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20200215102533

Jack Sock

ジャック・ソック

 生年月日: 1992.09.24 
 国籍:   アメリカ 
 出身地:  リンカン(アメリカ)
 身長:   191cm 
 体重:   88kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: Babolat Aero Strom 
 プロ転向: 2011 
 コーチ:  なし 

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 極端に厚いグリップから強烈に振り抜くことで繰り出されるフォアハンドの威力を軸にベースラインでのストローク戦を支配し、ネットへ詰める動きも絡めながら攻撃的なテニスを展開する、アメリカテニスの復権を担う忠賢プレーヤー。ビッグサーブとビッグフォアを武器とするテニスは典型的なアメリカンスタイルといえ、特に彼の場合は技術面も含めて同郷の憧れの存在であるロディックを彷彿とさせる。USTAのジュニアチャンピオンに2度輝き、10年には全米ジュニアのタイトルも獲得するなど、プロ転向前のキャリアは非常に華々しいものがあり、ツアー参戦後やや伸び悩みの気配も見えたが、臀部の手術を経て復帰しヒューストン(250)でツアー初優勝を記録した15年あたりからようやく躍進の基礎が整ってきた。パリでマスターズ初制覇を果たし、土壇場でATPファイナルズの出場権最終枠を射止めた17年終盤の奇跡的な逆転劇は、その絶大なインパクトから今後間違いなく語り草となっていくだろう。なお、ダブルスでは14年ウィンブルドンを制した経験があり、ポスピシルとのペアは瞬く間にブライアン兄弟の存在さえ脅かすような世界的なダブルスペアとなった。また、16年リオ五輪では男子ダブルスでジョンソンと組んで銅メダル、ミックスダブルスでマテック・サンズと組んで金メダルと輝かしい成績を残している。ハードコートを最も得意とするが、歴代のアメリカ人プレーヤーが苦手としてきたクレーでもほとんど変わらない強さを発揮できる。

相手に恐怖心すら植え付ける強烈スピンのフォアハンド

 リストの返しを最大限利用することでラケットヘッドを走らせ、強烈なスピンを生み出すフォアハンドは彼の最大の武器で、その回転量はナダルを凌駕するとも言われるように、揺れながら急激に落ちる軌道の変化とバウンド後に重く跳ね上がる球威によって相手をベースライン後方へ押し込んでいく。テイクバックからフォロースルーにかけて常にラケットが体の軸の近くを回っていくフォームが特徴で、インパクトはスピンに特化しているが、一方で鞭をまさしく上から下に叩きつけるようなスイング軌道でボールを捉えるため、ショットのスピードも相当なものがあり、ウィナーも量産することができる強みを持つ。とりわけ得意とするのは回り込みからの展開で、球際の強さに加えてスイングスピードがある分、間に合いそうにない体勢からでも逆クロスあるいはストレート方向にも鋭く通してくるのが脅威で、軌道を上げてしっかりと長い距離をとる深いショットとサービスライン付近に落ちる角度のついたショットを使い分けて甘いボールを引き出したうえで、豪快にトドメを刺すのが彼の形だ。また、フォアサイドからカウンター気味に放つ外からのダウンザラインも大きなポイント源となっている。

硬さが課題もスライスによる揺さぶりが巧妙なバックハンド

 バックハンドから放たれるショットはコンパクトなスイングでボールを切ってバックスピンをかけるスライスが軸となる。ラケットでボールを押して伸びを重視する球種ではなく、切るタイプの比較的スピードの遅いスライスを得意とするため、狙いは攻撃というよりもペースを落としながら相手の焦りを誘発することにある。圧倒的な破壊力を誇るフォアには打たせたくないが、バックに集めてもいやらしいスライスが延々と返ってくる。相手に対してこのような感覚を植え付けられるのがスライスを多用する戦術の大きな強みである。ただし、スピンの安定感に欠けるために仕方なくスライスで粘るという側面が強いことも事実で、バックのハードヒットから攻撃の展開を生み出すのは現状のクオリティでは難しいと言わざるを得ない。中でも強いスイングで捉える際に体の軸がぶれるのが精度に問題を抱える大きな要因となっている。それでもここ最近は攻撃の欲望を抑え安定感を出す戦略の下、あまりラケットを振らずにブロックして左右に打ち分ける返球能力を身につけつつあり、長いラリー戦に耐えられるようになってきている。また、苦手だからこそ強引にでも得意のフォアに回り込む姿勢を貫いているといえ、相手としてもソックのバックサイドに集めるのは躊躇わざるを得ない。相手に恐怖心すら与えるフォアハンドは紛れもなく特大の武器だが、それに頼るようではプレーが単調に終始してしまうため、バック側からのポイントパターン構築は今後も継続して取り組みたいところだ。

繊細な技術と豊かな発想が織りなす頭脳プレーの数々

 ネットプレーをはじめとするダブルスで培った繊細な技術が存分に散りばめられているのも魅力の1つだ。ネット際では経験と自信に裏打ちされた読みの良さが際立ち、パスのコースに先回りして早く的確なポジションを取れるからこそ、足元の難しい処理でも平然とドロップボレーで短くコントロールできる。一方で相手がネットに詰めてくれば、とりわけバックサイドからはドロップショットに近いタッチでネット前に緩く沈め、一度ボレーをさせてから次で確実に抜くという憎いまでに頭脳的な選択を実行してくる。また、ストローク戦の中にもドロップショットを非常に高い頻度で交ぜてくるが、エンターテイメント性を重視する性格的な側面もあってか、こちらは明確な戦術というよりは咄嗟の発想力や気分で繰り出している印象が強い。ゆえに裏目に出ることもあるが、逆に意外性は抜群で、こうしたギャンブル的な要素も含めてソックのテニスと言うべきだろう。

