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20200215102533

Alexandr Dolgopolov

アレクサンドル・ドルゴポロフ

 生年月日: 1988.11.07 
 国籍:   ウクライナ 
 出身地:  キーウ(ウクライナ
 身長:   180cm 
 体重:   71kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  diadora 
 シューズ: diadora 
 ラケット: Wilson Pro Staff 97S (18×16) 
 プロ転向: 2006 
 コーチ:  Stas Khmarskiy  

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 高い運動神経と多彩なテクニックを自由自在に駆使して相手を翻弄するトリッキーなプレーや持ち前のスピードを活かした痛快な攻撃テニスで見る者を虜にする当代の「コート上の手品師」。同じウクライナ出身で元No.4アンドレイ・メドベデフのコーチを務めていた父親の影響で、幼少時からプロツアーを回る環境で育ったためか、そのテニスはどこを切っても型破りと称するにふさわしく、個性豊かなプレーヤーの揃うツアーでも一際存在感を放つ変則プレーヤーだ。初出場ながらツォンガやソダーリングを破ってベスト8に進出し、さらにはマレーをも大いに苦しめた11年全豪で世界にその名を轟かせると、同年ウマグ(250)でツアー初優勝、12年初頭には最高13位まで駆け上がった。以後浮き沈みの激しいところはあるものの、14年インディアンウェルズ(1000)ではナダルとの接戦を制してベスト4、15年シンシナティ(1000)でもベスト4に入り準決勝でジョコビッチをあと一歩のところまで追い詰めた潜在能力の高さに疑いの余地はなく、上位陣としてはその時々の彼のランキングを参考にしすぎると辛酸を舐める結果になりかねない。ダブルスに出場することは多くないが、それだけにマリーセと組んだ「ポニーテール・デュオ」が、史上最強ペアのブライアン兄弟、実績十分のマレー兄弟、10年全米準優勝ペアのボパンナ・クレシ、08年北京五輪金メダルペアのフェデラー・バブリンカといった面々を1回戦から5試合連続でマッチタイブレークを制して優勝した11年インディアンウェルズ(1000)での活躍は鮮烈だった。独特なショットセレクションがベースとなった意外性が武器で、とりわけ初対戦となる相手にとっては良くも悪くも常識というものが通用しないドルゴポロフに手を焼くことが多い。球足の遅いハードコートが彼の力が最も発揮されるサーフェスであるが、その他条件の悪い大会での活躍が目立つのは、技術力の確かさゆえといえるだろう。

自在の緩急で相手の虚を突くトリッキーなストローク

 ストロークは広角に打ち分けるコース取りが自在なフォアハンドと、回転量の多いスライス系と深く突き刺すフラット系が絶妙なコントラストを描くバックハンドを持つ。フォアはクロスには跳び上がりながら打つことで回転量を増幅させるスピンボールを厳しいアングルに配球して相手を外に追い出し、オープンコートを作ってストレートにシュート回転系のフラットで豪快に叩き込む。自分のポジションや相手のポジションに関わらず、どんな状況でもこじ開けるようにオープンコートを作り出す積極性と技術力が非常に際立っている。バックは長いラリー戦では非常にサイドスピンの効いた遅いスライスを多用しながら浮き球を誘い出し、前に踏み込んで強打でウィナーを狙いにいく。あるいは長いスライスと見せかけてドロップショットやそれに近い低空飛行の速いスライスで決めることも多い。ツアーでは小柄な部類に入る彼だが、バックの強打はそれをまったく感じさせないほど上から打ち下ろすことができる。相手のショットの威力をそのまま利用してライジングでクリーンに捉え、スピードのあるボールを作るセンスはツアー随一といえ、この能力は得意とするカウンターショットやミドルコートでの巧みなボール処理にも活かされている。ただし、意外性が裏目に出ている部分も否めず、攻めれば良さそうなところをスライスで流してみたり、逆にスライスで対応すべき場面で強引になることも多く、まだまだ判断力には不可解な点がある。トリッキーに相手の裏をかく戦い方だけでなく、正面突破力を上げれば結果もついてくるだろう。

瞬き一つ許さない超クイックサーブ

 “超”が付くほどのクイックモーションから繰り出されるサーブも、彼の大きな武器かつ印象に残るプレーの1つである。トスアップからインパクトまでの時間が瞬き一つ許さないほど短いため、フォームの癖からサーブのコースを読むのは不可能に近く、かつ200km/hを大きく超えるスピードも備えるため、サービスポイントが多く、1stポイント獲得率が高いのが特徴だ。一方、確率が悪いのが弱点で、2ndにおける球種もあまり多くない。このあたりが改善されると盤石なサービスゲームを手に入れられるはずだ。

天才肌にありがちな淡白さが課題のメンタル

 淡白さが目立つメンタル面もトップレベルで戦ううえでは課題とされている。彼のような天才肌のプレーヤーにはありがちといえるが、勝てる見込みが薄くなってきたり、感覚がうまく噛み合わないと途端にプレー全体が雑になり、粘りがなくなる傾向がある。

誰にも真似できない動きとショットで魅力に事欠かない

 飛び跳ね羽ばたくような躍動感でコートを駆け回り、豊富なアイディアで軽々しくスーパーショットを披露するなど、観客にとっては魅力に事欠かないプレーヤーであるが、勝負に徹するプレーヤー目線でいえば、それ以上に目立つアンフォーストエラーをまずは減らしたい。サーブとフォアを軸とした正攻法での戦い方の構築がなかなか進まず、伸び悩んでいる印象もあるが、技術面、戦術面ではトップと遜色ないものを持っている。18年に負った右手首の怪我からの戦線復帰が未だ叶っていないが、今後まだまだ飛躍を期待していいプレーヤーだろう。

 

Lloyd Harris

ロイド・ハリス

 生年月日: 1997.02.24 
 国籍:   南アフリカ 
 出身地:  ケープタウン南アフリカ
 身長:   193cm 
 体重:   80kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  lotto 
 シューズ: lotto 
 ラケット: YONEX EZONE 98 
 プロ転向: 2015 
 コーチ:  Anthony Harris  

