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Stefanos Tsitsipas

ステファノス・チチパス

 生年月日: 1998.08.12 
 国籍:   ギリシャ 
 出身地:  アテネギリシャ
 身長:   193cm 
 体重:   90kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  adidas 
 シューズ: adidas 
 ラケット: Wilson Blade 98 (18×20) 
 プロ転向: 2016 
 コーチ:  Apostolos Tsitsipas 

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 長身を活かした強力なサーブ、長い腕をしなやかに使いキレのあるスピードボールを操るストローク、相手の隙を確実に突く巧みな判断力を軸とする戦術的かつ攻撃的なテニスでツアーに若手旋風を巻き起こす1人として注目されている急成長株のオールラウンダー。ボールを当てる感覚にずば抜けて優れ、後ろから厚く叩くのはもちろん、意図的にラケット面を斜めに当ててコースを変えるなど、高等技術を簡単にこなす稀代のプレーヤーだ。ジュニア時代にはNo.1を記録したこともある才能の持ち主であるが、ギリシャ人としてはATP史上初めてトップ100に入ったプレーヤーで、これからのキャリアでは同国のテニス史を築き上げていくことになるだろう。17年終盤に本格化の兆しが見え始めると、18年バルセロナ(500)でクレーの強さは屈指を誇るティームを下すなどの活躍によりツアー初の決勝に進出した。そして20歳になる直前に迎えた同年のトロント(1000)ではティーム、ジョコビッチ、A.ズベレフ、アンダーソンを連続で撃破してマスターズ準優勝に輝くと同時に、それは1大会の中で4人のトップ10から勝利を挙げた史上最年少プレーヤーとなる快挙でもあった。ラリーの中でコートの内側に踏み込み、タイミングを早めて相手を振り切る元来のプレースタイルはハードや芝で生きるタイプといえるが、18年はフィジカルの強化も伴い基本ポジションを下げて粘り強く応戦する中で持ち前の球威と展開力を活かす、明らかにクレー向きのスタイルに寄せたところにブレイクを見た。その土台固めが完全に功を奏し、飛ぶ鳥を落とす勢いそのままに19年全豪ではベスト4に駆け上がる活躍で無限の潜在能力を覗かせた。4回戦でフェデラーの3連覇を阻止した一戦は様々な共通点から、01年ウィンブルドンで若武者フェデラーが王者サンプラスを撃破したあの4回戦と重ねて「世代交代の象徴」と見る向きも強い。同年は夏場に勝てない時期も経験したが、終盤にかけて復調すると、初出場となったATPファイナルズで並み居る実力者を次々と退けてキャリア最大のタイトルを獲得した。21年全仏で初めてグランドスラム決勝の舞台を踏み絶対王者ジョコビッチの前に2セットアップから敗れて涙したが、トップの牙城を襲うに限りなく近い能力を証明し続けている。また、テニスプレーヤーとして活動する傍ら、自身のYouTubeチャンネルで観光の様子を紹介するエンターテイナーとしての顔も併せ持ち、非常に楽しみながら世界を転戦している雰囲気がなんとも微笑ましい青年だ。一方で、時に傲岸不遜な振る舞いや行き過ぎた悪態をついて、相手や観客の顰蹙を買うこともしばしば。そうした必ずしも優等生タイプではないところが人気の獲得に繋がるのか、はたまたツアーのヒール役としての地位が確立していくのかは今後注目したい

独特の感性が一撃の切れ味に還元されたフォアハンド

 向かってくるボールを体全体で受け止めるようなオープンスタンスに特徴はあるが、テイクバックからフォロースルーに至るラケットの動きは非常にシンプルで、いかなる状況でも当たりの厚い強力なショットを繰り出すことのできるフォアハンドは彼の最大の武器である。テイクバック時点でインパクト面がすでに開いているフォームは決して回転量を上げやすい類ではないが、打点の下からラケットを入れるスイング軌道や状況に応じた多様なフォロースルーなど、彼独特の感性がショットの至る所に散りばめられている。スピンの効いた球種により攻守に渡って我慢強く展開を作る強みを持つが、一方で力みのない鋭い振りでボールを加速させる能力はセンスの高さを思わせ、一撃の切れ味も要注目。特にフォアクロスのラリーにおけるボールの勢いが突出しており、守りながらも相手を押し込むことができる。また、回り込んだ際に逆クロスよりもストレートに一気に引っ張ってウィナーを奪う形を得意としている。外側から巻き込むスイングをしてしまうと左に切れていきやすい高難度のショットだが、彼の場合はボールを真っすぐに押し込む技術があるため精度が高く、相手にとっては落ち着いてラリーをさせてくれない点で脅威である。

立体的でダイナミックな展開を作るシングルバックハンド

 薄いグリップから柔らかいフォームで肘を抜きボールを下から上へこすり上げるクラシカルな技術に、後ろ足体重でもハードヒットで返球する現代的なエッセンスがバランス良く融合したシングルバックハンドは、高い軌道のトップスピンで深さと角度を自在にコントロールした立体的でダイナミックな組み立てと崩しを可能とする完成度の高いショット。ガスケやティームと並んでツアートップクラスに位置する回転量を活かした距離の長いクロスコートの打ち合いは相手にとって脅威だ。ライン際で急激に落ち、強烈に跳ね上がってくるショットにより相手の自由なコース変更を制限すると、自らのタイミングで確実にダウンザラインへの攻撃を仕掛けていく。基本的に外側からボールを巻き込む技術がベースにある分、ストレートへのウィナーが数として多いタイプではないものの、その手札を切った時の決定率は極めて高い。また、スライスでのかわす判断も巧みで、相手を崩して自分で決めるパターンまで持っていける我慢強さもあるため、とにかく簡単にポイントを落とさない。ただし、スライスは技術的には大きな欠点を抱えており、右足を踏み込んで打つことが得意でないため体重が乗らず、どうしてもチップ系の弱い球になってしまう点は大いに向上の余地がある。そのほか攻撃面では決めにかかったショットで少し力んで打点が詰まり威力を失う場面があるのが現状では課題といったところか。

