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20200215102533

Pierre-Hugues Herbert

ピエール・ユーグ・エルベール

 生年月日: 1991.03.18 
 国籍:   フランス 
 出身地:  シルティカイム(フランス)
 身長:   188cm 
 体重:   75kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  LACOSTE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: YONEX VCORE 97 Pro 
 プロ転向: 2010 
 コーチ:  Jean Roch Herbert  

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 細身の体格ながらバネのあるフィジカルを伸びやかに使ったダイナミックなサーブと繊細なタッチ感覚で自在に操るネットプレーを軸としたしなやかなテニスを持ち味に単複に活躍の場を持つフランスのユーティリティプレーヤー。同胞の先輩格であるマウと組むダブルスにおいては15年全米を皮切りに16年ウィンブルドン、18年全仏、19年全豪を制した実績が燦然と輝き、すべて同じパートナーでのキャリアグランドスラム達成は06年のブライアン兄弟以来史上8チーム目の偉業であった。近年のツアーの中で最もコンスタントに結果を残す完成度の高いペアの一角としてトップ争いを演じており、加えて高齢化の進行が著しかったダブルスツアーにある意味では風穴を開けた存在ともいえ、その価値は高く評価されるべきだろう。また、その躍進のきっかけともいえるのがプシシェズニーとのペアでラッキールーザーから第1シードのブライアン兄弟、第2シードのドディグ・メロらを破ってツアー初優勝を果たした14年東京(500)であったこともあり、日本での声援も大きい。現在のところジュニア時代からの流れそのままにダブルスでの華々しい成績が際立っており、スペシャリストと呼ぶにふさわしいプレーヤーだが、ダブルスで培われるうまさが直接的にテニスの強さに還元されそうな展開の速いプレースタイルを持つだけに、まさにチームを組むマウなどと同様に遅咲き的に今後シングルスの方でも飛躍が見られる可能性は十分にある。明らかに速い環境で生きるテニスであり、過去タイトル獲得に近づいたのもハードや芝の大会ではあったが、一方で意外にクレーでも上位を食う力を持っており、このあたりはさすがフランス人と言ってもいいかもしれない。

マッケンローを想起させる大胆かつ独特なサーブ

 モーション開始前の体の沈み込み、両足の幅を非常に広くとるワイドスタンス、ネットに詰める時間を縮めるためのかなり前方へのトスアップ、リターン側に背中全体が見えるほどの大きな捻り動作、肘を伸ばしてラケットが地面に近い低い位置から出てくる大きなバックスイングなど、マッケンローを想起させるかのような大胆かつ独特なサーブはエルベールのトレードマークで、210km/hを超えるスピードでエースを多く奪う1stの強力さはもちろん、2ndのキックサーブも鋭い曲がりや跳ね上がりで簡単には叩かせない。強気に思い切って振り抜く中で実現される質の高い2ndである分、裏返しとしてダブルフォルトが多い弱点はあるが、自分から崩れない限りは相手へのプレッシャーは十分なものがある。

柔らかいタッチで魅せる十八番のネットプレー

 強烈なサーブやリターンとのコンビネーションとして、またストロークで一瞬の隙を突いてネットラッシュを仕掛けるプレーは彼の十八番と言ってもいいパターンで、相手を多いに苦しめる最大の武器である。サーブにおいてはどちらかといえばサービスダッシュよりも3球目アプローチの選択が目立ち、クロスに戻ってきたボールをストレート方向に流すフォアの精度が生命線。技術的には縦に詰める動きの素早さがありながら、ボレーは非常に柔らかいタッチで短くアングルにコントロールできる点が相手の意表を突く形となる。中でも本人が最も得意なショットに挙げるバックボレーは秀逸。パンチ力というよりは精度で勝負するタイプで、深さを出すボレーもしっかりとバックスピンをかけるため、少し浮き上がった軌道からベースラインに優しく吸い込まれるのが特徴だ。

主体的な揺さぶりは有効も安定性に難ありのストローク

 ベースラインでの戦いはあまり得意ではなく、突然短く落とすドロップショットも含めてバックハンドのスライスを多用した揺さぶりは効果的だが、とりわけ左右の動きがスムーズでないためにしっかりと打点に入って打てるケースが少ないことが安定性を欠く要因となっている。構えることができればリズミカルに跳ねるようなフォームが特徴的なフォアハンドのストレートや逆クロスに意外性のあるバックのダウンザラインとウィナーを狙えるショットを備えており、回転量の比較的少ないこれら攻めのライジングショットを頻繁に繰り出せる高いポジションを維持できている時の彼は十分に強い。課題はロングラリーに耐え得る洗練されたフットワークの習得ということになろう。

シングルスで露呈しやすいメンタル面の揺らぎ

 メンタル面に不安な部分があり、サーブがまったく入らなくなってダブルフォルトを連発することがある。ダブルスならベテランのマウの心強いカバーがある分さほど問題にはならないが、当然ながら周りの助けが得られないシングルスではその弱みが勝敗を決することにもなりかねず改善が求められる。

サーフェス低速化のピークアウトを追い風に飛躍できるか⁉

 ストロークのとりわけ守備面をはじめとする相手のショットへの対応力に弱点があるが、そこを改善しネットを窺う機会をさらに増やせれば上位陣にとっても警戒を要するプレーヤーになれるポテンシャルはある。年を経るごとにストローク力が確かに強化されてきているうえ、近年はサーフェスの低速化が収まり、再び全体に速いサーフェスが増えている傾向があり、これを追い風としてネットプレーヤーの彼にもツアーを盛り上げる活躍を期待したい。

 

Lorenzo Sonego

ロレンツォ・ソネゴ

 生年月日: 1995.05.11 
 国籍:   イタリア 
 出身地:  トリノ(イタリア)
 身長:   191cm 
 体重:   76kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  EMPORIO ARMANI 
 シューズ: Mizuno 
 ラケット: Wison Blade 98 (18×20) 
 プロ転向: 2013 
 コーチ:  Gipo Arbino 

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 細身な体格を活かした躍動感のある軽快なフットワークからキレのあるフォアハンドを次々と打ち込んで相手を防戦に立たせるテニスを持ち味に、近年のイタリア勢の躍進の流れにも乗る形で台頭してきた攻撃的なストローカー。テニスを始めたのが11歳と比較的遅いことで知られ、ツアーレベルでの初勝利が22歳というのも決して早くないが、その分だけ実力のベースには打球センスの良さがあることを強く感じさせるプレーヤーだ。19年モンテカルロ(1000)で予選勝ち上がりからハチャノフなど上位陣を倒してベスト8に進出して自信を掴むと、同年アンタルヤ(250)で早速ツアー初優勝を果たしている。本来最も得意とするサーフェスはクレーであるが、長身から繰り出すビッグサーブや果敢なネットプレーがより生きることもあって芝での活躍も期待できる。