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 単発でポイントを終わらせられる強烈かつ巧みなサーブおよびコート内側でチャンスを仕留める鋭いストロークによる攻撃力を武器としつつ、一方で球際の強さを活かした後方での粘りと安定性にも優れる、南アフリカ期待の長身プレーヤー。昨今のNextGen台頭の波は主に20歳前後の年齢の若手によって担われているが、彼は同世代からは少し遅れて23歳頃から本格的にツアーに出場するようになり、21年ドバイ(500)では予選勝ち上がりからティーム、錦織、シャポバロフら実績十分の上位勢を次々に破って決勝に進出する活躍を見せ、そのポテンシャルの高さを大いにアピールした。ハードコートを最も得意とするが、大きなフォームや力一杯の振り抜きを前提とせず効率的に強いボールを繰り出していくテニスは今後芝でも脅威になってきそうな雰囲気を醸す。

巧みな配球でエースを量産するクイックサーブ

 最大の武器であるサーブは193cmの長身と前方へのトスが生み出す大きな角度が相手を苦しめる。フラット系でも多くが200km/h前後と爆発的に速いというわけではないが、クイックのタイミングがリターン側の感覚を惑わせ、左右へ正確に打ち分ける高い精度により軽くエースの数を積み重ねていくことができる。とりわけ得意とするのがデュースサイドのワイドに放つ抜いたスライスサーブで、確率を高く維持しつつ3球目攻撃も含めてフリーポイントを稼ぎ、さらにはセンターフラットをより対応困難なものとする、一石二鳥あるいは三鳥の突出した武器といえる。2ndのポイント獲得率に向上の余地が見られるものの、概して高い1stの入りおよびポイント獲得率があるため現状でも問題なく、スムーズに進めていくサービスゲームの支配力はツアー上位に位置する。

攻守にメリハリの効いた伸びやかなストローク

 非常に伸びやかなショットを絶え間なく打つことのできるストロークも魅力的だ。攻撃の軸となるフォアハンドは決定力の高さが光り、逆クロスを中心にフラットな弾道の高速ショットでウィナーを奪っていく。浅いボールをしっかりと持ち上げてネットアプローチに繋げるショットに見られるように、タッチの感覚やインパクトの力加減に優れる点も強みとなっている。ただし、手の感覚が良いことの裏返しではあるものの、必要以上にリバーススイングが増え、手先でコントロールしようとしてボールの推進力を失う傾向が出始めると調子低下のサインであり、相手としてはそれを引き出すためにセンター寄りの体に近いコースへ深さを追求したショットを送りたい。バックハンドは丁寧に流し込むようなイメージだが、相手の球威をうまく利用するためカウンター気味に十分に押し込んでいくこともできる。また、彼のラリーで特筆に値するのはディフェンスショットの深さと緩さ。守備に回った時に豪速球を返してしまうとオープンコートの対応に穴ができるが、彼は無理をせず意図的にスピンをかけて軌道を上げたり速度を落としたりといった巧みさを見せる。打ち合いのペースを落として展開をイーブンに戻す滞空時間の長いスライスが打てるのも、攻撃一辺倒ではない彼のそうした器用さの一環であり、大柄ながら俊敏性に長ける動きと並んで安定性の秘訣と言っていいだろう。

ビッグサーブ+安定したストロークの組み合わせは強いテニスの鉄板

 サーブ+αの得点力は盤石、リターンとストロークには確実性があって決して強引にならず戦術的な組み立てができる。これがハリスの実力を支える2つの異なる側面であり、今後フィジカルを強化して筋力や持久力が上がり対パワーの許容範囲も広がってくるとトップ20以上、そしてビッグトーナメントの優勝争いにも絡んでくる可能性を感じさせる。南アフリカは人材豊富というわけではなく、現時点で彼と並走する若い世代のプレーヤーはいないが、10歳上の先輩格アンダーソンから徐々にバトンを引き継ぎ孤軍奮闘する姿を期待したい。

 

Aslan Karatsev

アスラン・カラツェフ

 生年月日: 1993.09.04 
 国籍:   ロシア 
 出身地:  ウラジカフカス(ロシア)
 身長:   185cm 
 体重:   85kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  HYDROGEN 
 シューズ: asics 
 ラケット: HEAD Prestige MP 
 プロ転向: 2013 
 コーチ:  Yahor Yatsyk  

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 頑強な身体から強い当たりで飛ばすフラットドライブ系統のストローク強打で相手を押し込む攻撃力と俊敏かつしなやかな動きで自らはバランスを崩さない安定性、無理をせずに組み立てる落ち着きとチャンスを見逃さない思い切り、これらを高い次元で兼ね備えるロシアの中堅プレーヤー。カラツェフの名が一躍世界を轟かせたのが21年全豪、当時114位でトップ100に入ったこともなく、全くと言っていいいほど無名でノーマークの存在だった27歳の彼がなんとグランドスラム本戦デビュー大会にしてシュワルツマン、オジェ・アリアシム、ディミトロフといった上位シード勢を次々と撃破してベスト4に進出。そしてその活躍が決してフロックでなかったことを証明するかのように翌月のドバイ(500)ではATP500で驚異の23連勝を継続していた同胞のルブレフをも下すなどしてツアー初優勝を成し遂げた。今までどこに眠っていたのかと思わざるを得ないが、ハチャノフ・メドベデフ・ルブレフと下の世代から3人揃ってトップに定着した状況に刺激を受けた面もあったのだろうか。いずれにしても強さの条件が整ったテニスを見ると一発屋で終わる気配はまるでない。

極上の打球の伸びを誇る剛柔兼備のストローク

 最大の武器であるストロークは力いっぱいラケットを振り回すのではなく、相手のショットにうまく合わせてスイートスポットで捉える確実性が両サイドともに光り、そこから突出したスイングスピードで爆発的な威力を生み出すのがフォアハンド、柔らかいスイングで正確にコースへ運ぶのがバックハンドということになる。フォアはクロスコートの高速ショットを軸に応戦し、少し緩い甘い球が来ればすかさず引き金を引いて逆クロス系のストレートやクロスのさらに厳しい角度にウィナーを叩き込む。ショット自体の精度もさることながらそのタイミングの見極めも絶妙だ。チャンスボールでは時折技巧的なアングルショットを放つこともあり、強打の頭しかない相手はまず対応できない。バックのラリーも隙はなく、ラケットをゆったりと引き丁寧に面に乗せるようなスイングの印象からは想像もできないスピードそして伸びのある打球が繰り出され、多くのプレーヤーはこのショットに差し込まれてしまう。振られた際の滑らかな足運びにも特徴があり、現代の流行りであるオープンスタンスで踏ん張って体を止めながら打つというよりは、右足を左足側に引き寄せながらインパクトするクラシカルな打ち方をとっている。ストローク全体を通して打つ前に一瞬の間があるのが大きな長所で、ペースの速いラリーでも打点を引きつけて打てる分だけ余裕がありミスを出す雰囲気がない。こうしてパワー、スピード、忍耐いずれの土俵でも優位に立てる極めてレベルの高いストロークの持ち主と言えよう。

