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Borna Coric

ボルナ・チョリッチ

 生年月日: 1996.11.14 
 国籍:   クロアチア 
 出身地:  ザグレブクロアチア
 身長:   188cm 
 体重:   85kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  asics 
 シューズ: asics 
 ラケット: Wilson Ultra 100 
 プロ転向: 2013 
 コーチ:  Mate Delic 

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 突出した機動力と強靭な下半身による重心の低さが生み出す安定したストローク力がベースとなった堅牢な守備力を基盤に相手を憔悴させるほどのしぶとさでロングラリーを制するクロアチア超新星。ジュニア時代にはNo.1、全米ジュニア優勝などの実績を持ち、14年には弱冠17歳にしてトップ100入りを果たす活躍を見せ、ATPの新人賞を獲得している。怖いもの知らずで相手に立ち向かう勢いももちろん魅力の1つだが、チョリッチの場合プレー自体は若さに似合わぬ非常に完成度の高い「勝つ」ためのテニスを確立しており、14年バーゼル(500)でナダル、15年ドバイ(500)でマレーを撃破し、それぞれベスト4に進出したのも単なる偶然では片付けられない、そうした戦いぶりを象徴するものであった。同世代の中では最も早く台頭し期待も膨らんだ後、大きな怪我もあって伸び悩みの気配もあったが、17年マラケシュ(250)でようやくツアー初タイトルを飾った。18年インディアンウェルズ(1000)では圧倒的な勢いでベスト4に進出、敗れはしたものの準決勝では怖いほど精度の高いテニスで好調のフェデラーを窮地に陥れた。そして同年の上海(1000)ではそのフェデラーを攻守両面で圧倒してマスターズ初の決勝の舞台を踏んでいる。その後肩の怪我で再び実戦から1年離れる時期があったが、152位で迎えた22年シンシナティ(1000)においてナダルやチチパスら上位勢を次々と倒して優勝するという劇的復活を遂げた。それはマスターズの歴史上最も低いランキングの優勝者であった。ハードコートで最も強さを発揮するが、特定のサーフェスを苦にすることはなく、いかなる条件下でも相手としては与し難いプレーヤーであることは間違いない。右腕には“There is nothing worse in life than being ordinary”のタトゥーが刻まれている。

相手を憔悴させるしぶといコートカバーリング

 返球の精度を高めるためベースラインから3m程度離れて構えるストロークは、スピン系のフォアハンドとフラット系のバックハンドという球質の異なるショットを持ち球とし、打点を近めの位置まで呼び込みコンパクトなスイングで深くコントロールしながら、自らはほとんどバランスを崩すことなく、自在に広角に打ち分けて相手を走らせることで、ラリー戦をものにするのが彼のスタイル。ウィナーを多く取っていく一発の怖さはないが、左右両サイドのコートカバーリングは目を見張るものがあり、相手のウィナー級のショットをことごとく深くまた角度をつけて返球することで、多大なプレッシャーをかけている。課題は厳しい攻撃に屈しない壁のようなディフェンスはベースにしつつも、そうして拾い続けた先にどうやってポイントを締めるのかという点で、一発のカウンターを身につけたり、あるいはラリーの中での甘い球に対して即座に前に入る判断力とフットワークを磨く必要性を指摘されていたが、肉体増強に伴い各ショットのパワーが格段に上がったこともあり、ポイントを掴みとる力が完全に身についてきた。

ループ軌道が相手のタイミングを狂わすフォアハンド

 右足の力強い踏ん張りによってパワーを伝えるフォアは、早い打点から厚い当たりのフラット気味に捉えているように見えて、実際は軌道が上がってくるため、相手はタイミングを合わせにくく、ミスが増えてしまう。一方、甘いボールに対して踏み込んで放つフォアの強打は、大きくアウトしたり、内側に入ってカウンターに遭ったりと、精度の面でまだまだ向上の余地がある。とはいえ、このところは強化の傾向が顕著に出てきており、攻めの局面では積極的に回り込んでフォアで打つ意識が見てとれる。完成に向けては現状最も質の高いクロスコートを鋭角に抉るショットの次の対応で決め切れるようになりたいところ。そのためにはショットのパワーと精度を上げるのはもちろんだが、左足でステップインして打つ意識を高める必要があるだろう。プレースタイルは異なるがフォーム的にもそのヒントは近年進化したバブリンカのフォアにあると考えられる。