端正なショット軌道が魅力の強烈なフォアハンド

 体軸がぶれないことでラケットヘッドが非常に鋭く走るフォアハンドはソネゴの最大の武器。クレーで強いプレーヤーではあるが、スピン量の多さに対して弾道は割合低く、直線的なスピードボールを駆使した一撃の切れ味が光り、その端正なショット軌道は大きな魅力である。少ないパワーで強烈なボールを放つ感覚はイタリア的といえる。主導権を握ったラリーでは回り込みのポジションを確保して、浅い角度への逆クロスやフォア側に来たボールをダウンザラインに突き刺してウィナーを奪う形を得意にしている。また、フォアから短く落とすドロップショットを多用するのも彼のスタイルである。

柔軟な対応力を強化したいバックハンド

 鞭のようにしなやかにラケットが動く強烈なフォアと異なり、バックハンドは面を固定して押し出す打ち方が特徴のショット。そのフォームの硬さが柔軟な対応力をやや阻害している部分があり、相手のパワフルな打球に弾かれてペースが落ちたり、遅いボールにタイミングが狂ったりと課題となっている。攻めの局面では大半をフォアで処理することが彼の長所であることを踏まえれば、バックはコンスタントに織り交ぜるスライスも含めて深い返球でチャンスを窺う確実性を向上させる方向性が望ましい。

ツアー屈指の高速サーブと秀逸なサーブ&ボレー

 早めにセットを完了させることによる安定感と低い位置からラケットが大きく回ってくることによるパワーを両立したサーブも大きな武器だ。常に220km/hを超える爆発的なフラットサーブとバウンド後の球威で押し込む質の高いスピンサーブを兼ね備える。サーブ&ボレーも欠かすことのできない有効なオプションの1つとしている点も強みで、選択のタイミングの良さ、反応の速さ、優れたタッチで操る確かなボレー技術を持つため、そのポイント獲得率も高い。

オールラウンドな攻撃型テニスはまだまだ進化の途上

 彼のテニスは自らポイントを掴み取る力やネットも積極的に絡める多彩なバリエーションから攻撃面において大きな弱点はない。もちろんサーブの脅威をさらに増したり、バックで決めるパターンの構築など進化のポテンシャルは未だ秘めていることは言うまでもないが、上位定着の鍵はおそらくリターンやストロークの粘り強さを強化できるかに懸かってくるだろう。知名度が高まってくれば、オールラウンドなプレースタイルに端麗なルックスも助けて人気も出そうなプレーヤーであり、今後大いに注目したい。

 

Cristian Garin

クリスチャン・ガリン

 生年月日: 1996.05.30 
 国籍:   チリ 
 出身地:  サンティアゴ(チリ)
 身長:   185cm 
 体重:   85kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  asics 
 シューズ: asics 
 ラケット: HEAD Radical MP 
 プロ転向: 2011 
 コーチ:  Pepe Vendrell 

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 筋肉質な分厚い肉体ながら南米出身らしいバネのある軽やかな動きと安定したラリー能力を基盤に、タイミングを計って得意のフォアハンドで堅実に攻撃を当てていくテニスで、トップレベルの地位を確かなものにしつつあるチリ期待のプレーヤー。13年全仏ジュニアの優勝者であり、さらには当時16歳ですでにツアーレベルの勝利を記録していたこともあり、非常に早くから名前を知られていた。そのことを考えると本格化までにやや時間を要した印象はあるが、しっかりと下積みを経てきただけありここ最近の台頭は勢いではなく本物の実力と言って差し支えなく、ヒューストン(250)でのツアー初優勝を含め5大会で3度決勝に進出した19年前半や、リオデジャネイロ(500)でのビッグタイトルを含む2大会連続優勝を飾った20年初頭の活躍はとりわけ鮮烈だった。現時点ではクレーコートでの戦績が突出して優れているが、プレースタイルが典型的なクレーコーターというよりも育った環境による自信の大きさが違いを生んでいる要因と思われる。フラットなボールを早いテンポで散らしていくショットも随所に見られる彼のテニスは本人の順応次第でハードでも結果は出せるはずだ。

線で捉える強力なフォアハンドを軸に応戦するストローク

 ベースラインでのストロークは堅い守備と機を見た攻撃のバランスが光る。守りの局面ではブロック系のスイングによりフラットな弾道で返球し、攻めの局面になった時に強くスピンをかけた高い軌道で押し込もうとする意図が見えるのが少し珍しい点。彼の最大の武器であるフォアハンドはテイクバックの早い段階でインパクト面が開くフォームが特徴であり、ボールを線で捉えることにより確実性という大きなアドバンテージに繋がっている。若干威力を削ぐ面はあるものの、彼のスタイルは決して後方からのパワー頼みではなく、粘った末に誘い込むようにフォア側を狙わせてカウンターをとったり、ラリーの中でコートの中に切れ込んでテンポを上げるショットが決め球の軸であり、ライジングの処理には理に適った打ち方といえる。フォア側でポジションを上げるその判断の良さが非常に際立ち、相手の予想を外すタイミングでダウンザラインのコーナーあるいはショートクロスを突くのが最も目立つポイントパターンだ。バックハンドは返すこと重視の姿勢が強く、バック側からの仕掛けを使うことはあまり多くない。ただし、特に低い姿勢のオープンスタンスではない場面でやや上半身と腕だけでショットをコントロールしようとするのが難点で、フットワークに不安定さを中心に大いに改善の余地がある。

ストローク以外での弱点の少なさも持ち味

 ストロークの強さが彼の実力を支える要素だが、フォア同様に早めのラケットセットから線で捉える安定したサーブ、前に入って叩く一発の怖さも持ち合わせるリターン、確実にポイントを締められるネットプレー、タフマッチにも耐える強靭なフィジカルなど、その他のプレーも隙がなく、こうした弱点の少なさも彼の持ち味の1つと言っていい。

「クレーの番人」としての地位を確保するか⁉

 特別ボールが速いわけでもなければ、ラリー中に甘い返球もあるのだが、少し長めの滞空時間で伸びてくるガリンの独特な球種には対戦相手がやりにくそうな様子が常にあり、その意味では巧みなカウンタープレーを多用する戦い方も含めて少なくとも相手目線ではシモンやトミックに近い感覚もあるかもしれない。ランキングがトップ20に入ったことで今後楽しみなのは未だ経験の少ないトップ10級との対戦やマスターズ以上の大会での存在感。戦いぶりを見ていると以前のアルマグロ、すなわちクレーに特化して着々とタイトルを重ねていく中でトップ20を維持するような地位を確保しそうな雰囲気が感じられる。いずれにしても、まだまだ全体的なスケールアップが期待できる若手のガリンには要注目だ。