破壊力の裏に巧みな戦術とタッチセンスあり

 ハードヒットの破壊力に目が行きがちながら展開の中に小技を交ぜる戦術性やその技術力も見逃せない。基本的にはベースラインの真っ向勝負で上回っていきたい志向を持ち、自ら様々な手札を切っていくタイプでは決してないが、押され気味の打ち合いをイーブンに戻すスライス、ドロップショットの使いどころ、丁寧なボレーで堅実に仕留めるネットプレーなど、頭の良さやタッチセンスを感じさせる要素も数多い。

強烈に叩き返すリターンの攻撃力は脅威

 テイクバックがコンパクトでジャストミート率の高さが際立つストローク能力はそのままリターンの強さにも表れる。1stの速さに負けないくらい鋭い返球を常に実現し、かつバック側はキレのあるスライスのブロックリターンで低く滑らせる器用さも持ち合わせる。高く跳ねてくる2ndへの対処も抜群で、空中で体勢を保ちながらしっかりとボールを待って叩き返していく。リターンエースが多いことはもちろん、時にリターンダッシュも試みる攻撃的な姿勢は相手に相当なプレッシャーを与える。

僅かに隙ありも十分な質の高さを備えるサーブ

 右でも左でもないまっすぐ真ん中への高いトスアップから力を溜めて放つサーブも十分な質の高さを備える。200km/hを少し超えるフラット系からスライス系にかけての球種を配球の軸とし、エースを含めたフリーポイントを確実に稼ぐことができる。回転がかかりきらずにロングするダブルフォルトがやや多い点や1stの確率そのものにも向上の余地はありそうだが、特に致命傷にはなっていない。

上位争いの常連になっても驚かない驚愕のポテンシャル

 彗星の如くツアーに現れるプレーヤーというのは、経歴の面では20歳前後の若手であったり才能は認められながら長く伸び悩んでいた中堅、プレーの面では巨大な武器があるものの欠点も残していることが多いのだが、彼の場合はおそらくどちらにも当てはまらない稀有なタイプで、現状明確な弱点を誰も見出すことができていない。遅い球や前後左右の揺さぶりを巧みに駆使する技巧派との対戦でも強みを消されることなく勝ち星を積み重ねられるかは今後見ていく必要があるが、少なくとも天性の球質を誇るストローク連射による正面突破の力はツアー屈指といっても過言ではなく、明らかに丈夫そうなフィジカルを見ても上位争いの常連になっても驚きはない。実は人材が手薄な93、94年世代に遅れてやって来た盟主としてもカラツェフには大いに期待をかけたい。

 

Florian Mayer

フロリアン・マイヤー

 生年月日: 1983.10.05 
 国籍:   ドイツ 
 出身地:  バイロイト(ドイツ)
 身長:   191cm 
 体重:   82kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  adidas 
 シューズ: adidas 
 ラケット: HEAD Prestige MP 
 プロ転向: 2001 
 コーチ:  Tobias Summerer  

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 独特のリズムから繰り出す引き出しの多いテクニカルなプレーを持ち味とし、時に番狂わせを起こす意外性を持ったドイツのベテラン変則プレーヤー。04年ウィンブルドンで初出場ながらベスト8に進出したことで大きな注目を浴びてATPの新人賞に輝き、その後も存在感に特段の派手さはないものの、地道に実力を磨き続け、ツアーきっての曲者という地位を確立している。度重なる怪我に苦しむキャリアで、特に14年に負った内転筋の故障により年齢という点を考えても復帰は難しいと見られたが、16年には地元ドイツのハレ(500)でキャリア最高のタイトルを獲得して華麗な復活劇を演じた。基本的にはクレーを得意なサーフェスとするが、実績が示す通り芝での強さにも定評がある。

多用な戦術的手札を駆使するトリッキーなテニス

 ベースラインからのストロークは大柄な割に優れた機動力と長い手足を活かして左右に振られながらでも攻撃的なボールを打つことができる点や、スピーディーな展開の中に様々な戦術的手札を切っていける点が強みとなっている。決してパワーに頼るようなプレーはせず、緩く打っているラリーの中で突然強打を入れたり、またはその逆も多く、非常にトリッキーなプレーを駆使しながら相手のリズムを崩壊させる組み立てを行い、不意を突いてポイントに繋げるのが彼のスタイル。

ジャンピングショットが代名詞のバックハンドに要注目

 特に威力と安定感を兼ね備えるバックハンドは展開力に富み、彼の最大の武器である。斜め前に入り込んで放つジャックナイフをかなりの頻度で使うのが大きな特徴で、上から押し込んでくるようなこのショットはマイヤーの代名詞だ。両手持ちでラケットを大きく振り下ろす攻撃的なスライスも持ち味の1つで、ラリーの中でクロスに打って相手を崩すのはもちろん、その鋭い切れ味によってストレートから逆クロス方向に外に大きく逃げる軌道でウィナーを取ることもできる。また、強烈なジャックナイフが警戒され始めると、今度は同じジャンピングから柔らかいタッチで前に落とすドロップショットで相手を翻弄するパターンも使う。ただし、ジャンピングショットは打った後のリカバリーにどうしても時間がかかってしまうため、決めにいったショットが返球されると不十分な体勢で打たざるを得なくなる点は、何らかの改善を加えるべきかもしれない。フォアハンドは円を描くような大きなテイクバックが特徴で、主にスピン系のショットを深く配球しながら確実にチャンスを窺うが、相手の鋭い強打に対してはその威力をうまく利用する形で面を合わせるカウンターショットが際立っている。この能力はリターン時にも発揮され、とりわけデュースサイドのワイドサーブをリターンエースで返すシーンが多く見られる。

