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Grigor Dimitrov

グリゴール・ディミトロフ

 生年月日: 1991.05.16 
 国籍:   ブルガリア 
 出身地:  ハスコヴォ(ブルガリア
 身長:   191cm 
 体重:   81kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: Wilson Pro Staff 97(18×17) 
 プロ転向: 2008 
 コーチ:  なし 

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 ジュニア時代からその才能とテニスセンスを高く評価され、次世代王者の筆頭候補として世界中からの巨大な期待を背負うブルガリアのスタープレーヤー。多様な球種を操りながら相手を揺さぶって崩すことも、スピードとパワーで振り切ることもできる、極めて多彩なオールラウンダーであり、創造性溢れる華麗なプレーはすべてにおいてフェデラーと共通する点が多く、“ベイビー・フェデラー”の異名を持つが、ディミトロフ自身は自分のスタイルを確立したいとして、そこからの脱却を目指している。また、一時期はシャラポワの恋人としてコアなテニスファン以外にも知名度がアップした。いずれも相当重いプレッシャーを伴う肩書きだったが、彼はまさにこれを力にして勢いづいた印象で、13年終盤にフィジカル強化に定評のあるラシードをコーチに迎えるとストックホルム(250)でのツアー初優勝を皮切りに、14年にはアカプルコ(500)で連夜の激戦を乗り越える驚異のタフさを見せてタイトル獲得、ウィンブルドンで前年覇者のマレーを一蹴してグランドスラム初のベスト4を記録するなど、堂々のテニスでトップ10入りも果たした。しかし、そこで勢いが頭打ちとなり以後スランプと言ってもいい長い低迷に突入してしまう。あまりにテクニックがありすぎるために各局面でプレー選択に迷いが生じ、気持ちの面で攻撃的になれなかったことが大きな原因だった。それでも16年後半にようやく本来の姿を取り戻し、17年には全豪でベスト4に進出、惜しくも4時間56分の大熱戦の末ナダルに敗れたものの、真の実力を発揮できればグランドスラム優勝も紙一重のところまで来ていることを強くアピールした。同年シンシナティ(1000)では成熟度の高い安定したテニスで自身初のマスターズ優勝、彼も含めてフレッシュな顔ぶれが揃ったシーズン最終戦ATPファイナルズのタイトルも獲得し、文字通りキャリアのベストシーズンに華を添えた。台頭してきた頃は間がしっかりとれるクレーの方が戦いやすそうな雰囲気があったが、本来は芝やハードコートを得意としており、テニスが完成形に近づくほど速いサーフェスでの好成績が続いてくるようになっている。

ボールを打ち抜く能力の高さはツアー屈指の一級品

 ストロークは全身をしなやかに使ったダイナミックなフォームが特徴。自分のスイングで作ったエネルギーをインパクトの一点に集中させてボールを加速させるという能力は、プロでもその巧拙に差が出るものだが、彼のそれは一級品と呼べる質の高さを誇る。ストローク戦での思考としては、しばしば比較されるフェデラーが3~5本の短いポイントで勝負を仕掛けるのに対し、彼は強靭かつ柔軟なフィジカルを存分に活かして少し長いラリーでゲームをしっかりと組み立ててからの展開を得意としている。

長い腕が鞭のようにしなる切れ味鋭いフォアハンド

 滑らかな動きの中でというよりは力を溜め、長い腕をムチのようにしならせながら一気に解放することでスピードのあるボールを打ち込むフォアハンドは彼の最大の武器で、攻撃的なテニスの生命線となるショットである。元々フォーム的に長い溜めが作れるうえに、ラリー戦では打点をワンテンポ遅らせて強い回転を操るため、一打ごとに相手の動きを止められるのが強み。また、高い打点からボールを叩く能力に秀でており、攻撃に出た時の一撃の切れ味の凄まじさが大きな魅力だ。しっかりと構えてフルスイングで放つ時はもちろん、スイングスピードが速いためハイテンポの打ち合いでもすべてのショットが滑るような軌道でバウンド後に伸びていく。右足で力強く踏ん張り、外側から巻き込むスイングでクロスコートに引っ張る強打の伸びは特に突出しており、追い詰められても強いボールを返球する感覚はツアー屈指といえる。また、逆クロス気味のストレートでコーナーを突く形も得意としているが、さらに最近レパートリーに加えているのはラリー中の一瞬の判断で斜め前に飛び込みながらショートバウンドで処理し、その動きの流れでネットに詰めてボレーで仕留めるパターン。押され気味の打ち合いを一球でひっくり返すこのライジングカット戦術はまさに鮮やかの一言に尽きる。改善したいのは回り込んで打つ際の判断力で、なるべく多くフォアを使おうという意識は評価できるが、有効打を打てないにもかかわらず回り込んで処理すると、相手に対して逆サイドに隙を与えることになってしまう。高速ラリーの中で攻撃できるボールか否かの見極めがラリーを制する鍵になりそうだ。

