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Milos Raonic

ミロシュ・ラオニッチ

 生年月日: 1990.12.27 
 国籍:   カナダ 
 出身地:  ポドゴリツァモンテネグロ
 身長:   196cm 
 体重:   98kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  New Balance 
 シューズ: New Balance 
 ラケット: Wilson Blade 98 (18×20) 
 プロ転向: 2008 
 コーチ:  Mario Tudor 

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 圧倒的なサービス力にものを言わせた攻撃性溢れるテニスで台頭すると、同世代の中では最前線を走り、ビッグサーバーからオールラウンダーへと変貌を遂げる中で将来のグランドスラムタイトルも期待されるカナダのスタープレーヤー。10年東京の楽天オープンでの活躍で本格化のきっかけを掴んだこともあってか、お寿司好きを公言する日本贔屓のプレーヤーでもある。彼が最初にニュースターと称賛されたのは11年、全豪で予選から4回戦に進出して勢いに乗ると、2週間後にはサンノゼ(250)でツアー初優勝を果たすなど、年初の156位から2ヶ月で37位まで上昇させる大ブレイクを見せ、同年のATP新人賞を受賞した。13年自国モントリオール(1000)でのマスターズ初決勝進出をもってトップ10入り、以後様々な箇所の怪我に苦しむ時期もあったが、16年にさらにプレーの質を進化させてサーブに頼らないスタイルを確立すると、ウィンブルドンでは準決勝のフェデラー戦で2年前の雪辱を果たし準優勝に輝いた。サービス関連スタッツのほとんどの部門でトップを独占するビッグサーブを軸とし、思い切って回り込んで打つフォアとそれに伴うネットプレーがプレーの見どころ。彼に敗れたプレーヤーの多くが「テニスにならない」といったニュアンスの発言をするように、彼との試合では長いラリーはほとんどなく、良くも悪くもラオニッチ本位で進んでしまうため、主導権というものを握るのは非常に困難である。彼の強さが最大限に発揮されるサーフェスハードコートで、中でも北米ハードを最も得意とし、ヨーロッパシリーズよりも北米シリーズで特に成績が良い傾向がある。とはいえ、芝では彼のサーブの強さがさらに強調され、クレーでは得意のフォアで打てるケースが増えるため、ハード以外のサーフェスでも力はほとんど落ちない。また、WTAツアーで活躍するブシャールとともに近年カナダのテニス人気に火をつけた功績は高く評価される。ここ最近はプレー中も崩れないがっちり固めたヘアスタイルが彼のトレードマークとなっている。

圧倒的な威力でエースを量産する難攻不落なビッグサーブ

 ラオニッチの代名詞といえるサーブは、モーションの最初の段階でラケットのインパクト面が上を向くほど極端に薄いグリップでリストワークの可動性を高めているのが特徴だが、他の部分は割合シンプルで、トスやフォームに乱れが生じることもなく安定感がある。220km/hをコンスタントに超え、最速では250km/hにも届いたことがある破壊力抜群のフラットサーブに加え、ワイドに鋭く切れていくスライスサーブ、相手の身長よりも遥かに高く跳ね上がるキックサーブなど球種も多彩で、そのすべてが一流のクオリティを備える点で当代最高のサーブを持つプレーヤーと言ってよい。ストロークの精度に自信が増してきた最近は1stでも2ndでも高速サーブをボディにぶつけて、次のチャンスボールで決めるパターンを増やしており、返ってくることを前提に配球を組み立てるクレバーさも際立っている。これによりやや目立っていた確率の低さまで改善され、一層安定したサービスゲームを構築している。また、余裕のある場面で布石としてダブルファーストを多く使っておくことで、勝負所の2ndに対して前に入らせない大きな牽制効果を生んでいる。驚異的な決定力でエースを量産するビッグサーブはもちろん、そこから一気に仕掛けていく攻撃力の鋭さなど、サービスゲームはまさに難攻不落で、その支配力は間違いなくツアーナンバー1に位置する。逆に上位陣がその攻略法としているのは、ブロックリターンに代表されるように、ゆったりとしたボールを深くリターンすることであり、速い展開で畳み掛けたい彼はこうして考えさせられるリターンの方が苦手意識が強い。そのほか緊迫した場面では1stがネットにかかるシーンが目立つが、これは明らかに力みからくるミスであり、トップを目指すうえで壁となっているジョコビッチとマレーに勝つにはこのあたりの改善も不可欠だろう。