回転量の多いキック系統を基軸に据えるサーブ

 最速220km/hを超えるフラットサーブに加え、フォア同様に手首のスナップを駆使したスピン量の多いキックサーブを交えることで相手に的を絞らせないサーブも大きな武器である。ただ、跳ねるサーフェスでは回転系が効果的に機能するが、常にそれが球種の軸となっているため、本来であればもう少し増えてもおかしくないサービスポイントがあまり奪えていない。ダブルフォルトの多さという弱点もあり、状況に応じた配球や精度の面で改善の余地を残している。

明るく楽しいプレーを貫く個性を残しつつ緻密な戦術を磨きたい

 長身で一見すると筋肉質な身体は重そうに見えるが、大型プレーヤーの中では比較的俊敏に動けるタイプで、繊細なテクニックも水準以上。ストローク、サーブともに手首をこねるようなスイングが技術のベースにある点で怪我が心配されるが、今後さらに経験を積み重ねていけば、大きな大会で優勝を争うようなツアーの中心人物になれる素質は十分に持っている。現在はサーブとフォア強打の勢いが突出している分勝ててはいるが、相手に研究されるとやはり厳しさもある。また、とにかく明るく楽しんでプレーする個性はファンにとって魅力的だが、時に遊びすぎが原因で勝負が二の次になったり自ら集中力を切らしてしまうことがある。17年の大飛躍から急転直下、以降はスランプに陥り信じられないほどランキングも落としてしまっているが、再起を期すには思いつきではない戦術の緻密さを磨いて総合力を上げつつ、精神面ではアメリカの旗頭としての自覚と気概を胸に戦ってほしいものだ。

 

Peter Gojowczyk

ピーター・ゴヨブチック

 生年月日: 1989.07.15 
 国籍:   ドイツ 
 出身地:  ミュンヘン(ドイツ)
 身長:   188cm 
 体重:   83kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  Australian 
 シューズ: adidas 
 ラケット: HEAD Prestige MP 
 プロ転向: 2006 
 コーチ:  Kristoffer Schimpf  

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 地面に吸い付くような素早いフットワークから極力ボールに回転を与えず弾道の低いフラットショットを相手コートに次々と突き刺していく攻撃的なプレースタイルで近年ツアーレベルに定着しつつあるドイツの個性派プレーヤー。彼の名が初めて世界に知られるようになったのは14年、シーズン開幕戦のドーハで予選勝ち上がりからベスト4に入り、準決勝では当時No.1のナダルをも大いに苦しめた。発音の難しいゴヨブチックという名前、また特徴的なフォームから繰り出していく速射砲のようなストロークが注目の的となった。その後は基本的にチャレンジャーを主戦場としてきたが、17年メス(250)において再び予選からの勢いで勝ち進みツアー初優勝を飾るサプライズを提供した。条件としてはボールが滑るような速いサーフェスが最も彼のテニスが生きる環境である。

個性的なフォームから繰り出すフラットなストローク

 彼の強さの源となるベースライン付近からのストロークは、両サイドともに早いタイミングで捉えて次々とストレートのコーナーを狙い、相手を展開スピードで振り切っていくのが基本パターン。各ショットにパワーがあるとはいえないが、回転量の少ない伸びやかな球種を深く打ち込み続けることでラリーを支配するのが特徴だ。真っすぐに伸びた左手のセットや早い段階で面が開き始める大きなテイクバック、ラケットヘッドを落とすことなくフラットに当てていくスイング、顔の横への振り抜きなど、型を決め込んだソフトテニスに近い一連のモーションが極めて特殊なフォアハンドを持つ。そこから放たれるショットは球の出所が読みづらいうえに、一撃で仕留められるだけの伸びやキレを誇り、最大の武器と言っていいだろう。相手のショットの威力をうまく利用してカウンターに転じる形を得意とし、しなりを効かせたスイングで外側から巻き込むクロスコートや打点を引きつけてピンポイントでコントロールする逆クロス気味のストレートは相手を大いに苦しめる。バックハンドも同様にコンパクトな振りで鋭いボールを飛ばす感覚に優れ、攻撃の機会を逃すまいと常に積極的に打ち込む姿勢を貫く。全体として非常に素直な球筋を操り、フォアとバックでもペースにそれほど差がないため、彼の独特なリズムに慣れられるとポイントを取る術を失ってしまうのが課題である。加えて、パワフルなスピンボールや緩急の変化などによって持ち味である直線的な攻撃が封じられた時の二の矢を備えておきたい。

1stのポイント能力が光るサーブ

 綺麗なフラット軌道の速いサーブを軸にエースを含めたフリーポイントを確実に積み重ねるサーブも武器の1つとしている。決して派手さはない印象だが、特に1stのポイント獲得率は相手を問わず高い水準を維持しており、確率がもう少し改善すればより強力なサービスゲームとなるはずだ。

