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Denis Shapovalov

デニス・シャポバロフ

 生年月日: 1999.04.15 
 国籍:   カナダ 
 出身地:  テルアビブ(イスラエル
 身長:   185cm 
 体重:   75kg 
 利き手:  左 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: YONEX EZONE 98 
 プロ転向: 2017 
 コーチ:  Peter Polansky, Mikhail Youzhny 

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 運動神経の良さが前面に出たアクロバティックな身のこなしから、見ていて気持ち良いほどのフルスイングでボールを強くヒットしウィナーを量産する攻撃的かつ華やかなプレースタイルを持ち味とし、近い将来テニス界の頂点を争うようなスタープレーヤーへの大成が期待されるカナダの超新鋭レフティー。16年にウィンブルドンジュニアを制したところから彼のプロキャリアは走り始めたが、シャポバロフの名が一般に知られることになったきっかけは、17年デビスカップ1回戦において試合中に苛立ちからコート外へ打ち出そうとしたボールが主審の目を直撃してしまい失格処分を受けた出来事だった。意図的な行為でないとはいえキャリアに汚点を残しかねない重大な事故であったが、彼はこの悪夢に真摯に向き合い、まさにこの経験を糧にして成熟したプレーヤーへと急成長を遂げ、モントリオール(1000)では自国開催による大声援を背にデルポトロやナダルを撃破して史上最年少(18歳4ヶ月)でマスターズのベスト4を記録し世界に衝撃を与えた。20歳を迎えた19年にはシーズン終盤にテニスの質を劇的に洗練させ、ストックホルム(250)でツアー初優勝、パリ(1000)ではA.ズベレフやフォニーニら強豪を一蹴して決勝に進出、集中開催に変更されたデビスカップでは有力なチームメイトが軒並み故障で欠ける中で単複に大車輪の活躍を見せ、カナダを史上初の準優勝に導いている。チャンスと見るや電光石火の如く守から攻へと切り替え、迷わずどこからでもウィナーを狙っていく積極果敢なスタイルは、クレーよりも芝やハードコートへの適性が高い。また、風に靡く金髪のロングヘア―や少しサイズの大きいキャップのベルトをきつく締めて被るユニークなファッション、18年オフに趣味の一環で制作し公開したラップなどが彼のトレードマークとなっており、テニス以外の部分においてもカリスマ性を感じさせるスケールの大きさが魅力だ。

全身の力を圧倒的な球威に還元する一級品のフォアハンド

 テイクバックを高くとる左手の動きとバランスをとる右手の伸ばし方が非常に美しいフォアハンドは彼の最大の武器で、膝を深く曲げて体を沈み込ませたところから強く地面を蹴ることで下から上へのパワーを、右肩の深い捻りから常に背中側へ鋭く振り切ることで自然と上半身が大胆に回るフォームによって後ろから前へのパワーを、それぞれ最大限ボールに伝えられることが圧倒的な球威を生み出す要因となっている。厚い当たりで捉えるため非常に距離が出せるショットと言うこともでき、あまりボールが浅くなることがない。中でも得意とするのはダウンザラインへのフラット系の強打であり、ツアー屈指のパワー・スピード・伸びを誇るこのショットは一級品と呼ぶにふさわしい。打点を引きつけて打つ能力が高いため、押され気味のラリーからカウンターエースを奪える強みもある。フォアで攻める意識がかなり強い分、回り込みを使う頻度も高く、センスの良さを感じさせるリズミカルなフットワークでうまく体を逃がしながら逆クロスとストレートに打ち分ける展開は相手に脅威を与えている。やや逆クロスが外に切れるミスが目立つ点は今後の課題となってくるだろう。基本的にウィナーかエラーかといった良くも悪くも歯切れの良さを売りにしてはいるが、打ち合いの中で相手を苦しめるのはクロスコートを抉るようなパワフルなアングルショットである。あれだけウィナーを重ねていけるのは相手を外側に追い出してオープンコートを作るこの技術力あってこそといえる。

羽ばたくような鋭い振り抜きで強烈なスピンをかける片手バックハンド

 フォア同様にダイナミックなフォームから繰り出されるシングルバックハンドも魅力に富んだショットである。現代のトレンドともいえる引きつけた打点から、風を切る音が聞こえてきそうなほどのスイングスピードで強烈なスピンをかけるのが技術的な特徴で、フォアほどウィナーは多くないが、クロスに放つショットに大きな角度がつくため、十分に相手を動かせる武器として機能している。また、チャンスボールで魅せる、軽快に高く跳び上がって羽ばたくようにラケットを振り抜くウィナーはまさに一見の価値ありだ。フォームが大きい分、速いラリーではコントロールミスも散見されるが、片手打ちにとって最も重要と言われるフットワークは比較的安定している。素早く半身の構えを作り、しっかりと左足の踏み込みをとって打つ頻度が高いのがその証明であり、浅いボールに対して瞬時にコートの内側に入ってライジングで攻めに転じる感性やその際の巧みなラケット捌きは、少なからずフェデラーに近い印象がある。課題は追い込まれた時のディフェンスショットの質の向上だろう。体重を後ろにかけながらループボールで返球する独特な戦術は有効だが、スライスで凌ぐ場面を増やせれば、守から攻への切り替えの間に展開をイーブンに戻すというステップを挟むことができ、戦い方に安定感が加わるはず。そのスライスの質が低いのが明確な技術的課題で、ラケットを振りすぎるためにカット系の回転が強くかかり、あまり威力のない緩い返球になることが多かったのだが、スライスの名手と言ってもいいユーズニーがコーチに就くと、瞬く間にそのエッセンスを吸収し球質を向上させた。