 

Kyle Edmund

カイル・エドマンド

 生年月日: 1995.01.08 
 国籍:   イギリス 
 出身地:  ヨハネスブルク南アフリカ
 身長:   188cm 
 体重:   83kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: Wilson Pro Staff 97 (18×20) 
 プロ転向: 2012 
 コーチ:  Colin Beecher 

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 ツアー屈指の爆発力を誇るフォアハンドを駆使して一発の球威で相手の守備を打ち破ることも、左右に広く打ち分ける展開力で徐々に追い詰めていくこともできる、イギリス期待の強力なハードヒッター。15年末にイギリスが79年ぶりに頂点に輝いたデビスカップの決勝で第1ラバーに大抜擢され、相手エースのゴファンを2セットダウンの窮地に陥れる驚きのパフォーマンスを披露。この最高の形でのシーズン締め括りで自信を掴むと、16年から本格的にツアーレベルでの活躍が見られるようになり、特に全米ではガスケやイズナーを破って4回戦に進出し潜在能力の高さを証明した。18年には全豪でタフマッチの連続を見事に勝ち上がってベスト4を記録し、マレーの不在を払拭する存在感を示した。同年終盤にはアントワープ(250)でツアー初優勝を記録、実力も含めてトップ10入りも間近に迫っている。クレーコートを最も得意とするのは彼の強烈なスピンの効いたフォアとの相性の良さが要因だが、一方でハードコートでもその力はほとんど変わらず、全体として条件を問わないテニスの安定感が強みとなっている。

規格外の破壊力を誇る強打のフォアハンド

 広いスタンスをとって両足をしっかりと地面につけることで最大限吸収した下からのパワーを、自慢の腕力を活かしたフルスイングでショットに還元するフォアハンドは彼の最大の武器である。破壊力抜群のハードヒットでビッグ4からも恐れられたソダーリングを想起させる、テイクバック時に左手を低めの位置にセットするフォームが特徴で、かなり軌道の高いスピン系のボールがライン際で急激に落ちてコート内に収まり、バウンド後には相当な重さを伴って相手のラケットを弾いていくような威力が魅力となっている。厳しいアングルショットも含めて継続的に打ち続けるその強烈なショットで相手から浅いボールを引き出せば、積極的に前に入ってライジングでダウンザラインにウィナーを叩き込むのが1つの確立された形だ。また、回り込みフォアの強打は脅威で、少しベースラインから下がってボールとの距離をとり、回り込む時間と空間を作ったうえで放つ分、非常に広範囲をフォアでカバーし攻撃に結びつけることができる。これは後方からでもポイントを奪えるだけのパワーと肩口の高さから殴りつけるかの如くボールを上から叩く技術を備えた彼ならではの強みである。オープンスタンスで力強く踏ん張りながら放つカウンターも印象的で、並外れた腕力の強さがとりわけ際立つショットとなっている。

確率重視で組み立てるコンパクトなバックハンド

 振り子のようにゆったりと引くテイクバックにマレーの系譜を確かに感じさせるバックハンドは比較的コンパクトなスイングで捉えて深く返球していこうという志向が強いが、ここ最近はバウンドの上がりばなを叩くタイミングが向上し、カウンター気味にストレートへ展開するパターンを習得した分だけ攻撃力に磨きがかかっている。それほどウィナーを取っていく類のショットではないが、フォアでのラリー支配力を考えればリスクを冒さずにスライスも使いながら確率重視で組み立てるのは十分に理に適った戦い方といえる。現状課題に挙げられるのはディフェンス面で、比較的高い位置でオープンスタンスを使って弾き返せている時は強いが、動きながらのショットが得意なタイプではなく、一定以上ポジションを下げられると厳しさを露呈する。また、攻撃面においても1本でも多く返球されると展開が手詰まりになって決め手を失うシーンも見られ、戦術面を磨く必要もあるだろう。

安定したサービスゲームだがフォームの硬さは要改善

 サーブも彼の攻撃的なテニスを支える重要な要素となっており、スピードはフラット系でも200km/h前後と速くないが、どのコースにも正確なコントロールでラインを捉える精度の高さが持ち味。ゆえに2ndのポイント獲得率も高く、ストローク戦と同様にサービスゲームも安定感がある。ただし、更なる洗練の余地があるのも事実で、若干肩肘に硬さがあるフォームである点を改善できればスピードにしても回転系のキレにしてもまだまだ良くなりそうな雰囲気はある。

フォアの強さをより強調させる戦い方でトップを脅かしたい

 力強さの中にもしなやかさがあるため、今後様々な技術や戦術を身につけていくうえでその展望は明るい。スピン系の強打を持ち味としているため、安定感を犠牲にすることなく攻めのテニスを実現できる点で、おそらく結果の面でも波の少ないタイプになれるはず。トップからコンスタントに勝ち星を挙げるうえでは意外にバランス型であるという特性が足を引っ張っている感もあり、もっとシンプルに規格外のフォア強打を前面に出す戦い方もオプションとしては十分にありだろう。マレー兄弟の存在によりすっかり強豪国となったイギリスだが、エドマンドは間違いなくシングルスの2番手に定着するであろう有望株であり、彼より下の鼻息が荒いNextGenプレーヤーらともしのぎを削り合いながらテニス界を背負って立つスターへの成長を期待したい。

 

Andreas Seppi

アンドレアス・セッピ

 生年月日: 1984.02.21 
 国籍:   イタリア 
 出身地:  ボルツァーノ(イタリア)
 身長:   191cm 
 体重:   78kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  FILA 
 シューズ: FILA 
 ラケット: PROKENNEX Ki Q+ Tour Pro (325) 
 プロ転向: 2002 
 コーチ:  Massimo Sartori 

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 長身を活かした長いリーチでとにかくボールを拾い、安定感抜群のストロークを丁寧に繋ぐ粘り強いテニスを身上とし、長きに亘ってイタリアテニスを牽引するベテランプレーヤー。特徴がないのが特徴というプレーヤーの1人で、これというわかりやすい武器はないが、試合を通じて相手になかなかポイントを取らせないのが強さのベースとなっており、どんなショットに対しても一定のペース・高さ・深さで確実に返球するという意味での「安定感」を競わせたら間違いなくツアー屈指の職人。08年ハンブルク(1000*)でのベスト4以外に大きな大会での目立った戦績はないものの、プレースタイル、メンタルともに崩れにくい性質があり、強豪相手にも接戦を強いる能力を持っている。そうしたテニスの特性上、一気に大ブレイクということはこれまでなく、ツアー初優勝も11年のイーストボーン(250)とやや遅くなったが、15年全豪でのフェデラー撃破など忘れた頃に上位陣を窮地に陥れるのがセッピでもある。イタリア人らしくクレーで成績が良い一方、フラット系の低い軌道を主な持ち球とするプレースタイルはむしろ芝など高速系サーフェスに相性が良く、どんな条件でも十分に強さを発揮する。