自分の土俵では相当な強さを発揮する曲者

 とにかくボールの軌道を低く抑えることがテニス全体を流れるテーマとなったスタイルはシンプルとはいえツアー屈指の曲者と称するにふさわしい。打ち合いのペースが落ちたり、軌道が上がってしまうと強さが発揮されないという意味で弱点はあるが、相手とすればそこに付け込めずに彼のペースに引き擦り込まれると危険であり、今後も高速系サーフェスを中心に要注意のプレーヤーとして警戒される存在だろう。

 

Paolo Lorenzi

パオロ・ロレンツィ

 生年月日: 1981.12.15 
 国籍:   イタリア 
 出身地:  ローマ(イタリア)
 身長:   183cm 
 体重:   78kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  Australian 
 シューズ: asics 
 ラケット: HEAD Prestige MP 
 プロ転向: 2003 
 コーチ:  Pietro Griccioli  

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 かなり後方にポジションをとって豊富な運動量でボールを追い回し、叫び声にも近い大きな声を上げながらトップスピンを効かせたショットで打ち粘って長いラリーをしぶとくものにしていく無骨なファイタータイプのストローカー。彼の息の長いキャリアの主戦場はチャレンジャーレベルにあり、そこでの勝利数などは歴代でも屈指で、特にクレーでのチャレンジャーには滅法強く、ツアーレベルへの移行を目指すプレーヤーにとってロレンツィは壁のような存在となってきた。彼自身がツアーレベルでの実績を積み重ね始めたのは30代に突入して以降のことで、今では逆に珍しくなった伝統的なクレーコートスペシャリストとして存在感を示し、16年には34歳7か月というATP史上最年長でのツアー初タイトルをキッツビュール(250)で獲得すると、フォニーニやセッピら同胞の低迷もあってまさかのイタリアNo.1プレーヤーの座に就いた。グランドスラムでは本戦初出場となった10年全豪から出場13大会連続の1回戦敗退というこちらは史上2番目に悪い記録を作ってしまったが、それも現在に至るまでの多くの苦労を表す彼らしいエピソードといえる。オフコートでは外科医である父親の影響もあり、ツアー生活の合間を縫って地元シエナの大学の医学部で学ぶ非常にユニークな一面もある。

得意のスローペースに引き込む巧みな駆け引きを仕掛ける

 ベースラインから5m下がることも厭わず、とにかく自らの好む遅いペースに持ち込んでメンタル面も含めた相手との持久戦を挑んでいくストロークは、フォアハンド、バックハンドともに高い軌道のスピンボールを打ち続けるのが特徴で、自らのショットに決定力が不足している分を補って余りある安定感と、早めのテイクバックで相手の足を止めたり相手からミスを誘い出すなどのうまさを備える。ほとんどロブの部類に入れてもいいようなゆったりとしたボールをラリーに織り交ぜて戦うのが他では見られない彼特有の戦術で、彼との対戦では否が応でも心身を擦り減らすような消耗戦を覚悟しなければならない。高いポジションをとって速い展開で振り回してくるプレーヤーと対してもクレーであれば振り切られることは少なく、強打での返球に窮する追い込まれた場面では両サイドともにスライスで粘るが、その精度や質も水準以上のものを持っており、後ろでの打ち合いにおける守備の堅さは特筆に値する。また、時折フラット系の鋭いショットで膠着状況を打開してくることもあり、バランスを崩した相手を察してネットに出ていくことも意外に多く、攻めの局面では重要なポイント源となっている。基本的にはストローク偏重の彼がサービスゲームではサーブ&ボレーを多用するのも、相手にリズムを掴ませないためには効果的な手札である。また、サーブではトスアップの前に3秒ほど静止する面白いルーティンがあり、この間によってリターン側が焦らされる効果もある。

30代半ばでのキャリア絶頂はハードワークと闘志の賜物

 スピード化の著しい近年の男子ツアーの中で大ベテランの彼がここに来てキャリアの絶頂期を迎えているのは、本来の持ち味であるスタミナを維持しつつ経験に伴って駆け引きに磨きがかかっているからだろう。また、キャリア最高位を更新しているということで言えば、ハードコートでの成績が上がっているのが最近の傾向で、以前は下部大会でさえ活躍はクレーに限られていたが、彼にしてはポジションを高く保ちボールの回転量も減らしてカウンターを取っていくテニスが板についてきた分、ハードでのプレーに順応できるようになってきた。決して華はないが日常のハードワークを欠かさず、コートに立てば闘争心を表に出しながら自らのスタイルを貫徹し若手に立ち向かう姿勢は高く評価されており、個性派のベテランとしてまだまだ懸命に戦う姿を期待したいものだ。

 

Yen-Hsun Lu

ルー・イェンスン

 生年月日: 1983.08.14 
 国籍:   台湾 
 出身地:  台北(台湾)
 身長:   180cm 
 体重:   74kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  adidas 
 シューズ: adidas 
 ラケット: HEAD Extreme Pro 
 プロ転向: 2001 
 コーチ:  Stephen Koon 