多彩な展開力の生命線となるシングルバックハンド

 シングルハンドで放つバックハンドは早めのセットから深く膝を曲げて長い溜めを作り、そこからその膝をインパクトに向けて伸ばしていくことでパワーを出していくフォームが特徴で、肩の可動域の広さを最大限に活かした振り抜きの良さが持ち味。フォアに比べると軌道の高いスピン系が多く、バックは基本的に多彩さを前面に出した組み立てや展開のショットになっているが、相手のボールが甘くなればフラットに叩いて鋭いウィナーを奪うことも十分にできる。また、スライスのキレが抜群で、かつコントロール性能も高い。これをラリーの中に効果的に使えるようになってからは、組み立てから崩しにかけてのバリエーションが大幅に増加した。今のツアーにおいてスライスだけで相手を幻惑し、完全に崩し切ることのできる数少ないプレーヤーの1人だ。同じフォームからドロップショットも多用してコートを広く使い相手を翻弄する。課題としては、フォーム的な特徴で後ろ重心になりやすいためにパワーロスや短い返球が目立ち、また弾むスピン系のボールは打てても、速い展開を使いづらくなっている点か。スライスでの散らしは効果的とはいえ、それが中心となるとライジングのハードヒットがあまり得意でない弱みから怖さが半減する可能性もある。鋭く滑る攻めのスライスとは別に、ゆったりと深く返球するようなスライスを覚えてディフェンスを安定させるとともに、インサイドアウトのスイング軌道でボールを上から叩く技術を改善し、ダウンザラインへの決定打の頻度と精度を向上させることが、更なるレベルアップには必要不可欠だろう。

高速フラットが高いポイント獲得率を生むサーブ

 リラックスしたフォームから放たれるサーブも武器の1つで、年々その威力は増している。特別長身というわけではないが、高い打点から叩きつけるような角度が相手を苦しめる要因の1つで、とりわけ彼が得意とするのは1stで放つ最速220km/hを超えるフラットサーブ。スピンサーブやスライスサーブももちろん持っているが、基本的に1stはフラット気味にライン際へエースを狙いにいく戦術をとっており、極めて高いポイント獲得率を誇る。2ndの精度にムラがあるのがサーブにおける弱点で、特に大事なポイントでダブルフォルトを重ねる傾向だけは早急になんとかしたい。この点さえ改善できれば盤石なサービスゲームを手に入れられるはずだ。

瞬発性と持久性を高度に兼備する驚異的なフィジカル

 突出した足の速さは彼のスピーディーなテニスを攻守両面で支える絶大な強みである。フットワーク自体はまだまだ洗練の余地があるが、瞬発性と持久性を高度に兼ね備えたタフなフィジカルを駆使した直線的なスピードとコートカバーリングの広さは驚異的で、とりわけフォアサイドの守備範囲とカウンター能力は目を見張るものがある。また、身体も非常に柔らかく、大きく開脚したり深く重心を下げた状態での返球が印象的で、時折見せるアクロバティックなプレーもこの柔らかさあってのものである。こうした運動能力の高さが前面に出た身のこなしや、大事なポイントでの大胆な思考、派手なガッツポーズなど、意外とジョコビッチ的ともいえる部分が多い。ただ、ボールに入る足運びが安定しておらず、特にバックのスピンを打つ際にドタバタとした慌しさがあり、打球時の上下動や上体のブレも散見される。全体的に1歩踏み込みが足りないということが多く、ボールを待ちすぎることで畳みかけるような攻撃にならず、決定打を放つ機会を自ら逸しているために、想定外のロングラリーが増えてしまう。また、自らが打つボールのペースやスピードに自分がついていけない場面が時折見られ、フットワーク技術と大きなフォームとの関係の修正が求められていたが、スランプから復活した勢いを更なる成長に繋げた17年の充実した戦いぶりはまさにこの点を解消したことが大きな要因ともいえ、得意のスライスで意図的にペースを落として主導権を握り、自分と相手の状況を見ながら攻勢に転じるテニスへシフトした感があり、長所である非の打ちどころのない技術力をより前面に出せるようになった。これによりいまひとつだったハードコートでの戦い方が特に向上し、強靭なフィジカル、ショットの威力、戦術のバリエーションなど、様々な要素が絶妙なバランスで折り重なったことが今のディミトロフの強さに繋がっている。

脆さを露呈するメンタルが最大の弱点

 トップとの対戦を数多く経験して、少しのことでは動じないメンタルの強さを手に入れつつあるが、未熟な点も残っており、とりわけリードした場面で硬くなって肝心なポイントをダブルフォルトや簡単なミスで落とすシーンが目立つ。テニスの調子が悪くなくても、1つブレークを許したりセットを落としたりすると、一気に崩れてしまう脆さも覗かせる。また、ラリーが長くなってくるとドロップショットに逃げる悪い癖もメンタル面から来る問題である。こうした課題を一息に取り払える可能性があるのがまさしく「自信」であり、質の高いプレーにコンスタントな結果が伴った時、それが彼の本物の実力となってビッグ4時代を変えていく存在となるのだろう。

アップダウンは激しくても実力に疑いの余地はない

 期待の割にはなかなか戦績が伸びず苦労したうえでの飛躍とその後の転落、3位まで上り詰めた後の長い低迷。彼のキャリアは安定しない激動のサイクルを繰り返しているが、回り道をしながらも不調を脱した際にはいつもより一層強くなった姿を披露しており、実力の衰えなどというものがあるわけでは決してない。年々過酷さを増すツアーにおいては怪我が少なく、ロングラリー、ロングマッチをものともしないフィジカルの強さも大きなアドバンテージになってくるだろう。まだまだ好不調の波の激しさは払拭できていないが、錦織やラオニッチらいわゆる“Young Guns”世代の象徴として今後のテニス界を背負って立つべき特大の才能の持ち主なだけに、ビッグタイトルを獲ったことをきっかけにトップ定着への道を切り拓きたい。