伸びやかな低軌道で粘る職人的な力を究めたストローク

 一発の威力ではなく、プレースメントや粘りで勝負するのが彼のストロークであるが、一般的に確率の高いとされるスピンではなく、軌道に雑味がまったくないフラット気味のボールを深く打ち続けて粘るという独特かつやや変則的な能力の持ち主である。滅多なことではミスを出さない堅実さに加えて、ボールが深いため相手はなかなか攻め切れず、最後は根負けさせられるという展開が多いのが特徴。フォアハンド、バックハンドともにショートテイクバックで素早くボールの真後ろにラケットを引いたところからコンパクトなスイングでボールを捉え、強打というよりは自分のバランスが崩れない程度に力を抑えつつ、深さと角度を巧みに操ることができるのが強みである。堅牢な守備力と豊富なスタミナをベースにしたカウンタープレーを得意な形とするが、その際ベースラインから極端に下がることはなく、相手の強打の威力を吸収しながら早めのタイミングでボールを処理するため、守から攻への切り替えもスムーズとなり、ゆえにネットで取るポイントも多い。とはいえ、相手の意表を突く巧みな判断力を駆使して、鋭角へ放つフォアの逆クロスで非常に伸びのあるウィナーを多く奪うなど、決してディフェンス一辺倒のストローカーではない。長身でほどほどのパワーがあり、意外に俊敏で高く跳ね上がるボールも苦にせず、ロングラリー大歓迎という彼のテニスはまさに“カテナチオ”。セッピの一貫したハイペースのラリーを嫌った相手は、スピンで軌道を上げたりスライスで緩急をつけたりと様々な手を使って揺さぶりをかけてくるのだが、彼のストロークはネット上わずかの高さを通すコントロールが乱れず、常にスピードボールを繰り出していく。ペースの変化が効かないうえにオーバーパワーもできない点で、彼と戦うプレーヤーは忍耐力を試されていると言ってもいい。怖さはないが彼との対戦ではたとえ上位陣であれ消耗戦を覚悟しなければならないという意味で、非常に厄介な存在だ。

地味だがフリーポイントを計算できるクイックサーブ

 角度と緩急で相手を苦しめるクイック気味のサーブも武器の1つで、200km/hを超えることはほとんどないものの、両サイドともにセンターラインを正確に捉える精度の高いサーブで、確実にエースやフリーポイントを奪うことができる。

乱れることのない冷静さとポーカーフェイス

 試合中は常に安定したメンタルで冷静な判断力を備えており、ポイントを取っても取られてもまったく表情を変えないポーカーフェイスは独特な雰囲気を感じさせ、それは多かれ少なかれ相手に対するプレッシャーを生んでいる。実力の割に知名度が低く、それゆえに相手プレーヤーに対する声援の方が大きくなり、アウェイな雰囲気での戦いを強いられることも多いが、そうした状況に動じることはなく、むしろ彼は落ち着きつつも大舞台を楽しめるタイプである。また、彼のようなつかみどころのないプレーヤーには多いことで、5セットマッチでフルセットまでもつれる試合が非常に多いのが特徴なのだが、その戦いぶりもまさにセッピのしぶとさと勝負強さを示している。

「勝ちにくいプレーヤー」の代表格として存在感は健在

 プレーのどこを切っても派手さや迫力はないが、勝ちにくいプレーヤーの代表格として今後もツアーで存在感を示してくれそうだ。サーブやストロークなどすべてにおいて攻撃力が上がってくるとさらに厄介さが増し、結果もついてくるだろう。もう若くはない年齢であり、パワー自慢の若手に力負けして押し込まれる試合が僅かに増えた印象もあるものの、晩成型であり体力的な衰えもそれほど見られないだけにまだまだ活躍に期待したい。

 

【相互リンク】スコア配信サイトFlashScoreの紹介

読者の皆さま

いつも当サイトの選手紹介をご覧いただき誠にありがとうございます。

この度、FlashScoreというスコア配信サイトより相互リンクのご依頼をいただき、
各記事ヘッダー(スマホではフッター)に以下のリンクバナーを設置してみました。

Flashscore

僕も初めて知ったのですが、
テニスをはじめ様々なスポーツのライブスコアを配信しているサイトです。
その何が優れているかと言えば、速報性カバー範囲の2点でしょうか。
ATP/WTA Liveアプリと同タイミングでポイントごとに更新されていることから速報性は完璧。
そしてカバー範囲ですが、男子テニスにおいてはツアー・チャレンジャー・ITFサーキット(旧フューチャーズ)。その他例えば、サッカーでは日本のJ3まで情報があったり、野球では甲子園の情報があったり、あるいはプロリーグの存在すら一般に知られていない国のスコアまで拾えたり、、、とにかく驚きましたよ!!

皆さまはATP/WTA Liveアプリや最近リリースされたATP Tourアプリで試合速報を
確認されており、それらに特段の不便は感じていないと思います。
したがって、いわゆる「乗り換え」の需要はさほど多くないものと予想しますが、
是非これを機に一度サイトをご覧いただき、こんなサイトもあるんだということを認識いただいてもよろしいのではないでしょうか。


以上、僕が紹介するという体でこんな記事を書いてみましたが、
本音は「相互リンク依頼」という形である種明示的に自分のサイトが認められたのが単純に嬉しかったのが1点、相互リンクなのでFlashScoreの方でも推奨サイトにATP Playersを掲載いただけるとのことで読者の流入を秘かに期待しようがもう1点(笑)
もちろん普段皆さまから主にTwitterでいただく温かいお言葉も超喜んでいますよ。
いずれにせよ、今後とも変わらず皆さまのご厚意を賜りたく、よろしくお願いします。

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Webサイト:https://www.flashscore.co.jp/tennis//
Twitterhttps://twitter.com/FlashScoreJP
※FlashScoreは全世界のスポーツ・データベースを収集&配信する会社で、最近新たに上記の日本語版サイトが開設されたようです。

Casper Ruud

キャスパー・ルード

 生年月日: 1998.12.22 
 国籍:   ノルウェー 
 出身地:  オスロノルウェー
 身長:   183cm 
 体重:   77kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  YONEX 
 シューズ: YONEX 
 ラケット: YONEX EZONE 100 
 プロ転向: 2015 
 コーチ:  Christian Ruud 