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 鍛え抜いたフィジカルをベースに必死にボールに喰らいつく粘り強さやミスの少ないストロークの安定感が光る堅実なテニスで長年に亘りトップ100を維持してきた経験豊富な台湾のハードワーカー。2000年代前半に活躍したタイのスリチャパンが引退してから日本の錦織が台頭してくるまでのテニス界においてアジア人男子プレーヤーの代表格といえばルーのことだった。日本の実業団に所属していた過去の経緯もあり、日本でも馴染みの深いプレーヤーであるが、08年北京五輪で当時すでに優勝候補の一角を成していたマレーを1回戦敗退に追いやったこともあれば、何より10年ウィンブルドンでは4回戦で過去3度のファイナリストであったロディックを破る大番狂わせを演じ、アジア人としては松岡修造以来15年ぶりとなるグランドスラムでのベスト8進出を果たすと、その後自己最高の33位を記録している。特筆に値するのはランキングの上下動の少なさで、それは練習量の多さに起因するところが大きいと言われるが、結果面で見ればツアーレベルで結果が出ない時期でも下部大会ではコンスタントにタイトルを積み重ねてきたからであり、史上2人目となるチャレンジャーレベルでの通算300勝も達成している。球足の速い条件での好成績が目立ち、低い姿勢でのボールの処理に定評がある点でとりわけ芝を得意としている。

滑らかにコースに打ち分けるテンポの速いストローク

 ベースラインからのストロークの特徴はテンポの速さとボールの深さであり、体格の印象通り特別パワーがあるわけではないが、フラット系の軌道はバウンド後に伸びてくるため十分に相手を守勢に回らせるだけのクオリティを備え、またアプローチショットに改善の余地はあるもののネットに詰める積極性そのものは相手に大きなプレッシャーを与えている。高い位置にとったテイクバックから大きな遠心力を利用してボールにスピードを与えるフォアハンドは彼の武器の1つで、速い打ち合いの中でもクロス、ストレート、逆クロスと非常に滑らかに打ち分けるコース変更の技術に秀でる。タイミング自体はライジングで早いが、一方でボールをしっかりと引き込みラケットに乗せるような形で打ってくる分、懐の深さが生まれコースを読むのが難しい。バックハンドも鋭い強打に加えて、相手の予測を外すようなショットや厳しいアングルを突いた崩し、追い込まれた際に放つスライスのディフェンスショットといった器用さも兼ね備えており、ベースラインの攻防でルーを崩すためには普段以上のペースで攻め立てたり、あるいは少し下がってテンポを落としたりと一定のリズムでプレーさせないことが重要だ。ただし、彼にとって苦しいのは自らのショットがあまりにも癖のないクリーンな球種である点で「やりにくさ」というものが生まれず、自分が良いプレーをすればするほど特に上位陣にとっては調子を上げていくうえで格好の対戦相手となってしまっていることだ。

まだまだアジアテニスの牽引役としての活躍を期待したい

 これといって目立った武器はないが、弱点の少ない確かな技術と毎ポイント欠かすことなく闘う姿勢を貫くメンタル面のタフさが共存したテニスは一筋縄ではいかないプレーヤーとしてベテランになった今でもツアーで存在感を示している。最近は彼らしくない淡白な敗戦がやや増えており、モチベーションの低下が心配されるが、テニス自体は強さに衰えはほとんど見られない。世界のまさにトップで戦う錦織の登場でテニス人気に火がついたとはいえ決して人材豊富とは言えないアジアテニスであるだけに、まだまだ牽引役として溌溂としたプレーを続けてほしい。

 

Sebastian Korda

セバスチャン・コルダ

 生年月日: 2000.07.05 
 国籍:   アメリカ 
 出身地:  ブラデントン(アメリカ)
 身長:   196cm 
 体重:   79kg 
 利き手:  右 
 ウェア:  NIKE 
 シューズ: NIKE 
 ラケット: Wilson Blade 98 (18×20) 
 プロ転向: 2018 
 コーチ:  Petr Korda, Dean Goldfine,
       Theodor Devoty 
  

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 球速の速いフラット系の端正なショットを打ち続けるストローク能力の高さと、その中で攻守を巧みに出し入れするラリーコントロール能力に長けた、現在のアメリカ若手世代で最も将来に大きな期待を持てる逸材プレーヤー。98年全豪のチャンピオンである元No.2ペトル・コルダを父に持ち、激しい打ち合いにも常にラケットのスイートスポットに当てて綺麗に返す天性の打球センスは彼のDNAが確かに継承されていると言われる。18年全豪ジュニアを制してから2年半ほどの下積みを経てツアーに頭角を現したのが20年後半で、予選を勝ち上がって初出場となった全仏で4回戦に進出すると、翌21年にはマイアミ(1000)で3人のトップ30を撃破してベスト8、パルマ(250)で早速ツアー初優勝を飾るなど、驚くべき成長スピードでトップ50入りを果たしている。現在はハードコートを好きなサーフェスに挙げているものの、すべてにおいて脱力で自然なテニスはクレーと芝でも戦力が全く落ちない強みを持ち、特定の環境ではまだまだ実力不足というプレーヤーが若手には多い状況にあって彼のオールラウンド性は突出していると言っていい。ちなみに、母のレジーナ・コルドバも元プロテニスプレーヤー、2人の姉ジェシカとネリーはともに世界トップレベルで戦うプロゴルファーであり、世界屈指のスポーツ一家としても知られている。