意表を突いて勝負をかけるネットプレー

 ストロークでも存分に活かされているタッチの感覚は、頻繁に織り交ぜるネットプレーでも力を発揮する。ネットへのつき方が特殊で、相手がスライスを構えたのを見て、ワンテンポ遅らせて出ていくことが多い。ボレー自体は比較的シンプルで、ベースラインあるいはサイドライン際に強くコントロールする。また、ダイビングボレーで観客を沸かせることも多いが、それは単なるエンターテイメントではなく、しっかりとボールの勢いを吸収するために行っている側面が強く、ゆえに決定力が高いのが強みだ。とりわけ格上との対戦ではサーブ&ボレーを積極的に取り入れて相手を苦しめる。

テニスの面白さを再確認させてくれる創造性豊かなプレーヤー

 ややメンタル的に波の激しいところがあり、集中力が切れると諦めが早くなったり、淡白なプレーに終始してしまう傾向がある。また、相手のショットのスピードを利用してカウンター気味に変化をつけるのが前提の彼のテニスは、相手が打ってきてくれず自分から打たされるような展開に持ち込まれると意外に脆さが出やすいという弱点もある。しかし、卓越した技術力をベースとした創造性溢れるショットを惜しみなく繰り出すスタイルはどんなプレーヤーにとっても厄介であり、テニスファンにはテニスの面白さを再確認させてくれるプレーヤーだ。

 

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Jarkko Nieminen

ヤルコ・ニーミネン

 生年月日: 1981.07.23 
 国籍:   フィンランド 
 出身地:  マスク(フィンランド
 身長:   185cm 
 体重:   78kg 
 利き手:  左 
 ウェア:  Wilson 
 シューズ: Wilson 
 ラケット: Wilson Six. One 95 
 プロ転向: 2000 
 コーチ:  Jan De Witt  

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 鍛え上げられた強靭なフィジカルをベースに激しくコート上を駆け回り、粘り強くかつ強烈なショットを返球し続けてストローク戦を制するファイタータイプのベテランレフティー。05年全米でベスト8に入ったことをきっかけにトップへの扉に手を掛け、06年にはオークランド(250*)でのツアー初優勝やウィンブルドンのベスト8を含む年間通しての活躍で最高ランク13位を記録した。こうした点で高い能力を持った強豪であることに間違いはないが、ニーミネンの場合それ以上に特筆に値するのは、トップレベルで息長くプレーを続ける衰え知らずの健在ぶりだろう。事実、01年に初めてトップ100入りを果たしてから14年間に亘ってほとんどその座を譲ることなく、主に50位付近に安定して在位している。また、フィンランド人プレーヤーとしては唯一のATPシングルスのタイトルホルダーで、1人で自国のテニスを引っ張ってきた功績は高く評価されている。ハードコートでの洗練されたフットワークが際立ち、とりわけインドアの速いサーフェスを得意とするが、一方でストロークを軸に戦うプレースタイルはクレーでも十分に力を発揮できる。

低い姿勢による守備と堅実な攻撃が持ち味のストローク

 ストロークは常に膝を深く曲げ腰を落として構えることで、相手の強いショットに対しても決して力負けすることなく、逆にカウンター気味に展開していける強みを持ち、簡単にはミスを出さない安定感とチャンスには確実に前に入って決める堅実さが持ち味である。厚いグリップとオープンスタンスが特徴のフォアハンドは、左利きらしく懐が深いためコースが読みにくく、また左足の踏ん張りが非常に強いために体の軸がほとんどぶれず、高精度のショットを繰り出す。軌道を上げたスピン系をクロスに打って相手の体勢を崩し、空いたオープンコートにフラット系のダウンザラインを叩き込む形を得意とし、このフォアのストレート攻撃が彼の最大の武器といえる。バックハンドも強烈なショットを備え、やはりこのサイドもダウンザラインの決定力が高い。とりわけアングルを狙われたショットを読んでコートの中に切れ込みウィナーを取ったり、あるいはそこを起点にネットを取ったりと巧みな判断力や思い切りの良さが光る。一方、フィジカル的に厳しくなってくると、踏み込めずにスライスで逃げる傾向があり、相手へのプレッシャーは半減してしまう。

配球の工夫に注目のサーブ

 サーブの軸となるのは相手のタイミングを狂わすスライスサーブであるが、ポイントの欲しい場面では200km/hを超えるパワーサーブでライン上を狙ってエースを奪いにいく姿勢も見せる。また、意表を突いたサーブ&ボレーの使い方も効果的だ。120km/h台の緩い2ndは弱点で、上位に勝つためにはその質を上げるか、もしくは1stの確率をさらに高める必要がある。

ファンの心を熱くさせる若手にも負けない溌溂としたプレー

 打ち込まれた強烈なショットの威力を吸収して自分のショットに還元する独特の感性を持つ彼のテニスは、相手のレベルが上がるほど自分のプレーの質も高まっていくタイプといえ、穴のない技術力や豊富な経験もあいまって、なかなか一筋縄ではいかない相手として上位陣からも警戒されている。若手にも負けない溌溂としたプレーや劣勢でも決して試合を諦めない真摯な姿勢は、ファンの心を熱くさせる。キャリアの締めくくりをどのような形で迎えるのか注目が集まる。

 

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Paul-Henri Mathieu

ポール・アンリ・マチュー

 生年月日: 1982.01.12 
 国籍:   フランス 
 出身地:  ストラスブール(フランス)
 身長:   185cm 
 体重:   74kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  lotto 
 シューズ: lotto 
 ラケット: Wilson Burn 100 
 プロ転向: 1999 
 コーチ:  Nicolas Devilder 