 スピンの効いたパワフルなフォアハンドを可能な限り多く使ってラリー戦の主導権を握る攻撃的なテニスを持ち味とするノルウェーの新鋭プレーヤー。18歳になってまもない17年リオデジャネイロ(500)でツアーレベル自身初の勝利を挙げた勢いそのままに見事にベスト4に進出して注目を浴びたが、実際にジュニア時代にはNo.1の経歴を持ち、またコーチでもある父親は最高39位を記録した元プレーヤーと、期待されない理由はない逸材である。本格ブレイクが訪れたのは21年、モンテカルロ(1000)とマドリード(1000)でのマスターズ2大会連続ベスト4を皮切りに、シーズン中盤のクレー大会3週連続優勝、のみならず積み上げた自信が生きる形でハードでも結果が出るようになり、堂々のトップ10入りを達成するとともにATPファイナルズに出場し見事なラウンドロビン突破を果たした。進化の速度は止まず、22年には全仏と全米のグランドスラム2大会で決勝に上り詰めるなど、真の強豪としての地位を確固たるものにしている。クレーコートを非常に得意とするストローク重視のテニスを持ち、たしかに躍進の過程では筋力アップも伴い重い打球によって相手を押し込むプレースタイルが定着してきてはいるが、いわゆるクレーコーターと聞いて思い浮かべる強靭な肉体を活かして泥臭いプレーを一貫するタイプではなく、軽快なステップから飄々とキレのあるショットを打ち込むテニスが基底にある分だけ、魅力に富んだプレーヤーであると言うことができる。

抜群のキレでパワー勝負に打ち勝つフォアハンド

 ルードの強さの大部分を構成するベースラインからのストロークは、スピンをかけた高い軌道のボールを深く打って相手を押し込んだり、あるいはクロスの浅い角度を突いて走らせたりと、自身が後方のポジションにいながらでも自発的に展開する能力に長ける武器である。中でもゆったりと無駄のないモーションで繰り出すフォアハンドのキレが突出しており、弾けるような強いインパクトでボールを捉えて相手の堅い守備を一撃で突破することも、柔らかいスイングに切り替えて巧みな組み立てで崩すこともできる完成度の高いショット。後ろ足に体重を残し、上半身も少しのけ反るくらいの体勢で、引きつけた打点からスイングスピードを爆発的に上げて打つのが特徴で、その自然な流れとしてラケットを頭の上に振り抜くリバーススイングが多くを占める。フォア側の厳しいコースに打ち込まれた強いボールにしっかりと追いついて打ち負けずにスピンボールで打ち返す粘りの守備は相手を大いに疲弊させる。また、ひとたびラリーの主導権を掴めばバックサイドからの回り込みフォアを連続する態勢をがっちりと作り上げ、逆クロスで追い詰めて最後はストレートに引っ張って仕留める形を得意としている。どこまで回り込んででもフォアで捕る志向が現在のツアーで最も強いプレーヤーの1人だろう。相手の嫌がるヘビースピンを執拗に続ける戦術的な思考は良いが、時折それに拘りすぎてポジションも落ちてしまい持ち前の攻撃力が消える時間帯があり、今後はアグレッシブさと慎重な戦術とのバランスの見極めが課題となるだろう。

やや硬さが残り耐性の低いスピン系のバックハンド

 クレーを主戦場とすること、および身長がそれほど高くないこともあり、バックハンドは外側から巻き込むようなスイングでトップスピンをかなり強くかけて斜め上方向に打ち出す個性的なショットとなっている。平均的なペースの打ち合いではフォア同様に回転量で相手を押し込む質の高いショットを放つことができ、最近は意外性のあるダウンザラインへのウィナーも奪えるようになってきた。しかし、握りやスイングが古風と言っていいこの打ち方では、バック対面でもフォアに劣らぬスピードが求められる現代テニスにおいて不利を露呈しやすい。実際に、緩急への対応の甘さやチャンスボールで気負って力む傾向は見られる。また、バック側を厳しく狙われた際、打ち終わった後に踏ん張り切れず体が流れる悪い癖があり、次のフォア側への返球に対応できないケースが散見される。回り込みフォアを多用する姿勢にしても主導権争いで優位に立つうえで好材料である一方、硬さが残り耐性の低いバックに自信がないために仕方なく無理をしているように見えなくもない場面があり、その使いどころの判断には改善の余地ありだ。一方で、バックのラリーで安定性を確保しつつ、クロスの長短に滑るボールをコントロールできるスライスの質は高く、スピンとの高低差を駆使して特級の武器であるフォアの強打に持ち込むうまさを担保している。

エースも確率も計算できる高質なサーブ

 決して大柄な体格ではないながらも、地面の強い蹴りと安定したクイック気味のフォームによって、正確にラインに乗せてコンスタントにエースを稼ぎつつ、弾む球種を織り交ぜて高い確率も維持できる、総合的に高い次元のサーブを持つ。強力なフォアハンドに確実に繋げてポイントを重ねていくサービスゲームの質はトップレベルでも全く見劣りしない。

後方から高さと深さを出すリターン

 リターンは大きく下がってしっかりと高さと深さを出すことでラリー戦に持ち込む返球を基本としている。アドバンテージサイドにおいては要所で2ndに対して回り込んで強烈にエースを叩き込む姿勢も見せる。前に入って叩くレパートリーも加わってくるとさらに脅威が増すはずだ。

運動量で上回り球威で勝負できるテニスはシンプルに強い

 元来の天才的な打球センスが良い意味で前面には出ない堅実かつ強度の高いテニスをここ数年で築き上げてきたルード。運動量で相手を上回り圧倒的な球威で打ち勝つスタイルは、シンプルなだけに明確な対策を講じづらいというのが現状彼の強みといえる。今後トップ10に長く在位しながらさらにその上を眈々と狙うべく、クレーでさらに勝ち星を伸ばすためにフィジカル強化に努める傍ら、その他のサーフェスでは抜け目なく相手の隙を突くネットプレーを戦術に組み込んで攻撃の幅を広げたい。全仏のタイトル争いに常に絡み、またシーズンを通してツアーで存在感を発揮するプレーヤーへと成長していくことを期待したい。

 



Vasek Pospisil

バシェク・ポスピシル

 生年月日: 1990.06.23 
 国籍:   カナダ 
 出身地:  バーノン(カナダ)
 身長:   193cm 
 体重:   88kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  Original Penguin 
 シューズ: asics 
 ラケット: Wilson Blade 98 (18×20) 
 プロ転向: 2007 
 コーチ:  なし 

