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Frances Tiafoe

フランシス・ティアフォー

 生年月日: 1998.01.20 
 国籍:   アメリカ 
 出身地:  ハイアッツビル(アメリカ)
 身長:   188cm 
 体重:   86kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: YONEX VCORE Pro 97 
 プロ転向: 2015 
 コーチ:  Wayne Ferreira 

 生まれ持った身体能力の高さを活かして豪快に叩き込むフォアハンドのパワーショットを中心とするダイナミックなプレーと、柔らかいタッチや確かな戦術眼で相手を翻弄するプレーの2つの異なる軸を持った個性的なテニスで沸かすアメリカ期待の星。13年に史上最年少の15歳でオレンジボウルを制した逸材であり、豊作と言われるこの世代の中でプロ転向後のブレイクレースでは周囲に先を越された印象もあったが、躍動感溢れる動きからパワーとスピードで相手を圧倒するテニスのインパクトは特大。17年全米1回戦でフェデラーをフルセットの土俵際まで追い詰めた試合は記憶に新しいが、その一戦も含めて確かな自信を掴むと、20歳になって間もない18年序盤のデルレイビーチ(250)でツアー初優勝を飾った。19年全豪ではアンダーソンやディミトロフなどの強豪を下してグランドスラム初のベスト8を記録している。元6位のフェレイラがコーチに就任した20年以降はあらゆる面でプロ意識が向上したことで、高いレベルのプレーを安定的に発揮できるようになっている。ナダルからの金星を経てベスト4に進出した22年全米の鮮烈な活躍はまさにその賜物であった。全体的に癖の強い技術でボールを扱うこともあり、上位陣にとっては比較的弱点を炙り出しやすいプレーヤーには見えるものの、彼の醸し出す猛獣が襲い掛かるような雰囲気はそうした戦術を無力化してしまうほどの威圧感があり、危険な存在であることは間違いない。条件的には構える余裕がとれるスローハードとの相性が良いが、巧みな技術力を自らのテニスに落とし込めるようになったここ最近は芝も含めた高速環境でも強さを発揮している。ユーモア溢れる発言や茶目っ気たっぷりの仕草も彼の豊かな個性を表す要素で、オンオフを問わず注目していたい存在だ。

驚嘆のどよめきに包まれる凄まじいパワーのフォアハンド

 脇を開けてラケットを引きインパクトの瞬間まで面が下向きのまま出てくるテイクバックの軌道や、手首を掌屈させてボールを捉える打ち方に大きな特徴があるフォアハンドはティアフォーの最大の武器で、ウィナーを量産していきたい彼のテニスにおいて生命線となるショットである。中でも得意とするのはクロスコートであり、強烈なトップスピンで相手を後方に押し込み、高い打点が取れた段階でフルパワーの強打で仕留めるのが彼の形だ。しっかりと構えてウィナーを狙った際の凄まじいボールの威力には、常に観客から驚嘆のどよめきが沸き起こる。以前は深いボールで攻め込まれライジングでの対応を強いられると浅い返球が連続してしまう傾向にあり、先手を打てなければ厳しいといういかにもアメリカ人らしい特徴があった。かなりグリップが厚いことが原因で相手の攻撃を跳ね返す守備力、あるいはリズムや球種の変化への対応力に難がある点が課題とされていたのだが、むしろ近年は速い打球へのライジング対応の良さが意外性を伴った武器として機能している。複雑な動きのあるスイングでなぜあれほどのショットが打てるのか一見不思議であり、もちろん彼特有のラケットワークの感性が為す技ではあるが、技術的には握りが厚い分だけ打点が手元に差されてもブロックが利くところに強みがあると言えそうだ。さらに洗練されて自由度を高める方向で改善された時の姿が楽しみである。

フラット面でコンパクトに返球するバックハンド

 大胆さが持ち味のフォアとは異なり、バックハンドはコンパクトなスイングで面を合わせて丁寧に運ぶように繋いでいくのが基本のスタンス。打ち合いの中にスライスを多く交ぜるのも特徴で、過度なペースアップを抑え、自分優位なラリーに持ち込むうまさを持ち合わせている。元々はスピードが若干遅いサイドスピン系の球種が多く、スライスを攻撃に活かすビジョンは描きにくかったのだが、最近はボールを鋭く切るような非常に回転量と推進力を両立したスライスに進化している。また、最近はフラットを打つ際の振りのキレが増し打球が鋭くなったことで、正面突破的なクロスへの強打からタイミングを早めてオープンコートを突くダウンザラインまで攻撃のバリエーションが豊富になっている。それにより緩いスライスとの緩急差も大きくなって、バック側からアドバンテージをとる場面も増えており、フォアの一撃以外のポイント源を構築しつつあるのは成長の証といえる。

柔らかいストップボレーで魅せるネットプレー

 抜け目なく相手の隙を見極めてポイントを締めにかかるネットプレーも十分に計算の立つ得点パターンである。非常に柔らかいタッチで目の前に落とすストップボレーは天才的だ。ただし、スマッシュ含めハイボレー系統は危うさが残るうえ、全体に感覚任せなところがあり、足の動きを疎かにしたりボールから目を切るのが早かったり、明らかに横着をした結果としてのミスも散見される点は改善したい。

球種の変化とピンチでの強さが光る戦略的なサーブ

 トスアップと同時にラケットを担ぎ上げるフォームが特徴のサーブも武器の1つである。220km/hに迫る爆発的な威力でエースを奪う場面が印象には残りやすいが、1stからワイドに切れるスライスサーブや高く弾むスピンサーブを多用するため、球速の緩急をかなりリターン側に意識づけることが可能となっており、簡単には的を絞らせないのが強みだ。1stの確率が高いタイプではないが、それだけにブレークポイントを決まってエースで切り抜けるピンチでの強さは際立っている。現状でポテンシャルを発揮しきれているかといえばそうではなく、確かに実際にはエース量産型のプレーヤーではないが、それでももっとフリーポイントを増やし、サービスゲームの質を高めることは十分に可能なはずで、その意味では優先的に取り組みたい課題と言っていいだろう。

両サイドから脅威を与えられるリターン

 スタッツとして表れてくる数字の面では凡庸ながら、リターンによって相手に与えるダメージも大きいものがある。リターンの際、ストローク時とは異なるフォアの薄い握りで待つ。これは確実なブロックリターンを企図しているためであるが、要所でフォア側の一点張りを的中させると同じグリップのまま目にも留まらぬフラット強打のエースを浴びせることもあり脅威となっている。また、2ndに対して中に踏み込んでジャックナイフ気味にバックで叩くリターンの質も一級品。その勢いでネットラッシュをかけるが、返球自体が良いのでエースになることが多い。

緻密さを習得して「当たれば強い」の評価を卒業したい

 戦術の幅を広げることによって真のトッププレーヤーに階段を上がった感のあるティアフォー。それでも根が気分屋なだけに、自分のパターンでポイントが取れているうちは良いのだが、それが通用しないとプレーの雑さや執着心の薄さばかりが目立つようになり、メンタルとともに崩れてしまう悪癖は残る。陽気さを伴った種々の「奇行」に観客は喜ぶかもしれないが、相手プレーヤーへの敬意に欠けるのではないかという度の過ぎた振る舞いが物議を醸すこともある。試合を通して冷静に強かに戦術を組み立てることができるとさらに強くなれる素地はあると見え、「当たれば強い」という評価を卒業するためにプレーの緻密さを追求し、より自分の強みを常に出せるテニスを確立できれば、将来的にトップ10やビッグタイトル獲得も見えてくるはずだ。