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 細身ながら両サイドから強烈なショットを絶え間なく繰り出して相手を防戦一方に立たせる波状攻撃を持ち味とするハードヒッターで、技巧派の多いフランス人プレーヤーには比較的珍しいパワーとスピードで捻じ伏せる痛快なテニスを身上とするストローカー。02年に全仏で4回戦に進み当時4位のアガシを追い詰めたことで注目されると、秋にはモスクワ(250*)とリヨン(250*)で2週連続優勝を果たしてATPの新人賞に輝くなど早くから期待され、08年にはキャリア最高の12位を記録した実力の持ち主だが、手首や膝に故障を抱えてしまい常に怪我と隣り合わせのキャリアとなってしまった。しかし、11年シーズンを全休してランキングを失したところからしっかりと復帰してきた経緯からも窺えるように、ベテランになっても闘志と地力は健在で、体調面さえ整えば各大会で上位を脅かす危険な存在になっている。非常にタフなロングマッチを多く戦っている印象が強く、06年全仏で“赤土の王者”ナダルを追い詰めた5時間に迫る大接戦はいまだにナダル自身のローランギャロスにおける最長試合となっている。全仏では12年にもファイナルセット18-16という激闘の末イズナーを下した2回戦を含め、3試合連続フルセットマッチを戦い抜いた。こうした戦いぶりにより勝敗を越えてファンの心を熱くさせるプレーヤーだ。また、02年全米優勝で有終の美を飾り現役を引退したサンプラスが最後に敗れた相手が実はこのマチューで、前哨戦ロングアイランドで彼から勝利を挙げたことはキャリアを彩る1つの財産となっているはずだ。ハードコートを得意とし、中でもインドアでの強さに定評があるが、その他のサーフェスに苦手意識はなくオールラウンドに活躍できるタイプである。

ハードヒットの波状攻撃が魅力の強烈なストローク

 自分から打っていくショットでも、相手の力を利用して跳ね返すショットでも、破壊力抜群の球威を生み出せる類稀な打球センスを持つストロークは、破裂音にも似たツアー屈指を誇るインパクトの強さをベースに、素直なスピードボールも荒れ球気味のスピンボールも操ることができるが、基本的に強打の威力で押し切りたいという志向が強く、自分の方からペースを変えるスライスなどを使うことは少ない。両脚の幅をかなり広くとったオープンスタンスから放たれるフォアハンドは、やや安定感に欠ける部分はあるものの、ミスが増えるのもフルスイングの強打を深く打とうとしていればこそで、軽快なフットワークで回り込みも多用しながら攻撃できている時は圧倒的なラリーを展開する。一方で、バックハンドは右足を深く踏み込むクローズドスタンスが特徴で、しっかりと肩を入れてコースを隠しつつ広範囲にコントロールできる強みがある。フォアとの比較では同等のパワーに加えてテンポの速さと精度の高さで優り、その意味では彼のテニスにおいて最も信頼できる武器といえる。バックの打ち合いでは執拗にクロスコートに突き刺していく形がベースで、打てば打つほどボールが深くなっていくため、相手としてはなかなか逆襲のチャンスを見出せない。また、ダウンザラインへのウィナーを量産する力も備えており、相手がスピンやスライスでミスを誘っても、感覚さえ掴んでいればジャックナイフを駆使したり膝を深く曲げたりして華麗に決めてくる。このような手の付けられない状態にさせないためには、フォア側への配球を軸に前後左右や緩急を織り交ぜてマチューにリズムを与えないことが大切だ。

迷惑ノーシードの筆頭格として存在感はまだまだ健在

 近年は30代半ばを迎えてもトップレベルで活躍することがほとんど当たり前になってきている中、彼もその潮流に乗る1人で、ランキングをかつての位置まで戻してくることは考えにくいが、彼が50位付近にいて困るのは上位陣であり、まさに迷惑ノーシードの筆頭格として今後もツアーで存在感を示していくだろう。

 

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Juan Monaco

フアン・モナコ

 生年月日: 1984.03.29 
 国籍:   アルゼンチン 
 出身地:  タンディル(アルゼンチン)
 身長:   185cm 
 体重:   81kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  adidas 
 シューズ: adidas 
 ラケット: YONEX VCORE 98 
 プロ転向: 2002 
 コーチ:  Mariano Zabaleta, Sebastian Prieto 

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 逞しい肉体から放たれるスピン系の強打の威力やその安定性を基盤とするストローク力と粘り強い守備力を武器に近年トップに定着してきた、強豪国アルゼンチンを代表するプレーヤーの1人。ブエノスアイレス(250*)でのツアー初優勝を含む3つのタイトルを獲得しブレイクを果たした07年以来長らく優勝からは遠ざかったが、12年は年初から好調を維持しハンブルク(500)でのビッグタイトルとともにキャリア最高の10位を記録した。闘志を前面に押し出し、どんなに劣勢でも常に全力で戦う姿勢が際立ち、そうしたしぶとさや時折見せる派手なガッツポーズなどにより相手にプレッシャーを与え、徐々に流れを引き込む術を持っている。クレーを最も得意とする点などは南米人プレーヤーの典型で、上位に食い込む大会の多くを占めるが、攻守のバランスに優れる彼のテニスはハードコートでも強さが落ちず、特に北米ハードで活躍する傾向がある。一方で、芝は苦手というよりも大会そのものに出場しないことが多く、キャリアを通して芝で戦ったのが数えられるほどという極端な志向のプレーヤーでもある。端正な容姿にも定評があり、ファンの間では「ピコ」の愛称で親しまれている。

強いボールを絶え間なく打ち込む安定性抜群のストローク

 ストロークはフォアハンド、バックハンドともにしっかりと構えて長い溜めを作り、鋭いスイングから球威のあるボールを絶え間なく打ち込む、いわば基本に忠実でオーソドックスなタイプだ。インテンシティの高いラリーを好み、自らペースを変えるスライスなどはあまり使わない。その速いラリーの中でも、ベースラインからあまり下がらず、コートを鋭角に抉るスピン系のフォアとフラット系のバックをいずれもライジング気味に打っていくことで、次々にコースを変えて相手に十分な体勢で打たせない。一方でより攻撃的なプレーヤーを相手にして先に攻められる展開になれば、ややポジションを下げて時間を作り、そこから適度にスピンのかかった強烈なボールを深さに重点を置いたプレースメントで少しずつ自分の優位を作り出し、相手の足が止まったところでポジションを上げて確実に決めるパターンを得意とする。その際には決定率の高いドロップショットを選択することも多い。それほどリスクを冒した戦い方はしないため、ウィナーは少なく、一見しての派手さもないが、振り抜きの良い強打は非常に重く、相手からすると攻勢に転じにくいうえに、なかなか決定打を浴びせられないのがモナコストロークの最大の特徴といえる。

