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Marin Cilic

マリン・チリッチ

 生年月日: 1988.09.28 
 国籍:   クロアチア 
 出身地:  メジュゴリエボスニア・ヘルツェゴビナ
 身長:   198cm 
 体重:   89kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  HEAD 
 シューズ: HEAD 
 ラケット: HEAD Prestige Mid 
 プロ転向: 2005 
 コーチ:  Ivan Cinkus, Vilim Visak 

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 長身から打ち下ろす強力で正確なサーブに抜群の決定力を誇る高い打点からのフォア、柔らかさと強さを兼ね備えるバック、堅実なネットプレーを持つ、総合力の高いクロアチアの攻撃型プレーヤー。名コーチとして知られ、松岡修造のコーチだったことで日本でも馴染み深いボブ・ブレットを長く師と仰ぎ、若い頃から着実にそのテニスをビルドアップしてきた。大型プレーヤーは往々にしてプレーも大味になりやすいが、彼の場合は柔らかな四肢を活かした実に基本に忠実なプレーの数々を身につけており、このあたりもブレットの薫陶に与る部分が大きいだろう。09年全米でベスト8、続く10年全豪でベスト4に入った時期はまさしく若手の勢いを感じ、更なる飛躍を予感させた。しかし、その後伸び悩み、加えて本人の不注意から市販薬を服用してしまいドーピング違反による出場停止処分で13年後半を棒に振ったが、14年からは心機一転を図る過程でついにコーチを交代し、幼少時からの憧れであり恩師と慕うイバニセビッチを陣営に迎えると、彼の助言もあって単純に「テニスを楽しむ」ことに集中するようになった結果、肩の力を抜いてプレーできるようになり、同年全米では自他ともに認める“人生最高のテニス”でベルディヒフェデラー、錦織を完膚なきまでに叩きのめしてグランドスラム初優勝を飾った。以降一気に世界の頂点へということにはならなかったが、16年シンシナティ(1000)でマスターズ初優勝を遂げ、17年ウィンブルドンと18年全豪では決勝に進出するなど、パフォーマンスの波は激しいが逆にいつ爆発力を発揮するか分からない不気味さを感じさせる存在だ。また、このところは錦織との戦いで俄然ゾーンに入ったような強さを見せることでも知られ、特に日本のファンにとっては仇敵となっている。一発の派手なショットよりも戦略的なプレーを遂行する堅実さが際立ち、またドロップショットなどの小技にも優れる穴のない技術力を備える点で、一般的な大型プレーヤーとは一線を画する存在といえなくもない。戦術的にもしっかりとした技術をベースにした、あくまで正統派なプレーを貫くため、取りこぼしと呼べる敗戦は少ないが、一方で意外性に富んだプレーはあまり持ち合わせていないため、実力面で上回られると勝ち星が見込みにくいのも事実ではある。滑らかな展開力を持ち味とする彼が最も得意とするのはハードコートで、加えて低い姿勢をキープしたまま素早く動き、強打を繰り出す能力に長ける分、芝での強さもトップクラスといえる。クレーも彼自身苦にはしないものの、長いラリーの中でややパワータイプのストローカーに打ち負けるケースが目立つ。

劇的進化を遂げた風を切り裂くクイックサーブ

 大きく上半身を反らすフォームが特徴のサーブは、210km/hを超えるフラットサーブのパワーやスピードで圧倒することも、回転系のサーブを駆使して角度や球種のミックスによって揺さぶることもできる大きな武器である。低迷期はデビュー当初に比べてサービスで相手に与える圧力が全体的に薄れ、安定したサービスキープが課題にさえなっていたが、14年からはフォームをよりシンプルにしたことで長い溜めを作れるようになり、ボールに伝わる力とラインを確実に捉える精度の両面が進化し、エースやフリーポイントの数が格段に増えるなど、とりわけ1stの質が劇的に改善された。その修正されたクイック気味のモーションから狙ったゾーンを文字通りピンポイントで射抜く高速サーブは、同じビッグサーブでもイズナーやラオニッチのような爆発的な球威とは異なり、風を切り裂く静かな切れ味とでも言いたいような独特な魅力を持っている。また、あえて浅めにプレースメントして相手に最も力の入りにくい高い打点を強いるキックサーブも得意とする。強烈に跳ね上がるボールへの対応を相手に強く意識させることができるため、逆に大事なポイントでは速いサーブでエースを奪いやすい状況を作り出しているといえる。慎重すぎるメンタル面の問題ではあるが、ポイント間で時間をかけすぎる傾向があり、タイムバイオレーションの判定が厳しさを増す近年においては特に修正を要する点だ。