深く、速く、低く突き刺すスピード感抜群のストローク

 細身の体躯でありながら打球時の軸のぶれが非常に少ないことが安定した精度を生んでいるスピード感抜群のストロークはコルダの最大の武器である。両サイドともに癖のないシンプルなフォームから放たれ、攻撃でも守備でもあまり軌道を高く上げることなくペースのあるボールを深く、速く、低くコントロールするのが特徴で、相手とすればコルダを後方に押し下げているにもかかわらずボールに差し込まれる点で脅威だ。フォアハンドはしっかりと振り切って球威で押し込むクロスコートの強さ、卓越したフットワークとラケットワークを駆使してタイミングを早めるストレートの切れ味、またそれを角度のつけにくいコート中央からでも逆クロスに狙える高度な技術を備える。バックハンドは特に動きに無駄がなく、速いリズムで応戦し最後はトドメのダウンザラインを突き刺す形を得意とする。また、真っ直ぐ縦方向に滑らせる正統派のスライスも手札に揃えており、強い打球を吸収して低いボールを送ることで相手の連続攻撃を止められるとともに、無理な体勢で強打はしないという強みにも繋がっている。ストロークにおいて弱点があるとすれば、フォアは比較的緩い球に対して力を溜めて打ち込む場面で却って体が浮き上がってミスを出してしまう点、バックは必要以上にクロスに引っ張ってミスが増えやすい点といえるか。

基本に忠実なネットプレーも大きな得点源

 ベースラインからネットへの移行もスムーズで、頻度こそそれほど高くはないものの、フォアでコートの右奥を突いて前進する動きや、柔らかいタッチで魅せるドロップボレーも含めて確実にオープンスペースに流し込むボレーは非常に基本に忠実で安心感がある。

今後の進化に期待したい長身からのサーブ

 2mに迫る長身を活かした高さのある強力なサーブを持ち、3球目を攻撃に繋げる秀逸な処理も含めて持ち味ではあるが、現時点ではまだまだ課題の側面が大きい。インパクトに向かう動きの過程で面がやや開きすぎる傾向があり、スピードや回転力を最大限に高めることができていない点で案外容易な対応を許してしまっている。純粋な筋力アップによる威力向上も十分に可能であることを考えれば、近い将来にはビッグサーバー級のサービスゲームを手に入れられるポテンシャルはあり、進展を注視したい。

面を合わせて切り返す攻撃的なリターンは脅威

 一方でリターンはすでにトップクラスのうまさを見せている。相手のショットの威力を利用してカウンター気味に展開するストローク同様、速いサーブにコンパクトに面を合わせて鋭く切り返すリターンで高いブレーク率を誇る。2ndにはコートの内側に踏み込んで一撃で仕留めにかかるリターンも光り、攻撃的な姿勢は相手に心理面でのプレッシャーも与えている。

洗練されたテニスで間違いなくトップに来る逸材

 圧倒的なパワーがあるわけではないことと表裏ではあるものの、彼のテニスは見ていて心地良さを覚えるほどに無理がない。それは技術的には洗練されたフットワークがあるために打点周りのドタバタした雰囲気がないことも理由だが、戦術的には強引に一発で決めたくなるような場面でも2、3本のコンビネーションで崩すイメージを常に持ちながらプレーしている印象があり、その落ち着きぶりや成熟度には驚かされる。ポーカーフェイスを貫くオンコートの態度もテニスのスタイルと親和的でいかにも彼らしい。トップレベルのハードヒット勝負で全くスピード負けせず、それどころか展開の速さで相手を面食らわせる強さがあり、そこに様々な器用さを織り交ぜて的も絞らせない。間違いなく上に来る存在と断言できる存在であるが、一歩ずつ階段を上る姿は必見だ。

 

Martin Klizan

マルティン・クリザン

 生年月日: 1989.07.11 
 国籍:   スロバキア 
 出身地:  ブラチスラバスロバキア
 身長:   191cm 
 体重:   85kg 
 利き手:  左 
 ウェア:  SERGIO TACCHINI 
 シューズ: asics 
 ラケット: HEAD Prestige MP 
 プロ転向: 2007 
 コーチ:  Martin Hromec   

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 強烈なトップスピンを操る破壊力抜群のフォアハンドを武器に、攻撃的なストロークでベースラインの打ち合いを制するレフティーの本格派プレーヤー。06年全仏ジュニアの優勝経験を持つなど、若い頃から将来を嘱望されるような存在であったが、故障が多くツアーでその名が知れ渡るまでにはやや時間を要した。12年全米2回戦でツォンガを破って4回戦まで進出し、サンクトペテルブルク(250)では初タイトルを獲得するなど大きく飛躍し、ATPの新人賞にも輝いた。その後再び怪我に苦しむも、16年にはロッテルダム(500)で準々決勝以降マッチポイントから脱出した2試合を含む3戦連続の逆転勝ちで優勝を果たすと、ハンブルク(500)でも栄冠に輝き、このグレードにおけるトップ10圏外での年間2勝は09年のATPツアー改編以後では初の快挙となった。それだけ彼の能力が優れているということの証明でもあるだろう。本来はクレーを得意としているが、時折ハードコートでも番狂わせを起こす意外性も備えている。

コートを鋭く抉る豪快なフォアハンド

 厚いグリップとダイナミックなテイクバックから繰り出される巻き込むようなフォアハンドは彼の最大の武器で、癖のあるスピンボールはどのプレーヤーもその対応に手を焼く。技術的にはラケットやボールの出所が見えにくいレフティー特有の懐の深さが強みとなってコースが読めず、さらにコース変更や緩急も自在なタッチセンスも持っている。コートを抉るようなスピンショットをクロスのアングルに打って相手を走らせ、そこを起点にフォアの回り込みを多用してストレートや逆クロスに豪快なフラット系のウィナー、あるいはサイドスピンの効いたドロップショットを狙っていくのが彼の形で、非常に配球範囲が広いのが魅力だ。また、長身の割に機動力が高く、広い守備範囲で厳しいショットに対してもカウンターを取っていくことができる。