長い腕をしなやかに使うパワフルかつ柔軟なフォアハンド

 ストロークにおいては長い腕を活かした弧の大きさを使って、強いパワーのあるボールを飛ばそうという意思の下、テイクバックとフォロースルーが非常に大きいしなやかなスイングが特徴のフォアハンドが大きな武器となっている。完全に後ろ足重心で構え、しっかりと回転をかけることに重点を置いてスイングするが、近年は厚い当たりからインパクト後にボールを押し出す意識を高めた結果、よりショットの重さとスピードが増しており、回転とスピードを両立させるハイブリッドなフォームを手に入れたようだ。元々ラリーの中で先に相手を押し込むことができれば、バックサイドからの回り込みフォアを多用した波状攻撃を展開し、どんなに守備の強い相手からもウィナーを連発できる爆発力があったが、そこにスピードを落として逆クロスの浅いところに落とし込む驚異的なアングルショットも加わり、変化をつけるうまさも身につけた。また、低く滑ってくるスライスに対してもリバーススイングを使うなどして難なく鋭いショットに転換できる対応力や柔軟性も備えており、完成度は非常に高い。低い打点を強いられてもさほど攻撃力が落ちないのが、他の長身プレーヤーにはない強みだ。

スライスで凌ぎながら攻撃の機会を窺うバックハンド

 バックハンドはフォームにやや硬さがありラケットヘッドの返りがスムーズでないためミスが多く、特にバリエーション豊富なボールを確実にバックに集められて、回り込めない状況を作られると良さを消されてプレーが崩れることがある。できる限り高頻度で得意なフォアで打つために、基本ポジションをややバック側に取っていることが多いが、クロスラリーでバックサイドを執拗に意識させられた末に、広く空いたフォア側へストレートに流されるとほとんど反応できないのが現状で、ベースラインでのポジショニングは長所でもあり同時に短所でもある。それでも最近の改善は目覚ましく、相手との間合いの中で一度タイミングを掴みさえすれば、クロスにもストレートにも強烈なウィナーを取れ、また相手の回り込みフォアの逆クロスをバックでストレートに切り返す能力も習得している。ここ最近はスライスの割合を増やして自らのバランスを保ちながら、浅いボールにはすかさずスライスアプローチで攻勢をかけるのが彼の形だ。相手としては以前までなら得意なフォアも含めて打たせておけばミスを出してくれていたが、今のラオニッチに勝つためには少なからず自分から攻める必要があり、そのためには彼のフォア側に先制攻撃を仕掛けてバランスを崩すことが1つの鍵といえ、過去の対戦の印象に引きずられて単にバックに集めてしまうと決定打にならないどころか先にネットに出てプレッシャーをかけられてしまう。

アプローチからボレーへの流れが滑らかなネットプレー

 サンプラスに憧れた少年時代を過ごしただけあって、ラリーの中でも常にネットを窺う姿勢を見せる。現在のツアーで前に出るタイミングが最も早いプレーヤーの1人であるという事実は、まさに彼のネットプレーに対する自信の裏付けと言ってもいいだろう。実際、柔らかいタッチも強く叩くボレーもしっかりとこなすなど、ボレーの技術は高いレベルにある。足元のボールに対してはローボレーよりも一度落としてハーフボレーでの処理がうまいという特徴を持つ。スマッシュも得意なプレーの1つで、ロブで頭上を抜かれることもほとんどない。しかし、上位は彼のサーブ以外にはそれほど脅威を感じておらず、彼自身もそのことを自覚しているせいか、あまりに強引な形でネットについてしまう癖がある。もう少し自らのストロークに自信を持ち、しっかりとした形を作ってネットに詰めたいところだ。また、ネットへ出る際のアプローチショットと前への動きの連動性が高いのが1つ特徴で、非常にスムーズにネットにつけることも高いポイント獲得率に寄与している。