確実に深く返球するツアー屈指のリターン力

 リターンの良さはツアー屈指で、関連する数字では常に上位に位置している。早いタイミングで叩いて攻撃していく類のものではないが、確実に深くコントロールして相手に攻めさせない。トップと比べて明らかに劣るサーブ力を補って余りあるこのリターンは、トップ10入りを果たす原動力になった。

ラリーの鍵を握る横の動きに長けた機動力の高さ

 機動力の高さを活かしたコートカバーリングも彼の大きな武器の1つである。中でもストローク戦で鍵を握る横の動きが非常に粘り強く、そこから鋭いカウンターショットで多くのポイントを取る。また、フォアのトップスピンロブも得意としており、相手のアプローチを巧みにいなす頭脳的なプレーも垣間見せる。ただ、フットワークが良く、ポジションも比較的高めな割に、意外にもドロップショットに追いつけないケースが目立つ。そういった意味では前への動き出しが課題といえる。

上位陣打倒を見据えて頼れる武器を習得できるか⁉

 これといって突出した武器があるわけではないが、それは裏を返せばすべての能力がバランスよく備わっていて総合力が高いとの見方もできる。どんなに厳しい攻撃を受けても崩れないうえに、術中にハマれば相手の実力を問わずタフな試合を強いることができるため、一筋縄ではいかない厄介な相手としてトッププレーヤーの間でも警戒される存在である。ただ、それがさほど勝ちという結果に繋がっていないのも事実で、とりわけビッグ4との戦いではしばしば大敗を喫するなど、彼のテニス自体が通用していない印象がある。今後は1つ1つのショット精度に磨きをかけるのはもちろん、ウィナーを量産できるような大きな武器を身につけたいところだ。

 

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Jurgen Melzer

ユルゲン・メルツァー

 生年月日: 1981.05.22 
 国籍:   オーストリア 
 出身地:  ウィーン(オーストリア
 身長:   183cm 
 体重:   80kg 
 利き手:  左 
 ウェア:  BIDI BADU 
 シューズ: adidas 
 ラケット: DUNLOP Biomimetic F 3.0 Tour 
 プロ転向: 1999 
 コーチ:  Fredrik Rosengren  

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 非常に高い技術を軸に硬軟を自在に操るテニスを持ち味とするオーストリアの技巧派レフティーにして元トップ10の実力者。プレースタイル的にはベースラインからどんどん打ち込むハードヒッターの側面と、スライス回転や前後の動きを巧みに織り交ぜて相手を手玉に取るうまさが強調されたテクニシャンという二面性を持ったプレーヤーだが、そのいずれも攻撃の展開の中に組み込むという意味では、非常に攻撃力の高いオールラウンダーといえる。09年までは実力がありながらなかなかグランドスラム3回戦の壁を打ち破れないプレーヤーとして知られていたが、10年に遅咲きながら才能が一気に開花し、全仏では準々決勝でジョコビッチに2セットダウンからの逆転で勝利してベスト4に進出すると、その後1年のうちにナダルフェデラーをも撃破する勢いを見せつけた。また、同時期はダブルスでの成績も絶頂にあり、ドイツのペッシュナーと組んだペアで10年ウィンブルドンと11年全米で2度グランドスラムタイトルを獲得している。シングルスにおける最大のタイトルは12年メンフィス(500)で、イズナーやラオニッチのビッグサーブを完璧に攻略した戦いぶりは鮮烈な印象を残した。クレーからスローハードにかけてのやや遅めの条件の方がメルツァーのテニスには合っているものの、実績が示す通りインドアなどの速いサーフェスを苦手としているということはなく、ハマれば上位陣を破る爆発力も持っている。

多彩な組み立てからフォアでトドメを刺すストローク

 彼の最大の武器であるフォアハンドは左利き特有の懐の深さを持ち、相手からはコースが読みにくいため、逆を突くような形でウィナーを取ることが多い。もちろん威力も相当なものがあり、ラリー戦の中で重く弾むトップスピンや低く滑るスライスなど、多彩な球種を広角に打ち分けて相手を揺さぶると、最後にフォアのフラット系のショットでストレートへ豪快にトドメを刺す形を得意とする。バックハンドもウィナーを取ることのできる威力を備えるが、基本的にバックサイドからはキレのあるスライスも交えながら、より展開力のあるフォアを使うチャンスをじっくり待つことが多い。また、円を描くような独特なテイクバックから繰り出す両手打ちのドロップショットは、劣勢を覆す1つの打開策としても使うことのできる大きな武器で、とりわけクレーコートでは多用する。そこから鋭いタッチの感覚を活かした得意のネットプレーに繋げるコンビネーションは相手を大いに翻弄する。

ダブルス仕込みの硬軟自在な武器

 ダブルス関連の要素においてもやはり豪快さと繊細さの両面を見せるのが彼のテニスで、前衛では非常に思い切ったポーチに出て強烈な反射ボレーを決めたかと思えば、後衛では上の空間を美しく抜いていくトップスピンロブを得意としている。また、一発のあるリターンの攻撃力もさすがはダブルス仕込みといった印象を受ける。

玄人好みの技巧派テニスで生き残ることができるか⁉

 基本的には技巧派というのが彼に対する大方の評価であろうが、コート内側に踏み込んでフォアのウィナーを叩き込む強打力が猛威を振るった時代こそ彼は強かった。最近はトップにいた数年前に比べて、とりわけサーブとフォアの攻撃力に陰りが見え、相手に与えるプレッシャーが薄くなってきているという点で、なかなか勝ち星を積み重ねられない苦しい時期を迎えているが、ファンよりもプレーヤー間で「彼はうまい」と評判になることの多い技術力は錆びついていない。14年にブレイクを果たした同胞の新星ティームやキャリアが軌道に乗り始めている弟のジェラルドらとともに今後もオーストリアテニスを引っ張っていってほしい存在だ。

 