近い打点から爆発的なショットを放つバックハンド

 上半身の捻り戻しが強調されたバックは、たとえ守勢であっても常に鋭いショットを打ち返し、攻撃に転じる際はしっかりとコートの内側に入って高い打点から打ち下ろすことができる。元々左利きなこともあり、後ろ側の左手の押しが強いのが1つの技術的な特徴だ。特に抜群の決定力を誇るダウンザラインのウィナーは攻撃面における最大の武器で、クロスコートへの精度の高いラリーで追い込み相手の足が止まったタイミングで非常に滑らかに展開していけるのが大きな強みとなっている。また、振られた際のスライスによるディフェンスが非常に効果的で、相手に難しい処理を強いることで簡単にはウィナーを取らせない。

全身を大きく使う質の高い強烈なサーブ

 プレースタイル的に見逃されがちだが全身を大きく使ったサーブも彼の武器の1つだ。特にスピンサーブを得意としており、勢いが増すような弾み具合はそう簡単に攻略できるものではなく、2ndになってもあまり叩かれることが少ない強みを持つ。また、決してエースを量産するタイプではないが、それだけにピンチの場面で図ったようにサービスポイントを取ってくるのが印象的である。ストロークは緊張すると硬さが出ることがあるが、サーブは常にしっかりと振り切れているという証でもある。

ネット際の小技を改善したいネットプレー

 ネットプレーで奪い取るポイントも多いが、それはボレーのテクニックというよりは、むしろ相手の状況を瞬時に見極める判断力とそこからネットに詰めるダッシュ力によって、難しいボレーを強いられることなく決めることができるのが彼の真骨頂だ。むしろネット際のいわゆる小技は苦手、ボレーの技術は未熟そのもので、とりわけ体の正面に来たボールをフォアで捕ろうとする癖は早急に治したいところ。今後本格的にネットプレーを1つのポイント源にできれば、懸念されるロングマッチの多さの解消に繋がるかもしれない。

ピンチの場面で光る強気のメンタリティ

 かなり気性が荒く、不甲斐ないミスには苛立ちを露にするが、一方で気持ちの揺れがプレーにはほとんど影響しないのが強みで、常に冷静さを維持しつつ、1ポイント取るごとに自分を鼓舞するようなガッツポーズを作るなど、この歳にしてメンタルの成熟度は高い。また、大事な場面でこそエースが飛び出すサーブや、守備的なスタイルでありながらピンチには自分から積極的に打ち込んでいく姿勢を見せる点に、彼の強気な性格が反映されている。

今や分厚い身体が代名詞のパワープレーヤー

 相手の振り回しに耐えてとにかく返球し続ける心身の粘り強さ、そこからじっくりとラリーの展開を作って戦うスタイル、バックハンドの攻撃力、強靭な精神力といった特徴は、ツアーに台頭してきた頃のジョコビッチのテニスと類似し、さらにはしきりに口にするNo.1への並々ならぬ意欲もいかにもチャンピオン気質といえる。まだまだ精神的な波が大きいのは年齢的に仕方のないことだが、スタイル的には安定感や堅実さを売りにしていきたいタイプなだけに、徐々にそれもなくしていく必要はある。伸びしろはまだ残しており、ツアーレベルでの経験とともに完成してくれば、次代のテニス界のトップに君臨できる能力を十分に秘めた大器だ。華奢で非力感の否めなかったデビュー当初の姿は過去のもの、今や分厚い身体が代名詞にもなりそうなほどパワフルなテニスへと変貌した。突如として覚醒状態に入った雰囲気もあり、今後の活躍から目が離せない。