癖の強いフォームを修正して安定感を習得したいバックハンド

 一方で、バックハンドはしっかりと構えた時には威力のあるボールを打つことができるのだが、両手打ちの利点であるはずのオープンスタンスが得意でないため、走りながらのショットや相手に揺さぶりをかけられると打点が合わずミスに繋がったり、常に左足の踏み込みが必要な分打った後にバランスを崩すケースが多く、対応力という点で改善の余地がある。可能であるならば左手首が極度の下向きに折れる癖の強いフォーム自体を修正できればベストだが、少なくともインサイドアウトのスイング軌道でストレートに展開する技術を身につけたい。

フォアとサーブの一撃力を磨いて躍進へ

 バックの弱さというネガティブな側面も含めて、こうしたテニスのベースの部分はベルダスコに近いものを持っており、彼がそうして躍進のきっかけを掴んだように、フォアで上からフラットに叩く機会を増やし、また一本で決め切るようなサーブを習得できれば、より一層怖さが生まれ、サーフェスを問わず上位を脅かす存在となれるはずだ。

奇策的な戦術や激しい喜怒哀楽に個性を感じさせる

 サービスゲームでしばしばダブルファーストを使ったり、リターンゲームでは欲しいポイントで立ち位置を盛んに変えることで相手のサーブにプレッシャーをかけるなど、奇策的な戦術を切っていく独特の感性を持っているのも特徴の1つで、喜怒哀楽がかなり激しい性格面とともにこのあたりのユニークさも彼の魅力と言っていいだろう。ただし、時に無気力ともとられかねない態度を見せることもあり、彼の中では頭と体をリセットする手段なのかもしれないが、プロとして褒められたものでないことは事実でできる限り控えたい。

スロバキアテニスの復権を託せる潜在能力の持ち主

 同胞の先輩でかつては「アガシ・キラー」で知られた曲者クチェラによってビルドアップされた彼のテニスは、アップダウンの多いメンタルを除けば強くなるための条件がしっかりと揃っており、ボールの外側を削っていくようなサイドスピン系の回転を軸に戦う特異さもあいまって今後更なる飛躍が期待できる有望株であることは間違いない。そのクチェラやフルバティが牽引してデビスカップの決勝まで導いたことで盛り上がりを見せたスロバキアテニスは、以降なかなか若手の台頭がなかったが、クリザンは彼らに比肩するポテンシャルを十分に持っており、ビッグトーナメントのパフォーマンスに注目したい。

 

Cameron Norrie

キャメロン・ノリー

 生年月日: 1995.08.23 
 国籍:   イギリス 
 出身地:  ヨハネスブルグ南アフリカ
 身長:   188cm 
 体重:   82kg 
 利き手:  左 
 ウェア:  K-SWISS 
 シューズ: K-SWISS 
 ラケット: Babolat Pure Strike (16×20) 
 プロ転向: 2017 
 コーチ:  Facundo Lugones    

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柔らかいスイングやタッチで操る独特なストロークで確実に相手を左右に振り回す能力とそれを実践する粘り強さを持ち味とするレフティーのベースラインプレーヤー。現在はイギリス国籍であるが、ジュニア時代の16歳まではニュージーランドを背負ってプレーしていた。18年初頭に代表に初選出されたデビスカップで格上のバウティスタ・アグートをフルセットで下して自信を掴むと順調に50位付近までランキングを上昇させた。そして、COVID-19の影響で約半年ツアーが中断した間にしっかりと力を積み上げてきたことが、鮮烈な成績を残した21年の活躍により明らかとなった。クレーコートのリヨン(250)でティームを撃破したり、芝のクイーンズ(500)で準優勝を果たしたことも十分に特筆に値するが、何と言ってもシーズン終盤の秋開催となり混沌と化したインディアンウェルズ(1000)で圧倒的なパフォーマンスを披露してマスターズ初優勝を成し遂げたことはあまりにも大きなサプライズであった。これにより一気にトップ10を窺う位置まで地位を高めている。元々は華奢な体型で非力なプレーヤーだったが、今やがっしりとした上半身をはじめルックスは精悍に、テニスもスケールが大きくなり、イメージがガラリと変わった。ハードコートを得意とするが、鋭い予測力や早い準備といった基礎が固まっている分、クレーや芝への適応も全く問題がない。

独特な感性でラリーを支配する

 ボールを優しく舐めるようなインパクトと腕がしなるスイングから繰り出すフォアハンド、飛んでくるボールの軌道の延長線上に両腕を一直線に伸ばしてラケットを小さく引きコンパクトにブロックする両手バックハンド。ストローク戦では両サイドから非常に独特な感性を持った差異の大きなショットで応戦する。フォアのループ軌道とバックの低弾道でラリーの基本となる両対角線を支配し、相手のプレーの選択肢を潰して予測力を高め、機を見て自らウィナーも奪う。これがノリーのテニスである。