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Mardy Fish

マーディ・フィッシュ

 生年月日: 1981.12.09 
 国籍:   アメリカ 
 出身地:  イーダイナ(アメリカ)
 身長:   188cm 
 体重:   82kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  K-SWISS 
 シューズ: K-SWISS 
 ラケット: Wilson Pro Staff 97 
 プロ転向: 2000 
 コーチ:  Mark Knowles 

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 強力なサーブを主体に早い段階で積極的にネットに詰めてボレーでポイントする形を得意とする伝統的なアメリカンスタイルの継承者にして、凋落の度を強めるアメリカテニスを牽引する攻撃型オールラウンドプレーヤー。彼のキャリアにおける最初のブレイクはシンシナティ(1000*)で決勝に進出し、ストックホルム(250*)でツアー初優勝を飾って一気にランキングを上げた03年だったが、フィジカルの完成が遅れたことや度重なる怪我と手術などにより、時折トップ10級を破ることはあっても彼自身の成績は安定せず、なかなか才能を発揮しきれない時期もあった。しかし、10年に肉体改造に取り組み、10kg以上の減量に成功したことで、ショットやフットワークなどすべてにおいてスピーディーさが増し、ベテランになったこの歳にしてプレーが格段にレベルアップを遂げている。成績の面で言えば、同年シンシナティでマレーやロディックら格上を次々と撃破して再び準優勝に輝くと、11年にはウィンブルドンでのベスト8を含むコンスタントな活躍で自身初のトップ10入りも果たしている。その過程でプレースタイルも以前に比べて無理をせずベースライン付近で打ち合えるケースが増えたことで全体に安定感が生まれている。より完成度の増したテニスの質について、同胞の親友でスーパースターでもあるロディックを超えたとの声も少なくない。ただ、マスターズ準優勝4回、04年アテネ五輪銀メダルなど、ビッグタイトルにはあと一歩届いていないというのが惜しいところ。全体的に球足の速いサーフェスを得意とするが、最も速い芝やインドアよりは、慣れ親しんだ北米タイプのアウトドアハードで特にのびのびとしたプレーを見せる。逆に、一発よりも継続性や粘り強さが求められるクレーコートを極端に苦手としており、ベースラインから大きく下げられる環境では、彼の強さが半減してしまう。男子には珍しくくるぶし丈のソックスを着用するプレーヤーでありフィッシュのトレードマークとなっている。

展開の速いテニスを支えるビッグサーブ

 強烈なサーブは彼のテニスを支える大きな武器であり、スピードはもちろん1stからフラット、スライス、キックなど様々な球種を使い分けて相手を大いに苦しめる。サーブからの展開も非常に速く、ベースラインからのショットが格段に進歩した現代テニスにあっては、数少ないサーブ&ボレーを多用するプレーヤーである。サーブを打った後に体が大きく前傾し前に踏み出すため、ネットに詰めるのが遅れることは少ない。サーブにおける彼の課題は1stの確率の低さであり、更なる躍進を遂げるためには改善が必要不可欠である。

後方から一撃を狙うセンスと意外性を持つストローク

 ストロークはフォアハンド、バックハンドともにフォームに無駄がなく、効率良く鋭いボールを打つことができる。軽い振りでボールにスピードをつける独特のセンスを持っており、バックコートからでも意外なタイミングで強引に一撃を狙えるのが魅力である。体の軸に近い位置に打点を取ることで出所の見えにくいフォームを実現するバックハンドは威力・精度ともにとりわけ秀でており、高い打点のボールをジャックナイフ気味にジャンプして上から叩くことが他のプレーヤーよりも多い点も特徴である。ただ、良い面ばかりではないのも確かで、フォアは良い時と悪い時の差が激しく安定性に欠ける点や、バックのライジングショットがほとんどクロスしかないといった弱点もあり、今後常にトップ10圏内にいるためには、これらの課題を克服する必要がありそうだ。

仕上げのネットプレーから逆算して組み立てるラリー戦術

 ストロークは概してショートテイクバックで、強打というよりは速いテンポでコーナーを突き、ネットを取るのが主体となる。ショットの威力よりネットで仕留めることを前提に、そこからの逆算で工夫しながらラリーを組み立てるところが彼のテニスの面白さである。そのネットの取り方が多彩で、彼が本来得意とするボレーの技術力とあいまって絶大な効果を生み出す。スピン系のフォアとフラット系のバックのどちらからでも正確なアプローチショットを打てるだけでなく、フォア、バック双方からのライン際へのスライス、相手の状況を見極めてからやや遅らせてネットを取るなどといった通常のプレーヤーにはないスタイルで、常に「隙あらばネットへ」という姿勢を崩さない。また、最近のプレーヤーにしてはフォアのグリップが薄めであるがゆえに、浅いボールを掬い上げる際のタッチが抜群である。

多彩な能力を持ち合わせる質の高いネットプレー

 ネットプレーは彼の最大の武器で、反応が速く、とにかく面を合わせる技術に優れているため、高い打点や足元などの難しいボールの処理も鮮やかにこなすことができる。パスやロブの餌食になりにくいのも彼のボレーの強みで、ドロップボレーやスピードを緩めないアングルボレーなどの短いショットと、強く深いショットを効果的に組み合わせることで、相手に十分な体勢でパスを打たせない。これらクオリティの高いネットプレーは、ダブルスに積極的に出場する中で培われている部分も大きく、実際ダブルスでも多くのツアータイトルを獲得している。

勝負強さを習得して念願のビッグタイトル獲得なるか⁉

 勝利への執着心や戦略に基づくプレーの徹底度が低い気まぐれなメンタルの問題があったり、技術的にもストロークにおいてはいくつかの懸念材料がありながら、現代テニスでは非常に難しくなったネットプレーで勝ち進むフィッシュのプレーは異色であり、今のツアーに新鮮味を供給してくれる。そうした見ていて飽きないテニスで、彼が接戦をものにする強かさを身につけ、念願のビッグタイトルの獲得を期待されている。12年以降心臓に重大な疾患を抱えてしまい、残念ながらキャリアはスローダウンを余儀なくされたが、数少ない出場機会ではファンの記憶に焼き付く魅力的なプレーを披露しており、できる限り長く現役を続けてほしいところだ。

 