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 長身から繰り出すビッグサーブを軸に果敢にネットにも仕掛ける展開の速い攻撃的なテニスを武器とし、ラオニッチとともに10年代以降のカナダテニスの躍進を支えてきた中堅プレーヤー。ジュニア時代はチェコにテニス留学をし、その後カナダのナショナルチームの一員として鍛え上げられた経歴を持つ。サーブにもストロークにも一発の魅力を備えたタイプだが、その実、豪快さよりも繊細な感覚がテニスの基盤になっている側面が強く、軽く打っているように見えるショットが相当な伸びによって相手を押し込むというのが彼のテニスの大きな魅力であり、このあたりは持って生まれたセンスに加えて東欧で実力を磨いた賜物かもしれない。13年に地元カナダのモントリオール(1000)でイズナーやベルディヒを破ってベスト4に進出したことをきっかけに自信をつけ、そのまま勢い溢れるプレーでトップへの階段を駆け上がった。当時は90年代生まれのプレーヤーの中で最も早くトップレベルに頭角を現した1人として期待も大きかったが、思いのほか結果に恵まれず上位に定着できないキャリアとなっている。高速系サーフェスとの相性が良く、最も得意とするハードコートのほか、15年にはウィンブルドンでフルセットマッチを3つ制する劇的な勝ち上がりを経て自身初のグランドスラムベスト8を記録している一方、クレーは全くと言っていいほど駄目で、戦績の偏り具合は逆に清々しいくらいだ。また、14年ウィンブルドンではそれまで組んだことのなかったソックとのペアで、ブライアン兄弟やパエス・ステパネクをはじめ錚々たるダブルス名手たちを撃破し、衝撃的な優勝を果たした。以後もそれがフロックではなかったことを証明するように強さを発揮しているが、2人でダブルスの練習をすることはないらしく、自他ともに“相性”の良さを認めている。集中開催にもかかわらず控え不在という窮地の中、単複に大活躍を披露してカナダを救い、同国を史上初の準優勝に導いた19年デビスカップの鮮烈なパフォーマンスは記憶に新しく、彼の強さを占ううえでは時々のランキングをあまり当てにしない方が賢明だろう。

角度とスピードでフリーポイントを量産するサーブ

 彼の最大の武器である強烈なサーブは膝を曲げた状態から全身をバネのように使い、伸び上がるようにしてボールを捉えるダイナミックなフォームが特徴。長身をより活かすために非常に高くトスを上げることでさらに角度を加え、センターはもちろんワイドの厳しいコースにも210km/h前後のフラット系の高速サーブを入れられるのが強みとなっている。また、ダブルスでの活躍が増え始めた頃からサーブ&ボレーの頻度も高まり、柔らかいタッチで短く落とすボレーとのコンビネーションで、より多くのショートポイントを奪えるようになった。逆にベースラインに留まった時の3球目の処理がいまひとつで、もう少し速い反応と滑らかな動きでボールに入っていけるとミスも減りそう。ダブルフォルトの多さや確率の低さなどの懸念材料もあるものの、全体としてはどんな相手に対しても十分通用するサーブといえ、今後改善されてくればツアー随一のサービスゲームを構築できそうだ。

低く鋭く滑らせるボレーが武器のネットプレー

 ツアーでもその質の高さは上位に位置するのがネットプレー。サーブからの速い展開に加えて、ストローク戦において早めに縦に切れ込んでネットに詰める仕掛けを多く使える試合の彼は非常に脅威だ。フォアのストレート強打からのアプローチが確立されたパターンであるが、その際の前進しながらショットを打つ自然な動き、ネット前での落ち着いた雰囲気、そしてボレーは丁寧なタッチで常にアンダースピンをかけることでボールを低く鋭く滑らせる類稀な能力が光る。劣勢の試合展開では奇襲も含めてもっと回数を増やしても良いのではないかと思わせる完成度の高さである。

軽快な足運びとスイングから高速ショットを放つフォアハンド

 極力リラックスした状態からラケットヘッドを走らせることでボールにスピードをつけるフォアハンドも大きな武器の1つで、特にリズミカルな足運びで回り込んで逆クロスの鋭角やストレートに叩き込むショットは相手にとって脅威となっている。また、その強さを相手は警戒してポジションを下げるため、同じ回り込みからドロップショットで前に落とし、ネット勝負に持ち込むパターンも使う。フォームの特徴ゆえに肘を伸ばし切らずにボールを捉えられる位置に来れば、たとえ追い込まれていても強烈なカウンターを繰り出すこともできる。加えて、浅く低いボールには非常にコンパクトなスイングで対応するうまさも兼ね備える。相手としては彼に対してバックサイドのボールをフォアで打つ状況を作らせてしまうと、抜群の攻撃力の前に防戦一方に立たされるため、左右の振り回しを有効に使っていくのが得策だ。

狙い撃ちに耐える安定感を身につけたいバックハンド

 若干フォームの硬さが拭いきれないバックハンドは確実にボールを集められると早い段階でミスを出してしまう不安定さが弱点。キレのあるスライスを効果的に交えながら展開を作るが、もう少し自ら積極的に打ち込む強打の怖さがほしいところだ。ただし、フォアの決定力が突出している彼の場合、その得意のフォアで自由に打ち込んでいくために、スライスの緩いボールも含めてバックはいかにしっかりと深さを出せるかが鍵といえる。

敏捷な動きは魅力も脆弱な守備は課題

 大きな体格を感じさせない敏捷性を持っており、コートカバーリングの広さや身体の柔軟性を活かした粘り強い返球も魅力である。技術的にフットワークが未熟な部分は残り、また基本的に狭めのスタンスで打つため体重を前に乗せる攻撃時には問題ないが、強烈なボールを弾き返す守備時には脆弱という特徴もある。とはいえ、大柄な割に小刻みにステップを踏んで打点に入っていくタイプであり、その点では大いなる伸びしろがあるといえるだろう。持ち前のキレのある攻撃力をより活かすためには全体にもう少しポジションを前に上げて戦う意識を徹底したい。

繊細な感覚で操る上品なテニスは遅咲きの可能性あり⁉

 相手に粘られたり、気分的に乗ってこないと粗さが目立ってきて、相手のレベルに関係なくミスを連発してしまう弱みがあり、テニスの完成度が高く、大きな武器も持っている割に成績の波が激しい大きな要因となっている。しかし、若くランキングが低かった頃からデビスカップ代表に選ばれていたことで、メンタル面は比較的成熟しており、大舞台でも硬くならず、また地元の声援を緊張ではなく力に変えられる強さを持っている。技術的な課題はいくつかあるが、それは言い換えれば未だ成長の余地があるということで、とりわけリターンゲームの質が向上すれば、大きな大会でも上を狙えるポテンシャルは間違いなく持っている。高度な技術が要求されるプレースタイルは、年齢による衰えよりも経験の蓄積による実力の純増に繋がるケースが多く、彼もその手の遅咲きプレーヤーに名を連ねる可能性がある。近年カナダはシャポバロフやオジェ・アリアシムなど有望な若手を輩出しており、ポスピシルは彼らの頼れる兄貴分としての存在感も発揮しているが、彼自身のキャリアもまだまだ上り坂であり今後も目が離せない。

