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Lucas Pouille

ルカ・プイユ

 生年月日: 1994.02.23 
 国籍:   フランス 
 出身地:  グランド・シント(フランス)
 身長:   185cm 
 体重:   84kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  Le Coq Sportif 
 シューズ: Le Coq Sportif 
 ラケット: Babolat Pure Drive 
 プロ転向: 2012 
 コーチ:  Thierry Ascione, Nicolas Renavand 

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 すべてにおいてそつのない技術力を備え、機敏なフットワークから鋭いフォアを軸としたスピード重視の展開力で勝負する総合力の高いオールラウンダーで、若い世代の台頭にやや乏しい強豪国フランスにあって飛躍が期待されるスケールの大きな有望株のプレーヤー。上体がぶれない強靭な体幹によって実現されるストロークの安定感が強さの基盤だが、そこにベースライン後方からでも難なくエースを奪えるパワーが加わることで、攻守のトランジションに優れた攻めて良し守って良しの完成されたテニスを持つ。13年に10代でトップ200に入っていたのはキリオスとこのプイユの2人のみで、以降チャレンジャーレベルからツアーレベルへと徐々に軸足を移す中でランキングを着実に上昇させてきている。その過程では運の良さを勢いに変えて好成績を残す傾向が見られ、ツアーレベルで初のベスト4進出を果たし本格化のきっかけにもなった15年のオークランド(250)や、フェレールを下しマスターズで同じく初めてベスト4に入った16年のローマ(1000)ではともにラッキールーザーとしての本戦出場であった。その後ウィンブルドン、全米と連続でベスト8に入り、秋にはメス(250)で初タイトルも獲得した16年シーズンは彼のブレイクイヤーとなった。特にナダルを相手にフルセットで競り勝った全米4回戦は、心技体の三拍子が揃った彼の特大なポテンシャルが最大限発揮された鮮烈なプレーだった。テンポの速いストロークで相手を振っていくプレーを持ち味とする分、ハードコートを最も得意としているが、技術的な弱点があるわけではないため、どのサーフェスでも安定して結果を出せる力を持っている。

弾けるパワーショットと多彩な戦術が両立する完成度の高いテニス

 ベースラインに近い位置を保って早いタイミングでボールを捉えていくことも、大きく下がってループ気味のショットで長いラリーを作ることもできるストロークは、フォアハンド、バックハンドともに癖のない柔らかくコンパクトなスイングから繰り出され、相手のショットのパワーを利用しつつコートを広く使って相手を振り回す展開を特徴とする。ネットへの詰め方とその処理も含めて無理のないプレーでポイントを重ねていけるのが彼の強みで、ポジションを下げられても焦らず軌道の高いボールで粘り、甘い返球が来た時に突然前に入って強打していくが、その強打で決まらなければもう一度展開を作り直す落ち着きや辛抱強さが際立つ。高いテイクバックからラケットヘッドが落ちず、厚い当たりでシャープに美しく振り抜くフォアは、ボールに伸びがありつつスピンも効いた完成度の高いショットとなっており、しっかりと構えてのダウンザラインや回り込み逆クロスに加え、走らされてもオープンスタンスでカウンターストレートを放つなど多彩なパターンを持つ。バックスイングに無駄な動きがなく、インパクトに向けて素直にラケットが出てくるため、ライジングでもミスヒットをすることなく鋭いショットに転換していくことができ、とりわけサービスゲームで3球目を素早く処理する際にこの能力が生きている。状況を問わず常に爆発的なインパクトを確保して球威のあるボールを飛ばす能力・感覚の高さはツアーでもトップクラスといえ、並のプレーヤーでは彼のショットのキレとスピードについていくのが精一杯で戦術を実行することさえ難しい。また、浅いボールに対して流れるようなフットワークでネットプレーに繋げる滑らかな動きは憧れのフェデラーさながらで、ボレーにおける繊細なタッチも十分に持ち合わせている。アプローチショットにもう少し工夫があればネットでのポイント確率も上がってきそうだが、いずれにしてもラリー戦から縦への仕掛けが彼の1つのポイントパターンといえる。バックも打点のタイミングを様々に変えながら相手との間合いを巧みに計り、非常にスムーズな動きで内側に切り込んで強烈なウィナーをクロスへダウンザラインへと痛快に突き刺していく。スライスのキレやその組み込み方も秀逸で、自らは主体性をもって盛んに前後のポジションを変えて戦う一方で、相手に対してはボールの緩急、軌道の高低、深さや角度のコントロールを駆使して幅広く揺さぶりをかけることができる。

体重の乗せ方がお手本のようなパワフルなサーブ

 体全体で生み出したパワーを効率的にボールに伝えるサーブも強力で、210km/hを超えるフラットサーブや機を見たサーブ&ボレーなど、ショートポイントを奪うパターンを複数持ち合わせている。また、アドバンテージサイドから放つセンターへのスライスサーブが大きな武器で、バウンドしてから大きく切れるためリターンの強打を抑え、3球目以降の主導権を巧みに引き寄せる。これを1stだけでなく2ndでも積極的に使う攻めの姿勢も評価できる。押され気味の流れであってもスコアの上では競った展開に持ち込めるのは、瀬戸際で踏みとどまるメンタルの強さに加え、このサービス力によるところが大きい。日本では、錦織が彼のサービスフォームを参考にしたことで話題になったが、それも錦織がプイユの素質を認めるとともにテニスの感覚的に近いものを感じ取ったからだろう。

前で叩く積極性を増したいリターン

 リターンは技術に難があるということではないが、スタッツ面であまり優れた数字が表れていないのは2ndに対するリターンでやや積極性に欠ける部分が見られることが1つの原因である。基盤となっているベースラインから離れて余裕を作り、深く返球するプレーは確率を高めるうえで有効で、時にはパワフルな返球がそのままエースになることもあり、今後も選択肢としては持っておくべきだが、上位陣相手にプレッシャーをかけるにはコート内側で叩く頻度とその精度を上げていきたい。

繊細な試合運びを覚えればGS優勝も夢ではない

 激しい打ち合いからの鮮やかなドロップショットなど、相手の予測を見抜いたかのような間の外し方はセンス抜群で、こうした能力は大型化の進むツアーで決して大きくない彼のようなプレーヤーが活躍するために不可欠になってきている。1つ1つのプレーに確かな才能を感じさせる逸材であることは間違いないが、今後トップ20から上を目指していくうえではバランスの整ったテニスというのは器用貧乏という形で表れて、逆に伸び悩む原因にもなり得る。とはいえ、まだまだ成長途上でフィジカル向上やサーブ、リターン、ストローク、ネットプレーなど全体のスケールアップを図っている段階。多彩であるがゆえにプレー選択に迷いが生じたり、良いポイントを取った後に簡単なミスが続くことがあったりと試合においては強さにムラが見られ、また特に格上との対戦においてはポイントを急ぐあまり過度に強打してミスを重ねる傾向も払拭できていないが、これらは繊細な試合運びの習得として更なる伸びしろと捉えていい。ヤニック・ノア以来30年以上誕生が阻まれてきたグランドスラムのフランス人チャンピオン。素質を持った彼がその座に輝く日を期待せずにはいられない。