Fernando Verdasco
生年月日: 1983.11.15
国籍: スペイン
出身地: マドリード(スペイン)
身長: 188cm
体重: 90kg
利き手: 左
ウェア: adidas
シューズ: adidas
ラケット: HEAD Speed Pro
プロ転向: 2001
コーチ: Diego Dinomo, David Sanchez,
Quino Munoz
ツアーでも五本の指に入ると言われるほどの高い完成度を誇るフォアハンドを軸に、ミスを恐れることなくハードヒットでひたすら攻める攻撃的なプレースタイルを貫いて、長くツアーのトップレベルで戦うスペインのレフティー。04年にバレンシア(250*)でのツアー初優勝により本格化して以降、安定した力で中位をキープしていた彼だが、その才能が大きく開花したのは09年で、全豪でベスト4を記録したことをきっかけに自信をつけると、同年は主にハードコートで、翌年はモンテカルロ(1000)での決勝進出や続くバルセロナ(500)でのタイトル獲得などクレーでの強さを見せつけ、トップ10定着を実現した。相手のオープンコートに絶え間なく配球していく展開力に富んだ攻撃が強さのベースだが、最大の魅力は目にも留まらぬ豪打の連続である。本人はハードが好きと話すこともあり、時折爆発力を発揮して上位に進出するのはハードコートが多いのだが、最も安定して好成績を残しているのは他のスペイン人同様にクレーである。デビスカップではナダルやフェレールの存在がある分出番は限られたが、主にダブルス、そして勝負所ではシングルスでも貢献し、08年、09年、11年に優勝を経験している。ここ数年のベストマッチの1つに数えられる09年全豪準決勝では、同胞のナダルと当時の大会最長試合記録となる5時間14分の死闘の末に敗れたが、7年の時を経て実現した16年全豪1回戦での再戦では4時間41分の激闘を制しこれ以上ないドラマチックなリベンジを果たした。
"fearhand"の異名を持つ最高レベルの強烈フォアハンド
スピード・キレ・精度すべての要素において世界最高レベルで、“fearhand”と形容されたこともあるフォアハンドは彼の最大の武器である。体を一度沈み込ませ、伸び上がりながら腕を一直線に伸ばしてボールを捉える独特なフォームは、体全体に溜め込んだ力を一気に解放してボールに伝えることができる。基本的にはライジング気味の強打で攻めることが多いが、状況に応じて2種類の強打を使い分けている。強烈なフラットドライブは彼が最も多くのポイントを生み出すショットで、100mphを優に超えるその爆発的なパワーでウィナーを連発する。しかし、このショットは非常にリスクが高く、ミスも多くなるため、ラリーではミスを軽減すべくリバーススイングから重いスピンショットを駆使する。ナダルのフォアとのマッチアップにおいて、同じスピンで互角に渡り合える数少ないプレーヤーで、特に得意とするクレーコートでは、トップクラスの回転量を活かしたアングルショットで相手を苦しめる。2つのどちらを打つにしても打点が高く、早いタイミングでボールを捉えられるため、相手に余裕を与えず畳み掛けるように攻めることができるのが大きな強みである。魅力的なのはこれらを非常に広角に展開していけることで、強烈なキック力を伴う唸るようなトップスピンをクロスの厳しいアングルへ打って相手を走らせながらオープンコートを作り、ストレートから逆クロス方向へのフラット系の強打でそこ突くのが彼の形。また、相手のウィナー級のショットを大きなストライドでフォア側に走りながら逆に矢のようなウィナーで返す豪快なカウンターショットは驚愕の威力と美しい軌道を誇り、彼のトレードマークといえるショットであるとともに、簡単には彼のフォア側に展開できないという心理的な脅威も相手に与えられている。年齢から来るフィジカルの低下により最近は、そのショットの精度が落ちたというよりも打つ機会自体が減ってきているのが懸念材料ではあるが。また、全体にボールとのタイミングや距離感を掴めずにミスヒットになることが多いのは、打点に入った後に足が止まるのが早いのが原因で、早くボールへの準備に入るのは良いとして直前のステップの微調整を怠らない意識を高めたい。
クロスとストレートの思考が定石と異なるバックハンド