 

Aljaz Bedene

アルヤズ・ベデネ

 生年月日: 1989.07.18 
 国籍:   スロベニア 
 出身地:  リュブリャナスロベニア
 身長:   183cm 
 体重:   73kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  NEPTUNE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: Wilson Ultra Tour 
 プロ転向: 2008 
 コーチ:  Andraz Bedene, Miha Mlakar 

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 左右両サイドから力みのない自然なスイングで伸びのあるスピードボールを操り、ベースライン深くに丁寧に粘り強く打ち続けることで打ち合いの展開をものにしていく軽量級の本格派ストローカー。ベデネの名がテニス界で最も話題に上ったのは国籍変更に関する問題で、15年にイギリスの市民権を獲得したことでイギリス国籍のプレーヤーとしてデビスカップおよびオリンピックへの出場を目指したがITFの裁定によりその希望は叶わず、18年に母国スロベニアに国籍を戻してプレーすることになった。対戦相手のタイプを問わず常にクリーンなインパクトを確保して素直な軌道のショットで応戦するテニスは、特定のサーフェスに偏ることなく成績を残すことに寄与しており、15年以降実に地味な存在ではあるが安定してトップ100に位置している。ツアータイトルはまだないが、過去4度ツアー決勝に進出、うち2大会は予選からの勝ち上がりという記録からも分かるとおり、勢いに乗るとランキング以上の力を発揮するプレーヤーでもある。

相手の球威を利用して効率的にスピードボールを操るストローク

 フォアハンド、バックハンドともに小さめのテイクバックからシャープな振りで鋭いフラット系のボールを飛ばす能力に優れ、パワー系のストローカーと対しても力負けすることなく確実にコースに散らす堅実な技術力を備える。その中で彼がポイントを奪うための生命線となっているのはストレート攻撃で、特に得意とするフォアはボールがラケットの面に吸い付くような球持ちの良いショットが魅力的だ。これをフォア側からカウンターの展開に使ったり、回り込んでバック側から逆クロスを狙ってウィナーを取っていくのが彼の特徴である。また、ペースの緩急や打点の高低などあらゆる変化にも乱されない対応力の高さも強みであり、自らラリーのリズムを変えるような場面は少なければ、一発のビッグショットもなく、対戦相手として怖さを感じるタイプのプレーヤーではないものの、逆に明確な弱点も見出しがたい。ストロークの安定感と展開力は健在だが、それをよりポイントに直結させていくためには、ウィナーを狙うバックの精度とネットプレーの質を向上させ、それらの頻度を高めることが今後の上積みには不可欠だろう。

ラインを捉える正確性を武器とするサーブ

 こちらも派手さはないが強力なサーブも大きな武器の1つになっており、特に1stのポイント獲得率が高いのが数字面での特徴だ。決して210km/hを超えるような破壊力はないが、ラインを捉えるフラットサーブの正確性によって多くのフリーポイントを稼ぐことができる。

悲願のツアー優勝を掴み取ることができるか⁉

 強打というよりはパワーは最小限度に抑えつつ相手の球威を利用して打ち合いに対抗するテニスは現役ではセッピに近い。また、体格や球質から日本人が参考にしたいプレーヤーともいえる。フィジカル・メンタルの耐久性をもう一段階底上げすることに成功すれば、これまで惜しくも阻まれてきたツアー優勝にも十分に手が届くはずだ。

 

Richard Gasquet

リシャール・ガスケ

 生年月日: 1986.06.18 
 国籍:   フランス 
 出身地:  ベジエ(フランス)
 身長:   183cm 
 体重:   79kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  le coq sportif 
 シューズ: le coq sportif 
 ラケット: HEAD Extreme Pro 
 プロ転向: 2002 
 コーチ:  Julien Cassaigne 

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 ジュニア時代からずば抜けていたというテニスの才能はツアーでも間違いなく五本の指に入り、どんなプレーも軽々しくこなす卓越したテクニックを武器とするフランスが生んだ天才プレーヤー。世界最高の完成度を誇るシングルバックハンドを軸に、ベースライン後方から巧みなゲームメイクでラリーを展開するプレースタイルで上位に定着している。ガスケが天才と呼ばれる所以は、ボールをラケットの面の真ん中で正確に捉えるインパクトの精度がどのショットにおいても突出して高く、普通ならミスをしやすい難しいショットを何気なく捌いてエースに変換してしまう点にある。弱冠9歳で由緒あるテニス誌の表紙を飾ったほど幼少期から注目度が高く、ツアーでは05年にモンテカルロで初対戦にして当時No.1のフェデラーを破って脚光を浴び、同年ハンブルクでマスターズ初の決勝進出、07年ウィンブルドンではロディックに競り勝ってベスト4に入るなど、キャリアの早い段階で最高7位まで駆け上がった。09年に検査でコカインが検出され、出場停止処分により大きくランキングを落とし、小さな怪我も重なってトップフォームを取り戻すのに時間を要したが、11年以降は安定したプレーでトップ20を維持し、13年全米と15年ウィンブルドンでベスト4を記録している。天才型ゆえの弱みか、勝負に徹し切れないところがあり、ビッグタイトルがないという戦績面には物足りなさが残るが、その試合ぶりはテニスファンの溜息を誘う見事なものがあり人気は高い。なお、04年全仏では同胞のタチアナ・ゴロビンとペアを組んでミックスダブルスを制した経験もある。また、チェンジエンドでベンチに戻るたびにグリップテープを巻き替えるのも彼の特徴で、その高速動作はプレー以外の隠れた見どころの1つといえる。