守備力とリターンの目覚ましい改良がトップ5への原動力

 弱点は例によってフットワークとリターンということになる。機動力こそ水準レベルのものを持っているが、ワイドに振り回されると、徐々にフットワークに綻びが生まれ、結果逆を突かれた時にまったく反応できないケースが目立つ。ただし、14年頃よりフォア側からは強烈なカウンター、バック側からは低く滑るスライスと、球質は異なるが両サイドともに返球力が上がり、全体的な守備力がアップしたことでプレーに安定感が生まれ、一気にトップ5を窺うポジションまで飛躍した。明らかにフィジカルレベルを高めた16年にはそのディフェンス面での粘り強さや動きの素早さがさらに向上し、結果として打点に余裕を持って入れるようになったため、持ち前のハードヒットの精度やその炸裂する頻度が上がって、攻撃力にも大幅に磨きをかけた。同様にリターンの改良も数字で見て明らかとなっており、以前は一定レベル以上のサーブを打たれるとブレークどころかポイントすらまともに取れないことも多く、相手に対してリターンゲーム一点に集中力をぶつけやすい環境を与えてしまっていたが、コースの予測能力を高めた近年はスライスリターンも交ぜながら全体的に高い返球率を実現できており、また読みとタイミングが完璧に合うと厳しいサーブでも逆にエース級の返球を見せることも多くなっている。彼のサーブの強さとそれに伴うタイブレーク勝率の高さを考えれば、リターン力アップによって与えられる相手へのプレッシャーは計り知れず、実際のところ、ストロークの脅威が増してこそではあるものの、このリターンがトップ3への最大の原動力となったといってもいい。

真面目な性格が表れる淡々とした戦いぶり

 あまりガッツポーズなどは見せずにポーカーフェイスを貫く戦いぶりは、心の動きが読みにくくメンタル的に安定していると肯定的に捉えることもできるが、一方で気迫を前面に出して相手を威圧していくようなシーンが見られないという点で、物足りなさを感じるといえなくもない。非常に真面目な性格のため仕方のない部分はあるとはいえ、もう少しメンタルに派手さがあってもいいのかもしれない。そのあたりは16年シーズンにコーチであった元No.1のモヤや臨時アドバイザーのマッケンローの助言もあって、だいぶ雄叫びを上げるような場面も増えてきており、本人も意識的に感情を出すよう努めているようだ。

飽くなき成長意欲と吸収能力は一流の証

 速いボールをネット上低いところを通して相手を押し込んでいくのが基本的なスタイルで、大抵の相手はそれで押し切ることができるのだが、トップ10級を倒すためにはプレー傾向を読まれやすいやや一本調子なベースラインからのストロークを改良し、球種そのものも含めた崩しのバリエーションを増やしたいところだ。13年後半、それまで約3年間コーチを務め、ラオニッチの基礎を築き上げたブランコと別れ、新たに元No.3のルビチッチをコーチに迎えた。名目としてはバックハンドの改善ということで、確かにバックの安定感は増した印象があるが、それ以上に長年世界のトップで戦った彼の影響力は大きかったようで、短期間でテニスの質が上がった。16年にはモヤやマッケンローに指導を請うなど飽くなき成長意欲は同世代の中でもずば抜けており、健康体を維持できるならばビッグタイトル獲得も時間の問題といえそう。ただ、サーブ頼みからの脱却を図った結果、強力なストローカーとの対戦でビッグサーバーには似つかわしくない大差での敗戦が増えているのは気がかりだが、それも更なる進化の途上における生みの苦しみと見るべきか。また、下の世代からの突き上げも激しさを増す中でどうしても故障癖を克服できずにいるここ数年は、やや絞り切れていないフィジカルの影響もあるのか動きが鈍く、結果的にベースラインから離れて粘る、彼の強さが発揮されない守備型寄りの戦い方をとらざるを得ない厳しい状況に映る。将来的にはライバルでもある錦織とともにテニス界を牽引していってほしい存在なだけに、ファンとしては大小の故障の多さがキャリアに影を落とすことのないよう願いたい。最近はスターの風格も出てきており今後まだまだ期待していいプレーヤーだ。