バックハンドもフラット系とスピン系を使うが、より精度が高いのはスピンショットである。打点を遅らせてやや低い打点から打つことで、フォアにも匹敵するスピン量があり、また相手のタイミングを外すことができるため有効である。このショットをダウンザライン方向に多用し、機を見て弾道の低いフラット系でクロスに突き刺す形を得意とする。通常はクロスで作りストレートで決めるのが定石だが、その逆をパターンに持つのは、右利き相手のバックサイドを突いて崩す意図が強い左利きの彼ならではといえる。ただ、両手打ちの割には高い打点の対応に難があり、とりわけ決めのショットに安定感を欠くことも少なくない。より強烈なフォアで攻めることをテーマに、バックからは低く滑るスライスを多用するスタイルを試した時期もあったが、現在はカウンター気味に展開するクロスコートの質が向上したため、隙あらばコーナーを突くという意識が高まっている。
サーブは確率と破壊力を両立するも、DFという致命的な弱点も
サーブは重く跳ね上がるキレが凄まじいスピンサーブや、左利き独特のワイドへ切れるスライスサーブを軸に、1stの確率が平均で70%近くというツアー屈指の高い数字を残している。ワイドサーブで相手を外に追い出して、次の1球で決める形は彼の十八番で、これにある程度対応できないと彼のサービスゲームを破るのは難しい。ブレイクを果たした09年以降は、試合の要所で220km/hにも届く威力抜群のフラットサーブを組み込み、サーブ一本でポイントを取る局面も増えた。また、2ndで入れにいくサーブを打たないことも大きな特徴で、1stと2ndの差が少なく相手にとっては脅威であるが、それゆえに緊張した場面ではダブルフォルトも非常に多くなる。エースを計算できる強烈なサーブがあるにもかかわらず、露骨に1stの確率を重視するのもダブルフォルトの多発が元凶と言ってよく、2ndの精度に対する心理的な不安を払拭したいところだ。さらには、突如サーブのリズムを崩して1stが入らなくなり、大きくフォルトしたりラケットの真ん中に当たらず叩きつけたりということが頻繁に起こる。そして、それが1セット続いてしまうこともしばしばあり、これらがすべての長所を帳消しにしてしまう致命的な弱点となっており、質の高い球種を複数兼ね備えていながら、彼のテニスの中でサーブが勝敗を決するうえで長く足を引っ張る要素となってきた。
メンタルの弱さはベルダスコの代名詞
上位との対決やブレーク直後の自らのサービスゲーム、大事なポイントなどプレッシャーのかかる試合や局面で、過度の気負いから本来のプレーが出せずに終わってしまうメンタルの問題は深刻で、それまでの躍動感がまるで嘘のようにフットワークに乱れが生じ、気持ちだけが先行しミスを連発してしまう。これにより勝てる試合、取れるセットを幾度となく落としており、こうした精神面の弱さや詰めの甘さが接戦に弱い大きな原因となっている。ベルダスコといえば肝心な場面でガタガタと崩れるプレーヤーという屈辱的な認識は一日も早く返上したいのだが。
強引な突破力から多彩な武器を駆使した頭脳的なテニスへのシフト
ベルダスコのテニスにはあらゆる面で彼の強気な性格が反映されており、調子の良い時には奇跡的ともいえるフォアで圧倒的な攻撃ができるが、リズムが得られないと強引さが災いしてエラーとなる確率が極めて高く、相手は辛抱強く彼のミスを待った方が得策となる。ここ最近は足の故障あるいは若干感じられるオーバーウェイトの影響からか、強かった時に比べてフットワークに陰りが見られ、打点がやや低くなることでテンポも落ち、プレーに無理が生じるという悪循環に陥ったままなかなか不調を抜け出せず、ランキングも下降線を辿るばかりであった。しかし、13年はシングルスでの巻き返しを名目にマレーロと組んだダブルスでかなりの結果を残し、とりわけブライアン兄弟などを一蹴してATPツアーファイナルズを制したことは大きなインパクトを与えた。元々単複で十分な実績を残しているプレーヤーだが、本人曰く芝など球足の速い条件の方が勝てる試合が近年増えてきたのは、ダブルスでポイントをショートカットする術を身につけたかららしい。以前のような躍動感は薄れ、スタミナの衰えも隠せないが、地力そのものはいまだ落ちておらず、最近ではクロスへのスピンとストレートへのフラットの緩急をより明確にし、ドロップショットやネットプレーなども織り交ぜた巧みなコンビネーションで崩すという頭を使った戦術的なテニスにシフトしている。波に乗ればどんな相手でも倒してしまう力を持っているだけに、まだまだ老け込まずトップ返り咲きを目指してほしい。