質の高い数種類のサーブを持つが安定感に難あり

 凄まじい攻撃性を貫く彼のテニスを語るうえではサーブの強力さも外すことができない。決して身長は高くないが、膝のバネと体の反り返りを目一杯使い、210km/hを超えるフラットサーブ、左利き特有の切れるスライスサーブ、高く弾ませるスピンサーブなど、あらゆる球種を駆使して多くのフリーポイントを奪っていく。特に印象的なのはスピンサーブで、跳ね上がりの勢いはレフティーの中ではトップクラスと言っても過言ではなく、リターン側とすればボディー寄りに来たサーブが滑って体に近づいてくるのか、あるいは弾んで体から離れていくのか、回転と軌道を読むのがかなり難しい。ただ、ダブルフォルトの多発が武器になるべきサーブを却って弱点にしてしまっているような面があり、リードした試合の流れをしばしば急転直下させる原因となっている。1stの確率そのものや相手の予測を外す配球術などと並行して改良し、サービスゲームの安定感を手に入れたい。

元々の攻撃センスにスライスの安定感が加わったリターン

 返球確率の低いリターンは徐々に克服していかなければならない弱点だ。ブロックリターンの感覚には優れ、相手の1stにもベースライン付近でコンパクトに合わせて強烈に弾き返す技術をこの若さで習得しているのは非常に明るい材料といえる。しかし、確率重視の意識があまりにも低く、リターンミスで相手が労せずポイントを重ねることを許してしまっている。特に改善したいのは2ndに対するバックのリターンで、跳ね上がるサーブをベースライン上付近で返そうとしているが、これは片手打ちにとって最も難しい高さでの処理になりやすい。早く叩くならもう一歩前、持ち前の回転と球威を活かすなら大きく下がるのがより得策で、その間の非常に中途半端な状態であったが、19年終盤の大活躍はリターンの質改善に負う部分が大きく、強いサーブに対してラケットを差し出してスライス面で確実に返球するリターンが増え、またその精度も高まったことで、苦しんでいた姿がまるで嘘のように安定感を手に入れている。これにより今後は逆に一発はあるがミスの確率も高いフォア側への配球が幾分増えることが予想され、その時の彼の適応力にも注目だ。

積極果敢な前進が清々しいネットプレー

 サーブやストロークからの自然な動きの流れで移行するネットプレーも武器の1つで、積極的なネットアプローチから天性の柔らかいタッチで多くのボレーウィナーを生み出す。並外れたセンスがあるがゆえに自分から難しい処理にしてしまうきらいは少しあったり、あとは流し込むだけのようなフィニッシュボレーで信じられないミスが多発したりと、評価の難しい部分はあるものの、ストロークにおけるプレースメント範囲の広さは驚異的なレベルにあるだけに、ツアーレベルの強烈なパスに慣れ、ネット際でのプレー精度を高めればまさに鬼に金棒。仕掛けの早いテニスの更なる進化に向けて、このネットプレーのレベルをどこまで引き上げられるのか注目だ。

強靭な足腰が飽くなき攻撃意欲を支える

 足腰に相当な強靭さがあることがベースラインから下がっても攻撃力が落ちないという特徴に繋がっており、フィジカルの強さがあるのも大きなアドバンテージである。攻めるために無理をして前に立つ必要もないため、全体にフォームが大きいことが弱点にならないのも強みだろう。デビュー当初は華奢な見た目と裏腹にフィジカルが強いという印象であったが、現在は肩回りや腰回りの大きな筋肉が目を引くほどまで体が大きくなっており、この先トップに長く定着するために引き続き長期的視野を持ってフィジカルの完成に取り組んでほしいところだ。

旺盛な闘争心を絶やさないタフなメンタル

 試合開始の1ポイント目から「Come on!」と雄叫びを上げ、どんなに劣勢でも常に自分を鼓舞しながら観客とともに流れを呼び寄せる旺盛な闘争心も目を引くポイントの1つ。恐ろしいまでの躍動感で試合を支配できるのもメンタルのタフさに与る部分が大きい。苛立ちから集中力を欠くこともまだあるが、基本的に非常に明るく前向きな性格の持ち主で、間違いなく今後さらに世界中のテニスファンの視線を釘付けにしていくことだろう。

末恐ろしいポテンシャルを秘めたスター性抜群の逸材

 テニス史に残る4人の王者が同時に君臨する稀有な時代を見上げて育ってきた末恐ろしいポテンシャルを持つシャポバロフというニュースターの誕生が、いわゆる「NextGen」世代全体の飛躍を後押しする効果も大いに期待できる。タイミングや力加減を大幅に誤るような経験不足からのミスが続く粗削りな部分があったり、その他基本の部分で再徹底が必要な弱点を露呈するなど、課題はまだ山積みである。ほんの僅かな隙を見つけては一撃で仕留める戦い方は、そのためのセンスと能力がある彼だからこそ標榜できる超高難度のテニスであるが、結果を追求するためには特大の爆発力という長所を殺さない程度の「秩序」が必要だ。ファンとしては彼がいつビッグタイトルを獲るのかと気持ちが逸るが、未だ伸びしろ十分な将来のNo.1候補として長い目でその成長を見守りたい。