コースを愚直に打ち分けるスピン系のフォアハンド

 フォアは不用意に振り上げスイングを使わないのが彼の良さであり、リズミカルなフットワークと球際での体幹の強さがそれを可能にしており、トップスピンを多くかけた高さのある打球を駆使して無理せずにコースと深さを愚直に打ち分けていく。決して速いショットではないのだが、それだけに相手としては走らされる感覚の強い、いやらしい球種といえる。チャンスに踏み込んで叩き落とすショットやクロスラリーで優位を作った後のストレート展開の切れ味を磨くことがフォアにおける強化ポイントになってきそうだ。

無回転系の低弾道を打ち続けるバックハンド

 バックは膝を深く追って低めの打点から跳ね返すタイミングの早さとバウンド後に滑って伸びるような低弾道の無回転系の球種によって、こちらもスピードは遅めにもかかわらずしばしば相手が差し込まれるショットになっている。クロスの角度を狙いあう勝負に強く、チャンスを見極めてサービスラインより手前に落ちるような鋭角にフラットで返すショットはまさに針の穴を通すコントロールである。加えて、甘い返球にはコートの中に入って自発的にダウンザラインや逆クロスへ流し込んでウィナーにしたりネットプレーに繋げる攻撃のショットも備える。バック側は厳しいボールに対応した際にやや体が外に流れる傾向があったり、高い打点で伸び上がって打たされると精度が落ちる場面は見られ、柔軟な対応力をさらに向上させることが課題になるだろう。

大きく横に曲がるスライスサーブで戦術に徹する

 戦術遂行力の高さはサーブにも表れる。適度に速いフラットサーブを交ぜて相手に意識させつつ、あくまで配球の主体は左利き特有のスライスサーブを貫く。170km/h前後の大きく横に曲がる球種であるが、1stの高い確率にも寄与するこのサーブに対してある程度前に入って対応できないとどんどんノリーの思う壺に嵌っていくことになる。とはいえ、更なる躍進のためには、フリーポイントを奪う力の習得やダブルフォルトを減らすことなど、サーブの総合的な改善・強化は必要である。

堅実な基礎にパワフルさが加わり充実期を謳歌する

 あらゆるタイプの相手に的確な戦略で臨む堅実さ、頻繁に自らを鼓舞する声を上げる闘志、自分からのミスを極力出さずに左利きらしい立体的な組み立てを見せるプレーの安定性、そこに最近は足りなかったパワフルさも加わってきたことで充実期を謳歌する。サーブの返球率が高くリターンゲームは相手に大きなプレッシャーを与えており、サーブの威力を上げてサービスゲームに強さが見られてくるとトップ20定着からその上も狙える。派手なショットはないものの、彼特有のショットやパターンを多数持った曲者プレーヤーとして今後さらに存在感を増してくるはずだ。

 

Dominik Koepfer

ドミニク・コプファー

 生年月日: 1994.04.29 
 国籍:   ドイツ 
 出身地:  フルトヴァンゲン(ドイツ)
 身長:   180cm 
 体重:   79kg 
 利き手:  左 
 ウェア:  lotto 
 シューズ: lotto 
 ラケット: HEAD Prestige MP 
 プロ転向: 2016 
 コーチ:  Rhyne Williams, Billy Heiser   

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 躍動感溢れるフットワークでコートを駆け回り、高低や緩急のバリエーションに富んだ精度の高いショットを器用に操って激しいストローク戦を制していくドイツのサウスポー。アメリカの大学テニスを経由してプロに転向したこともあり、ツアーで頭角を現してきたのは20代後半に差し掛かってからであるが、19年全米で大会初出場ながら予選から勝ち上がって4回戦まで進出、20年にはマスターズ初出場となったローマ(1000)でベスト8の快進撃を見せNo.1のジョコビッチにもあわやというところまで迫るなど、ここ最近急速に存在感を高めている。高い軌道を使って相手をベースラインに釘付けにするしつこいプレースタイルはクレーコートで最も強さを発揮する。

高軌道のスピン系フォアと強烈に突き刺すバック

 ベースライン後方に構えてじっくりと強いボールを打ち込んでいくストロークは、コプファーの堅牢なテニスを支える強力な武器である。フォアハンドは高い打点を積極的にとるというよりは常に腰付近の高さまで引きつけ、斜め上方向の高角度に打ち出してスピンで落とすショットを得意とする。激しい打ち合いでも時間と空間をうまく使って執拗にクロスコートのコーナーにピンポイントで戻す感覚はいかにもクレーコーターらしく、そのターゲットが多くのプレーヤーのバック側になるという左利きのアドバンテージがより一層強みを増幅させている。こうして守備から入りながら相手のバランスを崩すと、機を見て前に入ってフラット系のストレートを叩き込むこともできる。大きな円を描くようなテイクバックが特徴的なバックハンドも脅威となるショットで、相手の予測の上を行くという観点では明らかにフォアに優る。かなり大きく捻った上半身を鋭く回しながら前側の左脚一本に体重を乗せてボールを走らせる能力に長け、肩口の難しい打点から一撃で突き刺すクロスやダウンザラインを備える。また、アングルを突く崩しや、自分から展開に交ぜることは少ないながらもディフェンス時に有効かつ高質なスライスを放つこともでき、弱点のない技術力も魅力である。課題としては、彼の思い切りの良さと裏腹ではあるが、勝負所でリスクを負いすぎてミスが増える傾向は指摘できるかもしれない。