ボールへの正対姿勢が無駄の少ない身のこなしを支える

 テニスの進化を体現したプレーヤーであることを彼から感じるのがベースラインでの身のこなしだ。ボールスピードの上がった現代は、ボールに対してクローズドに踏み込む動きが場合によっては無駄で隙を生むが、そこを彼は基本的にボールに対して常に正対してすべてのショットを放つ。それでいてライジングなどの主体的な攻撃的な打ち方にも対応する。将棋の桂馬の動き方に喩えたいような前身の動きを伴いながらベースラインの内側へ斜めに切れ込んで攻め込む得意なショットはこの能力あってこそで、前後の盛んな動き直しやチャンスを見逃さない嗅覚もあいまって、獰猛なまでに機動的な攻撃テニスを遂行する。守備においてもオープンコートを作らせない堅実な動きが光り、無闇にランニングショットをしないため、仮に1つ1つのショットが多少甘くても、体勢が整っている分だけ攻め切られない。見栄えが良いかは別としても、間違いなく効率的といえる。また、勝負における強みという意味ではフォア、バックともにラリー中のショットの球筋が必ずしも綺麗すぎないことも挙げられるだろう。やや暴れ気味の複雑な回転を意図的に操って相手のペースを乱している。

思いきった判断と丁寧な処理が光るネットプレー

 万能型のテニスを支える要素としてはネットへの積極性も見逃せない。特定の形を作ってネットに詰めるというよりは、相手が隙を見せた瞬間に素早く動き出すイメージで、その思い切った判断力に長ける。アプローチショットも秀逸で、必ずしも速いボールを選択しないことで、ネット前の良い立ち位置を確保するとともに、相手にラケットを合わせる強烈カウンターを打たせない効果もある。ボレーはラケットの引きを極力抑えた非常に丁寧なタッチで主に短く落としてポイントを締める。

全球種を高度に操るサーブ

 高い打点から叩き落とすサーブも彼の武器の1つで、特に綺麗なフラット軌道で最速220km/hを超える高速サーブを得意する。コースとしては両サイドともにワイドを生命線としており、相手に対して十分な意識づけをしておいて、大事な場面でセンターを使うのが彼の傾向だ。パワーだけでなく、十八番としているワイドスライスの入る厳しい角度やその驚異的な精度、スピンサーブの跳ね上がりも水準以上で、なかなかリターン側に的を絞らせない。ただし、トスがやや後ろに上がる分体重が後ろに残りフォア側へのリターンに対応が遅れる点や、ラケットを深く担ぎ過ぎる点、着地後に右足が前方に跳ねてくることからも分かるように上半身が回り過ぎる癖がある点など、技術的に改善の余地が大きいのも事実である。多数の課題を残しながらにして数字上では強力なサービスゲームを築いているのは凄さでもあるが、それらが解消されると更なるスピード上昇も含めたレベルアップも期待できる。

激昂して冷静さを欠く場面と時間は減らしたい

 試合の中でアップダウンの激しいメンタル面は評価が難しいところ。流れを掴んだ時の相手を置き去りにして突っ走る集中力の高さは称賛に値する反面、思い通りのプレーができないと陣営や審判も含めいろいろなものに激昂する場面も見られる。それをすることで一度に怒りを吐き出せているならば少なくともパフォーマンス上は問題ないのだが、彼は数ゲームからセット単位で明らかに冷静さを欠くこともしばしばで、プレーの選択やチャレンジ権の乱発など分かりやすく崩れる傾向がある。また、重要な一戦で有利に進めながら試合の締めで意気込み過ぎて却って肩に力が入ることも多い。タイムバイオレーションの警告を頻繁に受けるのも不安定な精神面が原因だろう。感情を出すこと自体は悪いことではないが、それがメンタルから来る疲労感にも繋がっていることを考えると、総合的にはやはりもう少し落ち着くべきと言わざるを得ず、要改善点の筆頭に挙げておきたい。

技術と力技、攻撃と守備、すべてを備えたスタープレーヤー

 脱力感のある無理のない技術力を駆使してコートを広く使い、確実に相手の弱点を突いてポイントを重ねていくテニスはすでに成熟度が高く、パワーが封じられたら技術と戦術を使うことができ、逆に揺さぶりが効かなければ力技で突破することができる。後方ではフィジカルで耐え凌ぎ、コート内側ではリズムで躍動。すべてを兼ね備えた紛れもないスタープレーヤーであり、一方で同時にまだまだ若手らしい勢いを存分に活かせるいま、一気にトップを窺おうかという位置まで来ている。若い世代の活躍が目立つ近年のツアーだが、中でも10代のうちにトップレベルに食い込むことに成功したチチパスの潜在能力は特筆に値する。長い目で彼の成長を見守っていきたいところだ。