処理で反撃するなど守備も堅い。こうしたオールラウンドなプレーが本来できるプレーヤーだが、自信を喪失するとベースラインに固執する局面が増え始め、ストロークでも振り抜きが緩くなってボールが抜ける傾向にある。フルスイングをしている中でエラーが嵩むのはさほど問題ないが、スイングスピードが落ちている時期は要注意だ。

規格外のスピンサーブが代名詞

 ストローク同様全身を大きく使ったフォームが特徴のサーブも武器の1つで、最速220km/hを超えるフラットサーブに加え、とりわけアドバンテージサイドで多用する、強烈な回転によって外側に高く弾ませて相手の体勢を崩す規格外のスピンサーブはティームの代名詞である。また、キック系が打ちやすい体の後ろ側へのトスからスライスやフラットを繰り出すことができ、特に予測の鋭い上位陣相手には有効な技術として機能している。回転系のサーブを得意とする分、2ndでも攻め込まれず安定してポイントが取れるのも強みである。威力の割にエースが少ないのが現状では課題で、それはスピードに頼っていることが大きな要因。どんなにスピードが速くても直線的に飛んでくるボールは上位陣にとっては返しやすいサーブに過ぎない。エースを狙う速いサーブの確率がそもそも低い点も課題といえ、クレーほどスピンサーブが生きないハードコートではその精度の悪さが露見している。決してエースを量産するタイプでは元々ないが、スピンサーブを軸に据えた配球バランスに磨きをかけつつ、相手の逆を突くうまさとラインを捉える正確性を上げて勝負所で狙ってエースを奪えるようになってくると、盤石のサービスゲームを構築できそうだ。

前後のポジションで繰り出す2種類のリターン

 リターンは主にポジションを下げて力強いショットを深く返球することが多いが、2ndに対して前に入って叩くこともできるなど、十分にレベルの高い技術を備えている。ただし、技術と戦術のバランスが噛み合っていない印象もあり、ここ最近高い位置でコンパクトに合わせるリターンを強化しようという狙いが見えるが、基本的なスタンスがベースラインから3m以上下がってラリーをするタイプである分、4球目の返球ですぐにポジションを下げてしまう癖があり、早いタイミングでの鋭いリターンで甘いボールを引き出せているにもかかわらずそのチャンスを活かし切れていないのがもったいない。また、シンプルなブロック系の増える時間帯には相手がそれを見抜いてサーブ&ボレーを使ってくる傾向も見られ、このあたりの駆け引きにもう少し狡猾さが欲しいところではある。加えて、意外にもタイブレーク突入率が高いのが気がかりな点で、リターン力とは別にブレークを奪う力という面で向上の余地を残している。加えて、リターンゲームに限らず、格下相手でも接戦のロングマッチが多いのは試合全体をマネジメントするうまさがまだ培われていないからだが、ここに改善が見られて勝ち方に貫録が出てくれば本格的にトップに定着する下地が整ったといえるだろう。

敗戦を糧にできる忍耐強いメンタリティ

 駆け出しの頃に、将来の有望株としてワイルドカードを貰ってツアーに出場するのではなく、予選を戦い抜いて自ら出場権を勝ち取ってきたことで、メンタルの強さが着実に培われているのも今後の展望が明るい理由の1つ。シーズンを通じて気持ちが切れることが少なく、調子が悪くても勝利に漕ぎつけられるのがコンスタントに結果が残せている要因だ。しばしば彼の人柄について「好青年」と表現されることがあるように、試合の中でも人の良さが顔を覗かせ、明らかに硬さが出て敗れるようなシーンもあるが、彼が素晴らしいのは敗戦を糧に次の対戦では明確に戦略を変えて戦うなど着実に成長した姿を披露するところだ。

GSチャンピオンの肩書きを提げて成熟期へ突入

 全体にフォームが大きい分、速めのサーフェスでは強打の後の対応が遅れがちな弱点がある。速いリズムの打ち合いではショットの軌道を上げきれず、彼にとってややオーバーペースとなりミスが出やすい。とはいえ、そうした弱みを露呈するのはほとんどトップ10級との対戦に限られており、メンタル的な焦りから攻め急ぎが生じてのミス増加と見ることもできる。つまり、彼のような頂点を目指すスターにとってこれは避けられないプロセスであり、経験を積む中で自然と改善されてくるだろう。チャンスになると突然手足の動きが硬くなるなど、外から見て精神面の浮き沈みがわかりやすい点は解消したいが、各ショットの猛烈な球威は十二分に上位陣を脅かしており、現段階ではむしろパワーとスピードを軸に自身特有の勢いを存分に活かしつつ、フィジカルレベルの向上に努めるとともに、戦術的には繋ぎのショットとハードヒットの緩急を操れるようになりたいところ。技術的・戦術的に課題も多く残されているが、トップにも臆することなく立ち向かう果敢なメンタリティと躍動感溢れるテニスで、ファンのみならずATPをはじめ多くの関係者も太鼓判を押す。当代の2強であるジョコビッチナダル両者にとって下の世代で最強の敵がティームであり、「予測はできても力で粉砕される」という稀有な脅威が心技体のすべてに堪える。ついにグランドスラムのチャンピオンに仲間入りし成熟期へと足を踏み入れクレバーさをも身につけたティームの活躍から目が離せない。