多彩なサーブは今後スタッツが伴ってくるか

 サーブも大きく曲がるスライス、高く弾むスピン、200km/h超のフラットと多彩な球種を持つが、センターから少し離れて立つアドバンテージサイドのワイドサーブがやはり配球の軸となって有利なラリーの形を作り出す。右利きのリターナーのフォア側も厭わずキック系を多用するのも的を絞らせない要因となっている。凡庸なポイント獲得率など現時点で数字面は伸びてきていないが、技術的には高いものを持っており、配球の偏りや不必要なダブルフォルトを減らしていけば十分に武器になり得るだろう。

テニスの質は完成された域、足りないのは経験だけ

 強靭かつ柔軟なフィジカルを活かして、リターンやストロークでコートの外側に追い出されても地面間近のボールをうまく返球することで相手の攻撃の芽を次々と潰していく守備面が第一に光る彼のテニスではあるが、アメリカの薫陶といえるのかチャンスでネットに突進して強いボレーで仕留めるプレーも持ち合わせ、相手とすれば心理的な圧迫を感じるプレーヤーである。コプファー自身にメンタル的な波が散見されるのは要改善点ではあるが、経験を積んで自信をつけていけば自然と解消されるだろう。テニスはすでに完成された域にあり、各ショットの精度が少しでも向上すればトップ30は達成できそう。闘争心を表に出して戦うファイターぶりは国別対抗戦でも力を発揮する可能性が高く、A.ズベレフに続くドイツの2番手の筆頭候補としても注目したい存在だ。

 

Federico Delbonis

フェデリコ・デルボニス

 生年月日: 1990.10.05 
 国籍:   アルゼンチン 
 出身地:  アスル(アルゼンチン)
 身長:   193cm 
 体重:   90kg 
 利き手:  左 
 ウェア:  Babolat 
 シューズ: Babolat 
 ラケット: Babolat Pure Aero Plus 
 プロ転向: 2007 
 コーチ:  Mariano Hood   

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 南米人らしい躍動感のある大胆なフォームから繰り出すスピン系のフォアの強打を武器に相手を後方に押し込み、自らはラリーの中で徐々にポジションを上げつつ大きな角度をつけてポイントに結び付けていく重厚な組み立てを持ち味とするレフティーのストローカー。デルボニスの名は、13年ハンブルク(500)で予選上がりから快進撃を見せ、準決勝ではフェデラーに土をつけて準優勝を果たしたことで初めて世界的に知られるようになったが、その後翌年にはサンパウロ(250)でツアー初優勝を飾るなど着実に成長を遂げてきた。16年にはデビスカップ決勝の勝負が決するファイナルラバーでカルロビッチのビッグサーブを完全に攻略してアルゼンチン初戴冠のヒーローとなったことも記憶に新しい。ゆったりとしたリズムの中でボールを強くヒットしていきたいプレースタイル上、最も得意とするのはクレーであり、球足の速いサーフェスでの戦闘力向上は今後の課題といえる。

重いトップスピンのフォアハンドを軸とするストローク

 膝を深く曲げて体を沈み込ませ、そこからの伸び上がりで下から上へと生み出したパワーを重いトップスピンに転換していくフォアハンドは長いラリーの主導権をものにする彼の最大の武器である。比較的低い打点をとって外側から巻き込むようなスイング軌道で捉える特徴と左利きであることの優位性を活かして、右利きの相手のバック側となるクロスコートに辛抱強くボールを弾ませ、機を見て外から回してくるようにダウンザラインへウィナーを狙いにいくのが基本的な戦術となっており、独特なリズムを駆使した展開は相手を惑わす。肩の入れ方と腰の鋭い回しが特徴のバックハンドはスピンとフラットの使い分けを強みとする。フォア、バックともにしっかりとボールを引き込んで打つことが多いため、逆に打点を早めたバックのライジングをクロスに突き刺した時に相手は意表を突かれる形となりやすく、このショットが大きなアクセントとして機能している印象がある。ストロークの弱点としてはやはり速い展開の中でとりわけフォームの大きいフォアの質が落ちる点で、対戦相手はコンパクトに振り抜くバックのカウンターを警戒しつつフォアのミスを誘い出すというのが有効な戦略だろう。

世界一トスの高いサーブは彼のトレードマーク

 左腕を担ぎ上げる形を先に作った状態から、野球の投手の二段モーションの如く上下の反動を利用して非常に高いトスを上げ、全身をバネのように使って放たれるサーブも彼の独特な感性を象徴する技術で、なかなか他では見られないという意味では見どころの1つである。おそらくトスをツアーで最も高い位置に上げるプレーヤーで、どちらかといえばクイック気味のサーブがトレンドの現代にあっては、リターン側とするとタイミングが合わせにくく、加えて繰り出す球種の中でも高く弾んでくるスピン系と逃げていくスライス系の軌道の差が読みにくい特徴がある。左利き特有の外に逃がすサーブのキレがそれほどでもない点で、ワイドのコースを武器として使えていないのが課題ではあるが、200km/hを超えるフラットサーブも備えており、配球バランス次第では強力なサービスゲームを構築できそうだ。

跳ねるような軽快な動きと十分なパワーを兼備する実力者

 長身だが飛び跳ねるような軽快な動きを持ち、一方でショットには十分なパワーがあるのが彼のテニスであり、フィジカル・メンタルの粘り強さも水準以上。技術に癖はあるが強くなるための条件をしっかりと揃え、16年デビスカップの優勝を経験して自信も掴んだデルボニスの今後に期待がかかる。