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David Ferrer

ダビド・フェレール

 生年月日: 1982.04.02 
 国籍:   スペイン 
 出身地:  ハベア(スペイン)
 身長:   175cm 
 体重:   73kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  lotto 
 シューズ: lotto 
 ラケット: Wilson Blade 98 (16×18) 
 プロ転向: 2000 
 コーチ:  Francisco Fogues  

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 どんなに厳しく振り回されても決して諦めることなく粘り強く最後まで追い続ける堅牢な守備力と、精度の高いストロークで相手を追い込む確かな攻撃力を併せ持ち、決して恵まれているとは言えない体格ながらも屈強なフィジカルで長年世界のトップとして活躍するスペインのNo.2。ツアー本格参戦の03年から着実に力をつけてきた中、07年に全米でナダルを破って準決勝進出、勢いそのままに出場権を勝ち取ったマスターズカップでも並み居る強敵を相手に圧倒的なフォアハンドでウィナーの山を築いて準優勝に輝き、名実ともにトップの仲間入りを果たした。持ち前の敏捷かつ粘り強いフットワークと、体力勝負で彼の右に出る者はいないと言われる無尽蔵のスタミナを武器に、ベースライン付近に踏みとどまって中程度のスピードのボールを確実に左右に散らして相手を振り回し、チャンスと見るや一瞬にしてポジションを上げて攻勢に出ていく彼のスタイルは、単純なだけに打ち破り難く、対策も立てられないため、どんなプレーヤーでも打倒するのが非常に難しい。ミスをほとんど出さない手堅いショット選択と、それを実現する技術と体力をすべて備えた、まさにストロークの要塞である。中でも相手の一瞬の隙を見逃さない抜け目のなさと巧みな判断力が彼の攻撃を支える重要な要素となっている。日本では、07年のAIGオープン(500)制覇に加え、08年全米3回戦や12年ロンドン五輪、14年の4度の熱戦など錦織がキャリアのあらゆる節目で対戦していることでも馴染み深いプレーヤーである。スペイン人であるがゆえ、最も得意とするサーフェスはクレーで、13年全仏のファイナリストであるが、全豪や全米でもベスト4に複数回入るなどハードでの強さにも定評があり、どのサーフェスでも堅実なテニスで上位に進出している。かつての彼は「ハードでも強さが落ちない」という評価だったが、今や「すべてのサーフェスで強い」という言葉に置き換えた方が適当だろう。また、実戦の中でコンディションを上げていくタイプで、トップの割に出場大会数が多く、試合間隔が短いのも彼の特徴といえる。

鋭角の逆クロスが抜群の決定力を誇るフォアハンド

 フォアハンドは身長の不足分を補うため、良い体勢で打てる時は少しジャンプしてボールを捉える。全体的に自分のパワーではなく、相手のショットのパワーを巧みに利用した打ち方で、高く弾むボールに対しても的確に対応する。主にミスの少ない強めのトップスピンをかけたショットで深く返球し、チャンスをじっくり待つことが多いが、フラット系の威力のあるショットも持ち合わせており、これら球質の異なるショットを使い分けて“空間”をうまく利用することで相手に的を絞らせない。ひとたびラリーで主導権を握れば、絶対に手放さないとばかりに深いボールを連発し相手を苦しめる。当然トップレベルにおいては反撃に遭う場合もあるが、自らチャンスをみすみす逃すようなことは滅多にない。その攻撃的なプレーにおいて最も鍵を握るのが、彼の最大の武器である回り込みフォアから鋭角への逆クロスであり、主な得点源となっている。このショットにおいてはパワーやスピードで一気にウィナーで決め切ることも、回転やコントロールで相手をコート外へと追い出し、そこを起点としてネットプレーに繋げたり、大きく空いたオープンコートにバックのストレートを叩き込んでポイントを奪うこともできる。彼が守備力を持ち味にしていることは疑いようのない事実であるが、決して守備的なプレーヤーではない。

ポイントを締める正確なネットプレー

 ネットプレー自体の技術もストローカータイプの割には高く、特にじっくりと組み立てることのできるクレーの試合ではラリーを優位に進められるため、積極的にネットにつき正確なボレーでポイントを取る。その決定率の高さにはネットへ出る際の非常に素早いフットワークが貢献している。

柔軟性を活かした対応力が際立つ安定感のあるバックハンド

 バックハンドは両手打ちながらフォロースルーで左手を離して大きなパワーを生み出しているのが特徴であり、その軌道はフォアに比べてフラット系が多い。突出した威力はなく、ウィナーを頻発する類のものではないが、高い打点からでも広角にコントロールする能力で、相手に与えるダメージは大きい。また、走っている時の重心の低さそのままに、右膝が地面に着きそうな程低い体勢からでもミスなく安定して返球できる柔軟性は特筆に値する。良くない時は浅いボールに踏み込めず必要以上に打点が落ちてしまう分、持ち上げきれずにネットにかけるミスが増えてくる傾向がある。

一発の怖さではなくダメージの蓄積が最大の強み

 彼のテニスの最大の強みは、切り札となる一発のショットや特定のポイントパターンではなく、ボールの深さによる相手へのダメージの蓄積である。ベースライン後方では高い軌道で深いボールを打って相手からの反撃を許さないラリーを展開し、ベースライン上では自分と相手の状況を見極めながらチャンスを窺い、またチャンスメークできるボールを打って展開する。そしてベースライン内側に入るとネットを積極的に窺いトドメを刺すショットを使う。このようにコートを3つのゾーンに分け、自分のポジションでショットを選択する。