最高の完成度と美しさを誇る代名詞の片手バックハンド

 高いテイクバックから重力を利用してラケットヘッドを一旦下げ、そこから巻き上げるようにして上に振り抜く独特なモーションから繰り出される硬軟自在のバックハンドは彼の代名詞であり、随一の威力・精度・美しさを誇る。前足重心で頭も突っ込み気味のこのバックは、腕と手首の使い方に彼特有の感性があるからこそ実現できる規格外のフォームで誰にも真似できない。球種やスピード、角度などを自由自在に操れる点が最大の強みであり、美しい曲線軌道を描くスピン系のアングルショットや目の覚めるようなフラット系の鋭いショットなどでリズムに変化をつけて相手を大いに苦しめる。流れでプレーするよりも常に深く構えを作ってショットを繰り出すその溜めが、相手とすれば予測で動くことができないためこの上なく厄介な要因である。元々多彩なプレーに向いている片手打ちではあるが、彼ほど器用に様々な球種を打ち分けられるプレーヤーはそうそういない。基本的なスタンスとしては、クロスのラリーで軌道の高い強烈なスピンボールやサービスライン遥か手前に平然とコントロールする驚異的なアングルショットを駆使して相手のバランスを崩し、オープンコートを作ってダウンザラインへ展開する。ボールに強烈な回転を与えるために、あえてスイートスポットを外して捉えるあたりにも奥深い技術力が垣間見える。バックには絶対の自信を持ち、難度の高いダウンザラインへのショットもあらゆる体勢からほとんどミスなくいとも簡単にウィナーを連発する。ただ、クロス主体の組み立てを読まれて回り込まれるケースが多く、攻撃力の高いプレーヤー相手であると攻め切られてしまう。非常に精度の高い強烈なカウンターやパスでポイントを締めるため、ある程度意図的に“打たせ球”を作って相手を誘い出している部分もあるとはいえ、それでウィナーを浴び続けて気持ち良いはずはなく、もう少しストレートを出し惜しむことなく打っていくなどの改善も必要である。また、彼自身の中でもフォアよりバックを得意としているようで、多くのプレーヤーが武器とする回り込みフォアをほとんど打たない点も特徴である。ラリーの基本ポジションはベースラインより3m以上後方ながら強烈なウィナーを取ることができるが、その特異な能力に美学を追求しすぎるあまり、逆にそれがプレーヤーとしての進化を妨げている印象がある。相手からすると自分が強打をしない限り速いショットが返って来ることはなく、ゆえに先に展開される怖さがあまりないため、心理的に余裕が生まれやすくなる。したがって、もう少しポジションを前に上げられれば、本来持つ多彩なプレーに、さらに相手の時間を奪うという新たなレパートリーが加わるだろう。

パワー不足が顕著なフォアハンド

 相手の返球が甘くなれば、すかさずウィナーを狙いにいくバックとは異なり、フォアハンドはリバーススイングを多用して、強めのトップスピンをかけた繋ぎのショットが軸となる。しかし、このショットはテイクバックが遅く打点がやや詰まり気味で、相手を後方に押し込むだけの深さやパワーが欠けているため、力で打ち負けたりラリーを組み立てている過程で叩かれるケースもあり、弱点の1つとされている。バロメーターとなるのはいかに角度がつけられているかで、バックに加えてフォアまで浅いアングルに落とされると、相手としてはとにかく長い距離を走らされ体力を奪われる。ラリーではスピン過多の印象が強いが、グリップ自体は薄めであり、意を決したフラット系の強打やフォア側に走った時のカウンターショットなどの威力はバックにも劣らないものを持っているだけに、よりパワーを生み出すスイングでスピードボールを使う頻度をもう少し高め、球威で圧倒するスタイルも使っていきたいところだ。実際、最近になってフォアからの攻撃意識が高まっているが、彼の場合バックに絶対の自信を持っているため、ある程度フォアはスピンをかけつつ確率重視でストレートのコーナーを突き、逆サイドの空いたオープンコートへバックの逆クロスやダウンザラインを叩き込む形を多く使っている。

相手に攻めさせず守らせない巧妙な配球術でラリーを支配

 ストローク戦において際立つのはラリーのペースコントロールのうまさで、あまりペースのないボールを深くコントロールされるため、相手としてはボールにスピードを出しにくく、速い展開に持っていくことが難しい。逆に、相手が高い軌道を使ってゆったりとしたラリーをしようとすれば、テンポを速めたハードヒットやスライスを多用して主導権を握る。特別パワーがあるわけでも素早いフットワークがあるわけでもない彼がラリーに強いのは、こうした相手に攻めさせず守らせない極めて巧みな配球術を持っているからである。最近は無駄なステップがなくなり、フットワークが洗練された分、ベースライン後方での粘り強さに磨きがかかり、持ち前の多彩な展開力がより生きるようになった。ただし、ラリー戦でポジションをどんどん下げていく癖だけはどうにか治したい。後方のポジションが彼の心地良い場所であり、確かにベースライン付近でのストロークではミスが増える傾向にあるとはいえ、相手次第ともいえる現在のスタイルでは今後もトップとの対戦成績は伸びてこないだろう。

ネットプレーにもやはり才能を感じる華麗さが

 攻撃の展開になれば積極的にネットにつくが、ボレーやスマッシュの対応などに難はなく、時折見せる華麗なプレーにもやはり才能が十分に感じられる。最近はリターンダッシュの機会も増え、得意なストローク以外でのポイントパターンも確立されてきている。

緩急コントロールで確実に相手を崩す回転系サーブ

 サーブは派手さはないものの、確実にエースを計算できる、緩急をコントロールしたスライスサーブを武器とする。回転系のサーブを得意とするだけあり、2ndのポイント獲得率が高いのが強みといえる。また、ポイントを取ったボールを次のポイントでも使うのが彼のルーティンである。

フィジカルとメンタルに物足りなさが残る

 フィジカル面とメンタル面の弱さゆえに競った試合に弱いという傾向があり、彼の最大の弱点である。とりわけメンタルの弱さは顕著で、逆転負けが多く、セットや試合を決めるサービスゲームを自分から崩れて落とすこともしばしば。また、相手が勢いに乗ってくると、それを跳ね返すことができず押し切られての敗戦も目立つ。自ら全仏やパリマスターズなど地元の大会は苦手と公言したこともあったが、ベテランとも呼べる年齢になってようやく大声援をプレッシャーではなく味方につけることができるようになり、また試合中にポジティブな感情を表に出すことも多くなってきた。

自分の殻に閉じこもらず"リスクを冒す"テニスが鍵を握る

 格下に負けない安定感はある一方で、上位には勝てないというある種の壁に当たっている感があり、その要因の1つとして貪欲さの欠如が指摘されてきた。才能のあるプレーヤーにありがちな自分の限界を自分で見定めて現状に満足するといった気配が漂っているのが不安材料だが、彼のような洒脱なテニスは開き直ればもう一段階上を狙えるはず。また、守備的なプレースタイルというわけではないが、後方の位置取りや消極的なメンタルの問題からどうしても後手に回るケースが増えてしまう。技術的な手札は限りなく多く、課題は戦術面や心の部分にあるという点でいえば、本人の考え方次第ですぐにでも克服可能だ。加えて、近年陣営にブルゲラやグロージャン、サントロなど往年の名プレーヤーの姿があるのは、試合中にポジティブさを保つうえで非常に心強いといえる。ここ最近はアグレッシブさを維持できた大会では好成績が残せているだけに、今後ビッグタイトルを獲るためにはトップ10との戦いでいかに自分の殻に閉じこもらず“リスクを冒す”ことができるかが重要な鍵になるだろう。