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Robin Soderling

ロビン・ソダーリング

 生年月日: 1984.08.14 
 国籍:   スウェーデン 
 出身地:  ティブロ(スウェーデン
 身長:   193cm 
 体重:   87kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  lotto 
 シューズ: lotto 
 ラケット: HEAD Prestige MP 
 プロ転向: 2001 
 コーチ:  Fredrik Rosengren  

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 常に攻撃志向を崩さず、どのサーフェスでも強力なサーブとベースライン付近からの破壊力抜群のフラットドライブ系のショットで、相手を捻じ伏せる攻撃的なプレースタイルを身上とする生粋のハードヒッター。ボルグ、ビランデル、エドバーグという3人の偉大な王者を生み出し、その後もビョルクマン、エンクビスト、ノーマン、ヨハンソンと繋がれてきたテニス強豪国スウェーデンの伝統を現在一人懸命に背負うのがソダーリングだ。04年にリヨン(250*)でツアー初優勝を飾って以降、乗せてはいけない危険な存在として上位陣から警戒されるようにはなっていたが、08年秋に同胞の元No.2ノーマンをコーチに迎えたことをきっかけに自信をつけ、09年全仏4回戦において当時4連覇中でローランギャロスでは未だ無敗を誇った“クレーキング”ナダルを一蹴して自身初のグランドスラム決勝進出を果たし、ツアーに衝撃を与えた。そして、その実力が本物であることを証明するかのように燻っていたポテンシャルが覚醒し、一気にトップ10への階段を駆け上がった。10年にも全仏でフェデラー撃破の番狂わせとともに2年連続でファイナリストに輝いているためクレーでの印象が強いが、本来はハードコートを最も得意としており、特に球足の速いインドアでは桁違いの強さを発揮する。その象徴が10年パリ(1000)で並み居る強敵を破って成し遂げたマスターズ初制覇であり、彼にとってはキャリア最大のタイトルとなっている。チェンジコートの際には、タオルで顔を覆い集中力を高めることに徹するなど神経質な一面もあるが、いざプレーとなると豪快かつ強気なテニスで相手を一蹴する。

ハードヒットの波状攻撃を浴びせる大砲ストローク

 ストロークは両サイドから息つく間もなく強打を連続する波状攻撃が魅力である。もちろんアングルを突くような崩しのショットを打つこともあるが、それらもあくまでフルスイングからのハードヒットの範囲内でというのが彼のスタイル。彼の絶対的な武器であるフォアハンドは、男子にしては珍しくテイクバックでラケットが背中側に出るほど大きく、その状態から腕を伸ばし、大きな遠心力を利用してボールに最大限の力を伝えるのが特徴である。高く弾むスピンボールをまったく苦にすることなく高い打点で捉え、フラット系の重いショットを大砲の如く打ち込み続けることができることが、クレーでの対ナダル1番手と期待される要因である。クロスへの強打は外に逃げる回転量、いつまでも加速しそうなスピード、体重の乗り切った重さ、それらすべてが一級品の質を誇る。バックサイドに来たボールをフォアに回り込んで打つことが他のプレーヤーより多いのも、彼自身のフォアに対する自信の裏付けといえ、最も決定力の高いショットであるが、フォアを得意とするプレーヤーに案外ありがちなフォア側に振られた時の脆さが出にくいのも大きな強みだ。コートのどこからでも、どんな体勢からでも、腕力を前面に強烈なフォアを打ち込むことができることは相手にとって脅威である。バックハンドもパワー重視の印象が強く、低い弾道で糸を引いたような伸びやかな打球を放って相手の足元に深く突き刺していく。また、バックはリターンのうまさに定評があり、とりわけデュースサイドから逆クロス方向に叩き返す強烈なリターンは、フォアに対する警戒を高めざるを得ない相手としてはしばしば悩みの種となる。ウィナーを狙った時のショットはクロス、ストレートに関わらずフォアにも劣らない威力を備えるが、精度・安定感という面ではまだまだ改善の余地は残されている。

圧倒的な力で押し込む長身からのビッグサーブ

 長身から繰り出す角度を活かした強力なサーブも彼のテニスを支える大きな武器の1つで、コンスタントに220km/hを記録する重いフラットサーブは、コースを読まれていても圧倒的な力で押し込むことができ、エースはもちろん甘いリターンを引き出して次を豪快に打ち込む形で相手を苦しめる。ただ、ダブルフォルトが若干多い点や、トスでボールを高く上げるため、風の強い状況下ではその影響をもろに受けて正確性を著しく欠き、安定性を失する点など課題もある。

ネット前での繊細なタッチショットは重大な弱点

 ネットプレーを筆頭として繊細なラケットタッチが必要となるプレーは苦手としており、アグレッシブ志向の強い彼のテニスにあって重大な弱点となっている。緩いボールの処理はそれほど問題ないが、スピードのあるパッシングショットをしっかりと弾き返してコート内にコントロールする能力が欠けており、ストローク戦で優位に立って良い形でネットに出ても、単純なボレーやスマッシュをミスしたり、自信がない分見送ったボールがインになる判断ミスを犯して、ポイントを失うケースが目立つ。トップ5級のストローク力と爆発力は秘めているだけに、このネットプレーに磨きをかけて、より完成度の高い攻めを確立したいところだ。

ポーカーフェイスと静かな闘志

 試合中は基本的にポーカーフェイスで、打つ時も声を上げず静かな闘志を燃やして戦っているが、ガッツポーズは頻繁にかつ派手にするというユニークなプレーヤーでもある。好不調の波が激しく、試合を決める局面で自滅したり、不調に陥るとそのトンネルからなかなか抜け出せないのは、彼のメンタル面の弱さが招くもので、トップとしては大きな欠点となっている。

眠っていた実力が覚醒、グランドスラム制覇も夢ではない

 自発的な攻撃力においてはいまや疑いなくツアーで五指に入り、テニスに安定感はないものの、その分どこで爆発するかも読めないのが彼の怖さであり、ビッグ4に続く存在として常に何かを起こしそうな雰囲気が漂うソダーリング。洒落っ気を出さずにハードヒットを貫徹する清々しくも恐ろしいメンタリティは長所として維持しつつ、今後弱点をある程度克服しプレーのバリエーションを増やせれば、グランドスラム優勝も夢ではないはずだ。

 

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