敏捷かつ粘り強いフットワークと無尽蔵のスタミナ

 フットワークは彼のテニス全体を支える必要不可欠な要素であり、アジリティー能力の高さはナダル以上とも言われる。一発のカウンターを喰らうという恐怖感は小さい相手だが、どれだけプレーしてもダメージを与えられないという蟻地獄のような守備力を究めたプレーヤーであり、それもまた別の意味で心理的な圧迫となる。また、フットワークの基盤となる体力面でも非常に突出しており、ロングラリーが終わった後でも膝に手をついて息を整えるといった姿をほとんど見せない。通常クレーでの試合では、プレーの堅実さを求めてベースラインから下がってプレーするものであるが、彼の場合、得意のフットワークを活かしてクレーでもベースラインからあまり下がることなく、あえて高いポジションを維持することで、守備から攻撃へのスムーズな切り替えを可能にしている。ただ、スライドの技術に多少の不安を残しており、その点が改善されればさらに脅威は増すはずだ。返球能力の高さとその安定感はバックサイドの方が上であり、フェレール攻略の鍵は右利きのプレーヤーであればバックのダウンザライン。彼はこのショットを武器にしているプレーヤーに苦しめられている印象が強い。

2ndの質の高さで懸命に弱さをカバーするサーブ

 サーブは以前に比べれば、特に1stの威力が増したことでエースやフリーポイントの数も増えている。3球目を内側に入って攻める形を作るサーブが打てている時はそう簡単にブレークは許さないが、とりわけトップレベルではラインを狙ったサーブが少し内に入ったり、ボディ狙いが少し外れることが多く、容易に鋭いリターンを返されて守勢に回らされるケースが見受けられる。しかし、2ndの精度は高く、一方的に攻め込まれてポイントを落とすようなことはあまりなく、スピンの効いたサーブでしっかりとラリー戦に持ち込むことはできており、2ndのポイント獲得率は上位に位置する。テニスのスタイル的にももう少し1stの確率を上げられれば御の字だろう。

跳ねるサーブの返球技術が天下一品のリターン

 リターンにおいてはジョコビッチ、マレーと並んで世界最高の技術を持っており、相手のサーブに対して十分な重圧を与えられている点で大きな武器といえる。1stに対してもスライス系のリターンを選択することはほとんどなく、一瞬にしてラケットの面を合わせ、深さや角度をコントロールする技術に長けているが、とりわけ際立つのは2ndのリターンの精度の高さ。高く跳ね上がるスピンサーブに対してのリターンが天下一品で、力の入りにくい頭の高さのボールを苦もなくライジングで体重を前に乗せて綺麗に返球できる。そのうまさはしばしば同世代のフェデラーが絶賛するところで、実際リターン関連のスタッツでは常にトップクラスに位置する。したがって、サービスキープができる試合であれば、勝ちを計算できるということである。

相手や状況に関係なくひたむきさを貫く強靭なメンタル

 彼自らが自信を持っていると話すメンタル面の強靭さも特筆すべき長所の1つで、とりわけ根気強さは現役ナンバー1といっても過言ではない。自分自身を盛り上げていくのがうまいプレーヤーで、声を出して一球一球気持ちを上げていく。ゆえに、大事なポイントでも硬くなることが少なく、良いプレーをすることができる。相手が格上でも格下でも、勝っていても負けていても、試合の始めから終わりまで自分がやるべきことを見失わず、ひたむきに実践し通せる点も精神力の強さの証だろう。

若手にとって最高の模範、ベテランにとって勇気をもらう存在

 ツアー屈指の安定感を誇るテニスは三十路を超えた現在も健在で、いまだ年を追うごとに進化を続けている。12年にはパリ(1000)で念願のマスターズ初優勝を果たすなど、ハード、インドアハード、クレー、芝すべてを含む7タイトルを獲得しており、年間を通してのツアーでの存在感はビッグ4にも引けを取らない。弱点を挙げるとすれば、自分よりもポジションが高く、タイミングの早い攻撃を仕掛けてくる相手に対して苦手意識がある点だが、逆に言えばそうでもしなければフェレールに勝つのは困難ということ。年齢的な衰えがないわけではなく、最近は脚力の低下や反応の鈍さが顕著となり、パワーやスピードで押し切られての敗戦や、珍しく苛立って感情的になることもやや増えているのが気がかりで、パワフルな若手がツアーを賑わす中で苦しい時期を迎えている。元々リーチの長さはなく、足を使って展開をかき回すことで相手に打ち勝ってきた彼にとって、敏捷性の衰えは致命傷だ。それでも16年からは長年慣れ親しんだコントロール系からよりパワーを出せるラケットに変更して戦うなど、勝利への飽くなき闘争心は消えていない。オンコートでは常に一球一打に全身全霊を注ぎ込む姿勢が、オフコートでは非常に謙虚な立ち居振る舞いが、それぞれ今後トップを目指す若手にとって最高の模範であり、ベテラン勢にとっても勇気をもらえる存在であろう。ファンからもプレーヤー間でも尊敬されるプレーヤーなだけに、再びトップ10に返り咲き、あるいはビッグタイトルに手をかけるようなシーンを期待したい。

 

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