Marcos Baghdatis
生年月日: 1985.06.17
国籍: キプロス
出身地: リマソール(キプロス)
身長: 178cm
体重: 82kg
利き手: 右
ウェア: Mizuno
シューズ: Mizuno
ラケット: PACIFIC X Force Pro No.1
プロ転向: 2003
コーチ: Pablo Perez, Juan Francisco Spina
ベースラインからのテンポの速いキレのあるストロークを武器に、主に速いサーフェスで強さを発揮するキプロスの英雄。06年全豪でランキング54位のノーシードながらロディックやルビチッチ、ナルバンディアンら格上を劇的に破って決勝まで進み、世界に旋風を巻き起こした。同年ウィンブルドンでもベスト4に進出し、キャリア最高の8位を記録している。ジュニア時代にはツォンガらとの激しいライバル争いを制してNo.1だった実績を持つ彼だが、明るく前向きな性格で、プレーヤーとしてのタイプが才能先行型であることが貪欲さに結びつかず、プロ入り後は期待されたほど上位に定着することはできなかった。とはいえ、その才能の高さに疑いはなく、10年にはインディアンウェルズでフェデラーを、シンシナティでナダルを、それぞれ彼らがNo.1の座に就いていた時期に勝利していることからも、ランキングに関係なく軽視禁物な実力者と言うことができるだろう。また、08年全豪3回戦その日のセンターコート最終試合に組まれたヒューイットとの一戦は、前の試合が長引いた影響もあったが、5時間に迫る深夜の大激闘の幕が下りたのが午前4時34分という、全豪史上最も遅い時間帯の試合を演じたことでも知られる。試合進行を妨害することも厭わない過激で猛烈なキプロス応援団はツアーでは語り草となっている。
研ぎ澄まされた感覚で切り返すカウンターが魅力のストローク
ストロークの打ち合いでは高い位置にポジションを取り、ツアー屈指のライジング能力や非常にスムーズにコース変更をしていけるテクニックで、トップ10級の相手でも互角以上に渡り合うことができる。ショートテイクバックから無駄のないフォームで常にクリアなインパクトを確保するフォアハンドは大きな武器で、タイミングでスピードを作り出すスタイルを可能にしている。球種としてはフラット系のオーソドックスなタイプで、突出してパワーがあるわけではないが、相手のショットの力も借りつつ、鋭い切り返しで多くのウィナーを奪う。とりわけストレートに来たショットに対してクロスのオープンコートへ切り返すカウンターは威力・精度ともに申し分なく、相手とするとたとえ得意な形であっても、どうしてもストレートに展開するのを躊躇ってしまう。また、フォアに回り込んでのドロップショットも頻繁に見られるパターンだ。バックハンドは、大柄ではない分、下からラケットを出してしっかりとスピンを効かせたショットで応戦するのが特徴で、そのフォームや自在性の高さは錦織に似ていると言えなくもない。バックはある程度確率重視で粘っていくことが多いが、スライスやスピンで揺さぶりをかけられてもタイミングを外されることなく鋭いショットをクロスにダウンザラインにと打ち分けられるため、十分にウィナーもとっていくことができる。厚く押して球足を長く伸ばすスライスの組み込み方も巧みで、これで相手を後方に押し込むことで守備の強いプレーヤーからもウィナーを奪える環境を作り出している。
高いポジションで強烈に叩き返すリターン
強烈に叩き返すリターンも相手に大きなプレッシャーを与えるプレーの1つである。ラリー戦と同様にタイミングを合わせて綺麗に返球する能力が光り、2nd時のリターンはもちろん、1stに対してもベースラインの内側でボールを捉えて、とにかく相手の時間を奪おうという姿勢が強い。
気分屋な性格が良くも悪くも反映されたメンタル
技術的にはトップと比肩するに十分な資質の持ち主であるが、メンタル面でトップとの差を埋めることができていない。気分屋な性格がプレーに表れるのはある程度目をつむるとしても、肝心なポイントでハイリスクなショットを打って自滅を招く欠点は見直すべきだろう。ただし、集中モードに深く入り込んだ時のバグダティスは理屈では説明できないほどの無敵と化す傾向があり、相手としてはリードする展開であっても彼に少しでも追い上げのきっかけを与えないよう慎重にプレーする必要がある。
復活できるかは本人のモチベーション次第
近年は怪我が多く、ランキングを大きく後退させてしまっているが、プレースピードがやや落ちた点以外に地力が著しく錆びついたという印象はない。どこまで復活できるかはほとんど彼のモチベーション次第といえるだろう。コート上で愛嬌を振りまきながらも闘志を前面に出して戦うバグダティスの姿をまだまだファンは見たいはずだ。