Taylor Fritz
生年月日: 1997.10.28
国籍: アメリカ
出身地: ランチョ・サンタフェ(アメリカ)
身長: 196cm
体重: 86kg
利き手: 右
ウェア: NIKE
シューズ: NIKE
ラケット: HEAD Radical MP
プロ転向: 2015
コーチ: Michael Russell, Paul Annacone
長身から繰り出す角度のあるビッグサーブとスピンの効いたストローク強打を軸とした攻撃的なプレースタイルで、ATPがプロモーションを打つ“NextGen”世代の筆頭格として世界が期待を寄せるアメリカの新星。WTAツアー元トップ10のキャシー・メイを母に持つテニス一家の生まれで、15年に全米ジュニアを制した後にプロに転向すると、まもなくチャレンジャー大会2週連続優勝を果たし、一気に18歳にしてトップ200に名を連ねる存在になった。年を跨いでもその勢いは衰えず、16年メンフィス(250)ではツアーレベルの出場わずか3大会目にして決勝に進出。日本の錦織に敗れたことで記憶にも残るが、これはアメリカ人プレーヤーとしては88年マイケル・チャン以来の若さでの「スピード出世」となった。その後思い通りに成績が伸びない時期もあったが、プレーの成熟度を増した18年頃から再浮上の兆しが見え始め、19年イーストボーン(250)でツアー初優勝を飾った。決して遅くない時期にトッププレーヤーのレールに乗ることができたと言っていい。また、COVID-19の世界的蔓延を理由に約半年に亘ってツアーが中断した期間の鍛錬によって最も進化したプレーヤーの1人であり、21年にはインディアンウェルズ(1000)でベレッティーニ、シナー、A.ズベレフらトップ10級の相手を連続で撃破してベスト4に入る活躍を見せるなど、勢いに乗り歯車が嚙み合えば一気にグランドスラムすら獲っても不思議ではない雰囲気を醸し出しており、実際に22年には得意のインディアンウェルズ(1000)でマスターズ初制覇を達成している。
角度と独特なタイミングを武器とするサーブ
高さが生み出す角度とクイックに近いモーションによる独特なタイミングが相手を大いに苦しめるサーブはフリッツの最大の武器である。現状ではトスアップの位置や体の開きの違いから比較的コースを読めるサーブにはなっているが、それにもかかわらずエースを量産できるのはとりわけフラットサーブに関してはある程度読まれても返球を許さない威力とラインを捉える精度があるからといえる。最近はスライスサーブやスピンサーブの質も高めてきており、1stが安定して入っている時間帯は多くのショートポイントでサービスゲームを簡単に片づけることができる。打点の高さや精度のムラなどまだまだ向上の余地は残しており、真のビッグサーバーへの進化を期待したい。
ボールの外側を削るスピン系の球種が強烈なフォアハンド
ストロークはパワーがあるが、そこに硬さはなくむしろ力に頼らない柔らかいテクニックも備える点で、強力なストローカータイプを相手にしてもしっかりと打ち合える対応能力の高さが強みだ。それでもやはりポイントを奪ううえで武器となるのはライン際に打ち抜く強烈なフォアハンドである。肘を曲げた中で腕をしなやかに使って振り切るフォアは、ボールの外側を削るスピン系の深いショットで応戦するクロスコートの打ち合いに強く、主導権を握れば強打の中でも自分に合ったペースにコントロールしながら徐々に追い込む組み立てを見せ、決め切れる場面をしっかりと判断してステップインしフラット系のウィナーを狙う。通常時からやや打点が詰まり気味にも見えるフォームだが、パワーと長いリーチがある分だけ実際に押し込まれてもコートの外側からでも鋭い返球ができ、時折見せる形勢逆転のカウンターショットも相手に脅威を与える。
爆発力と柔らかさを兼備するバックハンド
バックハンドは状況に応じて深く突き刺すショットとアングルに落とすショットを使い分けるが、それぞれスイングの際の左手の使い方が非常に巧みで、彼のプレーの柔らかさを象徴する技術となっている。甘いボールに対して正確なフットワークで前に踏み込んでタイミングを早める攻撃を得意とし、特にクロスに叩き込む強打の爆発力はフォアにも引けを取らない。この技術は相手の2ndに対する攻撃的なリターンにも活かされている。走らされて低い打点を強いられた時のバックが以前は課題であり、上体が前方に大きく折れて軸がぶれていたが、近年は左右への厳しい振り回しにも耐える球際のフィジカルとディフェンス時に簡単にはミスを出さない返球技術を高めたことで大きく改善した。俊敏な動きに基づく守備の安定性を手に入れたことで、結果的に持ち前の攻撃的なテニスがより高い頻度で出せるようにもなった。
多彩なポイントパターンの習得が鍵
今のところサーブが強くリターンは不得意、攻撃は良いが守備に回ると弱いという近年のアメリカ人プレーヤーのタイプの範疇を出ておらず、彼らのようにトップ10手前までは行くがそこで頭打ちという形にならないためには、フィジカルの強化と並行してポイントに結びつけるパターンを多彩に習得しておきたい。ようやくツアーのハイレベルな戦いに慣れ、疑いの余地のない本来のポテンシャルの高さを発揮し始めたフリッツのトップへの道のりを長い目で見守っていきたい。