正確なインパクトで丁寧にコーナーを突くラリー戦

 ストロークはフォア、バック両サイドともに高い打点を取ってテンポの速い直線的な足の長い伸びのあるショットで丁寧にコーナーを突きながら、攻め急がずじっくりと組み立てて相手を追い込んでいくのが基本的なスタイル。中でもニュートラルなラリーからフォアのストレートで相手の逆を突き、チャンスボールを引き出す形を得意とする。非常にスピードのあるボールを打つが、それはスイングの鋭さというよりはインパクトの正確さに依拠する部分が大きく、それゆえにミスヒットも少ない。198cmとは思えない軽やかなフットワークも魅力の1つで、追い込まれた状態からオープンスタンスでの返球になってもボールの威力がほとんど落ちないため守備も強く、またパッシングショットで相手の攻撃を巧みにかわす術も持ち合わせるなど、決して攻撃一辺倒のプレーヤーではない。タイプ的にスピーディーな展開から先にコースを変える中で優位に立っていくテニスであるため、遅いペースで常にパワーを溜めて打ち合うような状況を作られると厳しさを露呈することもある。

長い腕をしなやかに使う伸びやかなフォアハンド

 長い腕を鞭のようにしなやかに使い、かつリストも利かせたフォアハンドはテイクバックを高い位置にとって、そこから一直線にインパクトに向かうスイングによって繰り出される。ボールの上がりばなをフラット系で叩くことが多いため、軌道が概して低く、相手に高い打点を簡単に取らせないのが強みとなっている。また、多くのプレーヤーが決めのショットとするフォアのストレートや回り込み逆クロスを、彼の場合は緩急との組み合わせで崩しの一手として繰り出すことが多く、そのショットを起点に最も得意とする強烈なフォアのクロスを叩き込む。ただし、ネットのすぐ上を通るその弾道の低さは当たると強い反面、入らないと簡単に負けてしまうという弱みにもなっている。特にスライスへの対応に難があり、ネットに掛けるミスがあまりにも多い点は早急な改善が必要だ。また、踏み込みが十分にとれない状況では手打ち気味のスイングで力のない短いボールを返球してしまうことも多い。

自在性や対応力でフォアを上回る確実なバックハンド

 その一方、前屈みで上から抑え込むフォームが特徴のバックハンドは確実性に優れており、自在性や対応力の高さはフォアに優るとも劣らない。頻繁にスライスを交ぜてペースを変えられるのもオールラウンドなチリッチらしい特徴といえ、全体的には穴の少ないショットである。最近はクロスに来たボールを膝元の打点からダウンザラインに流し込むような予測困難なショットが非常に効果的で、このウィナーが増えてくると相手としてはかなりの広範囲をカバーする必要に迫られる。バックで深さと角度が出せている時には、質の高いドロップショットも重要な得点源となっている。不調時はとりわけディフェンスの安定感が低下する傾向があり、バックを強いショットで攻められた時に腰が引けたような弱い返球になるのが強い時との一番の違いだ。

攻撃的なテニスに不釣り合いな弱気なメンタル

 非常に真面目な性格で、自分の身体的な有利さにしっかりとした技術の裏付けを身につけようと努力を続けており、隙のないプレーヤーに徐々に成長している。ただ、その真面目さが時に災いすることもあり、相手にメンタル勝負に持ち込まれるとやや脆さを見せることがある。攻撃的なテニスを持ちながら、メンタル的には極めて守備的というのが彼の最大の弱点だ。最近はピンチでエースを連発するなど精神面の改善を感じる部分もあるが、上位陣との対戦で勝ちが見えた時に硬くなる傾向は抜けておらず、コンスタントにトップ10との対戦をものにしていくためにはメンタル的にもう一つ殻を破り、さらには打開策として時には無心でハードヒットを連打するような開き直りも欲しいところだ。

GSチャンピオンの肩書きに相応しい活躍でトップ10に定着

 ジュニア時代にはNo.1の経歴を持ち、デビュー当初から次世代エースとして大きな期待を寄せられていたことを考えれば、20代前半のキャリアは物足りないものであったが、苦節を経てビッグ4を脅かす存在として十分な結果を残すようになった。ややインパクトに欠ける感が否めなかった中での14年全米優勝はまさに望外の結果であり、その先グランドスラムチャンピオンという巨大な肩書きを背負わされる中で真価が問われてきたが、17年から18年にかけて1年の間にグランドスラムの決勝を2度戦ったとなれば自身最高位であるNo.3の地位も頷くことができる。ここ数年はパフォーマンスが大きく低下し、年齢を考えるとこのままゆっくりと沈み行くキャリアも想像されたが、22年は特に大舞台での勝負強さが甦り、本来は最も相性の悪いサーフェスであるクレーの全仏で準決勝に勝ち上がり、4つのグランドスラムすべてでベスト4を経験する快挙を達成している。若い世代の台頭も著しい近年のツアーだが、絶好調時の無双したテニスは未だ誰にも止められない魅力を備えるだけに、同世代のデルポトロや錦織らとともにテニス界を背負って立つ存在になれるのか、チリッチの今後に注目が集まる。