Adrian Mannarino
生年月日: 1988.06.29
国籍: フランス
出身地: ソワジー・ス・モンモレンシー(フランス)
身長: 180cm
体重: 79kg
利き手: 左
ウェア: lululemon
シューズ: NIKE
ラケット: Babolat Pure Aero
プロ転向: 2004
コーチ: Erwann Tortuyaux
キレのある回転系のサーブを左右に散らし、小気味良い動きと下半身の粘り強さを活かして根比べの打ち合いを愚直にものにする、相手の心を折るような戦い方を持ち味とし、芝やハードコートといった速いサーフェスを中心に強さを発揮するスピードタイプのレフティープレーヤー。数年前までチャレンジャーツアーを中心に回る中で幾度となくタイトルを獲得し、しっかりと実力の基盤を固めたうえでツアーレベルへと徐々に主戦場を移してきた経緯を持つが、相手のショットを利用して跳ね返すボール処理のうまさをベースに、パワーよりキレとテクニックで勝負する彼のテニスは、今のツアーにはなかなか見られないタイプであるため、上位陣もひとたび戦術を間違いマナリノの土俵ともいえるスローペースに引き込まれると、大いに手を焼かされるような存在だ。18年までに通算6度のツアー決勝を戦いながら一度も勝てず、準優勝10回の無冠で悲運のキャリアを終えた同胞のベネトーと同じレールに乗ってしまった雰囲気も出ていたが、19年スヘルトーヘンボス(250)でついにツアー初優勝を飾った。17年に大きな飛躍を果たした日本の杉田が同年に重要な大会において3度対戦しいずれも接戦を繰り広げた相手として、また東京(500)の楽天オープンで決勝まで勝ち進んだ活躍もあり、日本での知名度も上がっている。Twitterで自身が使用するものと同じモデルのラケットを探しているとファンに呼びかけたり、お気に入りのウェアを1年以上に亘りどの大会でも着用したりと、思考や性格も含めてとにかく不思議なプレーヤーだ。右脇腹には“Behind every tear there’s hope.”というタトゥーが刻まれている。
丁寧にコースを突いて長いラリーを愚直に挑む超曲者なストローク
ストロークはフォアハンド、バックハンドともに極端にショートテイクバックで相手のショットの球威を吸収しながら、丁寧にコーナーを突いて崩していくのが彼のスタイル。スイングをコンパクトにすることでコースを相手に読ませず、またベースライン付近の立ち位置からテンポの速いライジングで展開していくことを可能とし、パワーの欠如をタイミングで補っている。以前はどちらかと言えば淡白なプレースタイルで、自ら先に仕掛ける展開を作れなかったり、攻めを確実に受け止められて長いストローク戦を強いられるとあっさりとミスを出すことが多かったが、現在はむしろその真逆といってよく、厳しい攻撃に対して低い姿勢で延々と食らいつき、安定した返球能力を駆使して相手のミスを誘発させるスタイルへと劇的な変貌を遂げている。しつこさを戦い方の軸に据えるプレーヤーにとって安易なストレートへの返球は振り切られる可能性を高める要因にもなるが、その中でラリーの応酬が始まるとほとんどをクロスのそれも深いところにに持っていけるのが彼の凄さ。あまり回転をかけない技術面での特性もあいまって、バウンド後にボールが滑っていく分、守りながらも相手を押し込むこともできるのが強みとなっている。元々技術的には守備型に適した特徴を備えており、薄いグリップながらかなり打点を引き付けて手首の返しでボールを捉える独特なフォアはまさしくその例といえるだろう。左利きのフォア側から飛んでくるボールとしては軌道が非常に特異で、相当なスピードも出るため、クロスへのカウンターで相手を振り切ることができる。また、微妙な打点の調節を上半身の屈み具合と腕の曲げ伸ばしで行う独特な特徴もあり、フットワークは早い段階で足をぴたりと止めるのが彼流である。バックも同様にクロスに深く鋭く伸びていくフラット系のショットを得意としており、これを起点に相手の浮き球を誘い出し、ポジションを前に上げるチャンスを巧みに生み出す。また、より高い打点から叩くために、ジャックナイフも多用して相手を押し込む姿勢を見せる。対マナリノにおいてはいかに浮き球を誘い出せるかが重要で、シンプルにオーバーパワーを狙うのか、フォア側に遅いスライスを集めてカウンター戦術を機能不全に陥れるか、その手段は人それぞれであろうが、低い弾道の打ち合いではなかなかポイントを重ねていくことは難しい。
スライスとフラットの打ち分けが印象に残るサーブ
左利きの利点を活かしたサーブも武器の1つで、とりわけアドバンテージサイドからのサーブは簡単にコースを読ませない。センターマークからやや離れた位置に立つことで、より厳しい角度へのプレースメントを実現しているワイドへのスライスサーブは非常に印象深く、このサーブへの対応の良し悪しがマナリノとの対戦の鍵になっている。また、それを相手に強く意識させて勝負所ではセンターへ200km/hを超えるフラット系のサーブでエースを取ることもできる。
受けながら相手を崩すカウンターテニスの真髄
これといって目立った成績を残して現在のランキングまで到達したわけではないため、あまりよく知られる存在ではないが、逆にそれだけ安定した力で掴み取ったのが今の位置と言うことができる。タイミング、プレースメント、球速を自在に操って、受けながら相手を崩すカウンターテニスの真髄ともいえる彼のプレーは必見。実力的には遠く及ばないものの、技術的には彼自身憧れの存在と話す元No.1のリオスとの共通点が多く、最終的なテニスの理想形はそこといえそうだ。ストロークを磨くことによって、感覚の鋭いボレーに繋げる形をもっと増やせれば、真の意味でのトップレベルで渡り合う才能は十分に備えているプレーヤーであり、今後がまだまだ楽しみだ。